駄目親父としっかり娘の珍道中
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第81話 似た者同士は案外中身も似た者同士
前書き
前回更新してから一体どれ位経っただろうか。仕事上のトラブルの連発に加え個人的事情の連発(やりたいゲームが沢山あってそれに追われて・・・)と、色々と大変な状態でしたがようやく一区切り付き、どうにか今年度最期の更新には間に合いました。これからもこんな感じで超不定期更新になってしまいますが応援よろしくお願いしますm(__)m
後、ちょっと早いですが2017年もよろしくお願いします。(*- -)(*_ _)ペコリ
見上げれば清々しい程の青空が視界いっぱいに広がってくる。多少なりとも先ほどまでの曇天の名残か白い雲がちらほら残ってはいるが快晴である事に変わりはない見事な天気だった。
誰もがこの天気を見れば心が晴れ晴れとなるだろうが、それを現に見上げている高杉の気分は全く晴れ晴れとはしなかった。
「・・・・・・」
無言のまま手すりに寄り掛かり眼前に広がる青空を見上げ続けている。そんな高杉に向かい殺意と得物を向ける数人の不届き者達が居た。
高杉の気分が晴れない原因はこいつらだった。彼にとって彼ら管理局の介入は全くもって喜ばしくはない。見ず知らずの赤の他人に土足で玄関に入り込まれたような不快感だった。
「鬼兵隊総帥、高杉晋介はお前か?」
「大人しく我々と同行して貰おうか。抵抗するのなら武力行使も辞さないつもりだ」
杖状のデバイスが数本。その切っ先を高杉に向け、数人の局員たちが迫る。
彼らが何故この江戸の地に現れたのか。何故彼を連れて行こうとするのか。
「・・・・・・」
「何か言ったらどうだ? それともビビッて声も出せないのか?」
「やれやれ、呼んでもないのに勝手にずかずかと上がり込みやがって。全く無粋な連中だな」
「何!?」
「そっちの所じゃいきなり人様の家に入り込んでそんな態度を取るのが当たり前なのか? だとしたら、相当お前らはマナーがなってない輩ってこったな」
静かに、だが明らかに不機嫌そうな物言いで高杉は呟いた。視線こそ動いてはいないが、そこから感じられる威圧感に局員達は皆固唾を呑む思いがした。
「悪いが、犯罪者を相手に常識を問う余裕はない。大人しく我々に従うか、それとも―――」
言葉は其処で区切られた。言い切ろうとした局員をまるで睨みつけるかの様に高杉の目線が飛び込んで来た。
まるで獣に睨まれたかの様な威圧感が背筋を突き抜けて行った。
これは恐怖なのか、それともまた別の感覚なのか。それを究明する時間は彼らには余りなかった。
「お主達は寺子屋で常識とやらを学ばなかったのでござるか?」
突然後ろから声がした。今まで後ろに気配など感じなかったのに突然だ。その声の主に向かい振り返ろうとしたが、今度は体の自由が全く聞かなかった。見れば体全身にか細い鋼線が絡みつき動きを封じ込めていたのだ。
身動きが取れない局員たちを他所に、声の主はゆっくりと前へと踊り出た。
ダークグリーン色のコートを着こなし、耳には独特のカラーをしたヘッドホンを掛け、三味線を手に持ちながらリズムを刻んでいるかの如く肩を揺らしながら歩いている背中。それだけの情報しか得られなかった。
「人様の家に入るときは・・・まずノックをするのが常識でござるよ。ついでに言えば・・・手土産の一つや二つを持ってくる事もまた、礼儀作法の一つ。これ、人としての常識で御座るよ」
男はそう言い、持っていた三味線の弦を軽く弾いた。それに連動するかの様に絡みついていた鋼線は激しく振動し、局員たちの肉を引き裂き、骨を切断し、五体全てをバラバラに引き裂いてしまった。
悲鳴など挙げる暇すらなかった。それを挙げるよりも前に事切れてしまったのだから。
「おやおや。随分と華奢な連中でござるなぁ。てっきり断末魔の一つでも挙げるものかと期待していたのでござるが・・・どうやら期待外れでござったか」
男は半ば落胆したかの様な口ぶりをした。辺りに散らばった肉の塊を適当に押しのけ、高杉の前へと男は歩み寄って来た。
「随分と気合いの入った歓迎じゃねぇか、万斉」
「申し訳ござらん。どうやら拙者の熱弁が相当気に入ったようで、呼んでもいないのに追いかけて来てしまったようでござる」
「成程な、それならば仕方ないか・・・で、どうだった?」
