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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第3章:再会、繋がる絆
  第92話「優しさの報酬」

 
前書き
前回後書きに載せれなかった技を↓

連鎖相乗…イメージとしては電池を直列に繋ぐ感じ。文字通り相乗効果で威力が上がる。

サクレ・ぺネトラシオン・クラルテ…サクレ・クラルテの貫通力をさらに上げたバージョン。もちろん威力も上がっている。

ミョルニル…グリモワールに載っている魔法の中でもトップクラスの威力を誇る魔法。ただし燃費が悪い。膨大な魔力によって発生するプラズマを纏った極太の砲撃を放つ。ただし、あまりの威力なため、反動で腕が焼け爛れる。ちなみに雷神トールとは関係ない。

今こそ、道を拓く時(神命一矢)…“しんめいいちや”。神刀・導標を矢として用いた弓の一撃。残り僅かな神力ではあったが、その威力はやはり神に匹敵する。

天翔ける、巫女の祈り(プレイヤー・メニフェステイション)…天巫女一族の最終奥義。ジュエルシード全てを使い、魔力を充填した上で、詠唱してから放たれる。その“祈り”による光はこの世全ての“負”の感情すらも浄化する。...なお、洗脳とかの状態異常は治さないので、これを使っても魅了は解けない。


さて、ようやく3章のラスボスは倒しました。後は...。
 

 












   ―――....そうですか。ですが、理解しておいてください。

   ―――........。

   ―――例えアンラ・マンユを滅した所で、貴女は....。

   ―――.......。

   ―――...死にます。生命を維持するジュエルシードの力が尽きて。

   ―――生命を...維持...。

   ―――半年もの間、何も口にせずに生きるなど、人間には不可能です。

   ―――そっか...それをジュエルシードが...。

   ―――魔力でコンディションを保っていました。貴女を助けるために。

   ―――それが、なくなると...。

   ―――一気に栄養失調を引き起こし、衰弱死します。

   ―――...だから、“死”を?

   ―――はい。

   ―――.....いいよ。それで、この状況を打破できるのなら。

   ―――...では、私たちも赴きましょう。

   ―――待って、どうすればいいの?

   ―――私が言わなくとも、ジュエルシードが教えてくれます。

   ―――え....?

   ―――...まぁ、自ずと分かる事です。急ぎましょう。

   ―――.....うん。








       =優輝side=







 綺麗な...どこまでも綺麗な光が、全てを包み込む。
 僕らを呑み込まんとしていた“闇”の砲撃はその光を前に打ち消され、アンラ・マンユと呼ばれた“負”のエネルギーの集合体ですら消し去った。

「.....勝った....のか....?」

 光が晴れ、何も肉眼で確認できなくなって静まり返った空間で、クロノがそう呟く。

『...魔力反応...消失!やったよ...やったよ皆!!』

「“闇”の力は感じない...確かに、消し去ったわね。」

 エイミィさんと、椿の言葉に、ようやく“倒せた”という実感が湧いてくる。
 他の皆も同様だったのか、一気に喜び始める。

「は、ぁ....っ....!」

〈...お疲れ様です。マスター。〉

「...うん...。やったんだ...私...。」

 隣で今回の最大の功績者である(聖司)がへたり込みながらそういう。

「いっつつつつ....。」

〈しばらくは絶対安静ですね。マスター。〉

「だな...。」

 僕は僕で、先程放った矢の一撃の反動による痛みに悶える。
 まるで焼け爛れたような腕。...まぁ、身に余る力を放ったからな。

「...シャル。大丈夫か?」

〈.............。〉

 弓の役割を果たしたシャルに声を掛けるが、返事は返ってこない。
 当然だ。強制スリープモードになり、待機形態の十字架は罅が入っているのだから。

〈私の見た所、コアの損傷によるデータ破損はありません。〉

「そうか...っつ....。」

 痛みを我慢しながらも、人間でいう所の後遺症がない事に安心する。

「緋雪に悪いな...。」

〈緋雪様なら、きっと許してくれますよ。〉

 ...そうであれば...いいな。
 まぁ、あいつの事だ。むしろ、使ってでも助けるように言いそうだな。

「とりあえず、アースラ内に戻ろう。皆、魔法陣に乗ってくれ。」

 それぞれが手を取って喜び合ったりする中、クロノがそういう。
 一つの次元世界と化していたとはいえ、本来ここは次元の狭間のような場所。
 いつまでも生身で外に居られないからな。

