提督はBarにいる。
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艦娘とスイーツと提督と・11
前書き
はい、というワケで今回からEX枠も含めて11話位ホワイトデーリクエスト企画第二弾をお送りします。番号は続きなので11から、になっております(解りにくい)。
なお、多数のご意見を頂きましたが通常枠のリクエストが10人に満たなかったので、作者の独断と偏見でEX枠と通常枠のリクエストをごっちゃにして、書きたい娘をEX枠に採用する事と致しました。誰がEX枠に選ばれるのか?その辺もお楽しみにして頂ければ。
~加賀:フルーツサンド~
「提督、本当にリクエスト通りの物は出来たんですか?」
「お、おぅ。まぁ……一応な」
ホワイトデーのお返しを渡した翌日、早速一人目のチケット当選者がやって来た……加賀だ。ご希望はフルーツサンド。一週間後に非番の日があるから、その日に合わせて作って欲しいと頼まれた。
「???……何故歯切れの悪いのかは聞きませんが。頂くとします」
「おぅ。遠慮なく食ってくれ」
ホイップした純白の生クリームと共に食パンの間に挟まれるのは、イチゴ、キウイ、バナナ、黄桃。これを基本にブルーベリーやラズベリー、サクランボやマンゴー等、組み合わせを変えて味に飽きが来ないように仕上げてある。
パクリ、とかぶり付いた加賀は瞑目し、ゆっくりと咀嚼。そして飲み込むと、目を輝かせながらこう言った。
「流石は提督です。私は初めてフルーツサンドを食べましたが、こんなに美味しい物だとは知りませんでした」
何というか、身体中から輝きが溢れ出ている感じだ。もしもサイドテールが犬の尻尾だったら、今頃バッサバッサ振り回されてそうな位喜んでいるのが伝わる。
「フルーツも生クリームもたっぷりで……ケーキとはまた違う味わいで、これはまた違う美味しさです」
加賀は堪能するように、ゆっくりじっくりと味わうように食べていく。そんな加賀の食べるペースを見ながら俺は、前々から不思議に思っていた事を聞いてみた。
「加賀……お前さん随分ゆっくり食べるよな?」
「……?そうでしょうか、他の娘達と食べ始めても取り残されるという事はありませんし。平均的だと思いますが」
「あ~すまん。言い方が悪かったな、他の空母の連中とか他の鎮守府の加賀に比べて、という意味だ」
「……あぁ、そういう事。貴方も意外と、小さい事を気にするのね?」
そんな俺の様子が可笑しかったのか、加賀はクスリと笑う。まるで幼子が他愛もない悪戯をしたのを笑うように、だ。何だか小馬鹿にされたような気がして、少しムッとする。
「……あのね、貴方は私の夫なの。例え仮初めとは言え、私達は夫婦だわ」
「そりゃそうだ、俺だって愛してるぞ?」
「そんな貴方の作る料理には、私達を思いやる真心が篭っているわ。そんな料理を食べれば、私達は心が満たされるの。しかもこのフルーツサンドは、私一人に向けての愛情を込めて作られている……そんな料理を私はガツガツと貪るように食べたくはないの」
成る程、心が満たされるから量は要らないってか。そんな大事な事も忘れかけてたんだな……主にあいつらのせいで。
「ところで……お代わりいるか?」
「そうね、少し欲しいけれど……貴方どうしてそんなに怯えているの?」
「あ~、何というかだな。そのぉ……今回、俺も初めてフルーツサンドを作ったんだ」
「あら、そうなの?意外な事実だわ。こんなに美味しいのに」
「それでな?味に満足してもらえるか不安だったんで、試食を頼んだんだ」
“試食を頼んだ”。その言葉にピクリと反応する加賀。当然、加賀の嗜好をよく知る人物がいいだろう。その上、沢山量が食べられる人物と言えば……
「提督、誰に試食を頼んだんです?」
「…………二航戦」
やっぱりか、と加賀が顔を右手で覆う。他の鎮守府では食いしん坊キャラの空母として不動の地位を築いている一航戦。しかしウチの鎮守府の一航戦は目の前の加賀を見て解る通り、大食いというよりも味を楽しむ傾向が強く、あまり食べない。その代わり……というのも変な話だが、蒼龍・飛龍の二航戦コンビが大食いキャラとしての地位を確立している。
