提督はBarにいる。
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明けちゃったけど正月の騒ぎ・その7
前書き
まだ正月の話ですが、いつもの飯テロタイム、はっじまっるよ~w
1月5日-c 送別会
当然ながら提督が食事を作ってもてなす、というなら執務室の設備を使う事になる。しかしまだ業務時間内であり、提督の机には代理である大淀が着席しているのだが……
「話は聞いてました。部屋は別の場所に移りますし、書類も殆ど終わりましたから」
提督に移動して貰えないか、と言われる前にそそくさと荷物を纏めてペコリとお辞儀をして退室していく大淀。この辺りの気遣いやら有能さが、軽巡の身でありながら実力主義の考えが根強いこの鎮守府の中でも上位の存在だと言われている由縁だ。
「さ~て、と?じゃあ始めますかねぇ」
いつもの手慣れた様子で机に備え付けのスイッチを押す。その途端に室内に仕込まれたギミックが起動し、部屋の様子を様変わりさせていく。
「何度見ても飽きんのぅ、この光景は」
元帥もそんな仕掛けがお気に入りなのか、顔を綻ばせる。そんな様子を見ながら提督はキッチンに、元帥、三笠、金剛、加賀の4人はカウンターに着席した。
「おいおいお前ら、まだ勤務時間中だぞ?」
提督の持て成しで酒が出てこない訳がない。いや寧ろ、元帥と三笠もそれを期待している筈である。しかし金剛と加賀の2人は提督のお目付け役とはいえ、勤務時間中である。さすがに飲酒は不味いだろう?と提督は言外に釘を刺したのだ。
「私はdarlingのwifeですから?歓待しないといけませんし?」
「……右に同じく。それに飲みながらでも提督は監視出来ますから」
「そうじゃそうじゃ、折角別嬪2人が儂を持て成してくれると言うんじゃ。無粋な事を言うでないわい」
3人にそう責められては提督も返す言葉がない。元々提督もそこまで強制するつもりもなかったのだ。一応、この鎮守府の指揮官としての体面を考えての行動である。……しかしまぁ、約1名は墓穴を掘ったようではあるが。
「ほぅ?隣に嫁を座らせておいて、堂々と浮気宣言か。今すぐその煩悩を捨てさせる為に髪を剃り落として、出家させてやろうか?」
元帥の隣に座る三笠の目が据わっている。と同時に、身体から発せられる殺気。そして三笠の右手は、腰に差した刀に添えられている。
「じょ、冗談じゃ。ちょっとしたジョークじゃよ。本気にするでないわ」
「そうか?なら、元帥であった頃のように自分の発言には注意する事だな」
冷や汗ダラダラの元帥と、殺気が霧散して微笑む三笠。これから2人での共同生活なのだろうが、完全に尻に敷かれてるなぁと提督は吹き出しそうになった。勿論、そんなやり取りを見守りながらも提督は調理を進めている。
「ところでお主、今は何を作っとるんじゃ?」
「あぁ、これか?ブルネイでも流石に1月となると少し冷えるんでな。身体が温まる食前酒をな」
「食前酒、じゃと?しかしお主が作っておるのはーー」
『コンソメスープじゃん』
4人から一斉にツッコミが入った。確かに、俺が今コトコトと煮立たせているのは紛れもないコンソメスープ。正確に言えば、顆粒のチキンコンソメをお湯で溶かし、塩、胡椒、隠し味の醤油で味を整え、具材として細かく刻んだ玉ねぎを加えた至って普通のコンソメスープである。
「darlingも人が悪いネー、カクテルは今から作るならそう言えば?」
「チッチッチ、俺の嫁としちゃあ勉強が足らんなぁ金剛。『カクテルとて料理』なんだぞ?」
カクテル、と言えば氷と共にシェイカー等で混ぜ合わせるイメージが強いが、その実ホットのコーヒーや紅茶を使ったレシピも存在するし、混ぜ合わせるだけとはいえ料理と言えなくもない。今俺が作っているカクテルも、ドリンクというよりも料理に近いがれっきとしたカクテルなのだ。
俺はそう言いながらスープ・マグを人数分支度し、そこにウォッカを30mlずつ注ぐ。スープ・マグってのはレストランなんかで出てくるスープ用のマグカップの事だ。……あぁ勿論、家で作るなら普通のマグカップで十分だがな。そしてそこに先程作っていたコンソメスープを適量注ぎ、軽くステアしたら完成。
「ハイよ、ホットカクテル『ホット・チキン』だ」
ウォッカも入っている為、普通のスープよりも身体がすぐに温まる。ウォッカの量はあくまでも目安だから、自分で加減してくれよ?
