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駄目親父としっかり娘の珍道中

作者:sibugaki
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第80話 予想外の事は何時も予想外のタイミングで起こるから予想外と言える

 
前書き
何とか今回は早めに更新することが出来て安堵してます。
そして、今更ですが銀魂のアニメ終わっちゃいましたね。原作だと最終章辺りなのでしょうけど、これらをアニメ化する場合どうするんだろう。
劇場版にするにしても結構尺があるし、まぁ、楽しみにしておくか。
ってな訳で本編をどうぞ。 

 
 両方!? 両方だと!?
 確かに、銀時の耳にはそう聞こえた。今しがた、目の前で桜月の放った斬撃をシュテルが両手で白刃取りした後に、それを払い除けたのだ。
 だが、それら一連の動作はシュテルが全てやった訳ではないようだ。
 彼女が言うには、ようやく目を覚ましたなのはが自発的に行った行動だと言うようだ。
 今更ながら、何時なのはにあんな芸当を仕込んだだろうか? 確かに銀時の戦いを幼いころから間近で見ていた筈だが、だからと言ってあんな動作をすぐに出来る筈がない。
 ましてやなのはには実戦経験がない筈。それが一体どうして―――

「やっぱ……お前があいつを守ってくれてるのか?」

 そう呟きながら、銀時は左手に持っていた白夜を見つめた。白夜に視線を移した意味、それはこれをかつて使っていた人物に辿り着く。
 かつて、妖刀と恐れられた白き刀『白夜』と朱き刀『桜月』。この二本の刀を手に持ち戦場を駆け抜けた白夜叉に並ぶとされる赤き鬼神。
 
(紅夜叉……)

 銀時の脳裏にその名が浮かんだ。桂や高杉、坂本と同じように銀時と共に攘夷戦争を戦った仲間であり銀時が幼少時代に初めて会った異性であり、そして……もう二度と会う事の出来ない存在。
 紅夜叉に関する詳細は明かされておらず、世間では紅夜叉の存在すら知らない連中が大半を占めている。
 それもそうだ。戦争が終わった後、高杉率いる鬼兵隊の根回しにより紅夜叉の活躍が全て闇に葬られたのだ。
 情報操作とでも言うのだろう。戦争で疲弊してはいてもそれ位の事は出来た。そのお陰で紅夜叉の存在を世間が知る事は困難な事となってしまっていた。
 だが、銀時は確実に覚えている。戦争中も片時も自分の傍を離れずに自分のすぐ隣で圧倒的強さを誇った赤い鬼神。
 その強さは銀時は愚か、攘夷志士全てが束になって掛かっても恐らくは勝てないだろう。嫌、もしかすれば紅夜叉を倒せる強者はこの世には現れないのかも知れない。
 そう思える程に紅夜叉は強かった。強すぎた。強すぎるが故に……彼女は戦争で命を落とす事となってしまった。
 ただ、自分に課した信念を守るが為だけに―――

「両方だぁ? 何訳の分かんねぇ事ほざいてんだ? ほら吹くにしたってもうちっとマシな吹き方があるだろうが」
「嘘でもほらでもありませんよ。私が言った事は紛れもない真実の事です」
「体一つで何言ってやがる。まさか一つの体の中に二つの人間が共生しているとでも言うのか?」
「無機物にしては知恵が回るようですね。貴方の仰る通りの事です。今この体の中には私ともう一人の私が入っています。それはつまり……こう言う事も出来るって事だよ」

 突然シュテルの口調が変わった。かと思うと突然彼女の体が発行しだし、頭上から赤紫色の様な光の玉が姿を現しだした。現れた光の玉はふわふわと宙を舞い、やがて其処から形が象られていく。
 始めに光の玉は徐々に大きくなり、其処から手足が生え、やがて形を構築していった。
 
「これが、先ほどの言葉の意味ですよ」
「そう言う事。理解できた?」

 目の前で起こったその光景に桜月は勿論、銀時すらも度肝を抜かれる事となった。
 二人だ! そう、目の前でなのはが二人に増えたのだ。
 いや、正確に言えばなのはとシュテルが分かれたとでも言うのだろうか。元々似たような顔つきだったのかも知れないがまさかこうもそっくりに分かれるなんて思いもしなかった。
 顔つきは勿論の事髪型や身に纏っているジャケットの柄までそっくりなのだ。
 まるで手品でも見せられているかの様な感覚に見舞われた。