「あいつら、美味い美味いと大量に食ってな。『これなら加賀さんも私達と同じ位食べると思うから同じ量を準備した方がいい』って言われてな……」
「因みに、どれだけ食べたんです?」
「一人3斤」
「……は?」
「だから、食パンの量だけで一人3斤分」
食パン3斤と言えば、約1kgである。そこにフルーツと生クリームがプラスされるので、その量は推して知るべしである。唖然としていた加賀ではあるが、段々と額に青筋が走っていく。
「あの娘達は全く……提督、ちょっとシバいてきて良いかしら?」
「やーめーとーけ、折角の休日をイライラして過ごす事もねぇだろがよ」
「……それもそうね、止めておくわ。今日は」
そう。今日の加賀は非番。そのせいかいつもの胴着ではなく私服なのである……それも、普段の加賀の姿からはあまり想像できないタイプの服装である。
ローライズのジーンズに少し小さいんじゃ無いかというTシャツというラフな格好。引き締まってはいるが筋肉質過ぎない加賀のヒップやらウエストやらがやたらと強調されている。やはりTシャツの丈が少し足らないらしく、さっきから僅かに動く度に臍がチラチラと顔を覗かせている。そして何より、いつもは胸当てに押さえられている加賀のバストが、その抑圧から解放されたのを喜んでいるかのように目の前でポヨンポヨンと揺れている。その上、Tシャツの生地が薄いのか、黒のランジェリーがうっすらと透けて見えている。
「何かしら提督、私の顔に何か付いていて?」
「ッ……いや、何でもねぇよ」
見ているのがバレたらしい。そりゃそうか、あんだけガン見してればなぁ。チラリと加賀の方を見ると、妖艶な微笑みを浮かべて此方を見ていた。何というか、品定めされているような気分だ。
「提督」
「……なんだよ?」
「我慢出来なくなったら、襲いかかってきてもいいんですよ?」
そう言ってニヤリと、意地の悪い笑みを浮かべた。加賀は狙っていたのだ。その扇情的な服装も、妖艶な微笑みも。俺に獣になってもらおうという彼女なりの挑発だったのだ。全く、どこでこんな手練手管を覚えて来たんだ?教え込んだ奴の顔を見てみたい。
「理由を聞いても?」
俺がそう尋ねると、お前は何を言っているんだという顔で首を傾げる加賀。
「妻が夫に抱いて欲しいという欲求に、理由が要るのかしら?」
わーお、なんともド直球。しかし、それだけじゃねぇだろう。
「バレンタインデーの時のリベンジ、か?」
俺がそう言うと、加賀はプイッと視線を反らし、軽くプルプルし始めた。耳が真っ赤に染まっているのを見る限り、図星を突かれて恥ずかしくなっているのを必死で誤魔化している(つもり)らしい。あのバレンタインデーの時の甘えっぷりは、やはりそういうサインだったのだ。ハァ、と大きく溜め息を吐いて加賀に向き直る。
「加賀」
「なにかし……ンッ!?」
不意打ちでその唇を奪う。口内に舌で侵入し、絡め合う濃厚なヤツだ。たっぷり30秒はくっついていると、苦しくなったのか肩をタップされた。
「い、いきなり何を……」
「何って、ナニだろ?」
火を点けたのはお前だ、その責任は取って貰おうじゃないか。その身体で、たっぷりとな。その後、3時間はたっぷりとお相手してやり、加賀も満足したのか白目を剥いて、応接セットのテーブルの上で大の字になっている。途中、『ベッドに移動して』とか『せめて鍵はかけて』とイヤイヤしながらそんな事を叫んではいたが、人の気配が執務室前を通る度に身体が反応していたので口からでまかせだろう、という事にしておいた。
~その頃執務室前では~
「うわ、音駄々漏れだよコレ」
「まぁ、提督さんの事だから解ってやってるよね?これ」
「相変わらずドSだねぇ、提督は」
等と、もはや日常でしょうという会話が交わされていた。そして執務室のドアノブには、
『提督お楽しみ中♡砂糖を吐いて死ぬ覚悟のある者だけ入室を許可する』
という提げ札が掛けられていた。意外とウチの娘達は空気を読めるのだ。読もうとするかは別にして。翌日、二航戦の二人が加賀の八つ当たりとも取れる尻のスパンキングに遭い、入渠ドックに放り込まれるという事件が発生したが、それはまた別の話。
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