世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
なのはStrikerS ~フォワード陣、戦闘開始~
「見つけた!!」
ヘリの中で、ティアナが声を上げる。
その視線の先には黒いシルエットをした七人の姿。
捕虜となった彼女たちの「兵器としての」記憶を埋め込まれた「奴」の「欠片」だ。
その数、七体。
対してこちらは四人にフリード、そして二体の使役獣。
「そういえば「奴」って人の使い魔はいないみたいですね」
「でも六課の時に現れたあの三つ首の犬はいきなり現れたし・・・・」
「油断はできないってことだね・・・・・」
『四人とも、準備はいい!?これからあいつらの先に回って、四人を降ろすから今のうちに・・・・』
ドォン!!!!!
「きゃあ!?」
「うわぁ!!!!」
パイロットのアルトが四人を降ろそうとヘリを操ろうとした瞬間、そのヘリを衝撃が襲った。
何が起こったのかもわからぬまま、回転して落ちていくヘリ。
その衝撃と遠心力でハッチが開き、真ん中に立っていて取っ手に手が届かなかったスバルが投げ出される。
「スバルッ!!!」
『大丈夫!!ウイングロードで何とか着地したよ!!』
ティアナがスバルの身を案じ名前を呼んだが、すぐにスバルからの通信が来てほっと胸をなでおろす。
「このまま私たちも行くわよ!!!」
「「はい!!!」」
このまま投げ出されたスバルを一人にしておくわけにもいかないので、残りの三人も飛び降りてスバルと合流する。
しかし
「う、ぐぁッ、ツッ!!お前は!!!」
「エリオ君!!!」
降下中のエリオを、ヘリを襲った衝撃の犯人が襲いかかった。
ガリューである。
その拳をストラーダで受け止め、そのままガリューに連れて行かれる形で離されていくエリオ。
それを見てティアナの指示よりも早く、キャロがフリードに乗ってその後を追う。
ティアナはそれを見てスバルの傍らに着地、合流した。
「ティア!!エリオが!!」
「わかってる。でも、私たちがここを離れるわけにはいかない。それに相手は召喚士だから、どうしてもキャロの力があっちには必要よ」
「じゃあ・・・・・」
「やるわよ、私たちで。あの七人を」
「ティア・・・・・」
「なんて顔してんのよ。大丈夫よ」
スバルの表情を見てティアナが軽快に言うが内実、ティアナもまずいことは重々把握していた。
もとより四対七、否、蒔風の使役獣やフリードを合わせて互角の数だった戦況が、一気に塗り替わってしまったのだから、それは当然まずい。
しかもあっちは「奴」の「欠片」がベースなだけあって、パワーは段違いだそうだ。
「まさか召喚士がこっちに来てるなんてね・・・・・迂闊だったわ」
「うん・・・でも」
「そう、あっちはあっちに任せる。行くわよスバル!!」
「うん!!!」
ティアナとスバルが駆け出す。
敵は機人七体。
向かいながら朱雀を出し、その背に乗って、戦場へと飛んで行った。
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「紫電一閃!!!」
廃棄都市のビル群の中。
槍と一体になったかのように構えるエリオが、ガリューと幾度となくぶつかり合う。
しかしガリューの装甲は想像以上に固く、なかなか好機が訪れてこない。
「キャロ!!」
「うん!!フリード!!ブラストレイ!!!」
「ガアアアアアアアア!!!!」
ドォン!!!!
フリードの火球が大気を振動させる轟音とともに吐き出される。
その先にはガリュー。
確実に命中するコースだ。
しかし
ゴガッ!!
「なっ!?」
「きゃあ!!!」
信じられないことに、それをサッカーボールのように蹴り飛ばし、まっすぐに打ち返してきたのだ。
さらにその火球に身を隠し、フリードの股下に滑り込んでゆき、しっぽをつかんで投げ放った。
あまりにも強い力に、フリードの巨体が揺れてビルの屋上に背中からたたきつけられる。
その勢いは、ビルの屋上を二階分ほど下げさせるものだったが、それでもビルトの激突までの間に主とその騎士は自らの腹のほうへと回し、直撃を防いだのはさすがというところである。
「フリード!!大丈夫!?」
「ガウ」
「ねえキャロ・・・・なんだかおかしい」
「うん・・・・前に戦ったときは確かに速くて強かったけど」
「こんなに無茶苦茶な力じゃなかった。それに、あの子も見当たらない」
そう
この場で二人と戦っているのはガリューのみ。
ガジェットがいない以上、インゼクトがいないのはまだわかるが、こちらの体勢を崩してくる地雷王も出てきておらず、あまつさえルーテシアすらもいないのはおかしい。
「どう思う?」
「多分、どこかでガリューに補助魔法をかけてるんだと思う。ここからそんなには離れてなくて、こっちの様子が見える場所」
「探せる?」
「やってみる。エリオ君はその間・・・・」
「ガリューを止める!!!いくよ!!ストラーダ!!!」
≪Jawohl.≫
竜騎士の少年が、一人、蟲武人へと向かっていった。
その間に、キャロが周囲をサーチしていく。
自分と同等の召喚士。
しかもあっちは身動きの取れない状況。
ならば、見つけることはそうそう難しくはないはずッ!!
