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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第三章 X《クロス》
  宴会




「では!第二回、スバル宅で何か騒ごう大会ーーーー!!!」

『オォーーーーーーーーーーーー!!』

「「よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっし!!!」」



なぜかマイクを持った恭介の言葉に、全員が乗り気になって片手をあげて応える。
理樹とスバルに至っては、両腕を振り上げて異様なテンションを見せていた。




「恭介!!今日はゲストがいるんだよね!?」

「あぁそうさ!!入ってこい!!真人!!謙吾!!」


「筋肉が通りまーす!」

「筋肉宅急便が通りまーす!!」



ドサリ



そういって入ってきた真人と謙吾が、一人の女性を肩から降ろして床にぺたんと座らせた。

女性の名は、ルネッサ・マグネス。
ティアナの補佐官をしている少女だ。

そのルネッサはというと・・・


「!?・・・・・・・!!??」



一回びっくりして、状況を把握したうえでまた驚いていた。


「あ、ありのままを話しますよ?私はホテルで今回の事件に関してティアナさんと話していた。そして・・・誘われたと思った瞬間にはこっちにいた・・・・何を言ってるのかわからないと思いますが、私にも訳が分からないです!!」

「あーー、ルネッサ・・・さん?」

「あなたは・・・」


「はじめまして。エリオ・モンディアルです」

「キャロ・エ・ルシエです。私たち二人ともティアナさんと同じ部隊にいた・・・」


「ああ、元機動六課の・・・・それで・・・ここは?」


ポン

「災難でしたね」

「受け入れるといいですよ」



「さらわれた状況を納得されたうえで受け入れる助言!?」



「それしかないですから!(グッ)」

「考えるだけ無駄ですから!(グッ)」

「何この子たち、怖い」



そんなこんなで連れ攫われて来たルネッサは一通り自己紹介され、同じく自分もしたのちにティアナの隣に避難した。



「ラ、ランスター執務官、これは一体・・・・」

「考えちゃダメ」

「え?」

「考えたら負けよ」

「誘ったの執務官ですよね!?」



もうだめだ、おしまいだ。逃れられるはずがない。


そう覚悟したルネッサ・マグネス執務官補佐。御年17歳である。
愛銃、シルバーダガーを握りしめていま、人生とは何かを見つめ直していた。




「私はどうすればいいのかな?シルバーダガー・・・・世界ってもっと暗かったはずだよね・・・なんか明るいや・・・あははは・・・・」




ま、速い話が現実逃避だ。



「あまりの衝撃にルネさんがおかしくなった!?」

「あー、彼女小さいころ大変なところで生活してたから、こんな能天気な空間初めてなのよ」

「なるほど」


そんなこんなでルネッサを落ち着かせてから、今から何をするのかを発表し始めた。



「知らない人もいるかもしれないが、俺たちリトルバスターズは野球チームだ」

「「そうだったの!?」」


驚愕の声を上げるティアナとエリオ。
キャロも声が出てないだけで驚いているようだ。

スバルは理樹とビデオを見に戻ってしまっている。
どうにもはまってしまい抜け出せないようだ。


「ビックリされたことにビックリだが、まあ話を戻すぞ」

「はい・・・」

「しかし、ここは室内だし時間も遅い。そんな中、野球ができると思うか?」

「できませんね」

「と、思うところが素人なのだよルネッサ君!!」

「え?」


「ミッド育ちの君らは知らんだろうが、我々の国にはこういうときにもできる野球があるのだよ」


「それは・・・いったいなんですか?」


ルネッサの目が光る。
おそらくは彼女の好奇心をくすぐったのだろう。

その質問に、恭介と来ケ谷が腕を組んで並び、高らかに宣言した。



「その競技とは・・・野球拳だッッ!!!」

