提督はBarにいる。
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艦娘とスイーツと提督と・16
~磯風・ハイカカオチョコレート~
今、俺の目の前には物凄いいい笑顔でチョコレートを頬張る磯風がいる。頬は紅潮し、目は弛み、普段のキリッとした顔には似ても似つかない。まぁ、基本女子はチョコレートが好きな娘は多いし、何ら違和感は無い。
「ん?どうしたのだ提督、先程からあまり手が進んでいないようだが?」
「あ~……なんつうか、チョコは嫌いじゃねぇんだがな?」
「ならば遠慮せずに食べるといい。私としてはこうしてゆっくりとチョコを味わえるだけで幸せなのだからな」
「いや、まぁ遠慮はしてねぇんだがよ……。作っておいて何だが、よくお前はこんなモンバリバリと食えるな」
「こんなモン、とは失礼だな。カカオ豆農家の方々に申し訳ないと思わんのか?それに、この辺だと売っていないというから、わざわざ青葉に頼んでレシピを手に入れて貰ったというのに」
私はコンピュータが使えないからな!と豪語してどこかのデュエリスト社長の様な高笑いを上げる磯風。
「そりゃあ手に入らねぇだろうよ……カカオ99%のハイカカオチョコレートなんざよぉ!」
チョコが好きな女子、その言葉の響きには可愛らしささえ漂う。何ら違和感も無いのだ……但し、あくまでも『普通の甘いチョコならば』という但し書きが付くが。
「ふむ、そこまで大声を出す必要は無いのではないか?チョコ自体はこんなに美味しいのに、実に不可思議だ」
コイツは何を言ってるんだ?位の勢いで首を傾げ、ボリボリとチョコを咀嚼していく磯風。
「俺ぁお前の味覚の方が不可思議だよ磯風ェ……」
そもそも、カカオ〇%というのは何の事なのか。これは、チョコレートの主原料である『カカオマス』と呼ばれる物が何%含まれているか?という数値である。このカカオマスというのはカカオ豆を乾燥・焙煎・ペースト状に加工した物である。
カカオマスを栄養学的に分析すると、その55%が脂肪分(ココアバター)であり、20%が食物繊維(リグニン)で構成されており、話題のカカオポリフェノールもたっぷりと含まれている。
とてつもなく健康にいいのは疑う余地も無いのだが、カカオマスその物は苦い。物凄く、苦い。その為、人類はミルクや砂糖、追加のココアバターを加える事によって口どけが良く、甘くて美味しいチョコレートを作り出したのだ。
※カカオマス含有量によるチョコレートの分類(簡単に)
カカオマス20%:まろやかで甘いミルクチョコ。一般的なチョコレートの殆どはこれ。
カカオマス40%:程好い苦味と甘味のバランスが楽しめるビターチョコやブラックチョコがこれ位。ミルクチョコの甘味が苦手でもこっちはイケる、という人も多いのでは?
カカオマス70%以上:カカオマス本来の極上の苦味(直球)を楽しめるハイカカオチョコレート。%が上がれば上がる程苦くなる。
「味覚が不可思議?確かに他の陽炎型の艦娘とは好みが多少違うかも知れんが」
「陽炎型に限らず全艦娘の中でも特殊な部類に入るわアホゥ」
どこぞの国内鎮守府の悪食軍団と比べる訳ではないが、磯風の味覚の嗜好は特殊すぎる。磯風がメシマズな理由は、料理スキルが低すぎる事と異常と言えるアレンジを加える事もあるが、舌が常人の嗜好とかけ離れているのも原因なのではないか?と今回の事で痛感した。味見はしているのだ(恐らくだが)。だが、その味の基準が大きく狂ってしまっていては、味見は味見の用を為さない。
「むぅ、不思議な事だ。このチョコにしても強烈といってもいい苦味とコクが後を引くのが美味いというのに……何故理解されないのだろう?」
「大抵の奴はまず先に来る苦味でダウンかギブアップするからだっつの」
「ふふっ、つまりは皆味覚がお子様だという事だな!」
再びドヤ顔で〇馬社長のような高笑いを上げる磯風。
「だから何でお前はそうプラス思考に捉えられるかなぁ?」
「む?そこが私の長所だと理解しているが」
「お前って奴は……」
二の句が継げなくなってしまった。この娘、真っ直ぐなバカだ。めんどくせぇ奴だ。処理を間違えると余計に拗れる奴だ。
「はぁ……普通のミルクチョコじゃダメなのか?」
「ミルクチョコはなぁ……どうにも甘味の自己主張が強すぎて好きになれないんだ。やはり食べるならこれくらい苦みばしった方がいい」
「……浦風達が苦労するワケだぜ。まぁ、食べ過ぎには注意しろよ?」
「ん?ハイカカオチョコレートは健康にいいと聞いたので毎日食べまくっているぞ?」
「バカ、薬を反対から読んでみろ」
「ん……クスリを反対からか?」
「そうだ、クスリを反対から読めば……リスク。健康にいいからってその裏に潜むリスクを考えずに食べてると、手痛いしっぺ返しを喰うからな?」
昨今話題のハイカカオチョコレート。美容効果や健康効果ばかりが着目されて、その裏に潜むリスクについてはあまり報道されていないのが現状だ。
まず第一に、ハイカカオチョコレートはミルクチョコよりもカロリーが高い。甘くないのでカロリーも低そうに見えるが、カカオマスの半分以上はココアバター……つまりは脂質である。実際、明治の『ミルクチョコレート』と『チョコレート効果95%』を同じグラム数で比べると、23キロカロリーもチョコレート効果の方が高い。甘くないからと食べ過ぎればカロリーの摂りすぎ、という事態に陥る。
更に、カカオには健康に有用な成分も沢山含まれているが、同時に人体に有害な成分も含まれている。その代表格が金属のニッケルである。500円玉等の材料として有名なニッケルであるが、実は体内で分解されずに蓄積され、金属アレルギーの引き金になったりする。更にごく微量ではあるが、市販のハイカカオチョコレートからアフラトキシンというカビ毒が検出されている。熱によって分解される事の無いカビ毒で、食べて直ぐに影響が出る量では無いらしいが、食べ過ぎると……どうなるかは未知数である。
更に更に、カカオマスには大量のカフェインとテオブロミンという興奮作用のある成分が大量に含まれている。気管支拡張作用や利尿作用、興奮作用があるとされており、普通なら問題ないが体質的に何らかの影響が出る場合もある。某レディもハイカカオチョコレートブームに躍らされて食べまくり、利尿作用が働きすぎたのか翌日オイル漏れ(意味深)を起こして妹に怒られるという悲劇を起こしていたりする。意外と身近で悪影響は発生しているのだ。
「こ……恐っ!チョコレート恐っ!」
青ざめた顔で((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブルする磯風。
「まぁ、何事も程々にって事だ、気を付けろよ?」
「う……うむ、了解した」
大体、ハイカカオチョコレートを1日に5~10gずつ毎日食べるのが健康効果を享受しつつ、悪影響は最小限に抑える食べ方らしい。流行ってるからハイカカオチョコレート食べまくりダイエット!なんてアホゥな真似は、やらかさない方が良いと思うがね。
後書き
まぁ、作中では偉そうな事書いてますが、自分の周囲にはすでにやらかしてとんでもない事になっちゃった人がいるんです。皆様も、ご注意をば。
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