万斉の冗談めいた言い分をひとまずおき、高杉は話題を変えた。と言うよりは話題を戻したと言うべきだろう。彼が知りたいのは寧ろそっちなのだから。
「春雨の方は上手く行ったので御座るが・・・管理局の方は残念ながら交渉決裂してしまったで御座る」
「お前がしくじるとはな。まぁ、はなから奴らとは手を組むつもりなんざさらさらねぇ。どうせその辺りで春雨の奴らとつぶし合いをしてるだろうしほっとけば良いだろう。それで?」
「大方、晋介殿の予想した通りで御座ったよ。拙者がほんの少し揺さぶっただけで連中は見事にボロを出したで御座る」
無表情のまま、淡々と万斉は語る。彼にとっての収穫はこのネタだった。そのネタこそ、高杉が求めている最大の功績とも言えた。
「桜月の”本体”はやはり、管理局が保有しているようでござる」
「そうか、道理で江戸中探し回っても見つからなかった訳だ」
「ですがご安心を、どうやら連中はまだ桜月を使いこなせてはいないようでござる。まぁ、連中では到底桜月を扱う事など出来ないで御座るが―――」
「あれを扱えるのは世界広しと言えど『アイツ』一人しかいない。無論、白夜を扱えるのもな」
「紅夜叉・・・で、御座るか?」
万斉の問いに高杉は動かない。だが、その表情からそれが答えだと言うのは察する事が出来た。常に狂気に満ちた顔をしていた高杉の顔から一瞬だが、その狂気が消えた。それが何よりの証拠となる。
「かつて、攘夷戦争最強と謡われた伝説の剣士。二本の妖刀を自在に操り、戦場を舞い数多の天人達を切り裂いてきた紅き鬼神。噂では、あの白夜叉すらも凌駕するとか―――」
「奴だけじゃねぇ。恐らくこの世に生きてるどんな奴でも、あいつには勝てないだろうよ。無論、俺達でもな。あいつの強さは次元が違う。一生掛かったって追いつけねぇだろうよ」
「惜しいで御座るな。それ程の凄腕ならば、一手手合わせ願いたかったので御座るが―――」
「死ぬ覚悟があるんだったら止めやしねぇよ」
「何を今更―――」
高杉の脅し文句に万斉は嘲笑して見せた。
「貴殿と歩みを共にした時から、この命など当に捨てたような物。今更死ぬ事など恐れぬ。ましてや、強敵との闘いで死ねるとなれば尚更本望で御座るよ」
「頼もしいこった」
今度は高杉が嘲笑した。それからしばらくの間、二人して嘲笑し合うだけの時間が数分かの間続いた。その数分をこの二人は本当に数分と思うだろうか。それとも数時間か、はたまた数秒なのか。それは当人にしか分からない。
「しかし、紅桜を全て壊された事は痛手で御座ったな。もうすぐ晋介殿の目的も達成されたで御座ろうに」
「ぶっ壊されちまったもんを嘆いた所で仕方ねぇさ。その分の帳尻は奴らにして貰えば良い事だ」
「連中も知ればきっと紅桜を壊した事を後悔する筈で御座ろうな。何せ、紅桜を作った本当の目的が―――」
言葉を綴りながら、万斉は口元を持ち上げた。それと同時に高杉の口元も笑みに歪む。
***
なのはとシュテルの連携に桜月はすっかりきりきり舞いにさせられていた。自身の攻撃は全て薄皮一枚でかわされ、反撃に拳と大量の光弾が飛んでくる。それを捌いた後にどうにかねじ込む形で攻撃をするのが現状で手一杯だった。
体から無数のコードを伸ばしても結果は同じ事。全て拘束魔法で一括りにされた後に纏めて引き千切られてしまう。ばらけさせて放っても同じ事だった。どの道引き千切られて終わるだけでエネルギーの無駄遣いにしかならない。
何よりも、今戦っている両者の姿が余りにも似すぎている為にどちらがどちらなのか把握するのに苦労する事もまた苦戦の原因にあった。
どちらも同じ顔をして同じ色の服を身に纏っている。違うとすれば戦い方だけだ。
なのはは至近距離からの打撃。シュテルは中距離から光弾を放つ。しかし、この二人はそれらを切り替えながら戦っている。最早どちらがどちらなのか見分けるのが出来なくなり出していた。
「隙ありぃ!!」
声を張り上げ、なのはと思わしき少女の鉄拳が鳩尾に響く。体がくの字に曲がり、顔が持ち上がる。だが、これで分かった。こいつは接近戦が得意な方だ。ならば離れて攻撃すれば・・・
「こいつと殴り合いなんざ御免だ!」
ひと跳びでそいつから距離を取る。だが、それに対し殴ったなのはと思わしき少女は突如笑みを浮かべた。まさか・・・
「わざわざ私の距離に飛んでいただき、感謝しますよ」
そう言って、突如として彼女の周囲から無数の光弾が姿を現した。
やられた、こいつは別の方だ!
