提督はBarにいる。
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艦娘とスイーツと提督と・12
~漣:いちご大福~
「なぁ漣よぉ。一応注文通りには作ったが……止めといた方がいいんじゃねぇか?」
今年のスイーツチケット、持ってきた2人目は漣だった。そのリクエストはとある和菓子。しかも、漣たっての希望で『特別仕様』に仕上げてある。
「ちっちっち、解ってないですねぇご主人様も。これは漣のちょっとした夢。夢の実現の為には細けぇ事ぁいいんだよ!って奴っすよ」
「はぁ、夢ねぇ……絶対食い難いと思うがなぁ」
とはいえ、リクエストした本人がいいと言うのだからそれで良いのだが。
「ほれ、ご注文の苺3個入りのビッグいちご大福だ!」
ドン!とテーブルの上に山盛りにした巨大なピンク色の大福がお目見えする。通常のいちご大福だと一個につきいちご1粒が普通だと思うのだが、漣の注文したスペシャルいちご大福は一個の大福にいちご3粒、それも粒が大きいあまおうを3つ、という超巨大化仕様。ピンクの外皮も食紅とドライフリーズにしたいちごを砕いて混ぜ込んだ特別品だったりする。
「うおっしゃキター!(゚∀゚ 三 ゚∀゚)」
物凄いはしゃぎっぷりである。1つ手に取り、その重さを確かめてみたり、色んな角度から眺めてみたりとどれだけ期待していたかが窺える。
「どんだけ嬉しいんだよ……」
「いや~、一度くらいは食べてみたかったんスよぉ。一口で食べきれないいちご大福って奴を」
「だったら1つを大きくしないで、2つ3つと個数を食べればいい話だろうが」
わざわざ1つにしなくても、数を食べれば同じ事だろう。俺は普通にそう思うんだが。
「はぁ。ご主人様も解ってないですねぇ、ロマンって奴を」
「ロマン?」
「そーです、ロマンです。ご主人様も経験ありません?ちっちゃいお菓子とか食べてて、『もう少し大きければなぁ』って思った事」
そう言われると何となくその気持ち、解らんでもない気がしてくる。一口サイズで食べやすく、ひょいひょいと食べられるツマミやお菓子は多い。しかしその食べやすさ故にすぐ無くなってしまい、何とも言えない寂寥感を感じたりする。正に漣の言う通り、『もう少し大きければなぁ』と思ったりする事も少なからず、ある。
「そりゃ複数食べた方が満足するだろ、ってのは理屈で解りますよ?けどですね、一回くらい挑戦する機会があったらやってみたいと思うじゃないっスか」
「あ~……まぁ、ウチの連中にも同じ様な事をやらかしかねん奴が居るからなぁ。否定はせんよ」
主に正規空母とか、戦艦とか、駆逐艦辺りに。
「でしょ!それに敢えて挑戦する……正にロマンですよ!!」
「……で?そのロマンを叶えてみた感想は?」
「夢は……夢のままの方が良い事もあるかも知んないっス」
実は先程から漣の大福を食べる手がピタリと止まっていたのだ。理由は勿論、胃袋のキャパオーバー。ただでさえ大粒のあまおうを3粒もぶちこみ、それを包み込むだけの量のあんこと苺入りの牛肥で覆っているのだ。普通のいちご大福の数倍の重量がある、『化け物大福』と化していたのである。その証拠に、漣は苦しげにゲフッとゲップをしたりしている。
「そういう過ちを重ねて、人は大人になっていくモンだ。良い勉強になったなぁ?漣よぉ」
「ウッス……苦しっ」
とりあえず、残った大福は幾つか持ち帰り用に包んでやり、残りは妖精さん達の慰安に使わせて貰う事にした。
「食ってよし!」
と俺の号令一下、ワーッと大福の山に群がる妖精さん達。この様子だと、そんなに時間も掛からずに消費してくれる事だろう。
「しっかし、ホントウチのご主人様はチートっスよねぇ」
「あん?どこがだよ」
腹が満たされたのか、口直しの緑茶をズズズと啜りながら漣が呆れたように呟いた。
「だってぇ、肉弾戦なら艦娘を圧倒、軍事にも明るいし戦略・戦術も的確、人脈もパねぇの持ってて、リアルハーレムの王様で、料理が一級品とかどこのセ〇ールですか」
提督を合気道の有段者にして、『海軍最強のコック』の異名を持つ役を演じたアメリカの有名俳優に例える漣。提督は『あんなチートと一緒にするな』と言いかけはしたが、指摘された発言の殆どが的確に物事を捉えていた事を理解して黙り込んだ。
「てか、セ〇ール一人じゃ釣り合い取れませんよね?何人分ですか〇ガール」
「知るか」
そもそもスティーブン・セ〇ールは単位じゃねぇし、何人分で自分一人と釣り合うか?等と考えた事は無い。大体にして自分はあんな(演技上の事とはいえ)チートの塊みたいな人間ではないと思っていたのだから。
「ま、そんなご主人様のお陰でこの鎮守府は天国なんスから無理だけはしないで下さいよ~?」
「お前……意外と他人思いだったんだな、漣」
「ひでぇ」
そんな容赦の無いやり取りが出来る奴ってのもそうそう居ない。ロリコンって訳じゃあねぇが、こういう人材は大切にしていこうと改めて思い直したりした。
後書き
普段より短めですが、許して下さい(ノд<)
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