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風魔の小次郎 風魔血風録

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56部分:第六話 霧の中でその三


第六話 霧の中でその三

「俺だってな。川でどれだけ怪我しても一日か三日で治っていたしな」
「川か。御前水泳は得意なのか」
「得意も何も俺は風魔の河童って言われていたんだぜ」
「猿じゃなくてさ」
「まあそっちも・・・・・・って何言わせるんだよ」
 また蘭子に突っ込み返す。
「一回俺を半漁人と間違えてテレビ局まで来た位なんだぜ」
「何とか探検隊か?」
「よくわかったな、それだよ」
「日本に半漁人がいてたまるか」
 思わずこう呟く蘭子だった。しかしこれで小次郎との話を打ち切り姫子のところに行く。すうrと彼女はそこで暗い顔をしていた。蘭子はすぐにそんな顔になっている彼女に問うた。
「どうされましたか?」
「いえ、最近小次郎さんおかしくはないですか?」
「おかしいのは前からですが」
 本当に言葉に容赦がない。
「それが何か」
「最近何か無理して明るく振舞っておられるような」
「でしょうか」
「ええ。痩せたみたいですし」
 姫子もそれに気付いていたのだ。それで小次郎を心配しているのだ。
「何もなければいいのですが。隠し事とか」
「それはないですが言えないようなことはあります」
「言えないこと?」
「何しろ頭があれですので」
 またしても言う。
「ですから」
「はあ、そうなのですか」
 また姫子も姫子で天然だった。あまりわからずに言葉を返す。だが小次郎が心配なので屋敷に行くことにしたのだった。
 屋敷に行くと庭先に霧風が座っていた。そこに座って遠くを見ていた。
「霧風さん、戻っておられたんですか」
「はい」
 霧風は静かに姫子に顔を向けて答えた。
「今日戻りました」
「そうですか。御苦労様です」
「有り難うございます。林彪は寝ているのですね」
「怪我をされたとかで」
「そうですね。暫くは動けないそうで」
「はい。項羽さんも」
 姫子は風魔の事情はよく知らない。蘭子も竜魔もあえて隠しているのだ。彼女に忍の世界を知ってもらいたくはないという配慮だ。
「今は里におられるのですね」
「また戻って来ます」
 霧風はこう姫子に答えた。
「ですから御安心を」
「はい。わかりました」
「それで小次郎ですが」
 霧風の方から先に彼の名前を出した。
「痩せましたね」
「私もそれが気になって来たんですけれど」
 しかし今屋敷に小次郎はいない。そのこと少し残念にも思っていたのだ。
「どちらに行かれたんでしょうか」
「あいつも色々と考えているんでしょう、あいつなりに」
「小次郎さんなりにですか」
「そうです。確かに馬鹿ですが」
 これは霧風も言う。
「馬鹿なリに。考えているのでしょう」
「そうなのですか」
「それであいつは食べていますか?」
 霧風は今度はそれを尋ねた。
「普段はそれこそ朝から丼で三杯は軽くですが」
「あまり食べておられないようです」
 姫子は少し俯いて霧風に対して述べた。
 
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