気づいた時には既に遅しだった。自身に向かい大量の光弾が襲い掛かってくる。またそれらを切り払う作業が始まる。
そう思いだした時、腕に違和感を感じた。何か強い力で腕を押さえつけられているかのような感覚だった。
見れば、其処には刀を持っている方の手を別のなのはが両手で抱えるようにして抑え込んでいた。
「私と殴り合いがしたいの? おじちゃん」
にんまりと、まるで子供が大人におもちゃかおかしを強請るような猫なで声で尋ねる。だが、その声の裏にある真意を知った時、桜月は青ざめた。
その刹那、なのはの腕の中で桜月の腕が歪な形に折り曲げられた。
バキン! 木材を叩き割ったかの様な激しい音と共に桜月の腕が折れ曲がる。
このガキ、腕の骨を真っ二つにへしおりやがった。
折られた腕を伝い激しい痛みが伝わる。だが、その直後として今度は大量の光弾が体中に当る痛みが伝わる。
「があぁぁっ!!!」
痛みに苦痛の叫びが木霊する。折られた腕と体中に突き刺さる光弾の圧力に桜月は膝をついた。
そんな桜月を前にして二人のなのはこと、なのはとシュテルは勝ち誇ったかのように見下ろしていた。
「同情はしませんよ。貴方はお父様の腕を切り捨てた。それに比べればまだましな方です」
「私の大事なリボンを盗んだ分と、お父さんを虐めた分は私たちがきっちり200倍位にして返してあげるからせいぜい楽しみにしててよね」
外見は同じなのに全く言葉遣いが違う。ただ似てる所と言えば、二人とも良い性格をしていると言う所だろう。
「怖ぇ……今後あいつらを怒らせるの止めとこうかなぁ」
二人のえげつない戦いを目の当たりにして、銀時は心底背筋が凍り付く感覚を覚えた。今まででも充分手に負えなかったなのはが今度は二人になった。それだけでも恐ろしいのに二人とも根っこはかなりのドSなのだ。
まぁ、銀時も言ってしまえばS寄りなのだが、この二人のSっぷりはそれの比じゃない。下手にこの二人を怒らせたら地獄すら生ぬるい責め苦が訪れる事だろう。
「この・・・ガキ共がぁぁぁぁ!」
桜月が怒号を張り上げ。折れた腕を無理やりコードを伝って補強して、振い上げる。最早それは腕とは呼べないかけ離れた代物となっていた。まるで化け物の腕だ。無数のコードがとぐろを巻き、螺旋を描くように腕の回りに絡みつき新たな腕を形成している。
その大きさに比例するかの様に、刀の方も大きさと厚みを増していく。それはまるで刀と言うよりは鉈に似たスケールを放っていた。
しかし、それを前にしてもなのはとシュテルは全く動じていない。寧ろ返って闘争心を掻き立てられたかの様な顔をしていた。
「良い、やるよ」
「分かりました」
互いに頷き合う。その直後、一直線に桜月へ向かい駆けだす両者。またかく乱戦法で来るつもりか、だったら今度は纏めて叩き潰すだけだ。
最初に巨大化した桜月を横凪に振う。それに対し、二人は同じタイミングでジャンプして回避する。
其処へ今度は大量のコードを伸ばす。それらに対しても二人は同じ戦法で回避していく。両者とも光弾を発射してコードを減らし、残ったコード達は両手で掴んで引き千切る。全く同じ、二人とも同じ戦い方をして桜月を翻弄していく。
それでも、絶えず桜月はコードを放った。結果は見えていると言うのに桜月は馬鹿の一つ覚えとも言えるような同じ戦法を繰り返し続けた。
無論、そんな戦い方でこの二人を倒せる筈もなく、二人は全ての攻撃を捌き切り、桜月の両脇へと降り立つ。
「脇腹が―――」
「がら空きじゃぁぁぁ!!」
怒号と共に両側から二人の渾身のニーキックが突き刺さる。顔に激痛の色が映る。
「ぐ・・・はぁっ!!」
ついに、桜月の膝が崩れ落ちた。苦痛の声を漏らし、力なく地に付く両の膝。二人のドS少女のコンビネーションの前に紅き妖刀もとうとう根負けしてしまったようだ。
「いえぇい、大勝利!!」
「はい、勝利ですね」
満面の笑みを浮かべ、勝利を確信したなのはとシュテルが互いの手を叩き合って喜び会う。ハイタッチと言う奴だ。
