世界をめぐる、銀白の翼
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第二章 Lost Heros
終末への戦い~総てを賭して、立ち上がる者~
メゴッッ!!!
「ゲ・・・ハァっ!!!!」
ドォン!!!
“LOND”の蹴りに、蒔風の体が吹き飛ぶ。
だが、それでもヨロリと立ち上がって再び斬り掛かっていく蒔風。
「風林」による斬撃を、硬質化でもしているのかその腕で受け止めて、即座に反撃してくる“LOND”
無論、蒔風の攻撃だって入ってはいるし効いてもいる。
だが、あまりにも蒔風へのダメージが多く、そして相手の回復が早い。
決して再生ではない分確実にダメージは蓄積されているのだろうが、いったいどれほどしか効いていないのだろうか。
そうして、首をゴキゴキと鳴らして蒔風を弾き飛ばした“LOND”が、アリスへと歩み寄る。
が、その足が三歩も進まないうちに再び蒔風が掴みかかってその身体を投げ飛ばした。
それ自体は難なく着地する“LOND”だが、体制を整えて前を向いた瞬間に蒔風の拳が顔面に突き刺さった。
さらには腹部に膝蹴り、一回転しながらの後頭部にエルボー、足払いをして、宙に浮いたその体を蹴り飛ばす。
「オオオオオオオオッッ!!!」
その吹き飛んだ“LOND”目掛けて、蒔風が「天地」を握りしめて突進した。
腰に構え、体重がすべて乗るようにして、確実にその身体を貫こうと。
ゴッ、ガァッ!!!!
そして“LOND”の着地地点で、爆発とも思えるような土煙を上げて蒔風が到達した。
おそらくは最初にメンバーが総攻撃した時にひっくり返ってきたのだろう。そこには一台の車がひっくり返っており、蒔風の突進は“LOND”をそこに張り付けるかのように突っ込んで行っていた。
しかし
「ッッ・・・・・」
「また距離が空いた・・・やめてくれないか。そういうの」
その切っ先を、“LOND”が指先で抓むようにして止めていた。
それでも押し込もうと力が込められて剣が振るえるが、せいぜいそれで“LOND”の指が一緒に振るえるだけだ。
ドォン!!!
直後、“LOND”が背にしている車が爆発して二人が炎に包まれた。
轟音と共にあたりが炎に包まれ、二人の姿が消える。
だが、すぐにその姿は現れてきた。
炎の中から、二人の影。
一人が一人の頭を掴み、ぶらぶらと持ち上げながら炎の中から出てたのだ。
そうして出てきた“LOND”が、力なくそこにある蒔風の体を放り投げて一瞥した。
「よくもそこまで食い下がった。さすがだな。「奴」とあれだけ戦ったことだけはある・・・・フンッッ!!!!」
「ゲッブッッ・・・オゴッ・・・・・ッハ・・・ゴ、ふ・・・・・・・」
“LOND”の拳が地面に倒れる蒔風の鳩尾にめり込み、彼を中心としたクレーターを作り出した。
蒔風の肺から空気が押し出され、口からは空気と一緒に音が漏れてきた。
それはただ単に喉を通って来た際の呼吸音なのか、それとも痛みからくる呻きなのかはわからない。
一撃で沈めた。
攻撃――否、全ての力はすでに、蒔風を越えている。
蒔風は確かに疲弊してはいるが、体力自体は万全なのだ。
なにせ、さっきまでようは寝ていたのだから。
それを潰し、一撃で止めた。
今、管理者“LOND”以上の力を持つ者はいない。
唯一そうであろうアリスも、体がぼろぼろで戦うことなどできない。
そして、瓦礫に寄りかかり崩れる蒔風の足元に、“LOND”が立って言葉をつづけた。
「だがまあそれまでだろうよ。そこで見ていろ。やっと成就する・・・・俺がこの世界を管理する。そのためにここまでやってきた・・・長かったぜ・・・俺が唯一の神の者になる!!!絶対なる存在に・・・楽しみだぜ・・・・どんな世界が出来るかなぁ!!!」
「あなたは・・・そのつもりで・・・!?」
その言葉を聞いて、アリスが驚愕する。
この管理者は―――この男は、最初からこのつもりだった。
世界を自分のものにする。
思い通りの箱庭を得ようとしたのだ。
