提督はBarにいる。
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艦娘とスイーツと提督と・15
~照月・エンゼルパイ~
「提督、照月の準備もコーヒーの準備もバッチリです!」
「おぉ、悪いなぁ照月。ちっと来客が来てたモンでな、コーヒーにまで手が回らんかった」
「いえいえ、大丈夫です!提督には『例のアレ』を作って頂いただけで十分ですから!」
「てなワケで、待ちに待ったオヤツタイムだ」
今回のチケット当選者は照月。注文の品は市販されているとあるお菓子を、俺の全力で作った物が食べてみたいという注文だった。
「そいじゃ、市販の奴とは多少違うかも知れんが……ほれっ!」
そう言いながら目の前のテーブルにドサッと『それ』が乗った皿を置いてやる。
「うわ~!エンゼルパイが山盛り!」
そう。照月に頼まれたのは森〇のエンゼルパイ。沢山食べたいという注文も受けていたので、市販されているミニエンゼルパイよりも小さめに仕上げてある。
「沢山作ってあっから、お代わりもジャンジャンしていいからな?」
「ううぅ、何という悪魔の囁き……」
「誰が悪魔だ、誰が」
まぁ確かに、魔王だとか鬼だとか散々言われてるから否定はせんが?俺は苦笑いを浮かべつつ、コーヒーを啜る。
「ついでに俺の持論だが、菓子を思いっきり食う時にはカロリーの事を考えるのは愚問だぞ?菓子ってのは嗜好品だから、カロリーなんざ二の次に作ってるからな」
大体、健康成分を謳い文句にしてる日本の菓子メーカーの方が異常だと思うんだが、その辺俺は日本人からズレてるのだろうか?
「……よし、照月覚悟を決めました」
「ほぅ?」
「こうなったら轟沈するまで食べ尽くしてやります!」
そう叫ぶや否や、両手にエンゼルパイを持って猛然と食べ始めた照月。
「お前はどこの二航戦だよ、ったく……」
寧ろお前は空母を護る側だろうが。
~20分後~
「……ひどい!提督は本当に酷い人です!」
「いや、何で泣きながらエンゼルパイ食べてる照月に俺は責められにゃいかんのよ?」
「何でこんなに美味しく作っちゃうんですか!市販の奴より美味しく作ってあったら、小さく作ってあっても手が止まらなくなるじゃないですかぁ~っ!」
えぐえぐと泣きじゃくりながら、食べ続けつつ悲鳴を上げる照月。俺特製のエンゼルパイ、素材や味に相当拘って作ってあるのだ。
市販のエンゼルパイの主な材料は、ビスケット、マシュマロ、チョコレートの3つだ。マシュマロをビスケットでサンドし、チョコレートでコーティングして固める。こうやって文章にしてみると簡単そうに見えるが、そこにはお菓子メーカーならではの工夫や拘りがギッシリ詰まっているハズだ。
しかし俺にはメーカーの蓄積してきた様な拘りが無い。ならば材料に拘ってみよう!となったワケだ。例えば、マシュマロはバニラエッセンスやフリーズドライにしたイチゴ、砕いたヘーゼルナッツを混ぜるだけでなく、リキュールやブランデー、ラム酒といったお菓子作りに向いた酒を加えて香り高くしてみたり、ビスケットを全粒粉で作って歯触りをよくしたり、チョコレートをちょっとお高いのにしてみたりしたのだ。後は飽きが来ないように、何種類もの味を用意した。それだけの事である。
「それだけって!十分凄すぎますよ提督!?」
「ふふん、誉め言葉として受け取っておこう」
「何でドヤ顔なんですか!?照月、ホントに轟沈しちゃうかも知れませんよ~っ!」
「安心しろ照月」
「え?」
「ウチには短期集中型ダイエットプログラムがあるぞ!」
「その名も『提督式ブートキャンプ』だ」
「あ、それはホントに轟沈しちゃいそうなのでいいです」
物凄い真顔で拒否された。後日、照月は貯蓄してしまったカロリーを、川内達に手伝ってもらいながら消費したようである。解せぬ。
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