「「野球じゃないよ~!!/ですっ!!」」


と、そこで小毬とクドも驚いた声を出した。
何をやるかまでは聞いていなかったようだ。


「ぬ、脱ぐんですか!?」

「そういうのはやだよ~(泣)」


涙目になっていやいやと騒ぎ出す二人。
むろん、ティアナとキャロも内容を聞いて素直にウンとは言えなかった。

しかし、そんな彼女らを乗り気にさせる言葉が、ここにはあった。



「脱がせるのはただの野球拳。しかし、俺たちがやらせるのは違う」

「そう・・・負けた人間にッ!!好きな衣装を着させるのだッ!!!」



「「「「な、なんだってーーーー!?」」」」

「つまり!!理樹君にあんな服を着せることもできる!!」


「ゆいちゃんにフリフリの服も!?」

「ハッ!?しまったか!?・・・しかし・・・それでもまだ追い求めるだけの価値がッ・・・ぬぅぅ!!」


「エリオ君をもっとかわいくしても!?」

「キャロが何を言ってるのか訳が分からないよ!!」

「大丈夫!!みんなが振り向くように絶対可愛くするから!!」

「こんなのってないよ!!ひどすぎるよ!!こんなの絶対おかしいですよ!!」


「じゃあティアにあんなカッコやこんなカッコも!?」

「許可するッ!」

「勝手にしないでくださいッ!!」


「つまり全員に筋肉の肉襦袢(じゅばん)を着せて筋肉隊を作ることもできるってわけだな!!」

『『『筋肉ルート一直線ッッ!?』』』




そんなこんなで始まる野球拳。否、内容からして逆野球拳というべきか。

いっせいにやってもしょうがないので、チームに分かれることにした。



着せ替え人形チーム

理樹、エリオ、小毬、クド、鈴


お着換え推奨チーム

来ケ谷、西園、葉留佳、キャロ、スバル


勝敗調整チーム

真人、謙吾、ティアナ、ルネッサ




「「一部の女子からの明らかな悪意を感じるんですが!?」」

「というか何じゃこのチーム名はーーー!!」

「どうした鈴」

「どうしたじゃないわボケェ!!」

「(ズゴシッ)なんで俺ッ!?」



恭介が鈴をなだめようとするのだが、なぜかそこでハイキックを食らうのは真人だった。
お約束とは恐ろしい。



「むっふっふ、鈴君や理樹君、そして今夜はエリオ君と、より取り見取りのラインナップ!!」

「それを俺たち調整チームがどうにかしてお前らを負かせる、ということさ!!」


「面倒なチームに振り分けないでくださいッ!!」

「と、言うわけで頼んだぞ、リーダー」

「私が!?恭介さんは!?」


「俺はほら、審判だから」

卑怯である。



「と、言うわけでくっちゃべってないでいくぞ第一回戦!!」




クドVS来ヶ谷VS真人




「「「やきゅ~う~ぅするな~ぁら~、こういう具合にしやしゃんせ~・・・」」」


「アウト!!」

「セーフ!!!」


「よっよいの、よい!!!」



グー、チョキ、パー!!



「あ、あいこですねぇ」

「危なかった・・・ナイスパーだ、真人少年」

「へ、いいってことよ。パーを出すならオレしかいねェからな」

「ああ、君以上にパーな人間はいないさ」

「へへっ、照れること言ってくれるじゃねえか来ヶ谷の姉御よ」



「真人ーー、暗に貶されてるぞーーー」




「言うのもかったるくなったので簡単に行くぞ!!」


「「「じゃんけんポン!!」」」



チョキ!チョキ!グー!!



「わふっ!負けましたぁ~」

「なん・・・だと・・・・!?何をしている真人少年!」

「す、すまねぇ。力を籠めたら握力を最大限に発揮しちまったぜ・・・恐ろしい筋肉だ」




「では!!勝者の真人は何か着せたい衣装を!!!」

「や、やはり筋肉肉襦袢を!?」

「いや・・・全身を鍛えるサスペンダーかもしれんぞ!?」



「おいおいお前ら、俺だからってすぐにそういう決めつけは良くないんじゃないかい?」

「え?じゃあ違うんですか?」

「おうよ。確かに筋肉はたくましく強い。しかし、同時にしなやかでなくちゃいけねぇんだ。だから・・・・」


バッ!!