だから、世界が安定してすぐに、ほかの三人を唆して一番の障害になるであろうアリスを襲った。
一番の懸念である蒔風は目覚めないから大丈夫だし、いざとなれば自分が抑え込めるから、と言い包めて。
ほかの三人はそれを信じた。
彼らは悪くはない。ただ、愚かだったのだ。
管理ばかりし、その重みを知らなかった。背負うことを知らなかった。
そのことがどれだけ大事か、わかっていなかったのだ。
そうしたことを知らない彼らは当然「罪」を知ることがなく、そして、免疫がないために騙されて利用され、簡単に彼に染まった。
結局、わかっていたのは二人の管理者だけだった。
日常の“No name”
非日常の“LOND”
両極端にありながら、二人は同じことをしっかりと理解していた。
「それ」は背負うべきものである、と
だが、そこから進んだ道は今こうして、はっきりと違えている。
「そのためにここまでやった!!あの男はもう立てん・・・いいぞ・・・・世界をオレのモノにィィィィいいいいいいい!!!!」
拳を握り、空を見上げ、“LOND”が高らかに叫んだ。
それを聞いたアリスは、立ち上がろうとしたが膝が崩れた。
無理もない。ここに来るまで四人の管理者に追い立てられ、ボロボロになったところを駆けこんできたのだ。
それでも“LOND”の前の立つものアリスだが、二、三撃で弾き飛ばされて地面に崩れこむアリス。
その服の端がすでに粒子となって消えている。
まだ“LOND”には流れていないが、このままでは・・・
「死期が近いぞ?“No name”・・・・お前のヒーロー様はもう来ない」
「・・・く・・・・!・・・そう・・・ですか・・」
「諦めたか?」
「・・・・・・私は・・・今まで何を見て来たのでしょうね・・・・・・そして、あなたも」
「なに?」
アリスの言葉。
最初は諦めかと思ったが、そうではなかった。
彼女の言葉が続く。
その視線は“LOND”の真後ろに
「あの人は、私が何も言わなくても立ち上がっていましたよ。力を与える前から、「奴」に面と向かって啖呵を切って。彼を支えるのは、力でも、死の理解からくる無恐怖でもありません」
「「がんばって!!!!」」
ドンッッ!!!!!
と、そこでこなたとかがみの声がした。
そしてそれに呼応するように、黄金の粒子に覆われた銀白の翼が、まるで地面から生えたかのように、倒れている蒔風の背中から大きく開かれ、あたりを照らして眩いた。
そろそろ夕方に近づく。
しかし、いまだに二つの輝きが地上を照らして、その中心にいる主人公が立ち上がった。
黄金の輝きは粒子となって周囲を覆うように浮き上がり、空を照らす太陽のように輝いて
銀白の羽根は雪のようにハラハラと舞い、闇夜を照らす月のように輝いていた
「な・・・んだと・・・・」
「我々は解ってなどいませんよ、“LOND”。私がいまだわかりきってもいないのに、あなたがわかりきったような口を利かないでください」
男が起つ。
翼は銀白、想いは希望
敵は、今までだって何度も打倒してきたもの。
「彼は、そこに救えるものがいる限り、何度だって立ち上がってくるのです・・・・我々が止められるようなものではありません・・・・・!!!!」
「お前の管理するそれは・・・・なるほど、確かに強大だ・・・だがな・・・主人公はそれに立ち向かって打ち勝ってきた・・・・」
バッ!!!
「一度敗れた相手には、決して二度と負けない・・・・・それが・・・・・」
――それが、主人公だ――
今この場のすべて者。
その者の願いを一身に受け。
銀白、最期の、そして、宿命の戦いへと足を踏み入れた。
to be continued
後書き
一度は倒れた彼ですが、ここにもう一度立ち上がることができました。
"LOND"は強大です。
しかし、彼にはそれを超えるだけの力を得ることができます。
次回、想いと共に・・・・―――
ではまた次回
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