提督はBarにいる。
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缶詰メシを極めろ!
「はいお待ち、ツナマヨ丼な」
「うわぁ、美味しそう~♪」
注文を受けて作った料理を出してやると、そいつは嬉しそうに声とその大きな胸を弾ませた。今夜の客は伊26・通称ニムちゃん。最近ウチに配属された潜水艦娘だ。少食な奴が多い潜水艦の連中と比べると、しおいに次いでよく食べるんだこの娘……まぁ、その代わりに酒が飲めなかったりするんだが。しおいの奴は結構な飲兵衛だから、そこはちと違うがな。
「しっかしよく食うねぇ、他の潜水艦の連中に見習わせたい位だぜ」
「えへへ~、だって提督のご飯とっても美味しいんだもん!真似して作るにはいっぱい食べて研究しなきゃ!」
カウンターの端の方で、熱燗を啜っていた隼鷹がニムの食べっぷりを見て感心している。これまた珍しくこのニムちゃん、潜水艦の中では数少ない『自炊に興味のある娘』なのだ。他の連中?
「ゴーヤ達には大鯨がいるからいいんでち!」
なんて堂々と豪語してる奴がいる位だ、察してくれ。大鯨は潜水艦組の母ちゃんでも嫁さんでも無いんだから、自炊位は出来た方がいいと思うんだがなぁ。
「しかし、何でまた缶詰ばっかりなんだ?」
ニムの注文には特徴があってな。ウチでの注文は缶詰やら日持ちのする野菜やら、保存食で出来るメニューばかりなんだ。前々から不思議に思ってたんで、いい機会だし聞いてみた。
「う~んとねぇ、ニム達潜水艦って長い期間の任務も多いでしょ?だから保存食をいーっぱい持っていくんだ。けどね、そのまま食べてると飽きちゃうでしょ?」
成る程、理に敵ってるな。確かに潜水艦組の連中は、毎日のオリョール海の周回……オリョクルだけじゃなく太平洋側の広い海域の哨戒やら、隠密性を活かした他国とのやり取りやら長い期間帰投しない任務が多い。その間の楽しみと言えば食事。しかし手元にあるのは味気の無い保存食がほとんど。その食卓を少しでも華やかにしようと、ニムは奮闘してるワケか。
「成る程な。それくらいなら幾らでも教えてやるさ」
「じゃあじゃあ、このツナマヨ丼のレシピを早速教えて下さーい!」
《刻んで混ぜるだけ!ツナマヨ丼》
・ツナ缶:1缶
・玉ねぎ:1/4~1/2個
・マヨネーズ:大さじ2
・辛子:小さじ1
・大葉:2枚くらい
・ご飯:適量
※その他辛子マヨネーズではなく、七味マヨネーズやわさびマヨネーズでやっても美味いぞ!
まずは玉ねぎ。自分の好みの大きさにみじん切り。ザクザクとした食感を味わいたいなら粗めに、辛味を強調したいなら細かく。大葉も細千切りにしておく。
お次はツナ缶。油を切るんだが、ポイントはしっかりと切りすぎない事。そうしないとツナの味が抜けすぎる上にパサつくからな。
お次はもう仕上げだ。ツナと辛子マヨネーズ、刻んだ玉ねぎをよく和えてご飯に乗せ、大葉を散らしたら完成。食べる時にはお好みで醤油を垂らしてやると、また美味い。
「ふーん、意外と簡単なんだぁ」
「それが缶詰料理の良い所だからな」
缶詰はそれ単品で既に一品料理になっていたり、調理がある程度されている物が多い。だからこそ、上手く使えば調理時間の短縮になるし、アレンジ次第では更に上手く出来るのだ。
「いいなぁ……なぁ提督、アタシにも缶詰で何か作ってくれよ~」
そう言い出したのは、先程からニムと俺のやり取りを観察していた隼鷹だった。
「へいへい、お前の事だからツマミなんだろ?」
「へへへぇ、バレた?」
「バレバレだっつの。ちゃちゃっと作るから、ちっと待ってな」
俺はそう言って、新たな缶詰に手を付けた。
《酒が進む!焼きオイルサーディン》
・オイルサーディンの缶詰:1缶
・玉ねぎ:1/4個
・醤油:少々
・バゲット(又はクラッカー):お好みで