「フィットネス用の全身タイツだぁッ!!」

「まさかまさかだったぁぁぁぁああああ!!!!」




ぽぽぽぽ~ん♪



「わふ~・・・・ぺ、ぺったんこなのですぅ・・・・」

「がふるぁ!?」


「きょ、恭介(21)ーーーーーーーーーー!!!!」

「理樹・・・・そのカッコはひどいんじゃ・・・ないか・・・ガクッ」


「ふふ、フリフリドレスを着るよりも何倍もましだな。ほーれほれ少年たち、どうだ?」

「女性の凹凸に感動した」

「エリオ君、あとでヴォルテールと模擬戦しようね」

「えっ?」

「ん?」





「恭介(21)さんが倒れたので次の勝負行きます!!司会は変わって私ティアナがやります!!(あんな勝負になって変なの着せられてたまるか!!)」

「えぇーーーー!!!!」

「そこのスバル約一名うるさい!!!では第二回戦!!」





エリオVS西園VSルネッサ



「負けられない負けられない負けられない・・・・」

「さて・・・出陣です」

(ランスター執務官も進行役になったなら、別のゲーム提唱すればいいのに・・・・)





「「「じゃんけんポン!!!」」」



グー、グー、グー!!



「あっぶなぁ!!」

「あいこですか」

「・・・・ときにモンディアルさん」


「(ビクリ)な、なんですか西園さん」

「あなた、さっきルシエさんに怒られましたよね?このままでは巨竜と戦う羽目になるとか」

「(ガタガタガタ)そn、そんなこと・・・冗談に」

「しかしさっきからあっちで魔力練ってますが?」






「夢も希望もありゃしない!!」


「しかし、ここであなたが女装してルシエさんを満足させれば・・・・」

「ハッ!?いや、しかし・・・ぬぐぁああぁぁあああああああ!!!??」



「ご決断を。さあッ!!じゃんけん!!」

「う、うわあああああああああああああああ!!」


「「「ポン!!」」」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「え、エリオ君その恰好!!!!」

「キャ、キャロ。これは・・・・」


「ちょっと待ってて今から写真撮るから動かないで!!!」


「キャローーーーーーーーーーーー―!!!」

「動くなッ!!!」

「ハイィ!!」




「いいものを見せていただきました」

「西園美魚・・・・要注意人物です・・・・ね」







その後も宴は続いていった。



三回戦は小毬、スバル、謙吾の三人。

勝者は小毬。
スバルと謙吾は見事な執事服を着せられていた。







「く・・・せっかくのチーム分けなのにまだ目的を果たせたのはエリオ君だけではないか!!」


全身タイツの来ケ谷が、コブシを震わせて悔しがる。

確かに、いまだ目標を果たせているのはエリオのみ。
小毬もクドもなんとなしに逃れている。


このままでは・・・


「もうジャンケンとかよくね?」

「おお、恭介氏、もどったか・・・・して?」


と、そこに復活した恭介が来ケ谷の肩にポン、と手を置いて立ちあがってきた。
その顔は明らかに何かを企んでいるそれだ。

そして、その考えを恭介が来ケ谷に耳打ちしていく。
その話を聞いていくうちに、来ケ谷の顔が「ニヤリ」どころか「ニタァ」・・・・をこえ、「ニマタァ、ゲヘヘへへへ」と歪んでいった。