「おぉ、こいつはいい。酒も入っとるから身体が芯から熱くなってくるわい」
「確かにな。北方への進軍等の時には適しているだろう」
「……酒が入ってるから飲み過ぎ注意だがな」
身体が温まるからと、飲み過ぎてヘベレケになってしまえば元も子もない。それに食前酒を飲ませたのはその食欲増進効果を期待しての事でもある。
アルコールを摂取すると、それを分解する為に大量の糖分が使われる。そして一時的に軽い低血糖状態となり、脳が糖を補給……即ち食事をしろ、というシグナルを発するのだ。なのでお酒の席でついつい食べ過ぎてしまったり、飲み過ぎて急激な低血糖状態となって倒れてしまったりするワケだ。ホントは梅酒やビール、スパークリングワイン等の方が食前酒の狙いとしては効果が高いんだが……この辺の話はまた別の機会にでも。
「さて、知っての通りウチの店は基本オーダー制だ。ご注文は?」
「儂は……そうじゃな、鶏肉料理を貰おう。それとウィスキーのロックもな」
「私もウィスキーのロックだ。銘柄はこいつと同じでいい、ツマミはそうだな……海老で何か一品頼む」
「私と加賀はゆっくり考えますから、まだ大丈夫ネー」
元帥、三笠、金剛の注文。金剛のは注文とは言い難いが、まぁ2人の分を先に作るとするか。メニューは『鶏の照り焼き』と『エビマヨ』だ。
《レモンでさっぱり!レモン照り焼き》
・鶏モモ肉:250g
・塩:適量
・胡椒:適量
・醤油:大さじ1
・砂糖:大さじ1
・酒:大さじ1
・レモン汁:大さじ1
・おろしにんにく:小さじ1/2
まずは鶏肉。両面に塩、胡椒を振って下味を付け、しばらく置いておいて馴染ませておく。その間に合わせ調味料を作っておく。醤油、砂糖、酒、おろしにんにく、レモン汁を加えて混ぜ合わせる。何と言ってもポイントはレモンで、照り焼きのタレに加える事でさっぱりとした口当たりに仕上げる事が出来る。好みによっては柚子とかかぼすなんかの果汁でもいいかもな。
さぁ、焼いていくぞ。フライパンに油を引いて、温まったら鶏肉を皮目から焼いていく。火加減は焦がさないように中火……ただし、パリッとさせたいからフライ返しなんかで押し付けつつ5分位焼く。ひっくり返したら、裏面は押さえつけなくてもいいから5分程焼く。焼けたら合わせ調味料を入れ、水分を飛ばしながら煮絡める。食べやすい大きさにカットしてサニーレタス等と一緒に皿に盛り付ければ完成。
《ソースが決め手のエビマヨ!》
・海老:8~10匹(剥き海老なら160~200g位)
・酒:大さじ1
・塩:ひとつまみ
・片栗粉:適量
・揚げ油:適量
・春雨(じゃがいもでんぷん):あれば
(ソースの材料)
・長ネギ:10cm位
・塩:少々
・おろしにんにく:少々
・おろししょうが:少々
・マヨネーズ:大さじ2
・粒マスタード:小さじ1
・ごま油:小さじ1
・砂糖:小さじ1/2
俺のエビマヨは海老を揚げて和えるだけだから、手始めにソースを作っておく。長ネギをみじん切りにしたら、上記のソースの材料をボウルに混ぜ合わせておく。
お次は海老だ。殻を剥いて尻尾を外したら、片栗粉を軽くまぶして流水で洗う。こうする事で汚れが綺麗に取れるぞ。付着した片栗粉を綺麗に流したら、背ワタを取り除いて酒と塩で下味を付ける。
フライパンに揚げ油を熱し、下味を付けた海老に片栗粉をまぶす。今度のは衣だから気持ちしっかり目にな。油が温まったら、海老を投入してきつね色になるまで揚げる。油から海老を上げたら、今度は付け合わせの春雨だ。
「……ん?春雨を揚げるのか?」
「まぁね。よく見てなよ」
不思議そうな顔をしている三笠を尻目に、半分位の長さに切った春雨を戻さずに油の中へ。すると、春雨が揚げられて膨らみながら縮れて白いかた焼きそばの麺のようになる。こいつをエビマヨの下に敷こうって事さ。
さて、仕上げるぞ。油が十分に切れた海老をマヨネーズソースで和える。よく絡まったら皿に太めの千切りにしたレタスと揚げた春雨を敷き、そこにエビマヨを盛り付ければ完成。
「はいお待ちぃ、『レモン照り焼き』と『エビマヨ』ね。……金剛、お前らは決まったか?」
「んー……とりあえず元帥達と同じくウィスキーでいいネ。先に乾杯しちゃいましょう」
「そうね、その方がいいと思うわ」
加賀も異存は無いらしく、俺の分も含めて5つのグラスにロックアイスを入れる。選んだ銘柄は『サントリーオールド』……海軍には馴染みの“ダルマ”だ。
「ほれ、じゃあ先に乾杯といこう。……ジジィ、今までご苦労さん。せいぜい長生きしろや、乾杯!」
俺の掛け声と共に、5つのグラスが打ち鳴らされる。
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