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提督はBarにいる。

作者:ごません
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明けちゃったけど正月の騒ぎ・その8

1月5日-d   送別会・2

 カチン、と打ち鳴らされる5つのグラス。俺は一息にグラスの中身を干したが、他の4人はチビリと舐めるように杯を傾ける。

「相変わらずどこに飲んでおるのか解らんような飲み方をする奴じゃな。そんな飲み方で味わえておるのか?」

 俺の飲み方に眉を顰める元帥。だが、ちびちびと飲む事も出来るが俺の性に合わんのだ。

「うるせぇ、俺の舌が正確なのはテメェも知ってるだろうが。それよりも次の注文は?今度は金剛と加賀の分もあるからよ、早めに注文してくれや」

「それはそうじゃが……ならば、冬が旬の野菜で何か一品頼むとしようかの」

「む、それはいいな。私も冬野菜で一品作ってもらおう」

「いいですネー、私もそれで!」

「私も野菜でお願いします。ただ、ボリュームがある物だと嬉しいですが」

 冬野菜で1品どころか、4品作れってか。無理だと言うのは簡単だが、それじゃあ今まで俺が積み重ねてきた経験が無駄だったという事になってしまう。 

「引き受けましょう」

 さぁ、気合い入れて作っていこうか。


《ユリ根のガーリック炒め》

・ユリ根:3~4個(正味量200g位)

・にんにく:2片

・ローズマリー(できれば生):2枝

・オリーブオイル:少々

・塩:少々

・胡椒:少々



 まずはジジィの分から。使うのは関西の方が馴染みの強いであろうユリ根だ。文字通りユリの花の球根の事だ……正確には鱗茎と言うんだが、詳しくは自分で調べてくれ。食用に適した種類のみがユリ根として食べられてるから、その辺のユリをほじくりかえして食べようとしても、灰汁が強すぎて食べられたモンじゃない、ってのは言っておくか。主な産地は北海道で、霜の降りる前の10月頃に収穫、2~3ヶ月寝かせておくと甘味が増すから、ちょうど今頃が食べ頃の時期に当たる。よく和食に用いられるしお節なんかにも入ったりするが、今回はそれをイタリアン風に。

 まずは下ごしらえから。にんにくは薄皮を剥き、芽と根の部分を取り除いてスライス。ユリ根は根を落とし、重なりあった鱗片(りんぺん)と呼ばれる部分を1枚ずつ剥がしたら、隙間に入り込んだ泥を洗い流して茶色く変色している部分を削ぎ取る。手間がかかるが、これをやらないと仕上がりが大きく変わるからな。

 下準備が出来たら炒めていくぞ。フライパンにオリーブオイルを引いて熱し、スライスしたにんにくを軽く炒めて香りを出す。そこに下処理をしたユリ根を加えてサッと炒める。ローズマリーの枝をしごいて葉をフライパンに加えたら、焦がさないように弱めの中火で炒めていく。

 ユリ根に火が通ったら、塩・胡椒で味付け。ここでちょいと味見。加熱したユリ根は殆どがでんぷん質の為にホクホクとした食感になる。ただし、芋というよりもニンニクを丸焼き等にした時のような繊維質の残った感じのホクホク感。そこに独特のほろ苦さとニンニク、オリーブオイルの風味といい塩梅の塩胡椒。シンプルな肴だが、酒が堪らなく進む味だ。

「うん、上等上等」

 空いていたグラスに再びダルマを注ぎ、また一息に煽る。やはりというか、ユリ根の味が酒を引き立てる。これはいい……たまらん。

「おい!早くよこさんかい!」

 ジジィに怒鳴られた。仕方ねぇ、出してやるか。

「あいよ、『ユリ根のガーリック炒め』」

 さぁて、お次は何を作ろうか?




《ネギ油と蓮根の和風ペペロンチーノ》※分量2人前

・お好みのパスタ(スパゲティ系推奨):200g

・オリーブオイル:40ml

・ニンニク:1片

・しらす:20g

・長ネギ:1/2本

・蓮根:40g

・鷹の爪:2本

・塩:小さじ2

・ほんだし:小さじ1

・醤油:大さじ2


 お次は三笠教官の分。こっちは蓮根でいこう。読んで字の如く蓮の地下茎である蓮根だが、育てるには田んぼがいる為に流石の山雲農園でも作っていない。その内水田も整備したい、なんて話も出ていたから、鎮守府内で蓮根作り、なんて日は遠くないのかも知れんが。まぁそれは置いておいて調理を進めよう。蓮根は2mm位の薄切り、長ネギは斜め切りにしておき、ニンニクはみじん切り。パスタはたっぷりのお湯に塩(分量外)を加えてアルデンテに茹でておく。

 フライパンにオリーブオイルを引いて熱し、ニンニクを炒めていく。香りが立ったら長ネギを加えてフライパンを傾け、ネギを油で揚げ焼きのような状態にする。こうやって油にネギの香りを移してやるワケだ。

