魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第3章:再会、繋がる絆
第91話「祈祷顕現」
前書き
技名とか見返してみるとFateの影響が大きいなと思うこの頃...。
それはともかく、第3章ラスボスです。
=out side=
「っ....エイミィ!状況確認!」
衝撃に襲われ、アースラクルーが体勢を整える。
リンディがすぐに指示を飛ばし、現状を確認する。
「はい!先程の戦闘で崩壊していた“闇”が突如膨張!その魔力放出による衝撃かと思われます!そして、測定魔力....っ、SSSを軽くオーバー!おかしいです!核となるジュエルシードがなくなった今、未だに並のロストロギアを超える危険性を保っているなんて...!」
「アースラへの損害は!?」
「....無事です!優輝君の残っていた障壁が緩衝材になった模様。衝撃が来ただけで、損傷はありません!」
急いで態勢を整えていくが、終わったと思った所への異常事態だ。
全員が慌てていた。
「“闇”の膨張...まさか...。」
「........。」
優輝や椿、葵やリニスは感付く。
これは、司に取り憑いていた“ナニカ”なのだろうと。
「...シュライン...優輝君....あれって...。」
「...正体は知らない...が、お前を依代としていた元凶とも言える存在だ...。」
痛む体を抑え、優輝は立ち上がる。
「椿!葵!アレが何かわかるか!?」
「っ....わからないよ。...けど。」
「...“祟り”や“呪い”に近い存在なのは確かよ...!」
魔力を感じられるものの、それ以外の存在だと思った優輝は、椿と葵に聞く。
だが、椿と葵にも正確な正体は分からなかった。
「っ!魔力増大...!第二波、来ます!」
「シールド展開と回避!急いで!」
再び魔力が増大し、アースラのシールドで防ごうとする。
ドォオオオン!!
「っ...!」
「っ、掠った...!右舷一部損傷!」
しかし、シールドでは弱めるのみに留まり、右舷に掠ってしまう。
〈....薄々分かっていましたが、なぜ、あれがここに...。〉
「....シュライン?」
シュラインの呟きに、司が聞き返す。
〈...今で言うならば、概念型ロストロギア“アンラ・マンユ”と言った所でしょうか...。〉
「っ、知っているのかシュライン!?」
正体らしき単語を言ったシュラインに、今度は優輝が驚く。
〈かつて、天巫女はプリエールを襲った災厄を打ち消しました。...その災厄が、あの“負”のエネルギー集合体。今で言う、ロストロギアです。〉
「アンラ・マンユ...。ゾロアスター教に出てくる悪神と同じ名前か...!」
「悪神...仮にも、同じ名前を冠しているなら...。」
「っ、椿!葵!ユーノ!ザフィーラさん!シャマルさん!リニスさん!悪いけど...!」
鎖を創造し、優輝は呼んだ者を引き寄せ、アースラの前に転移する。
「第三波...シールドの再展開は間に合わない...!全力で防がないと...!」
「くっ...全員、疲弊してるのに...!」
魔力や霊力を振り絞り、全員が障壁を展開する。
さらに、優輝と椿、葵、リニスはもう一つ術式を展開し、砲撃魔法も放つ。
「ぁあああああああああああっ!!」
そして、第三波の“闇”の衝撃波が襲った。
「優輝君たちの障壁と第三波が拮抗!...でも、これじゃあ...!」
「っ...どうすれば...!」
戦力は出し尽くし、ほぼ全員が疲弊しきっている。
そんな状態では、決して“勝てる”とは思えない。
「シュライン...!」
〈“負”のエネルギーが集まり、再び現れた...という事ですね。...だとすれば、並の人間では手に負えません...。〉
「そんな...!」
いくら優輝が並外れた強さを持っているとはいえ、激戦の後だ。
力が落ちている今、“並”の範疇に収まってしまっている。
〈...神降し状態の優輝様であれば、倒す事も可能でしたが....。〉
「っ.....。」
打つ手なし。そう思って、司は俯く。
〈...マスター。〉
「....何、かな...?」
“自分を助けに来たがために、こんな事になった。”
そう考えてしまう司に、シュラインが声を掛ける。
〈...“死”を、覚悟できますか?〉
「...どういうこと?」
〈貴女が覚悟を決めれば、アンラ・マンユは消滅させる事ができます。ですが、それは他の方々の協力の下に成り立つ話です。おまけに、それでも五分五分な上、貴女は―――〉
