提督はBarにいる。
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多摩は煮込みで温まる?・その3
さて、お次も野菜をメインにするか。何にするかな……あ、そういやカレー味卵の漬け込んでた汁が残ってたっけな。捨てるのは勿体無いし、あれを利用するか。
《漬け汁も捨てない!カレー手羽大根》
・取っておいたカレー味卵の漬け汁:150cc
・手羽先:3~4本
・大根:1/4~1/3本
・水:200cc位(適宜調整)
・カレー粉:適量
・酒:大さじ3
・砂糖:大さじ1
・塩、胡椒:適量
味のベースは味卵の漬け汁だからな、そんなに難しい事はないぞ。大根の皮を剥いて適当な大きさにカット。鍋に油を引いて、手羽先を皮目から焼いていく。こんがりと焼き色を付けたら、大根も入れて焼き目を付ける。
大根も焼き色が付いたら水と酒、それに漬け汁を加え、コトコトと煮込む。15分も煮れば大根も味が染み込んで柔らかくなるハズだ。砂糖を加えて全体に馴染ませ、味見をしてからカレー粉、塩、胡椒等で味を整えたら完成。
「ハイよ、『手羽大根(カレー醤油味)』お待ちどうさん」
「やっぱり煮物と言えば大根は外せないにゃ……提督、大根料理おかわりにゃ」
「……へいへい」
しかしよく食うなぁ。長距離の護衛任務だったとはいえ、そんなに腹が減っていたのだろうか?まぁいいさ、その分お代はキッチリと貰うしな。
さて、大根料理をご所望との事だが、煮込みばかりじゃ面白くもねぇな。ちょっと目先を変えた温まる料理をこの辺で1つ出すとしますか。
《あつあつこんがり!大根とベビーホタテのグラタン》
・大根:1/3本
・ベビーホタテ(又は刺身用ホタテ貝柱):1パック
・アスパラガス:3~4本
・小麦粉:大さじ3
・牛乳:100cc~
・生クリーム:100cc~
・味噌:大さじ1
・バター:10g
・塩、胡椒:適量
・ピザ用ミックスチーズ:適量
・粉チーズ、パン粉:適量
さぁいくぞ。アスパラは半分か3等分にして下茹で。大根は皮を剥いて3cm角位の大きさに角切り。刺身用ホタテを買った場合は4つに割った方が食べやすいぞ。
鍋にバターを溶かし、ホタテを炒めていく。色が変わってきたら大根を加えて更に炒めて、小麦粉を加えて焦がさないように混ぜていく。
小麦粉がホタテと大根に馴染んだら、牛乳と生クリームを少しずつ加えて様子を見る。緩くなりすぎるとホワイトソースとして失敗だからな。後は牛乳と生クリームが同量になるように調整しよう。煮詰まってとろみが出てきたら、味噌と塩、胡椒で味を整える。
ホワイトソースが出来たらグラタン皿に敷き詰め、下茹でしておいたアスパラを並べる。その上からピザ用チーズ、表面をカリカリにするためのパン粉と粉チーズを散らして、トースターに。チーズにいい感じの焦げ目が付いたら完成だ。
「お待ち、『ホタテと大根のグラタン』だ」
「大根のグラタンは初めて聞いたにゃ……」
スプーンで大根とホワイトソースを掬い上げ、フゥフゥと息を吹き掛ける。まだ湯気の立っているそれを口の中に放り込むと、
「熱い!熱いにゃ!」
「そりゃなぁ。出来立てだもの」
今更何を言ってやがるんだ。出来立てのグラタンが熱くねぇワケねぇだろうが。涙目になりながら、冷えたビールをゴクゴクと飲み干す多摩。
「死ぬかと思ったにゃ……でも美味しいにゃ」
「あぁそうかい、せいぜい気を付けて食うんだな」
多摩も強かに酔いが回り始めた頃、お次の客がやって来た。