 ネギが油をある程度吸ったら、蓮根としらすを加えて炒める。火が通ったら鷹の爪を加えて軽く炒めておく。具材が炒まったらフライパンの片側に寄せ、スペースを作ったらそこに醤油、ほんだし、塩を入れる。軽く醤油を焦がして香りを付けさせる為だ。そして全体を馴染ませてやったら、そこに茹で上げたパスタと茹で汁をお玉で1杯。具材と炒め合わせたら盛り付け、仕上げにお好みで白ごまを振れば完成。

「三笠教官、『蓮根の和風ペペロンチーノ』です」

「うん、これは美味そうだな」

 手短にそう言って皿を受け取った三笠は、フォークを手に取りパスタと蓮根を巻き込んでいく。一緒に口に入れれば、蓮根のシャキシャキとした食感とペペロンチーノのピリッとした味付けが絶妙な茹で加減のパスタを引き立てる。辛いが、美味い。手が止まらない……そして当然、酒が進む。




 猛然とパスタを食べながら酒を楽しんでいる様子の三笠を見て、まだかまだかと少し苛立ちすら覚え始めた金剛。

「darling、まだデスか!?」

「まぁまぁ、少し位待てっての」

 む~……と眉間に皺を寄せて口を尖らせて拗ねるそんな姿さえいじらしく見えるのだから、俺は余程こいつに惚れているんだなぁと再認識させられる提督。そんな金剛と加賀の料理に使っている冬野菜は同じ物……『ブロッコリー』である。

 ブロッコリーの旬は、意外に感じるかもしれないが11~3月の冬なのだ。ブロッコリーはアブラナ科の植物で、『房』と呼ばれている先端の部分は、蕾の集合体であり、花を食べる花野菜の1種である。春になって開花すると当然食べられない為、旬は冬場という事になるのだ。そんなブロッコリーで俺が今何を作っているかと言えば、『ブロッコリーポテサラ』と『ブロッコリーとベーコンのペンネ』である。

《ディップにも!ブロッコリーポテサラ》

・ブロッコリー:1/3個(茎も含む)

・じゃがいも:2個

・粉チーズ:小さじ2

・ニンニク:1片

・マヨネーズ:大さじ2

・塩:少々

・黒胡椒:少々

・トーストやクラッカー:お好みで



 こっちは金剛の分だ。ブロッコリーだが、小房に分けて、茎は厚めに皮を剥く。じゃがいも、ニンニク、ブロッコリーそれぞれを柔らかくなるまで電子レンジで加熱。じゃがいもは皮を剥かずに加熱するように。茹でてもいいんだが、水っぽくならないようにとの処置だと思ってくれ。

 野菜が柔らかくなったら、じゃがいもは皮を剥き、熱い内にボウルに入れて潰す。ニンニクも包丁の腹などで潰してボウルに加え、ブロッコリーは粗みじんに刻んでボウルに入れたらよく混ぜ合わせる。

 仕上げに粉チーズとマヨネーズで味付けをし、塩と胡椒で味を整えれば完成。普通に食べても美味いが、ディップとしてトーストやクラッカーに載せて食べてもまた美味いんだな、これが。


「さて、待たせたな加賀」

「待たされた分、期待していいのかしら?」

「勿論」


《ブロッコリーとベーコンのペンネ》分量2人前

・ブロッコリー:1個

・鷹の爪:1本

・ニンニク:1/2片

・ベーコン:2枚

・オリーブオイル:大さじ1

・ペンネ:150g

・塩、胡椒:少々

・パスタの茹で汁:大さじ2

・粉チーズ、粗挽き黒胡椒:お好みで


 加賀の方はブロッコリーの房だけ使用。小房に分けておく。ニンニクはみじん切り、鷹の爪は種を除いて小口切り。ベーコンは1cm幅にカット。

 たっぷりのお湯に1%濃度になるように塩を入れ(分量外)、ペンネを袋の時間通りに茹でる。茹で上がりの8分前になったら、ブロッコリーを入れて一緒に茹でる。湯切りをする前に茹で汁を大さじ2とっておくのを忘れないように。

 フライパンにオリーブオイルを熱し、ニンニクと鷹の爪を加えて弱火で炒める。香りが出てきたらベーコンを加えてサッと炒める。

 茹で上がったペンネとブロッコリーからブロッコリーだけをフライパンに加え、木ヘラなどで潰しながら炒め合わせる。全体が混ざったらペンネと茹で汁を加えて手早く絡めて塩、胡椒で味を整える。粉チーズと黒胡椒はお好みだが、たっぷりかけた方が俺は好みだね。



「お待ち、『ブロッコリーとベーコンのペンネ』だよ」

「……いただきます」

 まずは一口。探るように小さく。咀嚼していく内に変化の乏しい加賀の目が大きくなり、今度は大きく一口。余程美味かったのか、普段はあまりがっつかないウチの加賀が猛然と食べている。こんだけ美味そうにくってくれるなら、作った方にしてみれば冥利に尽きるってモンだがな。 
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