「分かった。どうすればいいの?」
シュラインの言葉を遮るように、司は了承する。
「皆だって、私を助けるために、命を賭けたの。だったら、私だって相応の覚悟くらい、見せなきゃ。」
〈....そうですか。ですが、理解しておいてください。例えアンラ・マンユを滅した所で、貴女は....。〉
続けられたシュラインの言葉に、司は黙って頷いた。
...それすらも、覚悟しているかのように。
「ぐっ....はぁ....はぁ....!」
「まずい...ね...!」
全員が膝をつき、疲弊しきっている。
ギリギリ第三波を防ぐ事は成功した...が、そこで体力は尽きてしまった。
「...その刀は使えないのですか?」
「使えるには使える。...けど、後一太刀が限度だ。それ以上は、形が保てなくなる。それに、たった一撃じゃあ、アレは消せない。」
リニスの問いに、優輝はそう答える。
既に優輝が創造した刀の耐久値は限界なのだ。
元々体に残る神力を寄せ集めて創り出したため、保てる時間も長くなかった。
「どうすれば...。」
「......。」
優輝も、椿も、葵も、打開策を考えるが、一切浮かんでこない。ほぼ詰んでいるのだ。
例え優輝が先程のような強化をしようにも、倒す前に体に限界が来る。
「っ、魔法陣...!?これは...司!?」
「えっ!?」
リニスの声に、優輝が驚く。
「.....。」
「どうしてここに...!?」
シュラインを携え、ジュエルシードと共に転移してきた司に、優輝が問いかける。
「アレは天巫女が...私が倒さないといけないから...。」
「...お前....。」
覚悟を決めた瞳を見て、優輝は引き下がる。
「...一人で突っ走るなよ。」
「分かってる。...行くよ、シュライン、ジュエルシード。」
司の言葉に呼応するように、ジュエルシードが淡く光る。
「祈りよ集え、願いよ集え...。我が力を以って、ここに現と成そう。我が名は聖奈司...天巫女の末裔なり!」
〈Prayer system limit release.〉
シュラインが司の声に応えるようにそう呟いた瞬間、ジュエルシードが輝く。
そして、膨大な魔力が溢れ、司の防護服が聖女のような姿になる。
「天巫女の名を以って命ずる..ジュエルシードよ、その力を解き放て!」
「これ、はっ....!?」
そこへ、再び“闇”からの攻撃が迫る。
シールドは既に再展開しているが、防ぐ事はできない。
「はぁあああっ!!」
...だが、その攻撃を、司は相殺した。
「アンラ・マンユ...この世全ての“負”を取り込み、肥大化し続ける災厄....今再び、天巫女の力を以って滅する...!」
〈シリアルⅠ、Ⅱ、Ⅲ、魔力開放。〉
―――“サクレ・クラルテ”
さらに、司の力に反応したのか、アンラ・マンユから触手が伸びる。
それに対し、司はジュエルシードから砲撃魔法を放ち、それらを薙ぎ払う。
「皆!援護をお願い...!」
「...了解...!勝つぞ、司!」
「うん!」
“闇”が最深部があった所に集まり、一つの塊となる。
その瞬間、本当の戦いが始まった。
「っ!煌け流星!」
〈シリアルⅣ、Ⅴ、魔力開放。〉
―――“エトワール・フィラント”
振るわれる触手に対し、司が魔力弾で弾く。
「弾ききれない...!」
「っ、ユーノ!ザフィーラさん!」
「分かった!」
「承知!」
だが、一つ弾き損ねてアースラへと襲い掛かる。
そこへ優輝とユーノ、ザフィーラが飛び出し、相殺を試みる。
「縛れ、鎖よ!」
「“チェーンバインド”!!」
「はぁあああああっ!!」
優輝とユーノが鎖で勢いを弱め、ザフィーラが障壁を張って防ぐ。
しかし、それでも抑えきれない程の威力を持っていたので...。
「“霊撃”!」
「“刀奥義・一閃”!!」
間髪入れずに優輝が霊力の衝撃波を放ち、すかさず葵が一閃で弾く。
「(一つの攻撃を弾くのにこれほどか...!きついな...!)」
たった一回の攻撃を...しかも、討ち漏らしただけの攻撃を凌ぐのに、計四人の力が必要だった事に、優輝は戦慄する。
「(くそ...!ここまで来て司に頼りっきりか...!)」
「撃ち貫け...極光よ!」
〈シリアルⅥ、Ⅶ、Ⅷ、Ⅸ、魔力開放。〉
―――“サクレ・リュエール・デ・ゼトワール”
攻撃を防いだ瞬間に、司が極光を放ち、アンラ・マンユへと突き刺さる。
ギィギ■■ギギ■■■■ギィイイ■■■!!
