IS~夢を追い求める者~
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第2章:異分子の排除
第43話「システムU-D」
前書き
唐突なリリなの展開。
さすがに原作ほどの強さはありません。あったら桜でもきつい...。
=out side=
「....は?」
“してやった”。そう思った一夏だったが、目の前の出来事に唖然とする。
「【搭乗者の精神ダメージ、深刻。保護のため、“外敵”を排除します。】」
「なっ....!?」
途轍もない嫌な予感がし、一夏はすぐにユーリから離れるように逃げる。
その時、エグザミアからあるものが三つ飛び出す。
「っ...!?」
「ええっ!?」
「くっ...!こやつ...!」
デフォルメされたサイズの人形のようなもの...チヴィットだ。
当然、人格としてシュテルたちも宿っていた。
「弾き出された...!?それほどまでに、ユーリの心を守るつもりですか..!?」
「それよりも、このままじゃ船が...!」
「ええい...!レヴィ!貴様は待機している者を呼んで来い!」
ディアーチェがレヴィにそう指示を出し、すぐに行動に移す。
それと同時に、シュテルとディアーチェは杖を取り出し、構える。
「ぐっ....!」
「ぬぅ...!」
そこへ、エグザミアから羽のようなもの...魄翼が生え、それが二人に振るわれる。
「シュテるん!王様!」
「我らに構うな!行け!」
「っ...!」
杖で防いだものの、二人は大きく吹き飛ばされる。
元々、チヴィットという体では、体格差で大きく不利なのだ。
「シュテル!あの船を死守するぞ!」
「分かっています!」
船を守ろうと、体勢を立て直すシュテルとディアーチェ。
しかし、それに見向きもせず、ユーリ...否、U-Dは一夏へと向かう。
「っ....!」
「【精神ダメージの原因、捕捉。】」
「がぁっ!?」
突然の展開についていけなかった一夏は、U-Dの接近を許してしまう。
そのまま、振るわれた魄翼によって、一夏は海へと叩きつけられる。
「【眠れ...“エンシェントマトリクス”...!】」
「ぅ、ぅぁああああああ!!?」
体勢を立て直す暇もなく、U-Dはエネルギー状の槍を撃ち出す。
それに対し、一夏は錯乱しながらも零落白夜をぶつける。
「ぁああああっ!?」
だが、エネルギーを削ったものの、槍は炸裂し、一夏は海へと落ちる。
「【.......。】」
「っ...!“ブラストファイアー”!!」
追撃を加えようとするU-Dに対し、シュテルが砲撃を放って妨害する。
「ユーリに人殺しはさせません...!」
「先程の技、おそらくSEを大きく消費したはずだ!持久戦に持ち込めば、こちらが有利だ!」
チヴィットとはいえ、別個のSEが内蔵されている。
ユーリが今まで使っていなかった分、大量に蓄えられているため、シュテルやディアーチェでもISを相手にすることは可能だった。
「【....単一仕様、“砕けえぬ闇”。】」
「っ....!?」
U-Dがそう呟いた瞬間、接近され、魄翼を振るわれる。
それを辛うじて躱すシュテルとディアーチェだが...。
「“パイロシューター”!」
「馬鹿な!?あれほどのエネルギーを使って、なお...!?」
追撃として放たれたエネルギー弾に、戦慄する。
咄嗟にシュテルが相殺したが、明らかにSEの残量を考慮していなかったのだ。
「単一仕様か...!」
「そのようですね...!」
明らかにSEを大幅に消費する行動なのにも関わらず、攻撃の苛烈さは変わらない。
その事から、単一仕様による特殊効果の恩恵だと二人は確信する。
「【....AI、邪魔をするな。】」
「ふん。それは聞けぬな。」
「正直、織斑一夏を助ける気はありませんが...それでも、ユーリに人殺しはさせません。」
U-Dの言葉をきっぱり断り、対峙するシュテルとディアーチェ。
「【そうか。ならば...。】」
「っ、来るぞ!」
「.....!」
「【堕ちろ。】」
魄翼が振るわれ、それを二人は躱す。
しかし、体長の差もあり、すぐさま振るわれた二撃目に吹き飛ばされてしまう。
「ぁあ...っ!?」
「ぐ、ぅ...!」
空中で体勢を立て直し、追撃を対処しようとする。
予想通り追撃してきたので、二人はそれを避けようとして...。
ギィイイン!