「ゆ、優輝君、その手...大丈夫なの?」

「ん?...あー、しばらくは使い物にならないかな...。普通に焼け爛れたのと違って、神の力を生身で使った代償だから、治すのにも手間がかかるし。」

 (聖司)に心配され、状態を軽く説明する。
 ...まぁ、実際はこれ以外にも魔力が枯渇してるんだけどね。

「それよりも、僕らも乗るぞ。」

「あ、うん...。」

 僕らもクロノが用意した転移の魔法陣に乗る。
 そして、転移しようと魔法陣が輝いた瞬間....。

「....ぁ......。」

「っ、おい?どうした...?おい!?」

 力が抜けるように、(聖司)が僕の方に倒れ込んでくる。
 同時に、彼女の周りに浮かんでいたジュエルシードも輝きを失って落ちる。





   ―――....それはまるで、糸が切れた人形のようだった...。











「おい...!しっかりしろ...!おい!!」

 転移が終わり、僕は倒れ込んだ(聖司)に必死に声を掛ける。
 そんな様子に、喜んでいた皆も気づいて駆け寄ってくる。

「クロノ!医務室の手配を!」

「分かった!」

「椿、葵!霊力で応急処置はできるか?」

「分からないわ!まず、容態を確認しないと...!」

 クロノに医務室への手配を頼み、僕が運びつつ椿に容態を診てもらう。
 ...だが、触れただけでわかる。これは、途轍もなく危険な状態だと。

「(触れただけで確認できるのは...明らかな、身体の衰弱。しかも、現在進行形だ。まるで、ダムが決壊したかのような速度で...。)」

 そこまで瞬時に判断した所で、床に落ちているジュエルシードが目に入る。
 葵に目配せをして、拾ってもらう。

「...輝きを失ってる...。まるで、力を使い果たしたような...。」

「まさかだとは思うが、ジュエルシードがずっと体調を維持していたのか...?」

「....その通りよ。彼女、人としての機能がどんどん失っている...。」

 完全に意識を失った彼女に刺激を与えないよう、丁寧且つ迅速に運ぶ。
 そんな中で立てた推測だったが、軽く容態を診た椿がそれを裏付ける。

「霊力や魔力で応急処置は!?」

「できる...けど、焼石に水よ!」

「ないよりはマシだ!」

 ここまで来て、死なせる訳にはいかない。
 僕自身の霊力も振り絞り、椿に譲渡する。

「頼む...生きてくれ...!」

 椿が霊力で生命力を高めるのを見て、僕は祈りながらも医務室へと急いだ。
 例え代償で腕を痛めていようが、今はそんなの関係なかった。







「.....手は尽くしました。しかし....。」

「私も診たけど、助かる可能性は....。」

 医務室にいる医師の人と、シャマルさんがそういう。

「そんな...!」

「司!」

 なのはや、織崎が悲痛な声を上げる。
 ...正直、僕だってそんな声を上げたい。

「どんなに手を尽くしても、衰弱する速度が速すぎます。生命力を保つ事が、できないのです...。」

「今までは、ジュエルシードが補っていたんだと思うわ。でも、最後の魔法でジュエルシードの魔力を使い果たして、機能を失ったから...。」

「っ.....!」

 その言葉に、心配で医務室までついてきたほとんどの人が悔しそうに俯く。
 ...“助からない”。そう、思ってしまったのだろう。

「嘘...嘘だよ...!何とかならないの!?」

「...情けないですが、これ以上は...。」

 なのはが医師に食って掛かるが、医師はただ申し訳なさそうにする。
 既にアースラにある医療機器は使える物全て使っているのだ。

「リインフォース...!」

「...ダメです。夜天の書に、彼女を助けられるような魔法は...。」

 はやても諦めきれずにいるが、何もできない。

「優輝さん...。」

「...無理だ。グリモワールにも生命力を大幅に回復させるような魔法は...。」

 奏が僕を頼ろうとするが、僕も何もできない。
 第一に、魔力が足りない。例えそんな魔法があっても、魔力が足りなければ意味がない。
 空気中の魔力を吸収するにも、その吸収するための魔力すら残っていない。