「見つけた!!フリード!!!」
「ゴアアアアアアアアアアアア!!!!」
キャロの声にフリードが即座に炎弾を吐きかける。
標的は少し離れたビルの中腹。そこの壁に命中し、壁が崩れてその中から一人の少女が出てきた。
「ルーテシア・・・・アルピーノ・・・・」
しかし、その少女の様子もおかしい。
あまりにも静かすぎる。
いや、前回あったとき、彼女は無表情に無感情という、希薄な印象の少女だったことは確かだ。
しかし、全くなかったわけじゃない。バインドで縛れば悔しそうに顔をゆがめ、レリックケースを奪われた時は残念そうな顔をしていた。
だが今の彼女は、そんな感情すらも無く。
ただ己の召喚虫へと指示を送る電波塔になっていた。
「あ、あれは・・・・・」
「なんて事を・・・・・・」
ルーテシア・アルピーノの行動は当初からかなり自由度が高かった。
眠る母親を目覚めさせるがために、スカリエッティと共に行動していたが、そこはまだ子供。なんの拍子に管理局に身柄を拘束されるかわからない。
故に彼女にはあらかじめ、自我を奪い、外部操作が可能なような「処置」を施されていた。
つまりは洗脳。
しかも先日にナンバーズすらも投降してしまったことを受け、いよいよまずいと思ったのか、彼女をすぐさま「兵器」としての操り人形へと変えたのだ。
なるほど、確かに合理的である。
あのナンバーズを説き伏せた人物が相手に居るのに、ルーテシアを放っておけば確実に戦力は削がれる。
こうすれば揺れる事も無く、戦闘のコマとして使えると言うもの。
あまりにも合理的で、それでいて、あまりにも人の意志を無視した行為。
「ふざけるな・・・・・・」
その様子に、エリオが静かに怒っていた。
ガリューと向き合いながらも、その視線の先にルーテシアを見据え、さらにその眼は、背後にいるであろうスカリエッティを睨みつけているかのごとく形相。
「ふざけるな!!!なんでそんな・・・・・人の意志を無視した事をするんだ!!!!その子はお母さんを助けたかっただけなのに、それを・・・・それを利用して・・・・・」
「エリオ君・・・・・」
そう、彼だからこそわかる。
様々な理不尽に振り回され、一時はどん底まで荒み、ふさぎこんだ彼だからこそ
彼女の不遇と、その運命を、好き勝手に利用する者に対して、激しく激昂した。
「行くよ・・・キャロ」
「うん。エリオ君。助けようね。絶対に!!!」
エリオが槍を切り捨てるように振り、第二形態「デューゼンフォルム」に変形させ構える。
その背後で、キャロがエリオに、さらな力を与えるよう、セカンドモードでブーストを掛けた。
そうだ、今度は助けるんだ。
自分たちは助けてもらった。
いまでは一番大切な、お母さんになってくれた人。
その人だけじゃない。
自分たちに、力を教えてくれた人。
自分たちに、道を指し示してくれた人。
自分たちと、仲間になってくれた人。
自分たちを、育て、評価し、絶賛してくれ、ここまで送り出してくれた、総ての人達のように。
今度は自分たちが助ける番だ。
「行くぞ!!!機動六課ライトニング分隊03、ガードウィング、エリオ・モンディアル!!!あの人のようにはいかないかもしれないけど・・・・・・」
「大丈夫!!私がしっかりサポートするから!!だから・・・絶対に!!!」
「ああ!!!」
「「救える者は、根こそぎ救うんだ!!!!」」
そうして騎士と武人が、そして二人の召喚魔導師が、決意と洗脳の元でぶつかり合った。
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「はぁ・・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・」
「逝きsasy%haoiu想sryう!!!!」
「ツッ!?キャあああああ!!!!」
「ティアッ!!!」
轟音、爆破、悲鳴、驚愕
今、ティアナ、スバル、そして朱雀の三人は、レプリカナンバーズと交戦をしていた。
当初として、相手は七人、こっちは三人だったため、どのようにして相手全員を引きとめるかが課題だった。
それに関しては簡単な事、ティアナのフェイクシルエットで解決できた。
しかし、そこからのナンバーズによる進撃がやばすぎた。
「奴」の「欠片」が素体のレプリカナンバーズ。
解読不可能な咆哮を上げ、信じられない勢いでティアナの幻影を次々と消し去って行ったのだ。
一気に三百出した幻影は、三秒後には二体になっていた。
そしてそれをどう解釈したのか、七体すべてがこの場に留まり、三人を標的として突っ込んできたのだ。
その後、一気にビルの中にまで押し込まれ、外に出ようともそのあまりの力にあっけなく押し返されてしまい、未だに廃ビル内での戦闘を余議なくされている。
「ティア!!大丈夫!!??」
「バカ!!!こっち気にしないで、後ろ!!!」
「ぬん!!!!」
ガゴォ!!!!
