ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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57部分:ターラの花その二
ターラの花その二
セリス達解放軍はメルゲン城を発ち一路ターラへ向けて進軍していた。その速さは十四万の大軍とは到底思えぬ程であり一人の落伍者さえ出していなかった。
「行こう、皆!ターラを救うんだ!」
セリスは軍を激励しながらターラへ進む。軍は整然と並び剣や槍が煌いている。それをオルエンとフレッドは黙って見ている。
「・・・・・・」
「どうしたのよ二人共、黙りこくっちゃって」
セリスと二人の間に入る様に パティがニョッキリと顔を出した。
「わっ、卿は何だいきなり。失礼ではないか」
面食らったオルエンが慌ててパティに抗議する。
「失礼?大体捕虜なのにセリス様と同行したいっていう事自体おかしいんじゃないの?」
「何っ、私はただセリス公子が騎士にあるまじき不埒な行いをしないかどうか監視に来ているだけで・・・・・・」
「ふ〜〜〜ん」
パティはまじまじとオルエンの瞳を見る。
「な、何だ!?」
「素直じゃないなあ」
「何!?」
「本当はセリス様が好きなんでしょ。だからメルゲンでじっとせずにわざわざターラまで一緒について来るんだ」
「ば、馬鹿を言うな。何故私が帝国に弓引く反逆者を・・・・・・」
「そう言う割りにはこの前セリス様に包帯を変えてもらった時紅くなってたじゃない」
「あ、あれは敵に情をかけられた屈辱で赤くなっていたのだ!」
「まあセリス様は誰に対してもそうなんだけど。かどいい加減素直になったら?何時までも捕虜のままじゃ嫌でしょ?」
「どういう意味だ?」
「解放軍に入ったらって誘ってんのよ」
「き、貴様ぁ!」
オルエンは頭から湯気を出し懐から白手袋を取り出すとそれをパティに投げ付けようとする。フレッドが驚いて後ろから両腕を羽交い絞めにして制止する。
「お止め下さい将軍、敵軍の真っ只中ですぞ!」
「ええい、止め給うなフレッド殿、この騎士道をわきまえぬ不埒なシーフに思い知らせてくれるのだ!」
「あ〜〜〜ら・・・・・・」
尚も言い返そうとするパティをレスターとロナンが止めに入った。
「止めろ、馬鹿。捕虜とはいえ客人に対して何て事言うんだ」
「とにかく二人共落ち着いて。今は進軍中ですよ」
レスターが後ろからパティの口を塞ぎロナンがオルエンを前から押さえる。
「気が付いたらちょっかい出しやがって、一体誰に似たんだ」
「ヴェルダンの父様と母様よ」
「ヴェルダン!?ヴェルダンの人達は皆大人しくていい人達ばかりだと父上と母上にお聞きしているぞ。どうせ御前なんかオーガヒルの九官鳥と一緒に育ったんだろう」
「九官鳥!?失礼ね。これでも私はユング・・・・・・」
五人の間に今度はシャナンが入ってきた。目を固く閉じこめかみをピクピクと震わせている。
「・・・・・・とにかく先へ進もうな」
「解かりましたあ」
それを少し離れた場所でダグダとオーシン、タニアの三人が歩いていた。
「本当にパティって口が減らないわね」
タニアは誤認を見ながら嘆息混じりに言う。
「誰かさんみたいだな」
オーシンがポツリと呟く。
「・・・それってあたしの事?」
ジロリとオーシンを見上げる。
「さあなあ」
オーシンの素っ気無くではあるが的確な皮肉にタニアは切れた。
「・・・・・・あたしの何処が口が減らないっていうのよ!」
「それが口が減らない、って言うんだよ!」
「フン、この短絡男!図体ばかり大きくなって頭の方は空っぽなくせに!」
「空っぽ!?そういう御前はこの前メルゲンをメガデルなんて言ってただろうが!」
「そんな小さな事言うの!?でかい図体してせこいのね!」
「何ィ!?」
「やるの!?」
「止めないか二人共」
ダグダが巨大な両手でタニアを抱え上げる。タニアは両手両足をじたばたとさせもがく。
「全く顔を合わせたらすぐ喧嘩するなあ」
ハルヴァンがオーシンを羽交い絞めにながらぼやく。
「本当に皆さん仲がいいですね」
ユリアが周りを見ながらにっこりと微笑む。
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