「っ....!?」
形容し難き“声”を上げ、アンラ・マンユが苦悶する。
効いていると分かったのはいいが、その“声”だけで、優輝達の精神が削れる。
「...!護るべき者達に、聖なる加護を!」
―――“Sanctuary”
そこへ、司が広範囲に魔法を展開する事で、皆を守る。
「(防御に集中しても勝てないし、攻撃に集中する事もできない...。長期戦は虚数空間が現れ始めている時点でこちらの方が不利。...防御か攻撃、少しでも僕らで補わないと...!)」
埒が明かないどころか、自分たちを守っている司の方が不利だと悟った優輝は、すぐさま打開するための行動を起こす。
「クロノ!まだ戦闘が可能な人を全員こっちに寄越して!少しでも援護する!」
『っ...了解!それしか僕らにできる事はなさそうだ...!』
クロノへ通信を行い、アースラ内に残っていた者達が外に転移してくる。
同時に、アースラからも攻撃を行い、アンラ・マンユの攻撃を逸らそうとする。
「(圧倒的質量...!導王流じゃ受け流せない...!)」
「...守って!」
〈シリアルⅩ、魔力開放。〉
―――“バリエラ”
アースラの支援砲撃を物ともしない触手を、司が展開した障壁で防ぐ。
「クロノ!指示頼んだ!」
「了解!とりあえず、リインフォースははやてとユニゾン!なのは、フェイト、はやての三人は魔力を溜めておけ!他の者は、それぞれ協力して攻撃を逸らす事に集中!決して気を抜くな!」
指示をクロノに任せ、優輝は今持っている全ての魔力結晶を取り出しておく。
「(攻撃をするのはむしろ悪影響。攻撃は任せておいた方がいい。...かと言って、相殺し損ねた攻撃一つで四人必要だった事を踏まえると...。)」
優輝が高速で思考を巡らす間にも、司とアンラ・マンユの攻防は続く。
「....一発一発を全力...行くぞ、椿、葵。」
「....わかったわ。」
「手数よりも威力...だね!」
そして、椿と葵に声を掛け、葵がユニゾンする。
「輝け、星々よ!」
〈シリアルⅩⅠ、ⅩⅡ、ⅩⅢ、ⅩⅣ、魔力開放。〉
―――“エトワール・スプランドゥール”
その間に、司が多数の魔力弾を展開し、触手を相殺。
さらに、次々と放たれる“闇”の弾幕も撃ち落としていく。
「あの“闇”には、決して触れないで!」
「っ...!“サンダーレイジ”!」
「“トールハンマー”!!」
撃ち落とし損ねた弾幕を、リニスとプレシアの砲撃魔法が撃ち落とす。
「翔けよ、隼!」
〈“Sturmfalken”〉
「打ち砕け!!」
〈“Zerschlangen Schlag”〉
「アタックスキル...“Fortissimo”!!」
さらにシグナム、ヴィータ、奏の遠距離攻撃が放たれ、アンラ・マンユの攻撃を妨害する。
「光よ、闇を祓え!」
〈シリアルⅩⅤ、ⅩⅥ、ⅩⅦ、ⅩⅧ、ⅩⅨ、ⅩⅩ、魔力開放。〉
―――“サクレ・クラルテ”
再び司から砲撃魔法が...それも、先程よりも圧倒的に数を増して放たれる。
それらは、アンラ・マンユが展開していた触手や弾幕を全て薙ぎ払う。
さらに、幾重もの数が放たれたため、それらを突っ切って光が“闇”に突き刺さる。
ギギギィイ■■■ィイイ■■■■■■ィァアアアア!!!!