「司!目を覚ましてくれ!司!!」

「お、落ち着いて、神夜...!」

 織崎に至っては、錯乱したかのように縋りつこうとする。
 なんとかフェイトが抑えているが、力の差で長くは持ちそうにない。

「っ...シグナム、ヴィータ。悪いけど神夜を外に連れて行ってくれ。」

「...わかった。」

「放せ!放してくれ!」

「暴れんなっての!あたしたちじゃ、どうしようもねーんだ!」

 何を仕出かすかわからないと見かねたクロノが、シグナムさんとヴィータに指示を出す。
 バインドを使ってまで、二人は織崎を外へと連れだした。

「........。」

「優輝...?」

 皆が悲しむ中、僕はそっと眠る彼女の手を握る。
 ...触れるだけでもわかる。椿と葵が霊力で命を繋ぎ止めているが、それでも持って10分超えれるかわからないぐらいだ。
 それほどまでに、既に彼女の体から生命力が消えていた。

「...僕はここに残るよ。なのはとか、子供は外に出ておいた方がいいよ。....死ぬ瞬間なんて、見たくはないでしょ?」

「っ...優輝さん...!」

 奏が、声を震わせながら僕の名前を呼ぶ。
 きっと、今の僕はほとんど感情が顔に出ていないのだろう。
 ...それほどまでに僕も精神が追い詰められているのに、彼女は気づいたようだ。

「...私が連れて行きます。」

「私も行こう。主や神夜を外に放ってはいられない。」

 なのは達を連れ、リインフォースさんやシャマルさん、アルフさんも出ていく。
 残ったのは魅了に掛かってない人だけになった。

「奏、アリシア。二人も...。」

「...ううん。私は見届けるよ。」

「...私も。例え、悲しくても...。」

 アリシアと奏はどうやら残るらしい。
 既に悲しみで顔が歪んでいるのに、意地を張っちゃって...。

「...それに、まだ、諦めてないでしょ?」

「なに...?」

 アリシアが、まるで見透かしたようにそう言い、クロノが少し驚く。

「...驚いた。いつの間にそんな観察眼を?」

「ただの直感だよ。...でも、合ってるでしょ?」

「...まぁ、ね。」

 アリシアの言葉を肯定しながら、僕は一度立ち上がる。

 ...そう。ずっと、医務室に入ってから考えを巡らせていた。
 どうすれば助けられるのか。
 どうすれば生命力を補えるのか。
 マルチタスクをフル活用し、超高速で僕は思考を巡らせていたのだ。

「シュライン、聞いておきたい。どうしてこうなった?」

〈...天巫女の全力を出し尽くしたからです。つまり、単純にジュエルシードの力を使い果たしたため、マスターの生命を維持する機能が停止しました。〉

「やっぱりか...。」

 大体は予想していた。
 第一、あれほどの“闇”を祓ったんだ。力を使い果たしただけで済んだ方が凄い。

「じゃあ、その生命力を補えばいいんだな?」

〈はい。そして、足りていない栄養を補給すれば、自ずと回復していきます。〉

 マルチタスクを使いながら、どうすればいいか高速で考えていく。

「椿、葵。霊脈を使えば補えるか?」

「...ええ。でも、そこまで持たないわ。」

 ...つまり、霊脈がある場所...八束神社まで彼女を生き永らえれば良い訳だ。

「条件は理解した。後は、それを満たす手段だ...!」

 自身の記憶を探り、何か手はないか探す。
 グリモワールにそのような魔法が載っていないのは既に理解している。
 載っているのは、どれも傷などを癒すもので、“生命力を補う”魔法ではない。

「...もう、大切な奴が目の前で喪うのは嫌なんだよ...!」

「優輝...。」

 一度目は、志半ばで斃れた。
 二度目は、目の前で自分を庇って殺された。
 三度目は、結局助けられずに、自ら殺した。
 四度目は、目の前まで来たのに、結局届かず仕舞いだった。

 ...その四度目を覆してまで、ここまできたんだ...!

「絶対に...助ける!!」

 時間が足りない?手段がない?そんなの関係ない!
 そのための“創造魔法”だろうが...!

「何か、何か手があるはずだ...!」

 そう。それこそ、アニメとかにある奇跡のような手段が...。
 ....“アニメのような”....?

