世界をめぐる、銀白の翼
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第三章 X《クロス》
会話
「どうしても後手後手になる・・・・ッたっ!」
「対象が多すぎるんだ。こればっかりは・・・ェあ!!」
「ったく、そろそろ一年なんだろ?こんなんじゃまずいよなぁ・・・」
「EARTH」本部ビル、道場内。
そこに、北郷一刀、剣崎一真、左翔太郎の三人が今回の事件の内容を話し合っていた。
ちなみに一真と一刀が木刀を手に打ち合っており、翔太郎がそれを眺めている形だ。
「対象になる少女が多すぎるし・・・フッ!そもそもなんでハルヒさんたちが対象外なのか分からない」
「力としては絶大なんだっけ?彼女。なんでだろうな」
「さあ・・なっと!!!」
「うわっ!!」
と、そこで一刀の木刀が受け流されて、体制を崩し倒れてしまったところに、一真の木刀が向けられた。
「勝負あり、だな」
「はーーー・・・なかなか勝てないなぁ・・・」
「実戦では俺より強いんだから、拗ねない拗ねない」
「それで、実際どうなんだ?」
実際どうなのか、というのは保護した少女たちの事だ。
こちらに保護したのは古手梨花、羽入、インデックス、アルルゥ、ヴィヴィオだけだ。
他の者たちには警護をつけておいただけだし、そもそも本人たちが大丈夫だと言ってしまったので、これ以上引き留めようもなかったのだ。
「標的になる少女とならない少女の基準がまだ分からないからなぁ・・・・」
「ここまで来ると力ある、とは限らなくなってくるかも・・・あくまでも石板にあったのは「十の少女」だからなぁ・・・・」
「ってか、そもそもその「封印」ってのは何で崩れたんだ?」
「それは・・・たぶん「あいつ」が俺たちの世界で・・・」
「ああ・・・・そっか」
これからどうしようかという話を、困りながらもした彼らだが、ここでその根本の理由に行きついた。
そう、この根本の理由。
邪神の封印がわずかながらにも溶けてしまったが故に、アンデットは復活した。
その原因は、間違いなく「彼」が統率者からの意思を伝えるモノリスを破壊したからだ。
「じゃあ・・・後始末、しっかりしてやらないとな」
「だなぁ。次会ったら二回は殴ってやる」
「はは・・・「あいつ」も大変だ」
今は無き「彼」を思いながら、笑う三人。
いかなる状況でも、彼らは落ち込むことなどしない。
いつでも楽しむことを忘れるな。
それもまた、「彼」の言葉だった。
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「イヌー!」
「待てー!」
「ワンワン!!」
「ちょ、なんでおじさんのところにうぷわぁ!!?」
その「EARTH」の敷地内の芝生で、アルルゥとヴィヴィオがが柴犬を追いかけ、そして柴犬は放課後で遊びに来た魅音を追いかけていた。
そこから少し離れた所にはシートがひかれており、その上で古手梨花、羽入が寝ており、見守るようにアリスとなのはが座っていた。
ちなみにハクオロやエルルゥ達は破壊されてしまった宮殿の修理で来れない。
事のついでに海東も手伝っているが、ひと段落つくまではアルルゥはこっちに預けることにしたらしい。
インデックスは食堂で「EARTH」のエンゲル係数を順調に伸ばしている。
ちなみに、それが直接響くのは上条のポケットマネーになのだが。
「いい天気ですね」
「うん。みんな元気で何より。でも・・・」
「御坂さんやルーテシアさんが心配ですか?」
「・・・はい」
シートの上で、なのはとアリスが話している。
なんだかんだと言って、すでに二人も連れ去らわれているのだ。
しかも、うち一人は翼人の手をかいくぐって。
もしここにそんな奴が何体もせめて着たらと思うと、守りきれないかもしれない。
「ほかの事件で動いている方たちにも、一応はラウズカードを渡しておいたのでアンデットの対策はできるはずです。それに、ここには今一刀さんだけでなく観鈴さんにクラウドさんもいますので」
「そう・・・だよね。フェイトちゃんもヴィータちゃんもシグナムさんもいるし・・・」
