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Three Roses

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第二十八話 再会した薔薇達その八

「しかしです」
「我々は違う」
「引き分けていい」
「ではこのことを踏まえて」
「論戦の用意をしていきましょう」
「是非、では私も聖書を読みます」 
 信仰の全ての原点であるこの書をというのだ。
「その様にしていき他の経典もです」
「学ばれて下さい」
「太子も出て来られるでしょうし」
「マイラ様もでしょう」
「あの方も」
「お姉様は信仰だけではありません」
 姉妹だからこそマイラのことを知っている、だからこその言葉だった。
「決して」
「はい、かなりの学識もおありです」
「旧教へのそれは相当なものです」
「ですからあの方も出て来られます」
「そして新教を負かそうとしてきます」
「ならです、私も備えます」
 新教を代表して、というのだ。
「そしてこの国、四国をあるべき姿にしていきます」
「おそらく次の論戦はかなりのものになります」
「四国の運命を決めるまでのものに」
「四国の新教の運命を決め」
「ロートリンゲン家のものになるのかどうかの」
「武力はなくとも」
 太子はそれによる解決を求めなかった、それよりもこの場合はこちらの方が遥かに利益を求めやすくリスクも少ないとわかっているが為だ。
「この戦いは四国の運命を決めるものです」
「必然的にですね」
「エヴァンズ家のままであるのかロートリンゲン家のものとなるのか」
「新教と旧教だけでなく」
「そうしたことまでもが」
「太子とお姉様の間にお子が出来るかどうかもありますが」
 ロートリンゲン家のお家芸である婚姻政策からの乗っ取りの中で最も重要なことだ、家の血を引く子がその国を継ぐことこそがだ。
「それでもです」
「何としてもですね」
「論戦には、ですね」
「負けられない」
「分けるべきですね」
「勝つとしても勝ち過ぎは避けます」
 それはというのだ。
「新教徒が強くなり過ぎてもなりません」
「旧教徒への迫害がはじますね」
「そうなるからですね」
「勝ち過ぎもよくない」
「あまりも勝ちますと」
「それは流血になりかねません」
 迫害、それが極端になりというのだ。
「ですからそれはなりません、しかもです」
「彼等を迫害しますと」
「大陸の旧教徒達を刺激しますね」
「特に帝国を」
「そうなりますから」
「それもよくありません」
 そうしたことが予想されるからというのだ。
「勝つにしても程々です、それに」
「それに?」
「それにといいますと」
「相手も手強いですからそもそもです」
 旧教側の論理の確かにわかっていた、そうでなければ長年に渡って多くの国の国教もっと言えば心の全てになっていないからだ。
「それも出来ません、むしろ下手をしますと」
「こちらが敗れる」
「そうなりかねませんね」
「旧教側も確かな論理があり」
「人材もいるからこそ」
「学者達も然りです」
 このことでは僧侶も入る、神職にある者は常に人の導き手であるだけでなく学者でもあるのだ。もっと言えば政治家の場合もある。大司教達がそうである様に。 
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