「っ...!我が聖域は、何人たりとも侵させぬ...!」
〈シリアルⅩⅩⅠ、ⅩⅩⅡ、ⅩⅩⅢ、ⅩⅩⅣ、ⅩⅩⅤ、魔力開放。〉
―――“アンビュラビリティ・サンクチュエール”
形容し難き“声”と共に、今度は物理的な衝撃波が放たれる。
それを、司はアースラごと包み込むように障壁を張って防ぐ。
〈...ここに来て、ようやく本気ですか...!〉
「ぐ、ぅぅ....!」
防ぎきったものの、アンラ・マンユはようやくここで“本気になった”。
それに対し、司は放たれ続ける衝撃波に押されていた。
「(...本来なら、天巫女がその身を賭して倒す程の相手だ。...それも、ちゃんと“天巫女として成長した”存在が...だ。司だと、天巫女としての経験はなく、おまけに僕らを庇いながら...。例えジュエルシードが揃っていても、これでは...!)」
劣勢になっていく状況に、優輝は思考を巡らす。
付け加えて言えば、既にジュエルシードは優輝との戦いで消耗していた。
それも劣勢の要因となっているのだ。
「(とにかく、追撃を弾く!)」
〈“Twilight Spark”〉
「羽ばたけ、焔よ!」
―――“Vermillion Bird”
追撃として迫っていた触手を、優輝と椿の一撃が吹き飛ばす。
...一応、優輝達は不利になるのを予想はしていたのだ。
そのため、対策として一撃一撃を全力で放っていた。
「ぐっ...!」
「優輝!」
「...大丈夫だ。...くそっ、これでも全体の僅かしか相殺できないか...。」
度重なる戦いで、体がボロボロな優輝は膝をつく。
そうまでして放った一撃だったが、それでもほとんど相殺できていない。
「っ...!“ナインライブズ”!!」
「太陽の輝きをここに...“ガラティーン”!!」
「光よ、邪悪を断て!“カリバーン”!!」
神夜、光輝、優香の高威力の砲撃魔法が放たれ、さらに追撃を相殺する。
だが、いくら高威力の砲撃を放っても相殺するには足りない。
「っ...!ぁあっ!」
〈シリアルⅠ、Ⅲ、ⅩⅩ、魔力開放。連鎖相乗。〉
―――“サクレ・ぺネトラシオン・クラルテ”
三つのジュエルシードが重なり、連鎖反応を起こすように魔力を開放する。
そのまま押し出されるように砲撃魔法が繰り出され、触手と弾幕を突き破ってアンラ・マンユに直撃する。
「っ、今だ!撃ち落とせ!威力が足りないならば、防御魔法で防ぐんだ!」
その一撃にアンラ・マンユの攻撃が一瞬止まる。
すぐさまクロノが指示を飛ばし、その通りに全員が行動を起こす。
「もう一回...!」
〈シリアルⅡ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅷ、魔力開放...!〉
司もすぐに体勢を立て直してシュラインを構える。
その間にもシグナムや椿が矢で触手を弾き、帝と優輝が大量の武器群で弾幕を相殺する。
ヴィータ、光輝、優香がさらに触手を撃ち落とし、それでも相殺しきれなかった攻撃はユーノ、ザフィーラ、シャマル、アルフによる防御魔法で凌ぎきる。
「もう一度よ...!今度は、さらに強いわよ!」
「三撃を以って撃ち貫け...!」
「悠久なる凍土 凍てつく棺のうちにて 永遠の眠りを与えよ 凍てつけ!」
―――“トールハンマー”
―――“三雷必殺”
―――“エターナルコフィン”
攻撃を防ぎきった所で、プレシアとリニス、クロノの魔法が放たれる。
アンラ・マンユには届かないものの、“道”を作る事に成功する。
「撃ち貫け...極光よ!」
―――“サクレ・リュエール・デ・ゼトワール”
そして、そこへ司の砲撃魔法が通る。
だが、アンラ・マンユも無防備で受けるはずがなく、“闇”を集めて防御される。
「っ....!(やっぱり、このままじゃダメ...!何か、強力な一撃を...!)」
「.......クロノ。」
「...わかった。これ以上やってもジリ貧だな。」
先に持久力が尽きる。それが理解できた司は焦る。
それを見た優輝はクロノに目配せをし、クロノも頷く。
「...司、今撃てる最高の魔法を使ってくれ。」
「えっ...?でも、放つのに時間が...。」
「それぐらい、僕らが稼ぐ。...僕らを、信じてくれ。」
「......わかったよ。....シュライン。」
真っすぐ見つめてくる優輝の瞳を見て、司はこの方法しかないと判断する。
...それと、信じているのだ。優輝を。仲間を。
「今撃てる、最高の一撃を...!」
〈全シリアル、魔力開放。充填開始...!〉
「信じるよ、優輝君、皆...!」
そして、司はシュラインを構えて魔力を溜め始める。
それと同時に、アンラ・マンユの攻撃が迫る。
