| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

とある世界の物質破壊≪ディストラクション≫

作者:叶愛
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

昔の兄と今の兄

 
前書き
湊『これでいったん過去編は終了だ!』
美琴『長かったような…短かったような……。』
湊『微妙だよね、今回は美琴視点?』
美琴『えぇ、それじゃあ本編へ!』
湊『これからもよろしくな!』 

 
兄が消えてから二年がたった。

私は中1になり常盤台学園に通い、level5第3位『超電磁砲』常盤台学園のエースと呼ばれていた。

それでも、兄には会えていなかった。

兄である御坂湊はlevel5第8位『物質破壊』。

「あの馬鹿兄は何処に行ったのかしら……。」

今、私はある公園に来ていた。

常盤台学園の入学式後に寄った特殊な自販機がある公園。

「ほんと、科学先端の学園都市なんて呼ばれてるけど」

私は軽くジャンプしながら、左足を軸にして自販機に右足に電流を流して横蹴りを入れた。

「ちぇいさー!」

ガシャン!と音が鳴ると飲み物が出てきた。

「お金を呑み込む自販機なんてあるし、全然よね。」

出てきたのはヤシの実サイダー。

──今回は当たりね、あ。

遠くから警備ロボの声がした。

私は磁力を使って近くの電灯に登り、上に立った。

その時だった。

警備ロボが通り過ぎた後、先程まで自分がいた自販機の前に一人の少年が歩いてきた。

──あの制服、長点上機学園?

『長点上機学園』

常盤台中学に並ぶ5本の指に入ると言われている名門校の一つ。

遠目からだが、見た感じ自分より年上の少年は自販機にお金を入れ始めた。

「あ……、あの人あの自販機はお金呑み込むことを知らないのかしら?」

私は磁力で地面に降り、その少年に近づく。

案の定、お金は飲み込まれ少年は驚いていた。

だが………。

「ん。」

ガシャン

「え……蹴らないで出てきた!?」

少年の手が自販機に触れた瞬間、1本の飲み物が出てきた。

「え?」

少年は私の声に驚いたのか後ろに振り返った。

その瞬間、私は見覚えがあった。

茶髪に優しそうな顔で細身だが筋肉がしっかりと付いていそうな少年。

──ま、まさか……。

「もしかして、お兄ちゃん……?」

お兄ちゃんと呼ばれた少年は驚きの表情を隠せず、眉間にシワを寄せながら不安そうに聞いてきた。

「……美琴?」

そう、それが2年ぶりの兄である湊との再会だった。






「久しぶりね、お兄ちゃん。」

「うん、久しぶり。」

近くのベンチに座って、一言だけ話した。

──どうしよう……いざ会うと何を話せばいいか分からない……。

私は戸惑った。

いなくなった理由を聞いても良いのか………。

「美琴。」

「ん?」

沈黙を破ったのはお兄ちゃんだった。

「今、何歳?」

「14よ。」

「そっか、大きくなったね。」

お兄ちゃんは微笑みながら私に言った。

「その制服だと常盤台中学校か……。」

「うん、お兄ちゃんは長点上機学園よね?」

「あぁ。」

再び沈黙が訪れた。

私は先ほどの飲み物を飲む。

「あ、そうだ。」とお兄ちゃんが言うと、ポケットをガサガサと漁り始めた。

──どうしたんだろ……?

そんな事を考えていると、私の前にある物を渡してきた。

「これ、母さんに渡しといてくれる?」

「なによ、これ?」

「母さんの物。」

「自分で渡したらいいじゃない。」

お兄ちゃんは顔を伏せて私の手にそれを置く。

「俺は会えないから、代わりに頼む。」

「何よそれ、意味わか……」

お兄ちゃんはいきなり立ち上がり、座っている私に振り返った。

「それとlevel5第3位『超電磁砲』になったみたいだね、おめでとう。」

「ありがと……。」

「それじゃあ、俺はもう行くよ。」

お兄ちゃんは缶をゴミ箱に捨ててから歩き始めた。

──あ……やっと会えたのにまた……。

私は立ち上がり、お兄ちゃんの制服の袖を引っ張って止めた。

「待って……。」

「どうした?」

私は深呼吸してからゆっくりと聞いた。

「どうして、私から私達から無言で消えたの?」

2年間ずっと聞きたかった事。

それを思い切って聞いてみた。

だが、答えは予想外な事だった。

「……お前には関係無いだろ。」

「え……?」

──今、お前って言われた……?しかも、関係無いですって……?