「っ....!」
駆け付けたマドカによって助けられた。
「シュテるん!王様!」
「レヴィ!...間に合ったか...!」
数瞬遅れてレヴィも駆け付け、間に合ったのだとディアーチェは安堵する。
「なんでユーリが...!?」
「アレはユーリではありません。U-D...エグザミアの意思です。」
「エグザミアの...!」
さらに秋十とラウラも合流し、なぜユーリが暴走しているのかを簡単に聞く。
「はぁあっ!」
ギィイイン!
「っ....!」
マドカが魄翼を弾き、ラウラが射撃で間合いを取らせる。
「桜さんとアイツは!?」
「どちらも海に落ちました!また、福音もです!それと、密漁船が...。」
「っ....!」
マドカはすぐに状況を判断し、今取るべき行動を選ぶ。
秋十とラウラもすぐに動けるように身構える。
「...シュテル達チヴィットは船の護衛と誘導!秋兄とラウラは落ちた二人と福音の捜索と回収!...私が時間を稼ぐから、急いで!」
「分かった!」
「しくじるなよ!」
全員が、ほぼ同時にに動き出す。
振るわれる魄翼を、マドカが逸らし、その間に秋十とラウラは海へ。
シュテル達は船の方へと飛んでいく。
「ぐぅ...!重い....!」
魄翼の一撃を次々と逸らすマドカだが、想像以上の重さに戦慄する。
「【単一仕様の効果なのか、SEの残量はほぼ関係ないものだと思ってください!】」
「了解...!はぁっ!」
ギィイイン!!
シュテルからの忠告を受け取り、気合一閃。魄翼の一撃を弾く。
「さて...しばらく付き合ってもらうよ!」
すぐさま構え直し、救出が終わるまでの時間稼ぎを続けた。
「くそっ...!あのバカ野郎、余計な事しやがって...!」
レヴィから軽く何があったから説明を受けていた秋十は、悪態をつきながら捜索する。
「ラウラ、福音は頼んだ。」
「了解した。」
ラウラと二手に分かれ、秋十はまず桜を探し出した。
「(...見つけた!)」
すぐさま一夏の方も見つけ、どちらも一度海の上に引き上げる。
「(腹部貫通...常人なら出血多量で死ぬ所だけど...さすが桜さん。)」
腹部から血を流し続ける桜を見て、秋十は改めて桜の凄さを実感する。
「(船は...大丈夫か。後はラウラを待って、何とか全員で離脱を...。)」
間近で戦闘を見ていたからか、逃げるべきだと思っていた船に乗っている人たちは、シュテル達の誘導に従って戦闘区域から離脱を始めていた。
「兄様!こちらも見つけた!」
「よし...マドカ!」
ラウラも福音を見つけ、秋十がマドカに呼びかける。
「なっ...!?」
「ぐぅ....!」
ギィイイン!
だが、その際に見た光景に秋十は驚いていた。
...完全にマドカが押されているのだ。
「(予備ブレードは残り二本...既に二本折られた上に、SEも残り少ない...!)」
「...あのマドカが劣勢...!?」
魄翼によって攻撃が防がれ、さらに反撃も強力なため、さしものマドカも全く決定打を打てず、相当追い詰められていた。
「(時間稼ぎは十分...。後は...。)」
「はっ!!」
「....!」
援護として、秋十が投擲用のブレードで、ラウラがライフルで攻撃する。
その二つの攻撃は魄翼で防がれてしまうが、マドカにはそれで充分だった。
「はああっ!!」
ギィイイン!!