「(刀の使い道は決めてある。なら、今は...!)リヒト!シャル!」
〈はい!〉
〈任せてください!〉
「魔力結晶開放!行くぞ...!」
その攻撃の正面に立つように、優輝がグリモワールを持って構える。
リヒトとシャルにも放つ魔法の制御を任せ、15個の魔力結晶を使用する。
「打ち砕け、極光!全てを破壊し尽せ!」
―――“ミョルニル”
迫る触手と弾幕に対し、極光を放つ優輝。
込められた強大な魔力によるプラズマを纏い、その極光は放たれた攻撃を相殺する。
「が、ぁあ....!?」
〈っ...!反動が...!〉
「これぐらい...承知...!」
司が使っていた砲撃魔法に匹敵する威力だが、その反動で優輝の腕が焼け爛れる。
すぐに残った魔力結晶を用いて回復魔法をかける。
「っ、今だ!!」
「なのは!フェイト!はやて!」
一時的とはいえ、攻撃を相殺した。
その一瞬の隙を利用し、クロノがなのは達に指示を出す。
「これが...!」
「私たちの...!」
「全力全開や!」
―――“Starlight Breaker”
―――“Plasma Zamber Breaker”
―――“Ragnarök”
三人が溜めに溜めた魔力が開放され、極大な砲撃魔法が放たれる。
なのはの砲撃がフェイトとはやての砲撃を螺旋を描くように纏い、突き進む。
「(ずっと魔力を溜めていた...。なのはの魔法は空気中に魔力が多ければ多いほど蓄えられる威力が増す...!ここまで時間を稼いだものなら...!)」
ドォオオオオオオン!!!
優輝が思考した通り、三人が放った魔法はそれこそ司の一撃を上回る程だった。
迫りくる触手や弾幕を薙ぎ払うように突き進み、アンラ・マンユを怯ませた。
「今だ!全員、結界で抑え込め!」
正真正銘、司を除いて最強の攻撃。
その結果を無駄にせず、間髪入れずにクロノが指示を出す。
「“強装結界”!!」
ユーノが繰り出した結界を、全員で強化してアンラ・マンユを閉じ込める。
この結界は、かつて一般局員だけで張ったものでさえ、ヴィータやザフィーラを閉じ込め、内側からでは強力な一撃でなければ破れないと言われたものである。
それを、結界魔導師であるユーノが張り、全員がそれを強化する。
「結晶の全魔力...持っていけ...!」
「全員で抑えているのに、それでもこれか...!」
優輝が持っていた魔力結晶を全て使い、他の皆も魔力を振り絞る。
しかし、それでも気を抜けば即座に結界が破られてしまいそうになる。
「耐え抜け...!アレに攻撃をさせるな....!」
全員が魔力を振り絞り、アンラ・マンユを抑え込む。
止められる時間はごく僅か。
〈....魔力充填完了。...いつでも行けます。マスター。〉
「....うん。」
...そして、“時”は来た。
「...祈りは天に、夢は現に。想いを束ねて形と成せ...。」
その祝詞のような司の声が、魔力が迸る空間の中、響き渡る。
「願いは集いて奇跡となる。聖なる光を今ここに....。」
25個全てのジュエルシードが輝きながら司の周りを旋回する。
司もシュラインを掲げ、淡い神秘的な光に包まれていく。
「“闇”を祓え、“絶望”を祓え!奇跡の光は、今ここに顕現する!」
一際光が強まり、詠唱が終わる。
...その瞬間。
「っ、結界が....!?」
「司!」
結界が破られ、アンラ・マンユの魔力が揺らめき、今にも襲い掛かろうとする。
「っ――――!?(間に..合わない.....!)」
既に一つの魔法を起こそうとしている。回避も防御も不可能。
かと言って、他の者では防ぐ事も不可能だ。
そして、先に魔法を放つ事もできない。
万事休す...誰もがそう思っていた。
「.....させるかよ。」
....ただ一人を除いて。
「優輝、君...?」
「...任せな。」
優輝が司の横に立ち、安心させるように微笑みながらそういう。
「...シャル、無理させる事になるが...構わないな?」
〈...はい。マイスターに任せます。〉
「オーケー。なら、存分にやってやるか!」
〈Bogen form〉
シャルを弓の形に変え、それに神刀・導標を鞘から抜き、矢のように番える。
元々創造魔法によって創り出した刀なため、みるみる形状が矢へと変わる。
...そして、アンラ・マンユの魔力がついに砲撃となって放たれた。
「...道を拓きて、標となれ!“今こそ、道を拓く時”!!」
一筋の閃光が、優輝の弓から放たれる。
同時に、弓はボロボロになり、シャルは強制的にスリープモードに入る。
また、優輝の回復しかけていた腕も再び焼け爛れ、簡単には回復できなくなる。
カッ―――!!