「あ……ごめん。」

お兄ちゃんは、ハッとしたのかすぐに謝ってきた。

「………そう。」

「美琴……? 」

私は袖から手を離して、ポツポツと話した。

「……もう、私の知ってるお兄ちゃんじゃないのね、良いわ……私はアンタに勝つまで"お兄ちゃん"とは呼ばない、"湊"って呼ぶ。」

「……!?」

「変わっちゃったんだね、お兄ちゃん。」

お兄ちゃんは顔を伏せてから何か決めたのか真っ直ぐに私を見てきた。

「分かった、じゃあ俺は───────。」

「え……?」

──今、なんて……

「それが今の俺に出来る事だ。」

そう言って笑顔で歩いていった。

私はベンチに倒れるように座った。

『分かった、じゃあ俺は"美琴を守る。"』

──変わって……無かった……?

私はギュッとスカートの裾を握った。

「でも許さないわ、アンタは人を殺したんだから……。」

この時の私は何も知らなかった。

2年前、兄が殺さなかった自分が死んでいたこと。

そして兄が離れたのは自分のためだったことも。








あの後、私は家に帰った。

何故なら湊から預かった物をママに渡すため。

「ただいま。」

「あら、美琴ちゃん!」

今日は休みだと聞いていたため、寮官に「実家に帰る」と連絡してから来たのだ。

「どうしたの?急に帰ってきて。」

「これを渡そうと思って。」

私は預かった物を差し出した。

「これ……美琴ちゃん、これ誰から……。」

「湊から。」

「会ったの!?」

ママは私の肩を掴んで話してきた。

「ママ痛いわよ……ちゃんと話すから。」

そうして、私は全てを話した。

公園で兄に会った、そして少しだけ話をしてそれを預かった。

そして、お兄ちゃんとは呼ばないと宣言したことも。

「そう……。」

「怒らないの……?」

「私が怒れる内容じゃないもの、でもね。」

ママは私に真剣な顔で言った。

「今見えてることが事実であって真実じゃないわ。疑いなさい、自分が見ている目の前の光景が本物かどうかを。」

「え……?」

「でも元気そうで良かったわ、みなくん。」

「?」

ママは湊から私が預かった物を眺めながら微笑んだ。

「ねぇ、それって中身なんなの?」

「これ?」

「そう、それ。」

私はママが持っている物を指さしながら言った。

「ふふ、見てみる?」

そう言ってママは開けた。

「……ネックレス?」

「そう、毎年この日に送ってくれるのよ。今回は美琴ちゃんに渡したみたいだけどね。」

「何で今日?」

ママがカレンダーを指さしたため私はカレンダーを見た。

「あ……今日って。」

「みなくんが出ていった日よ。」

──でも、どうして?

ママは私の考えがわかったのか、話した。

「最初の手紙に、『自分を今まで育ててくれたお礼を毎年送るね。』って書いてあったわ。」

「ふーん……。」

──まさか、本当に変わってない……?

その後ママと久しぶりに夕食を食べ、自室のベットで横になっていた。

「お兄ちゃん……湊は変わってないって事?」

私は「うーん…」と唸りながらゴロゴロしていた。

──それでも、もう後戻り出来ないわ。

「私はアンタに勝つ、そして人を殺した事を分からせるんだから……。」

私はそのまま眠りについた。

湊と次にあったのは1年後の中2の夏だった。

鉄橋の上で、不良に絡まれた私を救ったあの時。 
 

 
後書き
これでいったん過去編は終了です!
次回は、都市伝説編に入ろうかと思ってます←変更ありだから期待しないでください。
オリジナル展開も書きたいなぁ……と思ってたりしてますので(笑)

それでは、次回予告!
─────────────────────

全てを思い出した美琴。

今までの兄への当たり方が酷かったと思い、謝罪をしようと兄を探していた。

だが、やはり事件は起きた。

今までの事件の犯人が次々と意識を失っていく。

都市伝説から始まる難解な事件。

次回『科学の街で都市伝説』 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