世界に一つだけの花
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第三章
「岩も使える」
「木を削れば槍にでもなる」
「我々も戦えるんだ」
「それなら日本軍と一緒に戦おう」
「あの人達と一緒にだ」
「あの人達には本当によくしてもらったしな」
「死ぬなら一緒だ」
「最後の最後まで戦うんだ」
彼等はこう話して決意した、そしてだった。
代表の者達を出して日本軍の軍人達に申し出た、自分達も一緒に戦うと。だがその彼等に対してだった。
日本軍の指揮官達は声を荒くさせてだ、彼等に叫んだ。
「馬鹿を言え!」
「えっ、馬鹿なとは」
「どうしてですか?」
「貴様等は帝国臣民ではない!」
こう言うのだった。
「ただ下にいるだけだ!帝国軍人がその様な者達と戦えるか!」
「そんな、私達は臣民じゃないですか」
「同胞といつも言ってくれたではないですか」
「日本語も教えてくれて学校も開いて」
「色々してくれたじゃないですか」
「それがどうして」
「今までは嘘だ!嘘を言っていたのだ!」
これが指揮官達の言葉だった。
「そう思え!わかったらさっさとこの島を後にしろ!」
「後にとは」
「では」
「船は用意する、早くこの島を出ろ」
島民達にこうも言った。
「我々は我々だけで戦う、貴様等ごときの助けはいらん!」
「そんな・・・・・・」
「同じ臣民と思っていたのに・・・・・・」
彼等は落胆して司令部から帰るしかなかった、協一もその話を聞いてだ。基地で防衛任務に当たっていた若山の所属する部隊の隊舎に行ってだった。
若山に会って願った、自分も戦うと。
しかし若山もだ、彼に冷たい声で言った。
「駄目だ、君達とは共に戦えない」
「そんな、大尉まで」
「早くこの島を出ろ、そしてだ」
「逃げろっていうんですか」
「我々だけで戦う」
若山もこう言うのだった。
「船が来たら逃げろ、そのうえで生きろ」
「どうしてそんなことを言うんですか?」
「話す必要はない、わかったら帰るんだ」
今の彼等の家にというのだ。
「いいな」
「そう、ですか」
協一は若山の冷たい言葉に肩を落とすしかなかった、そして。
船が来た時に彼等は船に乗った、無念に残念に思いつつ。
そうしたがだ、船が出た時にだ。
日本軍の者達が岸に来て手を振ってきた、島民達はここでわかった。
「そうか、我々を巻き込まない為に」
「生きてもらう為にか」
「あえてああ言ってか」
「逃がしてくれたのか」
「あの人達だけが死んで」
「俺達を生かすつもりなんだな」
「おい、見ろ」
島民の一人が日本軍の中に若山を見付けた、彼によくしてもらった者の一人がだ。
「大尉もおられるぞ」
「あっ、本当だ」
「大尉も来ておられるぞ」
「あの人もか」
「来てくれたんだな」
「大尉・・・・・・」
船には協一もいた、協一は彼を見て言った。
「やっぱり僕達を」
「花のことは頼む!」
若山は協一達を見て彼等に叫んだ。
「今は一つだが後は広めてくれ!」
「わかりました!」
協一が船からだ、若山に応えた。
「蒲公英、広めます!」
「頼んだぞ!」
「はい!」
船の中と岸からだ、二人は最後の話をした。そして手を振り合った。そうして。
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