「はやてさんは確かまた別の仕事でしたっけ?大変ですねぇ」
そう、今ここ「EARTH」本部には四人中三人の翼人が集まっている。
正直言って、アンデットが何体かかってきても勝てるという自負はある。
しかし、理樹が対一で苦戦した相手クラスのアンデットは現在確認されているだけでも五体いる。
上級アンデット。
エレクトリックエェル
コックローチ
ブロッサム
クロコダイル
ドーベルマン
計五体
ただのアンデットならまだしも、上級となると話が別だ。
しかも、まだいるかもしれないのだ。
これ以上の脅威はない。
「・・・・アリスさん」
「? なんでしょう」
「原典・・・って知ってます?」
「え?」
なのはが、唐突にアリスに聞いた。
原典
それ即ち、「彼」が関わることのない、オリジナルのストーリー。
それの存在を、知っているのかと、彼女は聞いてきた。
「・・・・知っています」
「!!」
「しかし、世界が一つになった影響で、様々な要因が混じり、重なり、原典と同じとは限らないのですよ。現にアンデットのほうはすでに私の知っている原典とは全く異なったストーリーになってます」
「つまり・・・やっぱり元の話からはずれている・・・ということなの?」
「ええ・・・でもそもそもあなたたちにそのような話が関係あるのでしょうか?」
「それは・・・」
「あなたたちはそれを知ることはありえません。いうなれば、物語の未来ですよ?それは。運命、と言ってもいいかもしれません」
「・・・・」
「そんなものを知ってどうするというのですか?確かに、私の中に仮設は生まれています。火災現場にアンデットが現れた理由も、わかっています」
「な、なんで黙ってるんですか!?」
「問題ないからですよ」
「そ、そんな・・・・」
アリスは言う。
自分はアンデットがなぜあの火災現場に現れたのかを知っている、と。
なのはは問う。
だったらなぜその理由を教えてあげないのかと
再びアリスは言う。
だからそれを知ってどうするのか、と
問題はない、と
「現れる、ということは知りませんでした。しかし、現れたということを聞くと、理由は確かなものが一つあります」
「だからなんでそれを・・・」
「信じてますから、あなたたちを」
アリスの言葉には、自信と確信があった。
そう、彼ら、彼女らならば、必ずどんな状況でも立ち上がり、救ってくれるのだろう、と。
「「彼」だって何も知りませんでした。それでもあなたたちの世界でうまくやっていました。だから、あなたたちにもできる」
「・・・・・」
「私のこの世界は、世界のみなさんは・・・・未来を知ろうが知らなかろうが、どこよりもすばらしい人々だと思ってますから」
そういって、ニコリと笑うアリス。
世界に関わり、見守ると決めた管理者。
その姿は間違いなく「女神」と呼ばれるに相応しいものだった。
「それに、原典通りならもうそろそろ情報を掴んでいるはずですしね」
「EARTH」にいまだ、迫る影はない。
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「そんな・・・ルーちゃんが!!?」
「ああ・・・クラウドさんがいたみたいなんだけど・・・」
一方、理樹が回復してから集まったティアナたちと理樹たち。
場所はあの戦艦「瞬風」のなかだ。
理樹からの話を聞いて、キャロが信じられないと声を上げた。
彼女は自分よりも実力が上の召喚魔導師だ。その彼女が連れ去らわれてしまったのは、ショックとしてはかなりのモノとなった。
「相手は上級アンデットだったらしいんだ。僕も別のを相手にしたけど・・・・恐ろしいほど強かった」
「ど・・・・・どれくらい・・・」
「僕のバリアを、破壊するくらいには」
その言葉に、ティアナたちが驚愕した。
誰一人―――あの「世界最強」ですら破壊しえなかったあのバリアを、破壊できるというほどの力を持つ敵。
しかし、だからと言って負けていいことにはならない。
「本当に・・・僕の方も危なかった・・・あと少しでヴィヴィオちゃんもだったし・・・」
