提督はBarにいる。
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『冷し』で暑さを乗り越えろ!・3
「ところで五十鈴、注文は?」
「う~んそうねぇ……私も冷たい料理でいいわ。でも、私白ワイン飲んでるからそれに合わせた料理でね?」
「あいよ。ちょうど今日山雲が早獲れの夏野菜持ってきたからな、それで何か作るわ」
「ふふ、期待してるわ」
さてと、じゃあその期待にお応えして『冷やしラタトゥイユ』でも作ろうか。
《夏場のビタミン補給に!冷やしラタトゥイユ》※分量2人前
・トマト:1個
・ズッキーニ:1/2本
・赤パプリカ:1/2個
・黄パプリカ:1/2個
・玉ねぎ:1/2個
・茄子:1/2個
・にんにく:1/2片
・白ワイン:50cc
・オリーブオイル:大さじ1
・塩:小さじ1/2
・胡椒:適量
さて、ラタトゥイユという料理名を初めて聞いた、という人もいるだろうから軽く説明しとくか。ラタトゥイユってのはフランスの南プロヴァンス地方にあるニースという街の郷土料理だ。「Touiller(フランス語でかき混ぜる、の意)」と「Rata(フランスの軍隊スラングでごった煮)」が組み合わさったってのが、名前の由来と言われている。元々は腐りかけや傷んだ野菜を使っていた粗末な食事で、主に軍隊や刑務所で出される食事だったらしいな。日本で言う『臭い飯』って奴さ。ただ、新鮮な野菜で作ったラタトゥイユは臭い飯なんて呼べる代物ではなく、ちゃんとした料理となっている。当然、煮込み料理なんだから温かいのが普通だが、今回は冷製のラタトゥイユにチャレンジだ。
まずはトマト。ヘタを取り除き、種をスプーンでくりぬく。あぁ、種はちゃんと使うから捨てないで取っておくように。残ったトマトの果肉は一口大にカットしておく。ズッキーニと茄子は半分に割ってから薄い半月切りに、パプリカと玉ねぎは2cm角に切り、にんにくは薄切りに。ポイントは具材を薄く(又は小さく)刻む事。こうする事で火の通りが早くなり、調理時間の短縮に繋がる。暑い中火の前に長く立ってるのはキツいもんな。
さて、本格的な調理に移るぞ。鍋にオリーブオイルとにんにくを入れて弱火で炒め、香りが立ってきたらトマト以外の野菜を入れて中火で炒めて油と馴染ませる。
全体に油が回ったら、取っておいたトマトの種と白ワインを加えて弱火で蓋をして煮込んでいく。野菜に火が通ったら、トマトの果肉、塩、胡椒を加えてサッと煮込み火を止める。
器に盛って粗熱を取り、冷蔵庫で冷やすんだが、ここでもポイントが1つ。器は冷しておくと粗熱が早く取れるので時間短縮に繋がる。それに冷蔵庫で冷やすにも時間が短くなるしな。
後はラタトゥイユがしっかりと冷えたら、お好みでバジルを散らして完成だ。
「ホイおまたせ、『冷やしラタトゥイユ』だ」
「ラタトゥイユって、あれよね?〇ィズニー映画に出てきた……」
「あぁ、『レ〇ーのおいしいレストラン』だったか?確かに出てきてたな」
まぁフランス料理を題材にした話だったからな、出てきても不思議じゃない。しかしあの映画に出てきたのは温かい普通のラタトゥイユだ。冷たいのは五十鈴も見るのも食べるのも初めてだろう。
「ん、トマトの旨味が染みてて美味しいわねこれ!」
「まぁな。出汁が出そうな肉類とかコンソメとかは入れてない。純粋に野菜の出汁のみの味わいだ」
野菜の出汁って奴は案外侮れない。精進料理では鰹節が使えないから、野菜の皮を干して出汁を取ったりする程、野菜には旨味が隠れているんだ。まぁ、アレンジするなら鍋で煮込む際に別のフライパンで炒めたベーコンやウィンナーを入れたり、セロリや唐辛子のような香味野菜を加えても美味い。茹でたパスタと和えれば、ラタトゥイユがいい感じのパスタソースに化けてくれる。
冷やしラタトゥイユと白ワインを楽しむのを横で眺めていた占守が、アワアワしながら