「な、ななな……何だお前ら!? ふ、増えた……のか?」
「別に増えた訳じゃないよ。ただ、私とシュテルが分かれただけの事だよ」
「体内に流れる魔力を使い、中枢にあるジュエルシードを用いればこれくらいの事は簡単にできます。所謂一種の分裂行動とも言えるでしょうね。最も、理論だけで出来る事では有りませんが」

 要するになのはとシュテルにしか出来ない芸当と言う事だ。なのはの魔力と体内に埋め込まれたジュエルシードを利用して何やかんやで体を二つに分ける事が出来たのだと言う。
 良くある『影分身の術』とかに似た部類の事なのであろう。
 そう思えば別に珍しい事ではない。だってジャンプでも良くナ○トとかが頻繁に使ってる技なんだし。

「それにしても……本当に私そっくりなんだねぇ。こうして会うのは初めてだよね」
「始めても何も、私はつい先ほど覚醒したばかりですからね。ほぼ初対面と言う方が正しいと思いますよ。それに私はどうやら貴方をモデルに象られた存在の様ですので貴方に酷似していて当たり前の筈です」
「へぇ~、でも中身は全然違うね。戦い方も全然違うし。ひょっとしてシュテルはさっきみたいな変な玉とかを飛ばして戦うタイプなの?」
「正確には魔力弾です。私は貴方とは違い接近戦に乏しい面がありますのでそちらの戦い方の方が有利に事を運べるのです」
「ふぅん。私はどっちかって言うと拳での方が得意だな。小さい頃からそればっかりだったし、そっちの方が喧嘩しているって感じがして実感湧くしね」
「喧嘩と戦いを混合するのは少々無謀なのでは?」

 唐突に二人のなのは? それともシュテル? とにかく、二人の似た者同士が互いに語り始めてしまった。自分自身と語り合うなんて恐らく一生あり得ないレアな事をやっているからだろうか。敵をそっちのけで話に花を咲かせている。
 が、そんな二人の会話を断ち切るかの如く桜月の斬撃が二人目掛けて飛び込んで来た。

「何時までもくっちゃべってるんじゃねぇよ! 二人に増えたってんなら二人纏めて真っ二つにするだけだ!」
「やれるもんならやってみなよ!」
「今の私たちを相手にそれが出来るならの話ですがね」
「ほざけクソガキ共がぁ!」

 怒り心頭と言ったところだろうか。憤慨している様にも見える。とにかく渾身の力で桜月は持っていた刀を振り回す。それをなのはは地上を飛び退き、sシュテルは宙を舞ってそれを逃れた。
 そして、シュテルは宙に浮いたまま桜月から距離を離し、斬撃の届かない位置から魔力弾を撃ちだし、なのはは地上から桜月に駆け寄り、両の拳を振るう。
 同じ人物の筈なのにこうも戦闘方法が違うと言うのは驚かされる。

「ぐっ! くそがぁぁ!」
「さっきはよくもやってくれたよね! そのお返しは倍にして返すからねぇ!」

 先ほど受けた痛みをなのははどうやら覚えていたらしく、それを今度は倍にして桜月に返すつもりのようだ。
 とは言うが、先ほどなのはを傷つけたのは桜月ではなく岡田なのではあるが、既に岡田は此処にはおらず、代わりに桜月が岡田の体を支配して戦っている。
 その桜月からして見れば藪蛇も良い所であろう。だが、同情してやる余裕はない。此処でこいつを倒さなければ江戸に未来はないからだ。




     ***




 銀時となのはが桜月と激しい激闘を繰り広げていた丁度その頃、偽装船内部では、神楽と木島の二人の暴走により主だった男性陣達、つまり新八、桂、武市の三名は二人の暴走に巻き込まれた形で瀕死の重傷を負う羽目になってしまい、地に伏す光景が展開されていた。

「ぜぇ……ぜぇ……げほげほ!! な、中々やるアルなぁ」
「はぁ……はぁ……あ、あんたこそ中々やるっすねぇ」

 散々暴れ回った後だろうか、神楽も木島も二人して肩で息をする程疲弊しきっていた。更に言えば神楽は現在進行形で風邪を患っている為に今は本調子を出せる状況ではない。とは言え、宇宙最強の戦闘民族こと夜兎族である神楽と真っ向からやりあって互角な辺り、彼女も相当戦闘力が高い部類だと言える。