力任せに振り抜く強力な一閃を放ち、U-Dを後退させる。
即座に煙幕用のグレネードを投げ、目暗ましを行う。
「離脱!」
「よし!」
マドカの声を合図に、一気に三人は離脱する。
...後に残ったのは、魄翼に包まれるように佇むユーリだけだった。
「っ...!篠咲君から通信です!」
旅館にて、秋十からの通信を受信する。
「...何があった?」
【作戦は半分成功、半分失敗です!....桜さんが負傷、ユーリは気を失って暴走状態です!どうやら、密漁船があった事で、状況が乱れたようで...。】
「なっ....!?」
“桜が負傷した”。その事実に千冬が驚く。
【ユーリの暴走...チヴィット達によると、エグザミアの意志が表に出ているようですが、全く手が付けられません!幸い、追ってきてはいませんが、今の状況では倒す事も不可能です。】
「っ...そうか...。」
桜がやられた事に驚きつつも、平静を保って千冬は答える。
【詳しくは、戻ってから話します。】
「了解した。....くっ....。」
通信を切り、苦虫を噛み潰したような表情で思わず机を叩いてしまう。
「....これも、予想通りなのか。束。」
「.........。」
通信をじっと聞いていた束に、千冬は問う。
「...予想通りかどうかで言えば、完全な予想外だよ。...まさか、エグザミアがあそこまでゆーちゃんを大事にしてただなんて思わなかった。」
「なに...?」
珍しく真剣に答える束に、千冬も詳しく聞こうと向き直る。
「あっ君は暴走って言ってたけど、チヴィットが言ってた事が本当なら、ゆーちゃんは暴走してないよ。...というか、今のゆーちゃんはおそらく精神が不安定だと思う。」
「どういうことだ。」
「...エグザミアが、ゆーちゃんの心を守ろうと表に出ているという事。それを邪魔されたくないのと、その原因を排除するために手が付けられない事になっているんだと思う。」
エグザミアに関するデータを自前の端末から提示し、束はそう説明する。
「そんな事がありえるのか?」
「ありえるよ。ゆーちゃんのエグザミアは他のISと違って“番外世代”。AIや、ISの意志を重視した機能を持っているから、その分他のISよりも意志が強いの。」
「....なるほど、な...。」
束のいう事なら間違いないだろうと、千冬は納得する。
「それにしても、エグザミアは過保護だね。ここまでする事ないのに。」
「...エーベルヴァインの心が傷ついた原因は分かるか?」
「チヴィットなら知ってると思うよ。...まぁ、私も予想はついてるけど。」
溜め息を吐きながら、呆れたようにそういう束。
「帰ってきてからチヴィットに聞けばいいけど...私の予想でも聞いておきたいみたいだね。」
「...ああ。大事な生徒だからな。」
「皆も気にしてるみたいだし...でもちーちゃん、一応覚悟しておいてね。」
「...?何をだ?」
「家族を見限る覚悟をね。」
その言葉に、千冬が何かを言う前に束は自身の予測を述べる。
「ゆーちゃんの心が傷ついたのは、一重に言えばさー君が負傷したから。じゃあ、さー君があれほどまでの実力を持ちながら負傷したのはなぜでしょう?」
「.....まさか....。」
「ちーちゃんの思った通りだよ。....織斑一夏がやったんだよ。」
“敵”に対して、桜が負傷する事は実力的にほぼありえない。
だが、形式上とはいえ“仲間”にやられたのなら?
そう考え、嫌な予感がした千冬だったが、それは的中してしまった。
「漁夫の利というか、さー君が相手にしている所を纏めてグサリとかしたんだろうね。その結果ゆーちゃんに叩き落された訳だけど。」
「なぜ...なぜ一夏が!」
そこまでする奴ではないはずだと、千冬は声を荒げる。
「さぁね。大方逆恨みなんじゃないの?ちーちゃんだって、この臨海学校で今後の接し方を考えていくつもりだったでしょ?ちょうどいい機会だよ。」
「.......。」
「...そろそろ戻ってくるよ。」
いつものおふざけがない分、千冬は束の気迫に押され気味だった。
とりあえずという事で、戻ってきた秋十達を迎えに行くことにする。
「.....内臓に達してます。これだと...。」
「心配ナッシング~!束さん特製ナノマシンがあれば内蔵の傷だって修復しちゃうよ!」
福音を回収し、密漁船にしかるべき対処をした後、千冬達は桜の様子を心配していた。
唯一、束だけは“大丈夫”だという確信を持って、いつもの調子に戻っていた。
「...それで、実際何があったのだ?」
「実は...。」
千冬はシュテル達から経緯を聞く。
「....という訳です。」
「...あの馬鹿者が....!」
事情を粗方聞き、千冬は憤る。あまりにも自分勝手な行動だったからだ。
束の予想通りだった事もあり、その怒りは生半可ではない。