「そうだ...!」

 そこで僕は一つの手段を思いつく。

「.......。」

 その手段を実行すべく、脳内で術式を組み立てる。

 ...僕は転生者だ。一度は死に、そして生まれ変わった存在だ。
 僕の場合はそれが二回あった訳だけど...今はそれは関係ないので置いておこう。

 Fateというゲームやアニメ、漫画に“宝具”と呼ばれる切り札が存在する。
 大体がとんでもない攻撃力や、特殊能力を持っている。
 それは、その宝具の持ち主が歴史に残るような事象を基に存在している。
 そして、その宝具を持つ存在は“英霊”と呼ばれる...一度死んだ英雄だ。
 中には反英雄となる真逆の存在もいるが、今は割愛する。

 英霊と転生者...どちらも“一度は死んだ存在”だ。
 そして、僕は過去に“導王”として歴史に名を遺した。
 ...つまり、Fateで言う英霊の条件を満たしているのだ。

 フィクションだから意味がない?
 いや、特典として使えたり、僕自身も“熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)”を模倣した事がある。
 模倣できたという事は、どこかにFateの世界が存在しているという事。
 ...まぁ、詳しい話は置いておこう。

 簡潔に言えば、僕自身に“英霊”としての条件を当て嵌める。
 そして、宝具を使えるようにする。
 恥ずかしい話だが、導王としての僕は“導きの王”などと称えられていた訳だ。
 民を導き、絶望から希望へと変える。そんな偉業が逸話として遺っている。
 これだけで、“英霊”としては十分...!

「(この世界に同じのがあるかは分からない、“別の世界のルール”。普通、それを自分に当て嵌めるのはやり方すら一切分からない事だ。だが...。)」



   ―――“創造魔法”は、それを可能にする...!



「優輝...!?」

 “カチリ”と、何かが切り替わる感覚に見舞われる。
 魔力は使っていない。創造“魔法”とは言ったが、使ったのは“創造”の性質だけ。
 性質を扱うだけなら、魔力は一切使わない。

「優輝の存在の格が、上がった...!?」

「一体何をしたの優ちゃん!?」

 椿と葵が驚愕する。...尤も、その間も延命行為は続けてくれていた。
 まぁ、二人が驚くのも無理はないかな。
 荒唐無稽な話に思えるが、“世界の意思”に意識を傾け、Fateの世界のルールを自身に適用させ、存在を“受肉した英霊”に昇華させたのだ。

「(導王としての“宝具”を使えば、多分(聖司)は救える。だが....。)」

 ...ここまで来て、単純且つ、今はどうしようもない問題に突き当たる。

「....魔力が、足りない....っ!」

「なっ...!?ここまで来てか!?」

 せっかく光明が見えたのに、それを閉ざされる。
 クロノも、そう思ったのか驚いていた。

「くそっ...!くそっ....!ここまで来て...!」

 このままでは目の前で死んでいくのを見るしかなくなる。
 それだけは嫌だと、必死に考えを巡らせる。

「もう、親友を目の前で見殺しにしたくはないんだよ...!」

 ...だけど、どれだけ思考を巡らしても解決策は見えない。
 こうなったらと、無理矢理にでもリンカーコアを活性化させようとする。

「っ、待て優輝!それをすれば君の命が...!」

「知った事か!それに、確実に死ぬ訳じゃない!」

 クロノの制止を振り切り、リヒトを宝具として使用するため、魔力を振り絞ろうとする。

「....優輝さん。」

「奏?なんだ....っ!?」

 その時、奏が何かを差し出してくる。それを見て、僕は目を見開いた。

「...優輝さんの偽物との戦いが終わった時、貰ったままで残ってた...。」

「.....!」

 あの時、まだ使う機会があるだろうと、奏にあげた魔力結晶。
 その残りが、まだ奏の手にあったのだ。

「....使って。これで、司さんを...。」

「........。」

 “奇跡”は、既に一度(聖司)が起こした。アンラ・マンユを倒すという“奇跡”を。
 それと、今ここに(聖司)を助ける手段が確立したのは、皆が起こした“奇蹟”だ。

「...見せてやるよ。“導王”の奇跡を...!」



   ―――そして、もう一つの“奇跡”を、ここに起こそう...!