「魔力の砲撃に、穴が...!」
...その代償による成果は、絶体絶命の状況を書き換えた。
アンラ・マンユから放たれた極太の砲撃の中心に穴が開き、台風の目のようになる。
アースラはその穴を通るように砲撃に当たらずに済む。
...だが、それはほんの僅かな時間だけ。
形を持たない魔力の砲撃であれば、すぐに開けられた穴は閉じるだろう。
―――....尤も...。
「行け....!司!!」
「っ....!」
―――その僅かな時間で、全てが終わる事になると、優輝は確信していた。
「祈祷顕現...!“天翔ける、巫女の祈り”!!」
光が、全てを呑み込む。
司が発動させた魔法は、全ての“闇”を打ち消すように広がり、優しく包み込む。
アースラを消し去ろうとする砲撃をも、その光を前に掻き消えた。
其れは、まさに“祈り”そのもの。
安心を、平和を、平穏を願う、人々の祈りの....その極み。
“闇”を、“絶望”を祓うために特化したその祈りは、アンラ・マンユすら打ち消す。
ジュエルシードも全ての力を使い、“負”の集合体を完全に消し去ったのだ。
後書き
アンラ・マンユ…概念型ロストロギアという珍しいタイプのロストロギア....と言っても、厳密にはロストロギアではなく、“負”の概念が集まった意思を持つエネルギー集合体のようなものである。かつて、天巫女がその身を賭して滅した存在だったが、生物の“負の感情”がある限り在り続ける存在なため、再び現代に出現し、司を依代として戦力強化していた。
サクレ・クラルテ…フランス語で“神聖”と“光,輝き”の意。天巫女(withジュエルシード)の本気の一端。優輝が扱っていた時と違い、正真正銘全力全開のジュエルシードから放たれる砲撃魔法。威力は通常の優輝のトワイライトスパークを軽く凌ぐ。
エトワール・フィラント…“流星”のフランス語。流星の如き魔力弾を多数放つ。一発一発が並の砲撃魔法じゃ歯が立たない程の魔力を持っている。
サクレ・リュエール・デ・ゼトワール…サクレ・クラルテの上位互換。フランス語での“神聖”と“星明り”の意。上位互換なので、サクレ・クラルテと威力や範囲以外変わらない。なお、威力はトリプルブレイカーを凌ぐ。
バリエラ…“障壁”のフランス語。天巫女の全力では基本系の防御魔法。なお、それでも相当な強度を誇る。
エトワール・スプランドゥール…“星”、“輝き”のフランス語。眩い輝きを放つ魔力弾を多数展開し、攻撃する。エトワール・フィラントの上位互換。
トールハンマー…プレシアの持つ単発魔法ではトップクラスの威力の砲撃魔法。シンプルだが、それ故の高威力を持つ。
Zerschlangen Schlag…ヴィータのシュワルベフリーゲンをさらに一撃特化にしたような魔法。威力は単発な分高い。意味は“砕く一撃”。
アンビュラビリティ・サンクチュエール…全力の天巫女が扱う中でもトップクラスの防御力を誇る防御魔法。意味は“不可侵の聖域”。
ナインライブズ…神夜の扱う中でも強力且つ使い勝手の良い魔法。九つのホーミングレーザーを放つ。Fateの宝具であるナインライブズを魔法に転換したもので、宝具ではない。
ガラティーン…光輝の扱う魔法でもトップクラスに強い砲撃魔法。炎で薙ぎ払うかのような砲撃を放つ。威力の割には低燃費。飽くまで魔法名なだけで、武器とは関係ない。
カリバーン…優香の扱う魔法でトップクラスに強い砲撃魔法。被弾した箇所で光が炸裂し、さらにダメージを与える。もちろん名前だけで、アーサー王とは一切関係ない。
なんだこの新技の大盤振る舞い...。後書きが...。
載せきれなかった技は次回に載せます。
イメージとしては、一部のゲームにある最終決戦でのイベント戦です。所謂“負ける気がしない”的な。...その割に滅茶苦茶苦戦してますけどね。OPのオーケストラアレンジが掛かりそうな場面です。
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