「ちーちゃん、今はあんな奴に構ってる暇はないよ。」
「っ、そうだったな...。...エーベルヴァインを救う明確な方法はあるか?」
束の言葉に、今はユーリを助ける事が先決だと思い、千冬は意識を切り替える。
「...単純に戦闘不能にするか、ユーリを目覚めさせればいいはずです。」
「あれは暴走ではなく、過保護なエグザミアが近付く者を潰しているだけにすぎん。黙らせればそれだけで解決する。」
シュテルとディアーチェがそういう。
とてもシンプルな方法で、難しく考える必要はないが...。
「...しかし、その“倒す”というのが困難です。」
「なに...?」
「...私が途中から相手してたんだけど、本来ユーリの武装はSEを消費するものばかり。零落白夜程ではないにしろ、“魄翼”って武装もSEを消費するよ。...でも、ずっとSEを消費し続けるのにも関わらず、全然出力が変わらないんだよ。」
“まるで、SEが減っていないかのように”というマドカ。
また、消費しているのも確かで、マドカも何太刀か浴びせていたのだ。
それにも関わらず、動きは全く衰えていなかった。
「エグザミアのワンオフだねぇ。今まで発現していなかったから詳しくは分からないけど、能力としてはSEの回復って所かな。紅椿と似てるね。」
「...いや、知らないですけど。」
「あれ?言ってなかったっけ?あ、言ってなかったね!」
初耳な箒に、束はいつものテンションでそういう。
真剣な雰囲気なのに場違いなため、千冬は顔を顰める。
「束...。」
「...わかってるよ。ゆーちゃんは私にとっても大事な子。まーちゃんでも敵わない強さを今は持っているけど、それは一対一での話だよ。」
「.....それは、つまり...。」
一対一ではなく、それ以外ならば。
そう言外に言う束に、秋十は気づく。
「福音と違って高速で動いている訳でもない。なら、複数人で止めに行けばいいんだよ。」
「...そうは簡単に言うけどさ、どうやって倒すの?」
SEを回復されるという事は、そう簡単には倒せない。
操縦者が気絶しても勝てるのがISだが、ISの意志が動かしていれば話は別だ。
「んー...説得?」
「いや、どうやって...。」
「じゃあ、SEの回復の隙を与えない、もしくはそれを上回る攻撃力で、だね。」
あっさりという束だが、それでも難しい事である。
福音と同じく零落白夜が有効に思えるが、速いのとSE回復は異なる。
「...でも、そう悠長に考えてはいられないよ。」
「なに...?」
片手間で何かを操作しながら束がいい、千冬がそれを訝しむ。
「コアネットワークから知ったけど、エグザミアのワンオフの名前は“砕けえぬ闇”。闇属性がある原因だね。効果は...際限のないSEの回復。無限に湧き出てくるって感じかな。」
「ちょっ...!?何それチートじゃない!?」
あまりに反則的な効果に、鈴が思わずそういう。
「当然、デメリットもあるよ。」
「...それは一体?」
「際限のない...つまり、SEは回復し続けるんだよ。...溢れ続けるって言う方が正しいかな?つまり、SEを放出させないとエネルギーは溜まり続けて...。」
そこまで言って束は全員の顔を見渡し、各々が思い浮かべている最悪の想像を肯定するかのように頷いた。
「どうあってもゆーちゃんに負荷がかかる。無事では済まないよ。」
「...だから、すぐに動くべきと。」
「そう言う事。福音と違ってスピードはそこまで速くないから、全員で行ってもいいね。」
時間がない事で判断が迫られる。
マドカが勝てなかったという事は、例え全員でも負ける可能性はある。
それが理解できていたからこそ、空気が重くなる。
「ちーちゃん、対策を考えてる暇はないよ。エネルギーを使う魄翼を展開してても、どんどんエネルギーは蓄積するんだから、早くしないと核並のエネルギーが溜まっちゃう。」
「くっ....お前たちに頼るしかないのが悔やまれるが...やってくれるか?」
時間がないため、苦渋の判断で千冬はそう指示を出す。
「当然。やられっぱなしは性に合わないしね。」
「...クラスメイトとして、助けます。」
「同じ会社、似た境遇なんだ。それに、放ってなんかおけない。」
マドカ、簪、秋十が真っ先に了承する。
当然、断るつもりのなかった他の皆も、次々と了承していく。
「...準備が出来次第、全員で出発してくれ。くれぐれも、死ぬなよ。」
「「「「はい!!」」」」
はっきりと返事し、各々出発するために部屋を出ていく。
残ったのは千冬を含めた複数の教師と、束だけだ。
「....お前はどうするつもりだ。邪魔にさえならなければいいが...。」
「邪魔はしないよ。そうだねー、まぁ、伝えるべき情報があれば伝えるよ。それまでは、さー君の様子でも見に行ってくるねー!」
そういって、束も一度退出し、桜が治療されている部屋へと向かった。
