ドリトル先生と悩める画家
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第三幕その八
「そんな僕ですから」
「凄くない」
「はい、そうです」
全く以てというのです。
「凄くないです」
「では今まで凄いと思われていたことは」
「ありました」
このことは隠さずに答えた太田さんでした。
「かつては。ですが今は」
「そうはですね」
「思っていません」
また答えた太田さんでした。
「自分は何と情けない、才能がないのかと」
「自己嫌悪ですか」
「その感情に陥っています」
「苦しいですか」
「本当に、何とか抜け出たいです」
そのスランプからというのです。
「苦しくて仕方ないですから」
「どうしたらいいのか」
「わからないのです」
「ですがそれでもですか」
「はい、描いていきます」
このことは変わらないというのです。
「そうしていきます」
「そうされますか」
「明日も明後日も」
「スランプから抜け出られるまで」
「そうしていきます、あとですが」
今度は太田さんから先生に言ってきました。
「貴方はドリトル先生ですね、医学部の」
「僕のことをご存知ですか」
「先生は有名人ですから」
だからというお返事でした。
「僕も知ってますよ」
「そうでしたか」
「あと年長の方ですから」
太田さんは笑ってこうも言ってきました、疲れている感じのお顔ですがきちんとした礼儀正しいお返事でした。
「敬語もいいです」
「日本語のそれも」
「はい、そうです」
「では」
先生も太田さんの言葉を受けてです、太田さんにあらためて言いました。
「太田君と呼んで」
「お願いします」
「では太田君」
「はい」
「若し何かあれば」
「その時はですか」
「僕の研究室に来てくれるかな」
笑顔でお誘いをかけるのでした。
「そうしてくれるかな」
「そうしていいのですか」
「太田君がそうしたいのなら」
その時はというのです。
「是非」
「それでは」
「うん、何時でも来ていいからね」
「先生が研究室におられる時は」
「何時でもね」
先生も笑顔で答えます。
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