「俺らでこうして・・・それで・・・すれば・・・」

「なるほど。では・・・・」

「ああ!!真人、謙吾!!お前らもやるぞ!!!」


「「応よォ!!」」



「「「「固有結界展開ッッ!!!」」」」



「はぁっ!?」

「え!?」

「なんで四人で出来んのッッッ!!??」

「私もいますよ?」



「完成!虚構世界ッッ!!」




そう、それはかつて彼らが運命を覆そうと発動した虚構世界。
"輝志"という世界だからこそできた、集団で行うという、奇跡の固有結界だ。


それを五人という人数で発動させるとは・・・・



「これが欲望の力ァ!!」

「素晴らしいッッ!!」

「ハッピーバースデイ!!!」

「この欲望、解放しよう」

「ふふふ、フフフフ、腐腐腐腐腐腐・・・・・」



「こいつら人間やめやがった!?」

「ティアナさん、口調荒くなってますよ!!」





この虚構世界、または固有結界。
その名を「運命踏破・虚構学園(リトルバスターズ・ステージリフレイン)」という。


かつて彼らの世界が襲撃されたときにもこれを発動させて、大いに活躍したのだが・・・・



これを発動する際に必要なのは構築のために軸、そして多くの、または強い想いだ。

この「軸」とは恭介、真人、謙吾の三人を指す。
恭介が世界を概念から引っ張り、真人がそれを「そうあるもの」だと存在させ続け、謙吾がその中で事象を変革させていくのだ。


無論、展開するために協力した人の思いは無視できないため、彼らが好き勝手出来るわけではない。
しかしこの場合・・・・



「理樹の女装が見たいか!!」

「「みたいみたい!!」」

「理樹と遊びたいか!!」

「「筋肉筋肉ーーー!!」」


「よかろう、ではお着換えタイムだッッ!!」


「「「「レッツパーリィー!!!」」」」



言うまでもない。一致団結だ。

というか理性が完全にすっとんでますね。
こりゃ一致もするわ。下手なこと考えてないんだから。




「覚悟するがいい!!そしておねーさんを抱き締めろォォォオオオオ!!!」




そして、暴走した姐御が一人。
誰一人として逃げられないッッ!!





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『ばっかなぁぁぁああ!!!エリオ君に正統派メイドさんかフリフリミニスカメイドさんか・・・だとッッ!?ああ・・・!!!え、選べん!!』

『今だよ小毬さん!!』

『ゆいちゃんにもフリフリの服をプレゼント~~~』

『や、やめろ、ゆいちゃんと呼ぶな可愛い服を着せるななんでクドリャフカ君が一番乗り気に私の腕を掴んでくるんだあァァァアアアアアアアア!!!??』





それから数十分後、来ケ谷のそのような断末魔とともに固有結界は消え、皆で片づけに入った。

ちなみに最終的な服装としては・・・・


理樹・・・猫耳and女制服

鈴・・・素晴らしき男装

恭介・・・猫の着ぐるみ

真人・・・バカ殿

謙吾・・・ふんどし

小毬・・・スバルのバリアジャケット

クド・・・巫女服

来ケ谷・・・全身タイツ

西園・・・メガネをかけてブルマ体操服

葉留佳・・・チャイナドレス

ティアナ・・・スクミズ(旧に非ず)

スバル・・・こっちはこだわりの旧スクミズ

エリオ・・・メイド服(はだけてます)

キャロ・・・剣道着(新品なので大丈夫、臭くない)

ルネッサ・・・理樹の制服


となった。








「あの・・・・・」

「ん?あールネ、それ理樹のだから返してあげてね?」

「いえ・・・まあ、それもそうなのですが・・・・」

「? どうしたの?」


片づけをしながらルネッサがティアナに声を掛てきた。
何やら聞きたいことがあるようなのだが・・・・


「いま私たちは事件を担当しています」

「そうね」

「それは彼らも同じはずです」

「うん」

「なのになぜ・・・こうもお気楽なのですか?」

「・・・・不謹慎じゃないか、ってことね?」

「・・・はい」



そう、彼女はここに来た時から・・・いや、実際には最初から思っていたかもしれない。
なんでこんな時にこんなに能天気にはしゃいでいられるのか。

人まで死んでいるような事件ということを、軽く受け止めているのではないか、と。


しかし、ティアナはふぅ、とため息をついて「確かにそうね」と前置きをしてから、でもね、と先を続けた。



「だからってね、いつまでも辛気臭くちゃいけないのよ。こうしてなんでもないような仲間や親友とはしゃいで、遊んで・・・・それでね、こう思うのよね。やっぱりこの世界は素晴らしい・・・って」

