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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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非常事態

 
前書き
前回のお話の前書きで書いたラブライブの野球ストーリーを非公開で書いてみてる今日この頃。お前暇すぎだろって思われそうだけど、思い立ったらすぐ実行がモットーだから、後悔はしません。 

 
王国軍に召集された魔導士たちの襲撃を受け、莫大な被害を受けている暗殺グループのアジト。そこに、二人の男女が姿を現す。

「ずいぶん派手にやられたみたいだね」
「ホッパー様!!」

最上級幹部の登場とあって、受けていた治療を中断して頭を下げる兵隊たち。ホッパーはそれをやめさせると、治療に戻るように促す。

「エーメたちは?」
「すでに集まっているようです」

イザベリーの問いに軽く会釈をしながら返答する面々。それを受け、二人は奥にある一室へと足を進めていく。

「どうやらこの前の少年がやって来たようだな」
「分かるのですか?」

この前のというのはわからなかったが、まだ詳細を聞いていないのに攻めてきた人物を特定できる観察眼に感心するイザベリー。それに対しホッパーはあまり気にした様子は見受けられない。

「あの壊れ方は、彼の力でなければありえないよ。まぁ、他にも同等の魔導士がいるのなら話は別だが」

冷静な分析で根拠を語ったホッパーの言葉に納得したイザベリーは感心したようにうなずく。そんな話をしていると、彼らは目的の部屋へと到着する。

ガチャッ

扉を開くとそこにはシリルたちと戦闘した、六人のメンバーが丸テーブルを囲むように座っている。

「さて、じゃあ始めるとしようか」

全員の顔を見渡せるような席へと腰掛けるホッパー。それに続くように、イザベリーはエーメたち女性陣のそばの椅子へと腰掛けたのであった。



















シリルside

「ほら、シリルちゃん力抜いて」
「や・・・やめてよソフィア」

後ろから羽交い締めにして、囁くように耳元で語りかけてくる変態少女。それに対抗しようにも、普段よりも力が弱くなっている気がして、引き離すことができない。

「ほら、ソフィアに体を全部預けて」
「い!!いや!!」

体全体をイヤらしく、しかも優しく触ってくるので思わず声が出そうになる。すると、それを見て気を良くした彼女は服の中に手を――――

「入れさせねぇよ!?」

入れられそうになったところでグラシアンさんがソフィアの頭をひっぱたく。

「何するのグラシアンさん!!」
「むしろこっちが聞きたいんだけど!?」

実はここには今回集められたメンバーの大半が集結している。最初はほとんど人がいなかったんだけど、俺の事情を聞いた途端ソフィアが我慢できなくなり、襲い掛かってきた次第だ。

「今はふざけてる場合じゃないだろ、ソフィア」
「そうだよ!!」

グラシアンさんに続いてカグラさんとミリアーナさんから注意をされると、少女はしょんぼりと項垂れる。おかげで今回の件は落ち着いたけど、彼女たちの言う通り今はふざけていられるような状態ではない。

「一夜たちはどうだった?」

腕組みをして険しい表情を浮かべるリオンさんが王国兵に問い掛ける。すると、そのうちの一人が一枚の紙を取り出し先頭に立つ。

「一夜さんはろっ骨数本と全身に打撲、イヴさんは右足を複雑骨折、レンさんは毒に犯されており現在治療中、タクトさんは毒の他にも体中に打撲が見受けられます」
「そうか」

俺たちがメルクリアスに帰った頃には、街中が騒がしくなっており、何が起きたのかと思っていたら一夜さんたちが襲撃されて大ケガを負ったらしい。

「毒まで用意していたとは・・・用意周到なことだな」

こちらも同じく険しい顔のカグラさんが、低い声でそう述べる。ただダメージを与えるだけでなく、毒まで使用してくるとは・・・まるで遭遇するのがわかっていたかのようだな。

「戦闘はするなとあれほど言っておいたのにな・・・」

長いタメ息を吐いて顔を俯かせる氷の魔導士。それを聞いた俺は申し訳ない気持ちで、いたたまれなくなってくる。

「す・・・すみませんでした・・・」

ガックリと項垂れるように謝罪の弁を述べる。俺たちも最初は戦わないようにと思っていたのに、気が付いたら行けそうな気がしてアジトの中心部まで攻め込んでしまった。

「本当だ。お前が紛らわしくなくなったのはいいが、おかげで被害は甚大だぞ」
「紛らわしくなくなったって何!?」

ひどい言われように突っ込まずにはいられなかった。まるで今までがおかしかったような言い方だけど、そんなことはないでしょ!!

