FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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あんたがね!!
前書き
最近変な時間に起きることが多くなり、仕事中に急激な眠気が襲ってくるようになってきた・・・
第三者side
「つまりこちらも被害は大きいが、相手にも十分なダメージを与えたということか」
「そうなりますね」
ここは国王暗殺を目論む組織の本部。そこの一室で行われている幹部たちの作戦会議も、いよいよ終幕へと近付いていた。
「ホッパー、攻めるなら今が好機かもしれないぜ」
「そうだ!!こっちはほぼ無傷。向こうは戦力の大半が削れているんだからな!!」
上手く立ち回れたこともありイケイケムードが出来上がっているメンバーもいるようだったが、ホッパーはそれをあっさりと却下する。
「残念だが、それはまだ早い」
「なぜだ!!」
何が早いのか、理解できずにいるユウキが理由を問いただす。彼はそれに対し、冷静さを失うことなく語り始めた。
「向こうと同じ・・・いや、それ以上にこちらには被害が出ている。今攻めても返り討ちに合うのが関の山だ」
「ぐっ!!」
もっともなことを言われ、何も言えなくなるユウキ。他の者たちも彼の意見に賛同するしかないらしく、誰も何も言葉を発しない。
「だが、予定よりも早く動き出そうとは考えている。奴等が万全になる前に、な」
意見をすべて却下するのではなく、いいと思ったものは確実に採用していく。それが彼の策略家としての能力を支えているのだった。
「ホッパーさん、これから私たちは何をしておけばいいの?」
「ケガ人たちの状況を把握して、現時点の戦力を割り出してほしい。それを元に、私が作戦を立てる」
そう告げると集会は終了となる。指示を受けた面々は、それぞれ別れてアジトの見回りへと向かっていった。
シリルside
「グラシアンさんの仲間って、盗賊時代の?」
「あぁ、そうだ」
今回のクエストで初めて知ったグラシアンさんの過去。それに大きく関わっているであろう人物が、まさか敵にいるとは思わなかったな。
「どんな魔法を使ってくるんだ?」
「あいつは魔導士じゃないよ。純粋に身体能力で戦うタイプだから」
ただ、ここ何年も会ってないらしく、その後のことは知らないと付け加えていた。
「あいつは動体視力がいいから、大半の攻撃は簡単に交わすことができる。だから発動に時間のかかる魔導士との相性はバッチリだな」
それが原因でミネルバさんたちはやられたのだと、彼は推測していた。俺も目には自信があるけど、それと比べるとどうなのかな?一度手合わせ願いたい。
「一番厄介なのはあいつの攻撃だな」
「どんな攻撃をするんだい?」
あの実力者であるミネルバさんさえも沈めてしまうほどの攻撃って、どんな攻撃なんだ?彼女は視界全てを攻撃範囲にできるって話だったから、そう簡単にダメージを受けることはないと思うんだけど・・・
「あいつの攻撃の鍵は・・・」
何をしようとしているのか、その場に立ち上がると外の景色を見渡させる窓の方へと進んでいく。
「これだよ」
そういって窓をコンコンと叩いて見せるグラシアンさん。しかし、それに意味がわからない俺たちは、首をかしげるだけだった。
「これって・・・どれですか?」
非常に言いにくい質問を手を上げて聞いてくれる天使。それを受け、グラシアンさんがわかるように説明してくれる。
「ガラスだよ」
「ガラスって・・・そのガラス?」
窓などに使用されているガラスが攻撃の鍵?ますます意味がわからないんだけど・・・どういうことだ?
「どこで手に入れたかは知らないけど、あいつは通常のガラスよりも遥かに透明のガラスを構築する技術を持っている。それを使えば敵にはどうやって攻撃したのかわからない、圧倒的な攻撃が完成するのさ」
目で見えなければ意味がない。ミネルバさんでも対処のしようがないというわけか。
「目に見えないガラスを気付かれないほど高速で放ってくるからやられた方は何が起きたかわからない。それがあいつの攻めだよ」
それを聞くことができていてよかった。何も知らずにいたら、また犠牲者が出ていたことは間違いないだろう。それだけの攻撃を、その女性は持っているのである。
「これで敵の主戦力は全員か?」
「たぶんね」
八人も力のある幹部候補がいるとは、なかなか大きい組織なのかもしれない。アジトも大きかったし、どれだけ部下がいるかも戦う上ではキーポイントになるな。
「この八人だけ気を付ければなんとかなりそうだな」
「あぁ。あとは王国兵に助けを借りながらで対処できるだろう」
こちらの不安とは反対に、状況はこちら有利と考えているリオンさんとカグラさん。そっか、こっちも人数では負けてないから、組織の大きさは心配するまでもなかったのか。
「だが、あの八人はかなりの奴等だ。下手に戦おうとすれば、俺たちでもやられかねないぞ?」
ローグさんの言う通り、俺たちが戦った人たちも、ミネルバさんが戦ったであろう人もかなりの強者であるはず。一夜さんたちがやられた人がたぶん一番力がある人なんだろうけど、それより力が落ちるとしても相当なレベルなのは想像に堅くない。
「数で優位性を取るべき・・・か?」
「それが一番無難ではあるが・・・」
難しそうな顔をしつつ、部屋にいる面々を見渡すリオンさん。その直後にため息をついたため、思わずミリアーナさんが怒声を上げる。
「ちょっと!!何今のため息!!」
「考えればわかるだろう?人が足りないということだ」
「あ・・・」
自分達では役不足だと言うのかと思っていたところでのその説明に、気まずそうに小さくなる猫耳の女性。今無事なのは俺、カグラさん、ミリアーナさん、グラシアンさん、スティングさん、ローグさん、リオンさん、ヒビキさん、シェリア、ソフィア、そしてウェンディの11人。あとシャルルとセシリーもいるけど、二人はケガをした皆さんのそばにいるから、こっちには来れないんじゃないかな?
