世界をめぐる、銀白の翼
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第二章 Lost Heros
終末への戦い~立ち上がる者~
後に――――――
「管理者大戦」と呼ばれた戦い。
実質、その決着をつけたのは一人の翼人。
その者の、最期の戦いを――――――
ここに記す。
薄緑の翼・直枝理樹
蒼青の翼・北郷一刀 連名
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『さぁて・・・まず一人、確実に消さねばならない奴を消しておこうか』
『”no Name”・・・・貴様がいては、多大な障害だからな・・・・』
だから、最初に彼女が狙われた。
理由は簡単だ。
『あっちもやっておこうか?』
『それが一番だな。我らでやろうか』
ドドドンッ!!!!
”フォルス”の拳と”ライクル”の砲撃がアリスに放たれ
”LOND”の波動と"輝志"の掌底波が「EARTH」ビルにブチ込まれた。
「クッ・・・アぁッ!!!」
それをバリアで防ぐアリスだが、すでに疲弊しているために弾かれ、地面に倒れ込んでしまう。
うつ伏せに倒れ、「EARTH」ビルを見るアリス。
攻撃を叩き込まれた箇所
そこは・・・・
ガラリと崩れ、穴の空いたビル。
せっかく直したのに、また壊された。
その穴を見て、痛快そうに笑う"フォルス"に"ライクル"
しかし―――――――――
カァッ・・・・ボウッッッ!!!!
「!!!?」
『む?』
『なに?』
その土煙が内側から光り、そこから砲撃が撃ち出されてきた。
それを回避する"フォルス"と"ライクル"
その砲撃を見て、アリスに迫った"LOND"と"輝志"も目を向けた。
そこで煙がだんだんと晴れ、その中心に、一人の男が立っていた。
その男は、こなたとかがみに肩を支えられ、息を荒く吐きながら、腕を伸ばして睨みつけていた。
左腕は無い。
そこにプラスチックのカバーのようなものが掛けられていた。
見るからに元気がなく、覇気もなく、しかし、ある感情のみが彼を目覚めさせ、立ち上がらせた。
「最初に・・・・自分の世界を奪われて・・・・・」
そこから一歩、男が踏みだす。
「世界を取り戻しても・・・・次に仲間を危険にさらされ・・・・奪われかけ・・・・」
ビルの穴から二人と一緒に飛び降りて、地面にふわりと着地した。
「そして・・・また、奪うのか」
こなたとかがみを脇に避難させ、蒔風が「風」を抜きながら上空の四人を睨みつけた。
「もぅ・・・・させん・・・・」
その立ち姿は力強く――――――
「何一つとして奪わせない。失うのはもう・・・嫌なんだ・・・・!!!!」
そして、その自らの力で砕けてしまうのではないかというほどに、儚げだった。
『・・・は・・・・誰かと思えば!!瀕死の英雄君じゃないか!』
『貴様は先の戦いで片腕を失っている。安定させてくれたことは感謝するが・・・今は邪魔だ』
蒔風を見て、一瞬はたじろいだものの、管理者たちが蒔風を指さして笑った。
だが、そんな言葉など無視して蒔風が剣を振りかぶる。
「風」を右腕に握り、左側にまで振りかぶって―――剣の峰が後首に当たるまで振りかぶった。
そんなところで何をやっているのだ。
管理者たちが嗤う。
指を指す。
そして、"フォルス"の指の先がなくなった。
『は?』
『な!?』
そして直後、"フォルス"の視界が上下でわかれ、左右にずれた。
『な・・・ガアアアああああああ!!??』
「腕がなくなった・・・・ね」
目から上を失った"フォルス"の肩に、蒔風が立っていた。
ボシュゥ・・・・!!!!
そしてその"フォルス"の体が、粒子に散って消えた。
粒子が宙に少し留まり、それが残った四人の管理者へと流れていく。
『バカな・・・・バカな!!!その力は・・・・・そもそもお前!!なぜ抑制しな・・・』
ザシッ!!!
『ォご・・・・ブハッ!!!!』
そして、粒子が流れるよりも前に、次に"輝志"が消された。
股の下から、脳天にまで縦割り一閃。
しかし、蒔風の姿はすでに彼の頭上におり直後、逃げ出した"ライクル"を銀白の翼で追って行っていた。
『は、話が違う・・・この男はお前なら押さえつけられると・・・・う・・・うわぁぁああああああああああああああああ!!!』
ドンッ!!ザグッッ、バァアアアア・・・・・
と、そうして"ライクル"も粒子と消えて、残った管理者へと流れていく。
「腕がなくなった分・・・速くなったと・・・・」
ブォッ!!
「思わない・・・かい!?」
ガァン!!!!