「世界が・・・ですか?」

「いまとなっては「世界」って言葉はとても広くなってしまったけど・・・・それでも私は、この日常や仲間たちを大切にしたい。そして、それは他の誰にでもあるもの。もしもそれを守れるなら、それはとても素晴らしいことじゃない?」

「・・・・・はい」

「誰にだって素晴らしい世界がある。それを守ることは、とてもとても強いこと。だから・・・かな?こうやって、自分たちの護っているものの素晴らしさを、楽しさを、しっかりとかみしめて・・・そしてそれを壊させないために、私たちは戦うのよ」

「・・・私が生まれたのは、内戦地区のひどい土地でした・・・・」



と、そこでルネッサが自分の生れた土地のことを話す。
そのことはティアナもすでに知っている。


「生きるために殺したことも、盗んだこともありました。すぐ隣で人が死んでいきました・・・・そんなところでも、あなたは同じことが言えますか?」


彼女の生まれ故郷はひどい土地だった。
笑い声ではなく銃弾が飛び交い、煙で灰色になった空と真紅が染み込んで所々黒くなった土地。

そんな場所を知ってもなお、この世界は素晴らしいと思えるのか。
世界は決して、きれいなところばかりで構成されているわけではない。


醜く、穢く、汚らわしく



救いようのない現実というものでできた、そんな場所も存在するのだ。

それでもなお、この世界は素晴らしいと思えるのか。




「言えるわ」




それに対するティアナの回答は即答だった。
その言葉に、ルネッサの相貌が鋭くなる。

まるで、何も知らないくせに、と言わんばかりに。



「そう・・・ですか・・・・」

「と、言っても、私は何も知らないからこういえるだけかもしれないわね」

「・・・・・」

「だからこそ、あなたには知ってもらいたい」

「え?」

「この世界の、素晴らしさを。たとえそんな土地でも命は生まれるし、こうしてわたしはあなたに出会えた。それに・・・・」

「それに?」



「そこから生まれてこれたあなたは、とても強いはずよ。そんなあなたがいるなら、その世界はいくらでも変わる余地はある。一人でだめなら、私たちを頼りなさい」

「しかし・・・・・」


「水臭いぜルネっち!!!」

「そうだ。俺たちはもう友達じゃないか」

「困ったことがあったら何でも言って来い。あたしたちも頑張るから」




と、そこに話を聞いていたのか、真人に謙吾、鈴が後ろから元気よく声をかけてきた。

そして、その真ん中に立った理樹が手を差出し、言葉を紡ぐ。



「ルネッサさんの生れた土地はひどくて、そのころの生活はひどいものだったかもしれない」


その通り。
あそこでの生活は、ただ一つを除いてひどいことばかりだった。

人としての自分を忘れそうになりもする。

しかし


「だけど・・・いや、だからこそ、さ。これからの人生を、もっともっと楽しく、凄いものにしようよ!そして、助けに行くんだ。その世界を。最後には、こんなこともあったって、高らかに笑い飛ばせるくらいに!」

「人生ってのは辛いことの方が圧倒的に多い。苦しい時間の方が幸せな時間より多いことがほとんどだ。だったらよ、人生の醍醐味ってのはそれをどれだけ楽しいことで埋め尽くせるかってことじゃないか?」

