風魔の小次郎 風魔血風録
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55部分:第六話 霧の中でその二
第六話 霧の中でその二
「雷電も相変わらず熱いことだ」
「あの熱さが墓穴にならなければいいがな」
隣には黒獅子がいる。彼もまた笑って二人を見下ろしている。
「闇鬼が止めているがどうかな」
「さてな。まあここで痛い目を見るのもあいつの為だ」
妖水もいる。彼はヨーヨーを弄んでいる。
「死ぬかどうかまではわからないがな」
三人は暗がりの中で二人を見下ろして笑っている。その中で陽炎はまた言うのだった。
「それにしてもだ」
「どうした、陽炎」
「相手が誰が出て来るかだ」
「相手か」
「そうだ。項羽と林彪は暫く動けなくなった」
まずはこの前提があった。陽炎は考える目で言葉を続ける。
「麗羅も出たな」
「うむ」
「小次郎はまだ怪我で出て来ないだろう。だとすれば」
「竜魔か劉鵬か」
黒獅子が言った。
「風魔最強の男竜魔をここで出すか?」
「どうかな。雷電と闇鬼も確かに手強いが」
陽炎は竜魔出陣には少し懐疑的だった。
「まだ出しはしまい」
「だとすれば劉鵬か」
「いや、おそらく
陽炎はここで予想してきた。
「霧風と兜丸だな」
「その二人か」
「ほお、そいつは見物だな」
妖水は二人の名前を聞いて楽しげに笑った。
「雷と雷、それと頭脳派同士の対決とはねえ」
「面白いな、確かに」
それを聞いて黒獅子も楽しげな笑みになった。
「ではどうなるか。見せてもらうか」
「そうだな。面白い闘いになりそうだ」
陽炎も笑う。三人は今は笑っていることができた。今のところは。
白凰学園では。体育館でシンクロナイズド部員達がジャージでダンスの練習をしていた。コーチが手を叩いてリズムを取っている。
「はい、ここでターン」
「ターンですね」
「そうよ、いい感じよ」
部員達の動きを見て笑みを浮かべる。練習は順調だった。
「いいねえいいねえ」
小次郎はビニールの小さなプールの中からその練習風景を見て笑みを浮かべている。
「姫様が参加しないのが残念だけれどな」
「また変なことを考えているのか?」
横にいる蘭子が彼に問う。
「だとしたら今丁度竹刀がある。これで」
「何だよ、姫様の水着姿位」
「馬鹿者っ!」
「おろっ!」
本当に竹刀が飛んで来た。それが小次郎の腹を打った。
「おい、痛えじゃねえか何するんだよ!」
「痛いも何も変なことを言うからだ」
蘭子はその竹刀を左手で肩に担いで言う。
「姫様への邪な想いは何であろうと許さん」
「ちぇっ、厳しいな」
「しかし。御前今どうしてビニールのテープの中にいるのだ?」
蘭子は今度は小次郎にそれを問うた。
「何って練習だよ」
「練習!?」
「だから。シンクロのよ。俺は泳ぎが達者なんだぜ」
「御前は出さないから安心しろ」
「おい、まだ出番なしかよ」
「御前が潜入工作が駄目なのはサッカーの時でよくわかった」
その時のことを思い出して悔やむことしきりなのだった。
「だからだ。裏方でやれ」
「一応出番はあるのかよ」
「今度の誠士館の相手は誰だ?」
「確か雷電と闇鬼だ」
「手強いな。全員出てくれるか」
「今動ける奴全員かよ」
「そうだ」
小次郎の問いにはっきりと答える。正面を見ながら。
「それで頼めるか」
「ああ、竜魔の兄ちゃんに話しておくぜ」
「頼む。それで林彪は大丈夫なんだな」
「暫く動けねえが一応はな」
こう蘭子に述べた。
「無事さ。項羽もな」
「それは何よりだ」
「麗羅も戻ったぜ」
このことも話す。
「一応屋敷には里で傷をなおしている項羽以外は全員いるさ」
「では林彪には家の者を誰かつけておこう」
「悪いな」
「早く完治すればいいがな」
「ああ、それはすぐだからよ」
「すぐか」
「俺達忍は傷の回復が滅茶苦茶早いんだよ」
小次郎は笑って蘭子にそのことを話す。
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