そのハイタッチをした直後だった。突如としてシュテルの体が眩い光に包まれて行き、無数の光の粒子へと姿を変えてしまったのだ。
その光景を前にしてなのはは仰天した。
「心配いりませんよ。元々一つだったのが二つになったのです。なのでそれがまた一つに戻るだけの事です」
「そ、そうなんだ。でも、それでシュテルが消えちゃうなんてことはない?」
「ご心配なく。私は貴方、貴女は私。私たちは一つの体を共有する存在なのです。ただ、少し疲れましたので暫くの間寝させて貰います」
どうやら初戦闘の緊張故か相当疲労してしまったのだろう。光の粒子となったシュテルはなのはの元へと集まり、やがて光はなのはの体の中へと消えて行った。
不思議な光景が終わった後には、なのはが一人だけその場に残っている光景が見えていた。
「終わった・・・のか?」
「うん、多分・・・だけど」
いまいち歯切れが悪い受け答えだった。まぁ、子供故仕方なしと、そう思っておくことにした。
「にしてもなぁ、俺のこの腕どうすんだよ。これじゃこれから先不便で仕方ないぜぇ」
今更だが銀時の右腕は桜月の手により切り落とされてしまっていた。幸い出血は止まってはいるもののこのまま隻腕で過ごすのは不便極まりない。
「大丈夫だよ。きっとシュテルが治し方知ってるだろうし」
「本当かよ? お前から生まれた奴だからいまいち信用が持てねぇんだよなぁ」
「ひっどぉい、何それ? 私が信用できないって言うのぉ!?」
「今までの行いを顧みてみろよ。お前信用に足る生き方してきたか?」
戦闘の空気が収まり、すっかり緊張が解れた後、銀時となのはの二人はその場で毎度おなじみとも言えるじゃれ合いを始めだした。
これも儀理とは言え親子としての繋がりがあるからこそ見れる光景だったりする。
「さてと、んじゃ帰るか。っと、その前にさっき一緒に乗って来た鉄子を探さねぇとなぁ。あいつ何処行ったんだ?」
「案外その人もお父さんの事探してたりしてね」
「まっさかぁ~」
二人してそんな他愛ない会話を織り交ぜていたそんな矢先の事だった。
こちらに向かってくる足音が聞こえる。数からして数人、正確な人数は把握できないが少なくとも二人や三人ではない。恐らくもっといる。
「んだぁ。敵さんのお替りならもう沢山だぜ。生憎こっちはお腹いっぱいで勘定待ちなんだからよぉ」
「因みにツケは利かないからそのつもりでね」
「ボケのつもりか?」
そんな感じの会話をしながらも二人して身構えだした。もし出て来るのが本当に敵ならば見敵必殺を心掛けねばならない。何しろ銀時もなのはも桜月との戦いで消耗しきってしまっていたのだから。
「あれ、銀さん! それに、なのはちゃんも!?」
「新八、それに神楽!」
だが、現れたのは余りにも見知った面子だった。銀時と同じように船内に潜り込んだ新八と神楽、それに道中で出会った鉄子と何時の間にか合流していた桂の姿も其処にはあった。
「ってかヅラ。お前まで居たのかよ」
「ヅラじゃない、桂だ! まぁ、色々あってな。今はこうして脱出する算段を考えている真っ最中なのだ。銀時、何か明案はないか?」
「てめぇを高杉に差し出してその隙にとんずらするって言う明案ならあるぜ。実行するか?」
「出来るかそんな愚策!!」
冗談のつもりだったのだろうが桂は割と本気で怒り出した。案外ピュアな青年のようだ。
「ところで銀さん。その腕どうしたんですか? あと、なのはちゃんは髪短くなってない?」
新八が二人の変化を聞いてきた。まぁ、なのはの場合は髪が短くなっただけなのでさしたる問題はないだろうが、問題は銀時の方だ。何しろ腕が片方なくなってしまっているのだから。
そんな新八の問いに、二人は至極簡潔に述べた。
「切られた」と―――
「切られたって・・・大丈夫なんですか!? 今すぐ治療しないと大変な事になるんじゃ―――」
「大丈夫だよ。今はシリアスパートだけどさ。ギャグパートに戻ればきっと完治してる筈だから問題ねぇって」
「メタすぎるだろその言い方ぁ!!」
最早お馴染みとまで言えるボケとツッコミだった。
