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Three Roses

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第三十三話 落ちる薔薇その一

                 第三十三話  落ちる薔薇
 マイラは日増しに衰えていってだった、そのうえで。
 己の部屋からあまり出ることはなくなり夜もだ、太子と共に過ごすことが目に見えて減っていた。それでだった。
 太子は焦燥を何とか隠しつつだ、彼の側近達に言った。
「どうもだ」
「はい、お妃様は」
「どうにもですね」
「床から起き上がることも難しい」
「そうした状況ですか」
「余と夜を共にすることもだ」
 まさにそれもというのだ。
「出来なくなってきている」
「それも日に日に」
「そうなってきているのですね」
「夜に共にいなければ」
「どうにもならないというのに」
「そうだ、子が出来ることもなくだ」
 それにというのだ。
「我々もだ」
「この国を去る」
「そうしなければなりませんね」
「お妃様の夫としてこの国にいるのですから」
「それでお妃様がいなくなられれば」
「そうなってしまえば」
「この国にいられなくなりますね」
 側近達はそれぞれ苦い顔で述べた。
「残念ですが」
「そうなりますね」
「無念なことに」
「その事態になれば」
「我々にとって最悪の事態だ」
 まさにとだ、太子はまた言った。
「だから何としても避けたくその為に動いているが」
「それは、ですね」
「どうにもなりませんね」
「このことは」
「仕方がないですね」
「報われない時もありますね」
「人の力は限られている」
 太子はあえてだ、この言葉も出した。
「幾ら必死に努力しても報われる時もあればだ」
「そうでない時もある」
「そして今は、ですか」
「どうにも」
「人の命こそそれだ」
 まさにというのだ。
「人の望み通りになる時もあればだ」
「そうならない時もありますね」
「助かる場合もあれば死ぬ場合もある」
「病から救われない場合もある」
「お若くとも」
「そうだ、人の命は時として急に失わるしだ」
 太子はさらに言った。
「何をしても助からない」
「その場合もありますね」
「どうしても」
「お助けしようとしても」
「報わない時もある」
「そなたもそうだな」
 太子は自身の典医を見てだ、彼に問うた。
「救える場合があれば」
「はい、そうでない時もです」
「あるな」
「そうなることも多いです」
 実際にとだ、典医も太子に答えた。
「どうしても」
「やはりそうだな」
「そうです」 78
 その通りという返事だった。
「その時は無念を感じずにいられません」
「やはりそうだな」
「救える命もあれば」
「そうでない命もある」
「命は医師である我々よりもです」
「神だな」
「神のお力によるものです」
 人でない、より大きな存在の裁量によるところが大きいというのだ。 
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