『・・・・・思惑通り』
「なに?」
が、そこでこの快進撃は止まる。
蒔風が次の標的にと、"LOND"に斬りかかったが、腕でそれを防がれ、刃は全く通らなかった。
『バカな奴らだ・・・デカけりゃ勝てると言ったらほんとにずっとでかく居やがる』
ブシュぅゥゥゥウウウううう・・・・・
「こいつ相手にデカイだけじゃいい的だ。全員そろってバカばっか・・・罪を知らなきゃダマシも知らない、愚か者どもめ」
「?・・・・!!!」
そうして、"LOND"の身体が縮み、蒔風と同じ大きさまでになる。
「だが考えたな。倒された管理者の力がほかの管理者に流れる前に倒せば・・・確かに、翼人にとってはたいしたことはない。まあだが、遅かったねェ」
「・・・くそ」
「すでに力は流れた。三人の力のうちの半分は我が手中。半分は"no Name"に流れたが・・・あの身体では戦えまい。ま、そうなるようにあらかじめ潰したんだがな」
「お前・・・なんのつもりなんだ・・・・一体何なんだ・・・・」
「管理者"LOND"、それ以上ではない・・・・今は、な」
「なに!?」
ドゴォ!!!!
"LOND"の拳が蒔風の腹部にめり込み、身体がくの字になって蒔風が吹き飛んだ。
バランスの取れない蒔風はうまく着地することもできず、両足を地面につけてもまた倒れて勢いが殺せずに吹き飛ぶ。
「お・・・ぐ・・・」
「さて・・・吸収終了。後は"no Name"を倒しその力をすべて取り込めば、俺は五つの構成要素を持つ絶対なる管理者になれる。そうすれば・・・」
ほしいモノを手に入れた、と言わんばかりに自分の目の前で両拳を握りしめる"LOND"
抉れた地面に倒れ込み、ぐったりとした蒔風にアリスがヨロヨロと駆け寄る。
「大丈夫ですか!!どうしてまたあなたは・・・・」
「出てくるつもりなんてなかった・・・・んだがな・・・聞こえたんだ。あいつらの声が」
「え?」
「涙ながらに、こなたたちが・・・な。立ち上がってって・・・言いたくもないような言葉を、涙ながらに叫んで言ったんだ」
そう、蒔風が目覚めたのは、なにより彼を求めるその声だった。
100%"no Name"であった世界。
そこにいた彼女らは、どの管理者からの干渉も受けずに動くことができた。
しかし、彼女らには何もできない。
戦う事など、できないのだ。
だから、彼に頼るしかなかった。
自分たちと同じように"no Name"出身で、それでいて戦える彼に。
彼女たちも、そうはしたくなかった。
こんなにも疲弊し、いまだに眠り続けていた彼を、また戦いに駆り出すことなどできない。
最初こそ彼の元まで走った彼女らは、彼を目の前にしてなにも声が出なくなった。
この方法を思いつきはした。
しかし、実際に彼を目の前にして、そんなこと言えるはずもなかったのだ。
だが、それでも蒔風は「言った」という。
言葉にできなかったそれを、聞いたといのだ。
しかしそれも当然だ。
彼は「銀白の翼人」
たとえ眠っていても感じとり、口に出さなくても分かったからだ。
それほどに大きな「願い」だったからだ。
た・す・け・て
たったその四文字に込められた、シンプルな大きな願い。
それを見逃せるはずはあろうか。
言葉にできなかったその「願い」は、出さなかったからこそ押し込まれ、そして強大な力として彼を呼び醒ましたのだった。
だが
「しょうもねーな・・・こんな体じゃあ・・・勝てもしない・・・」
「私が・・・私が・・・!!!」
「やめとけアリス・・・四人の攻撃に逃げ惑って、あんたは戦える状態じゃない。ここは・・・」
ぐっ・・・ググッ・・・・・
「この世界の・・・主人公に・・・・任せてくれや・・・・」
彼が立ち上がる。
そう、それは騎士のようであった。
後ろに居るのは、アリスだけではない。
彼の背中に背負われているのは、この世界だった。
事実、一度は背負ったのだ。
彼は、それを守らねばならない。
心が摩耗した
身体がボロボロ
片腕がない
敵が強大
仲間はやられて動けない
関係などあるものか
守りたいものがある
敵がいる
そして、立ち上がるだけの力がある
それ以外に理由などない。
彼の理念は、ここまでも、今までも、これからも
何一つとして変わらない。
「救える者は、根こそぎ救う・・・・・」
それは、味方も、敵も、世界ですらも
それは、絶望、地獄、虚構から
たとえ応じてくれようとも、たとえ応じてくれなくとも
どんな状況であろうとも、彼はいつだって立ち上がってきた。
いくらでも立ち上がろう。
そこに、希望を持つ者がいる限り。
「さあ・・・行くぜ・・・明日の自分に・・・しっかり顔向けできるようにな・・・・・!!」
to be continued
後書き
はいきました!復活です!!
ですが、状況は厳しいです。
いくら彼でも、戦いの場に持ち込む程度でおそらく勝つことは難しいでしょう。
だが・・・それでも・・・
彼はどんなことをしてでも、勝つでしょうね
あと最初の文章でなぜあの二人なのかは、また後々に
次回、蒔風は戦う。しかし相手は強大だった。
しかしそれでも、それでもまだ・・・・・
ではまた次回
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