使うのはオイルサーディン。簡単に言えば鰯の油漬けだな。頭と内臓を落とし、塩水に漬けて味付けした鰯をオリーブオイルに漬けて煮込んである料理だ。こいつにレモンをちょいとかけてやるだけでも十分なツマミになるんだが、今回はそれを一工夫。
コンロの上に魚焼き用の焼き網を置き、その上にオイルサーディンを缶ごと置いて点火。……あぁ、勿論蓋は開けてくれよ?そうじゃないと爆発するからな。焦がさないように、弱火でな。オイルサーディンが温まる間に、玉ねぎをスライス。スライス出来たら温めている缶の上に玉ねぎを乗せ、しばらく加熱。
オリーブオイルがクツクツ言い出して玉ねぎがしんなりしてきたら、醤油を一回し。これで完成。熱いから皿に缶ごと乗せて、温まった鰯と玉ねぎをクラッカーやバゲットなんかに乗せてパクリ。こいつがまた洋酒にも日本酒や焼酎にも合うってんだからたまらない。残りのオリーブオイルはパンに染み込ませて食っても良いし、パスタを茹でて絡めても美味いぞ。鰯の出汁と醤油が良い仕事をしてくれる。
「く~っ!こういうのが美味いんだよねぇ、さっすが提督♪」
隼鷹は出来上がったオイルサーディンを、軽く焼いたバゲットに乗せてかじっている。俺の料理を見て意図を理解した早霜が、俺に指示される前に焼いておいたのだ。こういう姿を見ると成長が感じられて嬉しく思う。
「あ~!いいないいなぁ、ニムももっと食べたいよぉ……」
「なら注文すりゃあ良いだろうに」
「だって食べたい物が有りすぎて、決められないんだよ~っ!」
むぅ、と頬を膨らませるニム。そんな仕草も美少女がやるモンだからあざとさが無くて可愛らしく見える。
「まぁまぁ、そんなにむくれるなって。何が食べたい?」
「じゃあねぇ……お肉!」
肉の缶詰か……なら、コンビーフを使って3品位作ろうか。まずはコンビーフを使って出来る、チーズ入りのジャーマンポテトから。
《コンビーフ入り!チーズINジャーマンポテト》
・コンビーフ:1缶
・じゃがいも:4個
・玉ねぎ:1/4個
・塩胡椒:適量
・ブラックペッパー:適量
・ピザ用チーズ
まずはじゃがいも。拍子木切りにして晒しておき、アク抜き。皮は剥いても剥かなくても良いぞ。※剥かない場合は泥落としをしっかりと!玉ねぎはスライスしておく。
アク抜きをしたじゃがいもを耐熱皿に入れてラップをし、500wのレンジで5~6分チンする。まぁ、これは時間短縮の為だな。
フライパンで油を熱し、玉ねぎとチンしたじゃがいもを炒めていく。玉ねぎが透き通って来たら、コンビーフを加えてほぐすようにしながら全体をよく混ぜながら更に炒めていく。
「提督、もしかしてそれジャーマンポテト?」
「おぉ、よくわかったな」
「うん、遠征先とかではっちゃんとかがよく作ってくれるんだ」
遠征先でも潜水艦組は仲が良いらしい。
「でもさぁ、ジャーマンポテトって普通ソーセージとかベーコンじゃねぇの?」
俺とニムの会話を聞いていたのか、杯を煽りながら隼鷹が聞いてきた。
「基本はそうだな。でも、コンビーフでやっても美味いんだぜ?」
ソーセージとかベーコンの原料は豚肉。コンビーフはその名の通り牛肉だ。大きな違いに思えるかも知れないが、実は牛肉とじゃがいもの相性はいいのだ。和食の肉じゃがしかり、ステーキの付け合わせにベイクドポテトやフライドポテトが定番なのも、相性が良いからだろう。
さて、調理に戻ろう。コンビーフがほぐれて混ざったら、味見をしつつ塩胡椒とブラックペッパーで味付け。コンビーフ自体味が濃い目の物だから、気を付けて調整してくれ。
味が決まったらピザ用チーズを散らして、炒めて溶かしつつ絡めていく。チーズがとろけたら盛り付けて完成だ。
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