「でも、それはあっちが捜査するんですよね?」
「うん、一刀のほうがね。さらにクラウドさんと観鈴さんも協力するみたいだから、まず問題ないと・・・思う」
そういって、理樹が全員に一刀から渡されたラウズカードを一枚と、予備にもう一枚渡しておく。
あのアンデットたちが現れたのが、もしもこっちで調査している彼女たちを狙ってのことならばこれは必ず必要だからだ。
「それで、手がかりをつかんだって?」
「え、ええ。それなんだけど・・・」
と、そこで理樹がこの話を打ち切り、事件の内容に話題を移した。
理樹の方では報告はしたものの、ヴィヴィオの襲撃で調査は依頼できない。
一方ティアナの方はというと・・・
「ルーテシアが言ってた・・・「ドクターのところで聞いたことのある」話だ・・って」
「そうか・・・・」
「あと、トレヴィア・グラーゼって名前も気になるな」
「マリアージュが最後に言っていたという言葉か・・・・」
大きなモニターが現れ、そこにマリアージュの映像が映し出される。
長身で、片手に剣を握り、顔の上半分を覆うバイザー。間違いない。
そして、ティアナの考えとしては、彼女らは人間ではない、というものだった。
「地下で交戦して撃破したんだけど・・・そしたらドロドロの可燃液になって崩れたのよ。直後に放水の水が来たから燃えはしなかったけど、あのままいたら間違いなく焼けてたわ」
「それが放火の原因か・・・」
「倒してもその場で崩壊して炎上・・・・なんて奴だ」
「それでいて、対象となった人物を自害させるような操作魔法の類・・・・」
「そんな奴が何体もいる?冗談きついぜ」
そう、マリアージュは言った。「自分たち」だと。
つまり、あれは人型の何か――――否、もうわかってる。兵器、だということだ。
「これから行くべきところは決まった、ね」
「ええ、話を聞く必要があるわ」
「ジェイル・・・スカリエッティ・・・」
稀代の天才科学者にして、最悪のテロリスト、ジェイル・スカリエッティ。
次なるキーワードを持っているのは、ある世界に隔離拘留されているその男だった。
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「ここにいたんですか」
「あ、長岡さん」
ところ戻って、「EARTH」敷地内芝生上
今はアリスと、今ここに来た長岡だけがシートに座り、ほかの人は柴犬と戯れていた。
「あの犬の名前、なんていうんですか?」
「まだ決めてないんで・・・」
「あぁ、だったらつけましょうよ。名前!」
「え?」
これはいい考えだ、と言わんばかりにポン、と両手を合わせるアリス。
そうしてう~ん・・・と考えたのち、これはどうでしょう?と人差し指を伸ばして言った。
「シヴァ!!」
「まんまじゃないですか。却下です」
「シバ!!」
「変わってません」
「じゃあ何がいいんですか~」
ぶーぶー言いながら長岡にも案を求めるアリスに、しょうがないですね、と考える長岡。
と、そこに静かな、夕暮れの風が流れてきて彼女の髪を軽く流した。
「風・・・ですか」
「そうですねぇ・・・そろそろ、夏ですから、ちょうどいい感じですね」
「・・・・・・凩・・・」
「え?」
「凩、なんてどうですか?」
「おお、いいですね!!いかにも柴犬っぽいですし!!」
そんな会話をワイワイとする、一人の管理者と、一人の女性。
とてもでないが、大きな因果を背負った人の会話には見えなかったそうな。
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『手続きをしておきました、ランスター執務官』
「ありがと、ルネ」
ティアナがホテルや防災課でデータ収集などを行っているルネッサに提示の報告をし、ついでに拘留所にいるスカリエッティへの面会の許可を取ってもらっていた。
相手はあの稀代の天才科学者だ。
もしかしたら、自分の知らない情報も持っているかもしれない。
「じゃあ明日の十時にそっちに行くと伝えてもらえる?」
『了解しました』