「私たちがルネちゃんを幸せにして~そしてルネちゃんも私たちと楽しく遊んで~、そしてみんなでほかの人を幸せにします。それが幸せスパイラル♪」

「美少女のためとなれば、おねーさんはいくらでも協力するぞ」


「そこに救える命があるなら、私だってどこにでも!!」

「不条理な環境がどれだけひどいか知ってるから・・・僕も、助けに行きたいです」


さらに恭介が続き、小毬、来ヶ谷、スバル、エリオとルネッサに声をかけていく。
大丈夫、一人じゃないと。

必ず一人は、世界のどこかに仲間がいいる。
しかも今は、一人どころではない人数がいるのだ。



「だからさ、こんな事件は早く終わらせようよ。そして、この世界を楽しもう?」

「でしょ?大丈夫よ。みんな事件を忘れてバカやってるわけじゃないんだから」


「ティアナさん、そんな風に思ってたの?」

「あ、いや・・・・あははははは」



そんな彼らを見て、ポカーン、としてしまうルネッサ。
そして、スックと立ち上がり、片づけをしようごみ袋にごみを詰めていく。


「さ、早く片付けましょう?次のことが、できないじゃないですか」

「おう!」

「そうだな」

「次はなにしようか?」

「それは明日の夜な?明日は事件を追わないとだから」


そのあとも片付けは続いていく。
新しいごみ袋をバサリを広げるルネッサの口元にはうっすらと、確かに笑みが浮かんでいた。




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ドサリ


「これで最後ですね」

「そうだな。もう寝ないと明日がつらいしなー」



スバルのマンションの裏側
そこにあるゴミ捨て場



そこに、恭介とルネッサがごみ袋を運びに来て、たった今最後の一個を置き終わったところだった。

今ごろ部屋では残ったメンバーが布団やベッドをセッティングしているだろう。


「いやぁ、結局泊りになっちまったな!!」

「こんなに楽しいのは・・・生まれて初めてかもしれませんでした」

「そうかそぅか!!だけどな?楽しいことはまだまだあるからな~?」


ありがとうございますと言わんばかりにそう言うルネッサに、まだまだこれからだという恭介。

と、そこでルネッサが足を止め、空を何となしに見上げた。



「? どうした?」

「あ・・・先に部屋に戻ってください。ちょとっと興奮した身体を冷ましていきますので」

「ん、そうか。風邪ひかない程度にな」


ルネッサの言葉に、恭介が手を振って先に部屋に戻る。
それを確認し、ルネッサがポケットから何かを取り出した。


それは何かの端末で、ピッ、と起動させるとモニターが現れてきた。
そのモニターを見ながら、同時に現れたコンソールに指を当てて何かを解除していく。


「やはり・・・・止めるべきでしょうね・・・・私は見ているだけでした・・・止めないと・・・」

「何をしている?」

「!?」



独り言をつぶやきながらコンソールを叩いていたルネッサの背後から、そんな声がして咄嗟に彼女がシルバーダガーを構え向ける。

そこにいたのは、一体の化け物。
硬そうな、まるで樹皮のような茶色い皮に、美しいピンクの花を肩に携えた化け物だった。



「それは君の目的を果たそうとするためのものではなかったのか?」

「私はこれを使っていません。ある日送られてきて「君のしたいことを為せ」と書いてあっただけです」

「・・・・なるほど。どうりでなかなかたどり着けないわけだ・・・・」

「あなたは・・・なにものですか?」



銃口を向けられているにもかかわらず、化け物はルネッサと普通に会話している。
見た目で人(?)を判断するのは良くないが、どうにもこいつが味方に見えないルネッサは何者なのかと問いかける。


しかし、この化け物―――――ブロッサムアンデットはそれに答えることなく話を進めた。



「世界は平和にかまけ、陰惨な事柄を、事件を、痛みを知ら無さすぎる。今一度それを知らしめ、この平和がどれだけかけがえのないモノか認識させよう・・・それが貴様の「親」の意志ではなかったのかな?」

「・・・たしかにそうです。もしあと一、二年でもすれば、私もそう考えていたでしょう」

「では・・・なぜ?」

「私は知りました。平和であろうとも・・・いや、平和であるからこそ、それを大切に守ろうとする人たちがいるということを。世界はまだそこまで終わってはいません」


「・・・・・まあ・・・・最初からまったく制御していなかったからな。いつか使うと思っていたのだが・・・・捨てるというならばそれを寄越せ」

「断ります。これは破棄します。マリアージュの全稼働を停止させたのちに!!」

「ふぅ・・・そのようなことをしても、冥王は止まらぬというのに」

「え?」



「渡さないというならば、死体となった貴様からはぎとらせてもらおう!!」




ドォン!!!!