「すまないが、何時までもここでのんびりとはしていられそうにないぞ」
そんな場の空気を変えて来たのは意外にも鉄子だった。
「どう言うこった?」
「さっき、私達は「かんりきょく」とか言う謎の武装集団に襲われたんだ。幸いにも船内の攘夷志士達と戦闘になったお陰でこうして逃げられたんだが、直にこっちに来るかもしれない」
「管理局だぁ? 此処まで来るたぁ仕事熱心なこって。だけど何でそれで逃げなきゃならねぇんだ?」
銀時は首を傾げた。そもそも彼の頭の中では管理局の局員は味方だ。なのになぜ味方から逃げねばならないのか。
「銀さん、多分ですけど・・・ここであった管理局の人達。前に僕らが会ったアースラ隊の人達とは別の人達ですよ。それも、かなりやばい方の」
「成程な。どさくさに紛れて良いとこだけ持って行こうって考えか。でかい組織ってのは大概決まって胆の小さい作戦を組みたがるもんだなぁ」
盛大に皮肉を述べてみた。まぁ、新八の言い分を要約するならば、奴らはこの船内で何かを求めて襲い掛かって来たのだろう。それは果たして何なのか。
推測ではあるが、銀時は薄々感づいていた。
「それはそうとなのはぁ、そのバリアジャケットどうしたアルか? 何で黒くなってるアルか?」
「へ? 黒じゃ変なの?」
神楽の指摘を受けなのはが疑問に思い出す。以前なのはが展開した際には白いバリアジャケットを纏っていた筈。それが今回は何故か黒いバリアジャケットになっている。
「良く分かんない。私も気が付いたらこんな格好になってたし」
「気が付いたらって・・・銀さん、これって確かデバイス無しじゃ展開出来なかった筈じゃないですか?」
「さぁな、生憎魔法関連に関しちゃ俺にはさっぱりだ。こればっかりはその手に詳しい奴に聞かねぇと分かんねぇよ」
銀時達では魔法関連は完全にお手上げ状態だった。まぁ、元々魔法とは無縁の世界だったのだから無理はないのだが。
「んで、実際のところどうやって此処から逃げるんだよ。俺ら乗り物ぶっ壊れちまったからねぇぞ」
「僕らも潜り込んだ形なんで生憎その手の類は・・・桂さんはどうなんですか?」
一同の視線が一斉に桂へと向けられる。それは期待の視線か、はたまた猜疑心故の視線か。その視線の意図を察しているのかいないのかわからないが、桂は自信有り気に答えた。
「案ずるな。間もなくエリザベスが俺の窮地に気づいて手勢を率いて此処に現れる筈だ。今はただ辛抱する時。攘夷であろうとデートであろうと基本は待ちなのだ」
「攘夷とデートを引き合いに出す攘夷志士はおめぇだけだろうよ。ま、逃げ出す手段があるってんなら一安心だな」
悩みが消えるとホッとする。どうやら生きて此処から出られるのだろうと知り一同の顔に安堵の表情が浮かび上がりだした。
「嫌に腑抜けた面してんじゃねぇか。敵地のど真ん中だってのによ」
「「!!!!!」」
全く別の声がした。その声を聴いた途端、銀時と桂の表情が一瞬にして強張りだす。そして、声のした方へと体の向きを変えた。
「よぉ、久しぶりだな。銀時、それにヅラ」
「てめぇ・・・」
「高杉・・・」
其処には何時の間にか高杉の姿があった。何時背後に現れたのだろうか。神出鬼没とはまさにこの事。
一同に緊張が走る。
「あ、おじさん!」
「・・・は!?」
そんな緊張の糸をなのはのこの一言が盛大に破壊してしまった。
つづく
後書き
どうにか桜月を下し、この話も終わりかな・・・何て思っていたら今度は高杉が登場Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
そろそろこの紅桜編もいい加減終わらしたいと思っている昨今です。あぁ、早くギャグパートが書きたい。シリアスパートは肩が凝って仕方ないんじゃぁぁぁぁ!
PS:最近ようやく携帯をスマホに変えました。パズドラとモンスト楽しい!!・・・更新が遅れてすんませんでした。<(_ _)>
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