「それで・・・こっちに来るのは私と理樹、ギンガさんなんだけど、あなたも来るかしら?」
そう言って、ティアナがルネッサを一緒に来るかどうかと誘う。
会う人物は多い方がいい。
適度な数の意見は、様々なものの見方を得ることでいくつもの情報を得られるからだ。
まあ多すぎると、逆にみんなが一つの意見に流れてしまって悪影響なのだが。
『いえ・・私は遠慮しておきます』
「そう?」
『私は・・・私のしなければならないことがあるので』
「・・・そう。じゃあ、今晩だけでもこっちに来ない?」
『え?』
ティアナが、今度は今現在でルネッサを誘った。
彼女がいるのはスバルの家だ。
今日もメンバーが集まって馬鹿騒ぎをしている。
と、言うのは建前で、実は目の前で救助者が死なされたスバルを落ち込ませないようにしているだけなのだが。
「いまね?スバルがお気に入りの番組見てんのよ。昔やってたやつなんだけど、みんなで・・・」
『いえ、私は・・・』
「・・・ふぅ・・・・ルネ、あまり重く受け止めないで」
『?』
「あなたは何か重いものを背負っている。確か、出身は内戦地区だったわよね?」
『・・・はい・・・・』
「それで、保護されてそのまま検視官」
『生きている人間は・・・・怖いので』
「・・・そうね。怖いわ」
ティアナが言う。
生きている人間は怖い。
死んでいる人間は、何もしてこないのだから。
だからこそ、過酷な状況で生き、幼いころから武器を手にしてきた彼女がそんな気持ちになるのもわかる。
でも
「だからこそ、その怖さを克服してやらなきゃ」
『克服・・・ですか・・・』
「そう。だから、来ない?それに友人は多いに越したことはないわよ」
『しかし・・・・私が行っても・・・・』
「ふぅ・・・じゃあ、あなたの上司として命じます。今すぐ来なさい」
『え・・・あ・・・その・・・・』
「この事件が終わった後にも、あなたには私の補佐をしてもらいたい。だから、ね?」
『自分のことを、もっと知りたいという・・・ことですか』
「ええ。だから来なさい!これ以上グダつくと、人さらいを寄越すわよ?」
『それってどういう・・・・(バタン!!)『『リトルバスターズ参上』』え?ちょっとうわぁ!?なんなんですかあぁぁぁぁああ・・・・――――』
「遅かったか・・・・」
モニターの向こうで今まさに誘拐のシーンを見たティアナが、あはは・・・と笑いながら、スバルたちのいる部屋に戻った。
「スバル、もう一人お客さんが来るけど・・・大丈夫?」
「え?へーきへーき!!全然大丈夫!!」
そういって、再びテレビに向かって理樹と肩を組んでギャーギャーと騒ぎ出すスバル。
「もう絶対やらせないからなぁ!!」
「そうだぁ!!次は絶対に助けてやるからなぁ!!」
「「アハハハハハハハハーーーーーー!!!!」」
「どういう吹っ切れ方よ・・・」
テレビでは、少し昔のだろう、ビデオが再生されていて、どうやらそれを見てテンションを上げて吹っ切れたようだ。
ちなみに、スバルは今回の火災で正式にティアナの事件に協力することになった。
to be continued
後書き
と、言うわけで前回の予告とはなんかずれた気がするけど、「会話」でした!!
柴犬の名前決定!!
昔からの読者である、リュウガ様の案をいただきまして「凩(こがらし)」と命名させていただきました。
蒔風
「この「凩」って漢字、確か夏目漱石が考えた国字だったっけか?」
そうそう。造語ってやつね。
蒔風
「アリスは原典知ってんだな」
知ってます。
しかし、教えても教えなくても、彼等ならば大丈夫だと信じてのことです。
蒔風
「ま、内容も変わってるし、意味無いっちゃ無いしな」
それに、それを知ったうえで物語に参入ってずるいじゃないですか。
蒔風
「それは・・・まあ・・・なぁ・・・?(こいつたった今多くの二次創作作者にケンカ売らなかったか?)」
蒔風
「次回、どんちゃーん!!」
それはないだろー・・・
しかしそうなる。
ではまた次回
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