「できることならシェリアとウェンディは国王のそばから離れさせたくない」
「シリルも残していた方がいいかもしれませんよ」
治癒魔法が使える俺たちは、万一王様がやられた際に治療を行い、命を救うためには側近として護衛に置くのがいいだろう。そうじゃないと今の俺みたいになってしまうかもしれないし・・・
「考えただけで悲しくなってきた・・・」
最初のグループ分けではウェンディとシェリアを残しておけばと、俺を偵察部隊に置いたのが仇になってしまった。辛うじてケガ人リストには入らなかったけど、もう同じようなことはするべきではないと言う考えなんだろうなぁ・・・
「ねぇねぇシリル」
「ん?」
そんなことを考えていると、隣にいたソフィアが声をかけてくる。大事な作戦会議中に一体なんだと思っていると、彼女は気になってきたことを問いかけてくる。
「なんでローグさんの上着着てるの?」
なぜこのタイミングでその質問をしてきたのか、甚だ疑問だが、気になるのも仕方のないことだとも言える。実は今俺は上にローグさんが普段着ている上着を羽織っている。当初はグラシアンさんから上着を借りたのだが、彼がなぜかローグさんと上着を変えようというから彼のものを羽織っている状態になっているんだけど。
「なんか、胸元がキツくて・・・」
本来の俺の衣服の胸元が苦しくて着ていられないのだ。だからサイズの大きいローグさんの衣服を借りて、羽織っている状態なのである。
「・・・」
「イタッ!!ちょっ!!ソフィアやめて!!」
質問に答えた瞬間、なぜか彼女の表情が怖いものに変化する。そして女性のようになってしまった胸をバシバシ叩いてくるので、痛くて声を上げる。
「何やってるのソフィア!!」
冷静さを失い意味不明な行動に出ているソフィアを止めようと割って入ってきてくれたウェンディ。それはいい、それは非常にありがたいんだけど・・・
ムニュッ
「あっ」
その彼女のその手が俺の胸を掴んでいるのが問題なんだ。しかも確信犯で明らかに揉んできてるし。
「あんたがね!!」
その突っ込みには激しく賛同する。ソフィアを制止しながらもガッツリと胸を揉んできており、ちょっとウェンディらしくない。
「いいんだもん!!私は彼女だから!!」
「だからって触りすぎ・・・んっ」
出そうになる声を必死に押さえつつウェンディを払い除けようとするけど、徐々にそれを掴む手に力が入ってきており、すごく痛くなってくる。
「私は彼女なのに・・・なんで・・・」
声が小さくなってきている少女の姿を見て、ギョッとする。彼女の目から涙が溢れてきており、なぜそうなっているのか理解できなかったからだ。
「なんで私より大きいの・・・」
俺の胸から手を離し、自分の胸を擦り始める天竜。それを聞いてようやく事情がわかり、慰めようとも考えたが、俺がそれを言うと嫌みになってしまいそうで、何も言うことができない。
「話を続けてもいいか?」
「あ、はい」
騒がしくなっていた俺たちの方を、会話を止めて見ていたリオンさんが怒り気味のトーンでそう言ってくる。無言でウェンディを慰めつつ、うなずいた俺とソフィアは作戦会議へと戻る。
「シェリアたちを外すと、人数はこっちも向こうも同じになる。一夜たちが復帰できればなんとかなるが、それができるかわからない今の状況では、数的優位で戦うことはできんだろう」
今の時点では8対8にしかならない。そうなれば数的には五分と五分。俺たちも戦いに加われば多少は有利になるかもしれないけど、それはあまりにもリスクが大きすぎる。
「人数が同じなら、それぞれに対した対策を考えて挑まなきゃいけないですよね?」
「それが重要な鍵になるな」
こちらも十分な強者たちが揃ってはいるが、向こうも同等の実力者が揃っていることも確か。一対一になる可能性が高いのであれば、一人一人に合った対策を講じなければならない。
「そこで俺から提案なんだが、今の段階で誰が誰の相手をするか、決めておくのはどうだろうか?」
あらかじめ誰と一対一になるか決めておければ、対策も心の準備も行いやすい。それだけでも優位に立てる可能性は大きくなるだろう。
「相手がどこから来るのかわからないのにか?」
「シリルに目を使わせればいい。それだけで敵の布陣も把握できる」