「(....無事に戻ってきてくれ...。)」
残された千冬は、表情には出さないものの、心の中で皆の無事を祈った。
「皆、準備はいい?」
マドカが皆に呼びかけ、皆は頷く。
「じゃあ、行くよ。一度しか戦ってないから、戦法は分からないけど、基本は私と秋兄が対処する。遠距離が得意なら援護、そうでないなら隙を見て攻撃して。」
「分かった。」
「箒、束さんの言っていた事に反して実戦になってしまったけど、行けそう?」
「...なんとかな。足は引っ張らないようにしよう。」
全員、他に意見がないようで、一気に飛び立つ。
「攻撃されたら、決してまともに受けようだなんて考えないで!それと、ユーリの意識は完全になくなってるから、感情に訴えかけるような攻撃は意味ないよ!」
「近距離、遠距離の戦闘技術は?」
「高いとは言えない...けど、それを補って余りあるほどの物量だよ!」
移動しながらも、マドカが得た僅かな情報を頼りにどう動いていくか考えていく。
「...受け止めれないってほどではない?」
「ギリギリってとこかな...。遠距離は射撃と砲撃があって、射撃は受け止められる...でも、砲撃はダメージ覚悟でないと無理だよ。近距離も同じ。」
「そうか...。」
避けるのは必須だと、秋十は理解する。
「...でも、エグザミアの一番恐ろしい所は、そこじゃないんだ。」
「何...?」
「...圧倒的防御力。エネルギーを障壁にしているんだろうけど、それが堅すぎる...!」
それ以外であるならば、マドカはもっと善戦し、攻撃も当てていた。
それほどまでに、U-Dが張った障壁は強固だった。
ちなみに、マドカが当てれた数少ない攻撃は、全て障壁を避けた攻撃だった。
「エネルギーを斬る...それこそ、零落白夜のようなものなら有効だろうけど、それ以外はほとんど通じないと思った方がいいよ。」
「“水”も?」
“水”による斬撃なども無理なのか、簪が尋ねる。
「...完全に習得してあれば、或いは。」
「......。」
そうこうしている内に、ユーリがいる場所へ全員が辿り着く。
「っ....!」
「ユーリ....。」
そこには、魄翼による赤黒い羽に包まれたエグザミアの姿があった。
紫色の、エネルギーのようなものが揺らめき、エネルギーが蓄積している事がわかる。
「近距離は私と秋兄が主に担当するよ!セシリアと簪、シャルは遠距離をお願い!残りはラウラの指示に従って要所要所で援護!」
「「「「了解!」」」」
マドカの掛け声と共に、散開....するはずだった。
「っ...!マドカ!」
「まずい...!エネルギーの放出...!?」
マドカ達に気づいたU-Dは、蓄積していたエネルギーを収束させる。
そして、そのままマドカ達に向けて放った。
「っ....ワンオフアビリティ!“エクスカリバー”!!」
避けきれない。そう察したマドカは、相殺のためにワンオフアビリティを発動する。
SEを消費して極光を放つ事で、U-Dからの砲撃を相殺した。
「ぐっ....!まさか、既にあそこまでエネルギーが蓄積してたなんて...!」
「っ、散開!!」
相殺した代償として、マドカのSEは既に三分の一を下回っている。
先ほどの戦いの分も引きずっているからだ。
すぐさまラウラの声と共に全員がその場からばらけるように動き出す。
「マドカ、まだ行けるか?」
「...当然だよ秋兄。絶対に、止める!」
追撃として放たれた射撃を躱し、秋十とマドカが一気にU-Dに接近する。
ギィイイン!!
「その流れを...断つ!」
二人の斬撃は魄翼によって防がれる。
そこで、“水”の気質の斬撃を繰り出す事で、エネルギーの塊である魄翼を切り裂く。
「【......!】」
「そこだ!」
さらに、セシリアから射撃が繰り出され、それを防いだ隙に秋十が斬りかかる。
「っ....!」
だが、魄翼が変形した事でその斬撃は防がれ、弾き飛ばされる。
「秋兄!!」
「がぁっ!?」
弾き飛ばされた所へ追撃が繰り出され、秋十は防御の上から叩き落された。
念のために“土”を宿していたのにも関わらずに....だ。
「.....私と戦ってた時は、まだ出力が低かったって訳...。」
さっきよりも動きが速く、重い。
そう感じ取ったマドカは、警戒心を最大まで引き上げて、再度斬りかかった。
―――戦いは、まだ始まったばかりである...。
後書き
速さは福音に劣るけど、それ以外がチート性能と化したエグザミア。
真正面からだと全員の攻撃を受け止める事すら可能な防御性能です。
ここから完全に原作と離れます。今まで何気に沿っていましたからね。
...と言っても、もうすぐ終わりなんですけどね。
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