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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -

作者:どっぐす
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あとがき
  あとがき

 映画『ジュラシックパーク』に、こんなセリフが出てきます。

「Life finds a way.」

 これは、蘇らせた恐竜たちを閉じ込めているテーマパークの研究者が、
「ここにはメスしかいないので繁殖の恐れはない」
 と管理への自信を口にしたときに、登場人物の一人である数学者マルカムが言ったセリフです。

 find a wayは「道を見つける」ということですが、特に困難や障害などにぶち当たった状況で、苦労して道を探し出すときに使われる言葉だそうです。
 つまり、マルカム博士のこのセリフは、

 生物はどんな苦境に置かれようが、必ず生き延びる道を見つけますよ――

 ということですね。
(実際、作中ではその後繁殖が確認され、パークの構想は見事に崩壊します)

 超有名作品を私ごときが語るのはおこがましいのですが、この「Life finds a way.」という言葉はとても印象に残っています。



 さて。
 拙作『マッサージ師、魔界へ』を最終話までお読みいただき、心より感謝申し上げます。

 ここではあとがきと致しまして、本作の『魔族』および、『マッサージ師』について説明をさせて頂こうかと思います。



 まずは魔族についてです。

 本作「マッサージ師、魔界へ」の世界では、魔族は人類の進化系であります。

 そう。進化系、なのですが。
 人間の一部が魔法を使えるように進化したら……と考えたとき。

 ――迫害されるだろう。

 というのが私の考えです。
 異論はあると思いますが、地球の近世未満の文明レベルしかない世界に魔族が誕生すれば、きっと瞬く間に全滅の危機を迎えるでしょう。

 ですが、では素直に全滅するのか?
 となれば、それもまた違うのかなと思うわけです。
 誰かが、何とかして、生き延びる道を模索してゆくことになるでしょう。

 本作で言えば、ルーカス氏のご先祖様は迫害された同胞をまとめあげ、単一種族国家を立ち上げることで危機を脱しました。

 では、魔族の国が誕生したら……と考えたとき。

 ――どんどん弱体化する国が出来上がるのではないか。

 という答えが出てきました。
 魔法は体一つあれば出せてしまうとても便利なものです。
 全員そんなものを身につけている国が強くなっていくわけはない。
 これまた異論はあると思いますが、私はそう思いました。

 ですが、では種族は国ごと滅ぶのか?
 となりますと、やはりそんな結果にはならないでしょう。
 国は滅んでも種族としては生き延びようとするでしょう。

 しかし人間は魔族を皆殺しにするので、国が滅んだら生き延びられる場所がありません。
 ではどうするか?
 ならば、さらに何か無いのか模索するはずです。

 ルーカス氏は、個としては高い戦闘能力を有していることになっています。
 最後の戦いを人間に挑み、後世に残るような戦いぶりを見せることは、恐らく可能だったでしょう。

 ですが、魔族が『詰み』という状態になったときに彼が最後に出した結論は、玉砕して死に花を咲かせることではありませんでした。
 彼が選んだのは、種の保存。『生き延びる』ということでございました。

 前述の映画のセリフに影響されて本作を書いたわけではありませんが、彼の選択は生き物として決して不自然なものではないと考えています。



 次に、マッサージ師についても触れさせて頂きます。

 本作の主人公マコト氏のお仕事である『マッサージ師(あん摩マッサージ指圧師)』というものも、現在職業としては絶滅危惧種になっています。
 街を歩いても、「指圧」や「マッサージ」という看板を見ることが少なくなりました。
 どんどん廃業に追い込まれてしまっているからですね。

 あん摩マッサージ指圧師は医療系の国家資格であり、専門学校で三年の勉強をしたのちに国家試験を受け、合格した者だけが免許を取得できます。

 学費が決して安くなく、三年間で300~500万円ほどのお金がかかること。国家資格を取得し医療としての施術所を構えると、広告の制限など営業上の不利があること――
 それらは本作に書かれている通りです。

 そんな中、法の縛りを受けにくいリラクゼーション店、整体院などの非国家資格系の店の台頭により、
『三年の時間と多額のお金をかけてあん摩マッサージ指圧師になっても、ほとんど生き残れない』
 というような状況になっているのも、これまた本作に書かれている通りです。

 本作のマコト氏は、もろにそのパターンに当てはまってしまっております。

 彼は残念ながら日本では生き延びる道を見つけることができませんでした。
 ですが彼の場合、道を見つける努力がそもそも足りておらず、本当に道がなかったのかどうかはわからなかったわけであります。
 もしかしたら何かあったのかもしれません。

 いろいろと甘さや淡泊さがあったマコト氏ですが、ルーカス氏と一緒に転戦することによって、
『最後まで足掻くことが大切』
 ということはよく理解したと思います。
 きっと新天地では粘りのある新生マコト氏の活躍が見られることでしょう。

 そして二度にわたる種族滅亡の危機を逃れた魔族も、今よりも耐性のある生物として、たくましく新天地で生き延びていくに違いありません。

 続編を書かせていただくことになるかどうかはわかりませんが、もしその機会がありましたら、また彼らを温かく応援してくだされば作者として嬉しく思います。



 さて、では長くなりましたが……。
 皆様がこの先困難にぶち当たってもタフに生き延びてくださることを祈り、あとがきを締めさせていただきたいと思います。

 ここまでお付き合いくださいまして本当にありがとうございました。



 
 

 
後書き
※2018.03.14追記

 おかげさまで本作は書籍化されております。
 内容・雰囲気ともに、WEB版より大幅に変わっています。よろしければ書籍のほうも追いかけてご確認頂けますと幸甚です。
 よろしくお願いします。 
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