「だ……だけど惜しかったアルなぁ……わ、私はまだ実力のほんの半分しか出してないアルよ……」
「は、はん……既に半分も出し切ったんすかぁ? 情けないっすねぇ……わ、私はまだた……たったの40%の実力しか出してないっすよ」
「あ、今の嘘アル。私まだ30%しか出してないアルよ」
「本当の事を言うと私はまだ実力の15%しか出してないんすよ」
「あ、今の無しアル! 実は私はまだ10%の力しか………」

 ついにはお互い醜い口論を勃発し始めてしまった。しかもかなりスケールの低い、見るに堪えない口論であった。
 はっきり言って見たり聞いたりしている側が深刻なダメージを負いそうな気がしてならなかったりする。

「み、耳が痛い……神楽ちゃんいい加減落ち着いてくれないかなぁ?」
「全く同感ですよ。これだから猪女は嫌なんですよ。私はもっとおとなしい子が好みなんですよ。さっき一緒に居た子みたいな感じが……ムフッ」
「気持ち悪い顔して笑うなぁ! こっちのSAN値がマッハで削られるわぁ!」

 武市がどんな顔で微笑んだかは読者の想像に任せるが余りオススメはしないと言っておこう。
 安易に想像してSAN値が減ったとしても一切責任は負わないのでそのつもりで。

「し、しかし相変らずリーダーは元気で何よりだ。そう言えば……何時もリーダーと一緒に居る筈の副リーダーはどうしたんだ? 一緒じゃないのか?」
「副リーダーって……あぁ、なのはちゃんの事ね。確か今日は会って……あぁっ!!」

 言われてみれば、と言った具合に新八は思い出した。今日一日忙しかったが為になのはの事を考えてる余裕が全くなかった。
 だが、桂の発言で新八は思い出した。何故今の今までなのはと会ってない理由を思い出した。
 紅桜を振り回して夜な夜な辻斬りを繰り返す岡田。そして、その岡田が手に持っていたなのはの髪とリボン。
 其処から到達する答えは最悪の答えしかない。

「あぁ、その子でしたら大事な客人ですので我々が保護してますよ」
「きゃ、客人!? 一体何で?」
「もしや、高杉の命令か!?」
「いかにも。彼女は我々の計画になくてはならない大事な存在。故に丁重にもてなしてありますのでご心配なく。いやぁ、しかしあの時の不思議魔女っ娘トト子ちゃんのコスプレは良かったなぁ。今でも思い出しただけで……ムフフっ」
「だからその気持ち悪い笑顔止めい! ってか、何が丁重だ、なのはちゃんコスプレさせてる時点で全然丁重じゃねぇだろうが!」

 新八の言う通りだったりする。まぁ、もしなのは自身が望んでコスプレをしたのであれば問題ではないのだろうが、どの道それを銀時が見たら多分発狂してこの船を木刀でひたすら破壊し続ける事になるだろう。
 何度も言うが普段はそっけない態度を取ったりしてはいるが、いざとなると何処ぞのモンスターペアレント顔負けな位の親馬鹿になったりする。しかし本人はそれを悟られるのが恥ずかしいらしく口では適当にはぐらかしたりしているのだが、実際には既にバレバレだったりしているのは知っている人は知っているかも。

「ま、まぁ……無事ならそれで良いか。それよりも、あんたらの言う計画って一体何に使うつもりなんですか?」
「良いでしょう。本来なら部外者である貴方達に教える訳にはいかないのですが、特別に……本っ当に特別に教えて差し上げますよ」

 偉く念を押すなぁ。内心そう思いつつも新八は武市の言葉に耳を傾ける。桂も興味を持ったのか同じく耳を傾け始める。

「ズバリ、リアルで不思議魔女っ娘トト子ちゃんを拝む事が出来るんですよぉ! これ程嬉しい事は私の過去の人生には全くありません。まさかあの不思議魔女っ娘トト子ちゃんが目の前に現れる何て夢にも思わなかったビックサプライズなんですからねぇ! これを逃す訳にはいきません! この好機に乗じて私の蓄えてある様々なコスプレ衣装を是非あの子にきて貰いたく……」

 話は其処で終わった。と言うのも、話している最中の武市に向かいさっきまで醜い口論を繰り広げていた神楽と木島の両名がダイビングキックを浴びせて武市をふっ飛ばしたからだった。

「きめぇ事に家のなのはを使ってるんじゃないネ!」
「だから先輩は何時まで経ってもロリコンなんすよ!」
「ロリコンじゃありません! フェミニストだって何度も言ってるでしょうが! 全く、そんなだからまた子さんは何時まで経っても私の秘蔵コレクションの価値が分からないままなんですよ。全く嘆かわしい」
「あんな気色悪いコレクションの価値なんて分かって溜まるかぁぁ! いっその事捨てちまえ!」