「し、司令!占守も見てるだけじゃ腹減るっす!何か作って欲しいっす!」
「何か作ってくれ、ったってなぁ。何が食いたいんだよ?」
「え~と、う~んと……あ、お肉!肉が食いたいっす!」
肉か。冷たい料理で肉料理ってのは難しいんだが……まぁ出来なくはない。
「任せとけ、急いで作るからよ」
《冷たいご馳走!冷製ミートローフ》※分量4人前
・牛、豚合い挽き肉:300g
・玉ねぎ:1/2個
・人参:1/2個
・パン粉:大さじ6
・牛乳:300cc
・卵:3個
・粉ゼラチン:10g
・塩:小さじ1/4
・とんかつソース:大さじ3
・胡椒、ナツメグ:少々
ミートローフってのはイギリス料理でな。俺個人の意見だが、数少ない『日本人でも美味いと感じるイギリス料理』だと思っている。普通は挽き肉を練ってハンバーグのような肉だねを作り、型などで固めてから焼き上げる料理だ。俺は金剛の奴に教わってから、アレンジして冷製バージョンを作ってみた。
まず、卵は半熟~固茹で位に茹でておき、殻を剥いておく。パン粉に牛乳100ccをかけてふやかし、成型用のパウンドケーキ型にはラップを隙間なく敷いておく。
玉ねぎと人参はすり下ろし、ふやかしたパン粉、粉ゼラチン、塩、ソース、ナツメグ等と共に合い挽き肉に加えて練る。更に残しておいた牛乳を加えて練り、弛めの肉だねを作る。
肉だねが出来たら鍋に肉だねを入れて、火にかける。水気が多いので油は必要ないハズだ。肉に完全に火が通ってとろみが出てきたら火を止める。
パウンド型の1/3位の深さまで肉だねを流し込んだら、茹で玉子を並べる。そうしたら残りの肉だねを流し込んでラップで包み込み、軽く押して空気を抜きつつ上を均したら冷蔵庫へ。肉だねに入ったゼラチンが冷えると固まってくれるので、これでも固まるんだよなコレが。後はしっかりと冷えて固まったのを確認したら、適当な厚さにカットして盛り付ければ完成だ。
「さぁ出来たぞ、『冷製ミートローフ』だ」
「うわぁ、なんかスゲーっす!シャレオツっす!」
「シャレオツってお前……まぁいいや」
ミートローフという事で、冷たいと冷えたハンバーグの様なのではないか?と思うかも知れないが、ゼラチンで固まっている為、どちらかといえばテリーヌに近いイメージだろうか。なので冷たいままでもあまり抵抗なく食べられてしまう。
「ちょっと!私達には!?」
そう噛みついて来たのは国後だ。
「だったら注文しろよ、作ってやるから」
「ならご飯物がいいわ!ササッと作れてすぐ食べられるヤツね!」
「へいへい」
ならば材料さえ揃えれば1分で出来る「梅ツナ茶漬け」にするか。
《調理時間1分!梅ツナ茶漬け》
・ご飯:茶碗1杯分
・ツナ:大さじ1
・ネギ(みじん切り):大さじ1
・白ごま:小さじ1
・梅干し:1個
・冷たい麦茶:適量
・ゆかり:お好みで
さぁ行くぞ。丼にご飯を盛り、ツナをご飯の上に散らす。ご飯の中心に梅干しを乗せて、ゴマとネギ、お好みでゆかりを散らしたらよく冷えた麦茶をぶっかければ出来上がり。かけるお茶は何でもいいんだが、俺が試した中では麦茶が香ばしくて一番美味かったかな?次点で烏龍茶。
「さぁ出来たぞ、『特製梅ツナ茶漬け』だ」
「ちょっと!適当過ぎない!?」
「まぁまぁ、美味けりゃ問題ないだろ?」
「美味しくなかったら許さないんだからね!?」
国後はそう言いながら、梅干しを崩して全体と混ぜ合わせてズルズルと啜っている。その動きは止まる様子を見せず、一気に飲み干すように食べきっている。
「どうだった?」
その食べっぷりから予想は付いているが、ニヤニヤ笑いながら聞いてみる。
「っさいわね、美味しかったわよ!何そのにやけ笑い!キモいんですけど!」
ほぅ、まだまだ威勢の良さが残ってるな。ならもう少し訓練メニューを厳しくしてもよさそうだ。明日の朝にでも教官役の奴に連絡しておこう。
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