「まぁおかげでローグは大喜びだが」
「喜んでない!!」

相変わらず楽しそうにからかうグラシアンさんにローグさんが怒鳴る。そういえばあの魔法はグラシアンさんが発動していたはずなのに、なんでローグさんが最初に出てきたのかな?いや、気にすると嫌な予感しかしないから考えるのはやめておくか。

ガチャッ

そんな話をしていると、全員が集まっているこの部屋の扉が開く。その開かれた扉から現れたのはウェンディとシェリアだった。

「二人ともお疲れ様!!」
「レオンの様子はどうだ?」

ウェンディとシェリアはレオンとサクラ、ラウルの治療をしていたのだが、あいつらのケガは相当なものだったため、二人でも治せるか微妙なんだよね。

「サクラとラウルはそんなにひどいケガじゃないんだけど・・・」

俺と共に行動していたサクラたちは比較的軽いケガで済んだらしい。確かに俺たちが相対した二人はパワー系って感じじゃなかったし、大ケガとまではいかないか。

「けど?」

二人は大丈夫だということで安心したのもつかの間、事態は最悪の方向へと動いていたことを知らされる。

「レオンがね、ひどい状態なの」
「レオンが?」

ここにいる魔導士たちの・・・いや、恐らくフィオーレ中の全ての魔導士と比べても間違いなく最強と言えるであろう脅威の戦士が、俺たちが考えていたよりも重症であることを知らされた。

「全身の靭帯が損傷してて、内蔵にもかなりのダメージを受けてました」
「正直よく生きてるなってレベルなの」

聞いたところによると、彼は今回のダメージだけでなく、以前霊峰ゾニアで戦った謎の男から受けたダメージが残っていたらしく、体中至るところに損傷が見られ、二人の治癒魔法でもどうしようもないレベルらしい。

「ウソ・・・レオンが・・・」

それにはここにいる全員が驚愕する。まさか彼がこんなところでリタイアするとは・・・

「どれくらいで回復できると思う?」

重苦しい空気の中、倒れた氷の神のいとこが口を開く。その質問の回答に、全員が期待の眼差しを向ける。

「わからないです」
「そもそも回復できるかもわからないし・・・」
「そんな・・・」

下手したらこのまま一生目覚めない可能性すらあるってこと?それを聞くとますます全員の表情が曇っていく。

「そうか・・・無理か・・・」

髪をかきながら難しい顔をするリオンさん。しばらくの沈黙・・・すると、部屋の外が騒がしくなっているのが聞こえてくる。

「なんだ?こんな時に」

非常事態である今の状況で一体何をそんなに騒いでいるのか、半ば苛立ってきているカグラさんが扉を開き外の様子を見る。

「な・・・」

その直後、彼女の表情が一変した。

「ユキノ!!」

そして扉を叩き開くと騒ぎの方へと駆けていくカグラさん。それに何なんだと重たい腰を上げて様子を見に行くと、その光景に絶句した。

「ウソ・・・」

俺たちの目に映ったのは傷だらけで倒れているミネルバさんとユキノさん。そして彼女に支えられていたと思われるジェニーさんの三人が、王国兵たちから声をかけられているところだった。



















「「「「「・・・」」」」」

誰も一言も話さない、沈黙の時間。どれくらいの時間が経ったのであろうか、俺たちはあまりの出来事に口を開けずにいた。

ガチャッ

静まり返っていた部屋の扉を開き入ってきた王国兵の一人。その彼が他の兵隊たちと話していると、リオンさんがその場に立ち上がる。

「俺たちにも教えてくれてもいいんじゃないか?」

入ってきた兵隊がミネルバさんたちの容態を知っているのだと考えた彼は、詳しい状態を確認したいと伝える。それを聞かれた彼らは一瞬迷ったが、何らかの意思疏通をした後にこちらに体を向ける。

「ミネルバ様、ユキノ様は体中に打撲や骨折等の重傷。ジェニー様は右足を複雑骨折していました」

エルザさんと互角に渡り合ったという話のミネルバさんですら大ケガを負わされてしまう非常事態。次々に脱落者が出ていく状況に、頭を抱えずにはいられない。

「それと、ミネルバ様からグラシアン様に伝言が・・・」
「??」

大ケガを負って意識が薄れていたミネルバさんから、グラシアンさんに何か伝えたいことがあるらしい。なんだろう、愛の告白とか?