直後、ブロッサムアンデットが手を向け、そこに桜の花びらが押し固まった拳ほどの弾丸が四つ生まれ、ルネッサに向かって突っ込んでいった。


そのうち一つは撃ち落としたものの、残りの三つはどうしてもはじけず、脇に転がり避けようとしたルネッサ。
しかし、それはククッ、とそちらの方へと微妙に曲がり、彼女を爆炎に包みこんだ。



「人を壊し、端末を壊さずに・・・この程度の威力なら大丈夫かね?」


そういって炎の方へと歩いていくブロッサムアンデット。
だが、そううまくいくわけがない。



バフォァ!!!



炎を腕でかき消し、その場を晴らして見たブロッサムアンデット。
しかし、そこには端末どころかルネッサの死体すらなかった。


「はぁ・・・はぁ・・・」

「あっぶなかったな~~~。大丈夫か?ルネッサ」

「きょ、恭介さん・・・」


「恭介!!ルネッサさんをお願い!!」

「こいつ・・・こっちまで来たの!?」






ルネッサを腕の中に抱えてその場にしゃがみ込む恭介。
そして、その二人をかばうようにしてティアナと理樹が駆けつけてきていた。




「ぬゥ・・・・・」

「話せる・・・ってことは、上級アンデット・・・」

「気を付けて・・・・こいつら、油断できないから」




「・・・・・ち、分が悪いな。ここは引こう」


ザァッ


「ま、待て!!」

「それはなくとも構わん!!どうせマリアージュは止まらないのだからな!!」



そうして、桜の花びらと共にブロッサムアンデットが消え、その場には彼ら四人だけが残された。



「いったい・・・どういうことなんだ?」

「あ・・・あの・・・もう大丈夫なので・・放してくださいませんか?」

「ん?おう、わりぃな」

「いえ・・・・」



そういって、恭介がルネッサを放し、地面に立たせる。



「何があったの?それは何?」


「・・・・すべて、話します。しかし、今知ったこともありますので・・・」

「構わないわ。教えてちょうだい」



そうして、部屋に戻ってルネッサの話が始まる。
内容は、この事件の始まりに関わるものだった。




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ふむ・・・では諸君、出向こうか。
あっちの方は桜の大将に任せたから、俺らはこっちだ。

こんだけ数がいるから大丈夫だって。
ぜってー行けるに決まってるではありませんか。



じゃあ、いこうかね。
狙いはあの屋敷にいる、一人の少女だ。



へ?誰だって?
下級は物覚えが悪いなぁ・・・・



あのお城にいる一人の少女は、綺麗な奇麗な聖杯の器(ホムンクルス)だよ。






to be continued

 
 

 
後書き


と、言うわけでどんちゃん騒ぎからのシリアスへドーン!!

前後のテンションがおかしい第二弾でした。



今回のネタ考えるのに結構かかってしまった・・・
最終的にはアンソロのネタをパク、ゲフンゲフン・・・参考にしてしまったし。


ブロッサムアンデットが言っていた「分が悪い」とは決して勝てないわけではなく、端末を破壊せずに奪い取るのが難しい、ということでした。



ここからマリアージュ事件は終わりへと一直線!!



あ、最期のは全部一人のセリフです。
口調が一定しないあたり、あのアンデットですね。




次回、ルネの独白と、新たなる候補


ではまた次回

 
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