襲いかかってきたのはディードのレプリカだろうか。スバルの首に向かって振るわれたツインブレイドを、寸でのところで朱雀が朱雀槍で防ぎはじいた。
しかし、敵は多い。
さらにその朱雀にウェンディ、オットーの砲撃が襲いかかり、朱雀がスバルを押し出してから転がって避けるとそこにノーヴェの強烈な蹴りが放たれた。
そこにティアナの援護射撃。
その弾丸は連続してノーヴェの足に命中し、その向きを若干変えた。
そう、若干のみだ。
それほどまでに、レプリカの身体は強靭だった。
しかしそれでも朱雀は何とか回避し、スバル、ティアナと背中合わせに集まった。
「お二人とも、大丈夫ですか!」
「ええ、大丈夫」
「朱雀さん、ありがとう」
「いえ・・・・しかしこの数は・・・・私にとっても脅威ですね・・・・・」
周りを囲む戦闘機人の数は現在は四体。
全身黒いが、そのシルエットは間違いなくウェンディ、ノーヴェ、オットー、ディードだ。
そして残りの三人、チンク、ノーヴェ、セインの三人はビルの外で逃がさぬよう見張っているのだろう。
「どうやら結界などの力は使えないみたいだけど」
「それでも十分に厄介ね・・・・・あのパワー、反則よ」
「しかも相手が多いです。ここは時間を稼ぎ、エリオとキャロが来るのを待つのが得策かと」
「そうね・・・・でもッ!!!」
ドゴァ!!!
警戒しながら話している三人に、ライディングボードが飛んできて三人のいた場所を直接ぶち抜いた。
三人はそれを散開して避けるが、各人に向かってさらに残りの三人が回り込む。
「このままじゃ・・・・時間を稼いでる間にやられる!!!」
「あっちもそんな簡単に終わる相手じゃないと思うしッ!!」
そう言ってスバルがウイングロードを天井に伸ばして、それが上を突き破る。
そうして屋上へと道を伸ばすが、それはすぐに砲撃と爆破を受けて消滅させられる。
おそらくは外のチンクとディエチだ。
完全な包囲網。
これでは逃げられなどしない。
そこからまた数秒だけ走り回り、フェイクシルエットで身を隠す三人。
「朱雀さんはおっきくなれませんか?」
「獣神体ですか。いえ、出来ますが・・・今のままではいい的になるだけです。しかも、相手の数が七体。これは舜でも苦戦するレベルですよ?」
そう、問題はそこだ。
当初この場はフォワード全員で戦う場面だった。
その数ならばおそらく、正面からぶつかり合い、きつかったろうが、勝利をおさめられただろう。
しかし、四人は分断された。
蒔風は五体でキツイと言っていたのに、今の敵は更に+2だ。
おそらく、朱雀が獣神体となって飛び出してもすぐに落とされるだろう。
「しかし、逆にチャンスでもあります」
「そうね・・・・今なら相手は四人だけ・・・・まだチャンスはある」
「下手に外に出なくてよかったね」
「ええ。もしそうすることができていたら、七人同時戦闘になっていました」
「考えたくないわね・・・・・・・・・朱雀さん、スバル」
「はい」
「なに?」
「あの四人のうち・・・・三人は私に任せてもらえる?」
「ティア!?」
ティアナの突然の提案に、スバルが大声にならないように叫んだ。
それは端から聞けば、あまりにも無謀な提案だ。
しかし、ティアナは黙って聞けと親友にデコピンして話を進めた。
「いい?今はこの状況だからいいけど、あれは命のないただの人形なのよ?つまり、しようと思えば使い捨てができるってこと。今は多分戦力の温存のためにしないんでしょうけど、長引いていけばおそらく、このビルを爆破してあの影もろとも私たちを潰しに来るわ」
「そんな!!」
「いいえ、あり得ます。一度引き抜いた記憶は、10%以下まで劣化しますがもう一度使う事も出来ますし、最悪、駒は捨てにくるでしょう。それが「奴」です。目的のためなら、ある程度の犠牲は払う男ですから」