「んっ...!」

 魔力結晶を奏から受け取り、それを無理矢理飲みこむ。
 幸い、魔力結晶は宝石のような形をしているから、喉で刺さる事はない。

「ちょっ、優輝!?」

「元々、この魔力結晶は僕の魔力でできたものだ。だから、無理矢理にでも飲みこめば、そのまま僕の体に馴染み、魔力が回復する。」

 例え、回復するようにする魔力がなくても...な。

「リヒト!」

〈...今回ばかりは、見逃します!〉

 リヒトが杖の形態に変わる。...これが本来のリヒトの姿だ。

「っ....。」

 杖を握る手が痛む。...が、今は我慢だ。
 時間もない。すぐに取り掛かる。

「...我が身は、人を導きし者。世を照らし、護るべきものを護りし光を持つ者。悪を敷き、善と為り、絶望を消し去る力を手に。導きの光をこの身に...!」

 かつて、今世において初めてリヒトを使った時の起動ワードを呟く。
 それと同時に、魔力が迸る。

「導きの時は来た!我は希望を紡ぎしもの!救われぬ者に救いを、報われぬ者に報いを与えよ!我が力、我が光は、人々の希望となろう!」

 僕を中心に魔法陣が広がる。
 本来ならもっと範囲が広くなるが、今回は部屋いっぱい程度に狭める。

「我が名は導王...導王ムート・メークリヒカイトなり!導きの力を以って、今、汝の“絶望”を打ち砕こう!」

 リヒトが光に包まれ、それに呼応するように(聖司)の体も光に包まれる。
 ...そして、最後の言葉を紡ぐ。

「導きの光よ、今ここに!“導きを差し伸べし、救済の光(フュールング・リヒト)”!!」







   ―――“奇跡”が、“絶望の未来”を蹂躙する。







 リヒトの柄が床を打ち、魔法陣が光り輝く。
 魔力が迸り、金色の光が(聖司)を優しく包み込む。
 その光は、まさに“希望の光”。人を“未来”へと導く光だった。
 衰弱し、血色の悪くなっていた顔はみるみる内に元に戻っていった。

「生命力が...!」

「これなら、もうしばらくは持つよ!」

 ずっと霊力を流し続けていた椿と葵がそういう。

「クロノ!アースラを八束神社へ!そこで生命力を補う!」

「分かった!」

 クロノにそう言って、アースラを八束神社へ向かうよう指示してもらう。

「っ.....!」

「優輝、その腕...。」

「大丈夫...!」

 杖を握り続ける手が痛み、母さんが心配してくる。

「治るのが少し遅れるけど...それで親友の命が救えるのなら惜しくはない...!」

「手が空いている人は栄養補給になるものを用意して頂戴!それと、魔力が少しでも残っている人は八束神社に転移するための魔法を!」

 アースラが地球に向けて動き出し、椿が指示を飛ばす。
 地球にアースラが着くのに約10分かかり、その間に休めば転移一回分の魔力は回復する。

「奏、魔力は残っているか?」

「...まだ、魔力結晶がいくつかと少しだけ...。」

「借りるぞ!」

 宝具を維持するため、奏と一時的にパスを繋いで魔力を借りる。
 宝具に集中するため、魔力結晶での回復は奏任せだ。

「アリシア!ちょっとこっちに来て頂戴!」

「えっ!?何!?」

「深呼吸して、気を落ち着けておきなさい。」

 椿がアリシアを傍に呼び寄せ、少しの間霊力を流すのを中断する。
 もちろん、その間は僕が椿の肩代わりをする。

「霊力を借りるだけなら、これで...!」

「な、何を...!?っ、椿、これって...。」

「貴女の霊力を借りてるのよ。少しの間我慢して頂戴。」

 椿も僕と奏のようにアリシアとパスを繋ぐ。
 霊力を借りられるのは、体力を吸われるのに近いので、感覚はあまりよくないだろう。

「私に、そんな力が...?」

「理由は詳しくは知らないわ。でも、今はそれがありがたいの...!」

 “自分も役に立てる”。そう思ったのか、アリシアは霊力を譲渡するのに集中した。

「優輝のおかげで、完全に安定しているわ...!これなら、確実に霊脈まで持つ...!」

「それがこの宝具の力だからな...!」

 この宝具がなければ、未だに衰弱の方が早かっただろう。
 だけど、この宝具は“絶望”を打ち破るのには最適だ。
 最善の未来を掴むため、この宝具は()()()()凌駕する...!