 何と言うか、呆れる反面安堵する新八だった。どうやら鬼兵隊の面々はなのはの中に秘められてる力には気づいていないようだ。
 前に新八達が海鳴市と言う別世界へ訪れた際に巻き込まれた『ジュエルシード事件』その際に時の庭園を訪れた際に一度だけなのはが用いた力。
 異世界の力である『魔法』の力。それも桁外れに強力な魔力を発揮して戦っていたのを新八は覚えている。魔法を用いて戦う人間は海鳴市を訪れた際に幾度か戦ったり共闘したりした事はあるが、その中でもなのはのそれは正に別格と言えた。
 もし、江戸の破壊を目論む鬼兵隊がその力を知っていれば少なくともコスプレをさせると言うバカな目的の為になのはを招く筈がない。まぁ、武市の嘘っぱちと言う可能性もないとは言い難いのだが、少なくともこいつらがなのはを戦力として招き入れようとしてはいない事が分かり安堵した。

「で、でもさぁ……仮にもコスプレをさせるにしてもその際にはなのはちゃんの了承がないと駄目なんじゃないかなぁ?」
「大丈夫ですよ。あの子も結構ノリノリでやってくれてましたしねぇ」
「なのはちゃん……そんな事してるの銀さんが知ったら、きっと発狂するだろうなぁ」

 そうは言いつつも、もしかしたら銀時も案外ノリノリでなのはのコスプレに協力したりするのでは? そんな心配が新八の脳裏を駆け巡る。
 ノリノリでコスプレをするなのはとノリノリでコスプレ衣装を選ぶ武市と銀時。想像しただけで寒気がしてきた。

「うむ、では早速副リーダーのコスプレ衣装とやらを買う為に服屋に赴くと言うのはどうだ?」
「あんたは何しれっと混ざろうとしてんだ! やらせないからね! あんたら歪んだ大人の妄想に純情な子供を巻き込ませて溜まるか!」

 仕舞には桂までもが悪乗りしだしてきた。此処の大人たちは変態か変質者しかいないのであろうか。
 だとするならば今ではすっかり万事屋メンバーの一員になっているとは言え元はリリカルキャラでもあるなのはをこんな汚い大人たちの妄想に巻き込む訳にはいかない。
 一応青少年の位置である新八が身を挺してでも守らなければならない。硬い決意を胸に新八はそう決心した。
 
「えっと……何してるんだ? 其処で」
「あ、貴方は!」

 声のした方へと一同の視線が動く。其処に居たのは村田兄妹の鉄子だった。どうやら船内を歩き回っていた際に新八達とばったり出会う形になったようだ。

「鉄子さんこそ、こんな所で何してるんですか?」
「私は……兄を止めようとして……それで―――」

 途端の鉄子の言葉が詰まったのを見て、新八は悟った。既に兄鉄矢はもうこの世に居ないのだと―――
 それを悟った新八は、それ以上の事を鉄子から聞く事が出来なくなっていた。
 彼も知っていたからだ。大事な肉親との別れの辛さを。

「し、新八~~。私、何だか頭がフラフラしてきたネェ……後凄いダルいアル」
「か、神楽ちゃん!」

 そんな矢先の事だった。突然神楽の膝が折れだす。どうやら風邪を引いていると言うのに無理して此処まで来たツケが回って来たようだ。

「か、神楽ちゃん! だから無理しちゃ駄目だって言ったのに」
「な、何言ってるアルか……大事な妹分の危機に姉貴である私が出なくて……ど、どうするアル……アル……アル……うっぷ!!」

 途端にその場に蹲りだす神楽。そして、その口からは形容しがたい音と汚い液体、吐き出される吐瀉物。要するにゲ○が神楽の口から滝の如く吐き出されたのであった。
 突然そんな事をしだしたのだから慌てだす一同。