「わかった?つまり今しかないのよ。私に相手ができるのは三体。でもその内の一人でも倒れれば即座に外の三人が入ってくるでしょうし、最悪その場でドカンよ。三人でやっても一緒。一人潰せば、まとめてやられる。だから二人にはそれをさせないために、残りの四人を押さえてもらいたいんです」
「・・・・・・・勝算は、あるのですか?」
「・・・・ふ、何言ってんですか。私が今からやろうとしている戦術は、あなたの主人から教わった物ですよ?大丈夫です。真っ向勝負はできなくても、私には私の「強み」がありますから」
「でも・・・・ティア!!」
「いいから!!はやくあんたも・・・・ッ!!!??」
ティアナがまだ何か言おうとするスバルを納得させようと口を開くが、そこから言葉は出てこなかった。
三人がしゃがんで隠れている壁。
その壁が一気に光の砲撃でレーザーのように切り倒されたのだ。
真一文字に切られたその高さは、三人が立っていれば頭の位置だった高さだ。
その事実にゾッ、としながらも、さらなる追撃が襲いかかる。
残った壁を突き砕き、ノーヴェが突撃してきたのだ。
そしてティアナとスバル、朱雀の間に立ち、三人を二組に分断する。
おそらくはティアナが幻影の使い手であるという事に気付いたのだろう。
ならば簡単、先にそちらを潰すことが先決だ。
それを見た朱雀が、ティアナを助けに向かおうと足を動かすが、それが即座に止まった。
バインドである。
オットーによるバインドに、スバルと朱雀がしばりつけられ、その身動きを封じられていた。
「ティアが!!」
「くっ、結界は張れないのにバインドはできるって・・・どういう基準なんですかまったく!!」
目の前ではティアナがどんどん押し込まれ、視界の外へと追いやられていく。
モードをダガーにして応戦していたが、彼女は基本ガンナーだ。
どれだけ持つかわからない。
朱雀がバインドを引きちぎるのは簡単だ。
あくまで強化されたのは肉体的なパワーだけであるし、オットー一人分の魔力のバインドなら容易な事。
しかし、その間にティアナはこちらの目の届かない場所へと移動させられてしまうだろう。
そうなればこっちは二対一。外のメンバーが入ってきてもおかしくない構図だ。
そうなると無理に合流するのは危険すぎる。結局三対七になる可能性が高い。
と、なれば
苦渋の決断ではあるが、ティアナの提案通りにする必要があった。
「スバルさん!!このまま外に出て四人を相手取ります!!!三人はティアナさんに任せましょう!!!」
「そんな!!ってうわあ!!!」
抗議しようとするスバルだが、朱雀があっという間にバインドを砕いてからオットーの襟首をつかんで外へと投げ放ち、その後にスバルを連れて飛び出して行ってしまった。
「大丈夫です!!舜が授けたのであれば、まず負けることは・・・・・無いと思いますから!!」
「でも!!」
「もう遅いです!!きますよ!!!」
「あ~~~~~もう!!!ティアも朱雀さんも勝手なんだから!!こうなったら、すぐに倒してティアの援護に!!!」
「そうするとしましょう!!!」
こうして、布陣は完成した。
しかし、どれも敵は強大。
勝って仲間を助けに行くとスバルは言ったが、果たしてうまくいくのだろうか。
to be continued
後書き
アリス
「次回、今度は洞窟!!フェイトさん、頑張れ!!!超がんばれ!!」
ではまた次回
『もう一度、私にチャンスを下さい』
『今度は必ず、あなたの全力を受け止めます』
『あなたがどこまでも全力で走れるように』
なんだかこの小説、デバイスの影うっすいなぁ・・・・・
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