ここまでいいところがなかったから、役割をくれるのはありがたい。できれば戦闘系でリベンジしたかったけど、今回の依頼は国王暗殺の阻止。自分の感情は圧し殺しておくべきだ。
「いつ攻めてくるのかわからないのに、どうやって見張りをする気だ?」
「その点は問題ないよ」
カグラさんのもっともな疑問にヒビキさんが答えてみせる。そんな彼の方を見ると、その手には一枚の紙が握られていた。
「グラシアンくんがアジトから持ってきてくれたこの紙。これに暗号化された襲撃の日時が記されていたよ」
「抜け目ないなぁ、お前」
盗賊時代の名残なのか、普通なら見落としていてもおかしくないなんてことないメモ用紙を持ち帰ってきていたグラシアンさん。しかもそれが当たりだったらしく、先ほどの問題を解決できるかもしれない。
「いつなんだ?それは」
「まだ正確な日付は調べられていないけど、一ヶ月後といったところかな?」
すでにほとんどの暗号解読は終了しているらしい。ヒビキさんも仕事が早いな。
「日にちがわかれば対応はできる。その上で対する相手を決めておくのは有効だと思うが?」
「そうだな。それならいいだろう」
こうして作戦は無事に決まった。後は詳細を決めるだけだけど、ここからが重要で、困難なところだ。
「俺にイザベリーを任せてくれないか?」
真っ先に手を上げたのは幻影の竜。彼は自身のかつての仲間である女性を相手したいと希望してきた。しかし、それに異議を唱えるものがいる。
「お前の気持ちもわかるが、それよりもあの変身女を相手した方がいいんじゃないか?」
ローグさんの心配しているのは変身した相手を操れるルナだっけ?という女性の対処。様々な人物に変身できるグラシアンさんだったら、別の姿で彼女の前に現れて、正体がバレる前に倒す。それが考えられる一番理想な形だと思うんだけど・・・
「だけど、イザベリーのデータは全くないだろ?だったらよく知っている俺が相手をした方がいいと思うけど?」
「それはそうだが・・・」
どちらの意見も正しいだけに、否定することができない。全員がどうすればいいのか考えていると、ウェンディがそっと手を上げる。
「あの・・・そもそもなんでその人は相手を操れるんですか?」
冥府の門のセイラは言葉で相手を操るって呪法を使っていたけど、相手に変身することはなかった。彼女も言葉で操れるようだったから、変身する必要があるようには思えないんだけど・・・
「たぶん、視覚で相手の脳を混乱させているんだろうな」
「視覚で・・・ですか?」
「うん。相手の姿に変身することで、敵に“自分がいる”と一瞬でも勘違いさせることができれば、相手の自由を支配することができるんだと思うよ」
だから魔力は大きいとは思えないのに、俺でも逆らうことができなかったのか。たけど、カラクリがわかれば対応できそうな気もするけど。
「じゃあ相手を自分と思わなければいいんだね!?」
「それが簡単にできるほど、人間は優れていないよ。鑑を見ても自分と思わないくらいじゃないと、とてもじゃないけど無理だよ」
いくら警戒していても、ほんの一瞬でも、無意識にでも脳がそう思ってしまったらダメ。そんなの対策のしようがないじゃん!!やっぱりグラシアンさんに戦ってもらうしか・・・
「さっきの解説って、本当ですか?」
ローグさんの意見を採用するしかないかと思っていたところ、隣から新たに質問する声が聞こえてくる。
「うん。たぶん間違いないよ」
「そうですか」
ヒビキさんは古文書であらゆる魔法を調べているだろうし、似たようなものが存在するのだろう。
「もしそうだったら、ソフィアならなんとかできるかも」
「え?」
一瞬何を言っているのかわからなかったけど、時間が経つにつれて言葉の意味を理解していく。
「「「「「えぇーーーっ!?」」」」」
何を根拠にそんなことを言っているのか、彼女の意図がわからない。しかし、その自信に満ち溢れた表情は、何かあるとしか思えなかった。
後書き
いかがだったでしょうか?
ウェンディがシリルの胸を揉みしだくという新たなパターンを導入したかった。
次も作戦会議です。次回で対戦相手が決まるかな?
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