「着いたぞ!」

「転移!急げ!」

 クロノの声と共に、母さんと父さんが転移魔法を発動する。
 ちなみに、外で待機している皆には、リニスさんが説明しに行っており、だが邪魔をしないように抑えているらしい。

「転移、八束神社!」

 魔法陣が僕らを包み、僕らは八束神社の境内裏へと転移した。



「光輝!結界!」

「ああ!」

「椿!霊脈を!」

「分かったわ!」

 転移してすぐに父さんが認識阻害の結界を張り、椿が霊脈を弄る。
 痛む腕を無視し、(聖司)を抱えて神社の縁側に寝かせる。

「っ、繋げたわ!これで....!」

「...安定...か.....っ!?」

「優輝さん...!?」

「っ、助かる...。」

 霊脈の力が(聖司)に流れていき、生命力を維持するのを確認して宝具を解除する。
 同時に、力が抜けて奏に支えてもらう事になる。

「栄養補給になるものを持ってきたわ!」

「ありがとうございます!」

 プレシアさんが栄養補給となる医療品及び、料理を持ってきた。
 料理は目覚めてからだとして、医療品を使っておく。

「後は...。」

 霊脈から少し霊力を貰い、それを用いて心臓に軽く衝撃を与える。
 心臓マッサージ代わりだ。手でやると今の彼女の体にはそれでも酷だからな。

「ん....。」

「ああっ!?」

「優輝!?...って、人工呼吸か...。」

 さらに、人工呼吸もしておく。
 アリシアがなぜか驚いているが、緊急事態だから無視だ。

「.....っ、ぅ....こほっ、こほっ....。」

「.....!」

「司!」

 (聖司)が弱めの咳をして、目を覚ます。

「...優輝...君....?」

「良かった...!目を覚ましたんだな...!」

 抱き締めはしない。彼女の体に負担がかかるし、僕の今の腕じゃあね...。
 だけど、そうしたい程、僕らは嬉しかった。

「...私...確か...。」

〈はい。マスターは、マスターが覚悟した通りに、確かに生命力の維持が途切れ、衰弱死を迎えようとしていました。〉

 シュラインがそう説明する。...やっぱり、死ぬのを覚悟してたんだな。

「だったら...どうして...。」

「皆が、君を助けるために頑張ったからさ。」

 “なぜ助かったのか”。そういう彼女に、クロノがそう答える。

「...皆が...?」

「....まぁ、あれだ。」

 色々説明が必要だが、簡潔にまとめるとすれば...そうだな。













   ―――お前(聖司)自身の、“優しさの報酬”って訳だ。





「だから、遠慮なく受け取れよ。親友。」













 
 

 
後書き
優輝の英霊(?)化…Fateでの英霊になる条件を自分に当て嵌め、自身を“受肉した英霊”とする事で、宝具を使用可能にした。別の世界のルールなため、本来は不可能だが、そのルールを“創造”した事で、適用させる事に成功した。理論を一切無視した、“考えるな、感じろ”作戦でやった、まさに荒業である。

導きを差し伸べし、救済の光(フュールング・リヒト)…ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
 導王ムート・メークリヒカイトが英霊として存在した場合の宝具である。
 対象の人物及び場所にとって、最善の状況に持っていく事ができる宝具。
 その力は、因果逆転に似通っており、発動したが最後、運命を覆す事すら容易い。
 デバイスのフュールング・リヒトを杖形態にして初めて発動可能。


またfateかよ(今更)。
今回行った事は別の世界のルールを自身に当て嵌め、fate世界での“宝具”を習得したと言った感じです。普通に使う魔法などより、逸話として昇華した宝具の方が効果が高いという事で、優輝はこの手段を選びました。かなり強引ですけどね。自分じゃ、これが限界だったんです...。

正直、王の財宝持っている帝なら、霊薬とかで助けられる可能性があるとか言わないで...。
ほら、ドラ〇もんでも使える道具をなぜか使わない時があるし...。
ちなみに、設定的に全員がその事を失念している感じです。...というか、ギルガメッシュ本人じゃないから把握しきれてないという...。
さて、ようやく解決して、後は後日談です。 
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