「うっわ! 汚いっすねぇ! こんなとこで吐かないで欲しいっすよ!」
「いやいや、今時こう言ったゲロインと言うのもまた味があって良いんでしょうねぇ。容姿端麗で完璧超人なヒロインもいいですがこう言った癖のあるヒロインもまた良いものですねぇ」
「いやいや、だからって四六時中ゲロを吐くヒロインなんて僕はお断りですよ! ってか神楽ちゃんしっかりして! あぁもう、だからちゃんと寝てなきゃダメだって言ったのに!」
「えっと、一応ビニール袋ならあるけど使うか?」
「リーダー。それよりもこの酔い止め薬を飲んだ方が良いと思うぞ。水はないが」
「んなろぉ! 負けてたまるか! こうなったら私もゲロを吐いてゲロインキャラに昇格を―――」
「いけませんよまた子さん。貴方がゲロを吐いた所でただゲロを吐く危ない人でしかなりませんからね。決してヒロイン格にはならないと思いますよぉ」
「チッキショーーーーーー!!」

 神楽のゲ○一つでこうも皆が右往左往しだすと言うのも面白味の一つと言えるだろう。だが、間違ってもゲロインが通じるのは銀魂キャラのみなので他作品のキャラがやると確実にトラウマになるので間違っても多作品のヒロイン並びに女性キャラは真似しないように。

「と、とにかく……此処になのはちゃんが居るってのが分かったんだし、後は銀さんとなのはちゃんを連れてとっとと此処から出るだけなんだし、それまで何とか頑張ってよ神楽ちゃん」
「うぅっぷ……分かったネ。もう少しだけ頑張るアルよ」
「あ~、残念ですけどそれは出来ない相談ですねぇ」

 よたよたと立ち上がる神楽とそれを補佐する新八を前にして、武市は顎を摩る真似事をしながら二人にそう言ってきた。突然キャラを作り出して一体何がしたいのだろうか。

「ど、どう言う意味アルか?」
「先ほども言った通り、彼女は我が主の大事な客人。そう簡単に返す訳には行きませんねぇ。それに、貴方達は私たちの計画に大層邪魔な存在になるやも知れない。ならばいっその事今この場で」
「始末した方が手っ取り早いって事っすよ」

 突然武市と木島の二人から殺気が感じ取れた。正しく最悪の場面とはこの事だった。
 現状で神楽は多分使い物にならない、戦えるのは恐らく新八と桂のみ、果たしてこの面子で戦えるのだろうか。まぁ、やろうと思えばやれない訳でもなさそうだが―――
 そんな騒ぎをしていた一同に向かい、今度は複数の足音が響いてくるのが聞こえて来た。
 まさか、鬼兵隊の増援を要請したのでは? 今更だがここは敵地のど真ん中、現在新八達は敵陣中央で孤立無援状態になっているのに他ならない。
 
「ふふふ~ん、お忘れだったようですね~。此処が私たちのテリトリーだと言う事を~」
「あんたらはもう袋のネズミっすよ。観念する事っすねぇ」
「ネズミじゃない、桂だ!」
「毎回そのネタ使わんと気が済まないんですかあんたは! そんな事言ってる場合じゃない。こんな時に増援なんか来たら、僕達じゃ手の打ちようがないですよ!」

 不安になる新八。だが、逃げるには遅かった。今から逃げたところでまともに歩けない神楽を抱えて走る以上早く逃げる事は困難になる。しかも、今目の前に居る二人がそれを見逃してくれるとも思えない。となれば迎え撃つしか選択肢が遺されていない。しかしたった二人だけで大人数を相手に立ち回れるかどうか。
 
「さぁって皆さん、遠慮なくこの侵入者たちをやっちゃってくだ……あれ?」

 現れた増援に対して武市が命令を送ろうとしたが、その言葉は途中で途切れた。原因は現れた増援と思わしき連中だった。てっきり攘夷志士達が刀を片手になだれ込んでくるかと思っていたのだが、現れたのは全く予想だにしていない連中の姿だった。
 全身を異様なデザインの衣服で身に纏い、両の手にはロッドらしき物が握られている。
 その風貌と持っている得物に新八は見覚えがあった。

「あれって、まさか! 時空管理局の局員!?」
「動くな! この船は我々が占領した。抵抗すれば武力行使を慣行する事になるぞ」

 突然、物騒な事を言ったかと思うと、管理局の局員らしき連中は突然一同に向かいロッドの先端を向けて来た。明らかに敵意剥き出しと言える行動であった。
 全く予想外の展開に新八は勿論武市や木島までもが目を丸くしてしまう事態が起こってしまっていた。





     つづく 
 

 
後書き
まさかまさかの管理局の乱入!
本編とは全くかけ離れた紅桜編。一体今後はどうなる。
そして、どうする今後の展開(;'∀')

本当にどうしようΣ( ̄ロ ̄lll)ガーン 
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