「『イザベリーと名乗る女にやられたが、知らないか』だ、そうです」
「イザベリー!?」

聞き覚えがある名前なのか、驚愕してその場に立ち上がるグラシアンさん。その様子に全員の視線が向けられると、彼はハッとして元通り腰掛ける。

「どうした?」
「知り合いなのか?」

仲間であるはずのローグさんとスティングさんですら知らないらしい女性の名前に問い掛けてみるが、彼は「別に・・・」と答えるだけで詳細を話そうとはしない。

「・・・これで全員揃ったのか?」
「あ、そうだね」

これ以上の追求はやめておこうとしたリオンさんが、話題を反らす。ケガでこの場にいない人も大勢いるが、ひとまず全員がメルクリアスへの帰還を完了している。

「ならこれからのことを話していこう。レオンたちには後で伝えればいい」

脱落者が一気に出てしまったがために、これからの城の守りなどを考えていかなければならない。そのためには・・・

「俺たちが戦った連中の特徴から言いますね」
「頼む」

相手の主戦力の特徴を把握しておかなければならない。まずはスティングさんたちが、俺たちを救出する時に戦闘した面々の能力を話し始める。

「一人は炎の造形魔導士。リーゼントが特徴な男だったな」
「造形魔導士か・・・」

同じ造形魔導士である青年が目付きを鋭くさせる。種類は違くとも、同じ魔法を使うとなればライバル心のようなものが湧いてくるということなのだろうか。

「魔法を無力化するのもいたな。あいつに攻撃を消されたよ」
「それは厄介な相手だね」

策略などを寝るために、古文書(アーカイプ)を開いて文字を入力しているヒビキさんがそう呟く。魔導士ばかりを集めているとあって、そんなのを相手にしなければならないのはかなり厳しい。まさかそれを見越しているんじゃないだろうな?

「あとは指一本で地面を破壊するような奴もいたな」
「指一本で!?何その馬鹿力!?」

言われてみると、拳を握るわけでもなく平手で攻撃するわけでもなく、ただ人差し指だけを突き立てているだけの男性もいた。あれは魔法・・・ってわけではなかったよな?あの人からは魔力を感じなかったし・・・

「あとは光る剣を使っている女剣士がいたな」
「女剣士ってまさか・・・」
「うん、この間の奴」

この間レオンに服を切り刻まれた可哀想な女性も一緒にいたってことは、彼女を連れていなくなったという男性も来ているということか?むしろあの女の人と同格くらいの感じで話していたから、彼女が敬語を使っていた男性がリーダーってことでいいのかな?

「他にはシリルを元に戻した奴か?」
「違います!!変えられたんです!!」

彼らは見ていないが、体のありとあらゆるバランスを崩す魔法?を使う女性。俺はあの女の人を倒して元に戻らないといけないから、彼女は意地でも倒さなければならない重要人物なんだよな。

「他には?」
「変身した相手を操ることができる女の人がいました。それでサクラたちがやられちゃいまして・・・」

ルナと呼ばれた女性は、サクラに変身したり俺に変身したりして体の自由を奪ってきた。あれのせいで恥ずかしい思いをさせられたこともあって、思い出すと無性に腹が立ってくる。

「この六人が俺たちが会ったメンバーだな」
「あとはシリルたちが倒してましたし、雑魚ばっかりって感じでした」

アジトに乗り込んだだけに待ち構えていた人数もなかなかのものだった。それを言い訳にしていいわけではないけど、もう少し相手が少なければこんなことにはならなかったと思う。

「一夜さんたちを倒したのは、ホッパーと名乗る男らしいけど、詳しくはよくわからなくて」
「「ホッパー??」」

ヒビキさんが一夜さんたちから聞いたわずかながらの情報を話してくれると、シェリアとウェンディが反応する。俺はその名前に聞き覚えがないため、何も反応することができない。

「知っているのか?」
「はい!!」
「前のクエストで、同じ名前の奴に会ったの」

それを聞くと、さっきの女剣士・・・エーメだっけ?彼女がいることと繋がってくる。彼女を連れていった本人がいるとなれば、彼らが以前退治した山賊たちの仲間であることはほぼ間違いないだろう。

「そいつがどんな攻撃をしてくるか、わかるか?」
「いえ・・・」
「レオンの攻撃を受け止めたことくらいしか・・・」

ケガをしていたとはいえ、あいつの攻撃を片手で受け止めたって話だったし、相当な実力者であることはいうまでもないだろう。これで敵の主戦力は七人・・・いや、違うな。

「あとはお嬢たちを襲った奴か」

最後に、力を振り絞って城へと帰ってきた三人を襲った犯人。しかし、彼女たちは意識が朦朧としているらしく、詳しい話しはまた後日・・・になりそうかな?

「お嬢を殺った奴なら、わかるかもしれない」

まだ殺すなよ、という突っ込みは当たり前すぎるのであえてやらないが、グラシアンさんのその言葉には注目が集まる。さっき王国兵から受けた伝言と何か繋がってくるのだろうか?

「どういうことだ?」
「もしお嬢の言う通り、イザベリーにやられたんなら、あいつのことはよく知っている」

ミネルバさんが何とか伝えた伝言から浮き出てきた名前。それをグラシアンさんが知っている?話が全然見えてこないんだけど。

「イザベリーは、昔の俺の仲間だ」

その口から語られたとんでもない事実。かつて共に同じ時間を過ごした仲間が、争うことになっていようとは・・・






 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
グラシアンの盗賊時代の仲間であるイザベリー。彼がキーマンとなる所以は、まさに彼女にあるのです。
次は作戦タイムをより深く掘り下げていこうと考えています。どうぞよろしく。 
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