「あっれー?多摩姉じゃん。帰ってきてたんだ」
「にゃ?北上、久し振りに姉妹で飲むにゃ~♪」
多摩は店に入ってきた北上を隣に座らせると喉をゴロゴロ鳴らしている。やっぱ猫じゃねぇか。
「でもなぁ~、アタシ今日お金ないんだよねぇ~」
と、多摩の方をチラリと見やる北上。この時点で100%嘘なんだがな。ウチの店にツケのシステムはない。キッチリとその場で精算させている。ウチの店に来る時点で持ち合わせがないハズがないのだ。
「心配するにゃ、北上。今晩はねーちゃんの驕りだにゃ」
「マジで!?やっりぃ~。いいねぇ、痺れるねぇ♪」
はぁ……まぁ、多摩がいいんならそれでいいんだが。いや、ここは北上のしたたかさを褒めるべきか。
「まぁいいや。んで北上よ、ご注文は?」
「そうだねぇ、じゃあ……どて焼きとビール!大ジョッキね~」
「……あいよ」
さて、じゃあ仕込んでおいたどて焼きを温めますかねぇ。
《圧力鍋で!提督特製牛スジ煮込み(どて焼き)》
・牛スジ肉:400g
・こんにゃく:2枚
・長ねぎ(青い部分):2~3本分
・生姜スライス:1枚
・刻みネギ、一味唐辛子:お好みで
・白味噌:150g
・鰹出汁:300cc
・砂糖:大さじ1
・みりん:大さじ2
・酒:大さじ1
どて焼きに限らず、牛スジってのぁ下拵えが肝心だ。まずは牛スジの下茹でから。鍋にたっぷりの水と牛スジ、ねぎの青い部分、生姜スライスを入れて強火で茹でる。沸騰してきたら中火に下げて、丹念にアクを取りながら煮続ける。
アクが出なくなったら牛スジを冷水を張ったボウルにあけて、綺麗に洗う。圧力鍋に2リットルの水を張り、洗った牛スジを入れて再び茹でる。沸騰してきたら、再びアクを取り除いてから蓋をして加圧。強火のまま15分加圧したら火を止め、そのまま圧が抜けるまで放置。
その間にこんにゃくの下拵え。味が染みやすいように隠し包丁を入れるのだが、その時の秘密兵器がフォーク。フォークの先を立てて縦横に傷を付けてやれば隠し包丁の代わりになる。傷を付けたら1~2cm角の大きさにカットしていく。
カットしたこんにゃくを5分下茹で。その間に圧力鍋の圧が抜けたので、ザルにあけて再び流水で牛スジを洗う。洗い終わった牛スジは、一口大に刻んでいく。
牛スジを刻み終わったら、いよいよ味を染み込ませる煮込みの段階に移る。鍋に鰹出汁、味噌、砂糖、みりん、酒を入れ、火にかける。味噌が溶けたら牛スジとこんにゃくを加えて煮込む。
沸騰したら弱火にして10分、焦げないように適宜かき混ぜながら煮込む。ウチではこのあと冷蔵庫等で一晩寝かせるが、早く食べたい時には鍋ごと氷水に浸けて冷やす。何度も語っているが、煮物は冷めるときに味が染みる。冷ます、という作業は一見無駄に見えるかも知れんが、美味い煮物が食いたいなら欠かせない作業だ。そして食べる時に再加熱すればOKだ。
「そういえば、ねーちゃんはどうしてるにゃ?」
「あ~、球磨姉ぇ?多摩姉ぇと入れ替わりで仕事に出てったよ~」
そう、多摩に負けず劣らず球磨も護衛に引っ張りだこである。
「どこ行ったにゃ?」
「ラバウルだってー。ついでに技研によって、何か受け取ってくるらしいよ?」
そう、球磨に行かせたのはラバウル技研に用事があったからだ。
「へぇー?もしかして新しい装備とか?」
「当たらずとも遠からず、だな。軽巡の改二艤装が新しくロールアウトしたって連絡が入ってな……取りに行ってもらう事にした」
「ねぇねぇ、軽巡の誰よ~?もしかして姉ちゃんのどっちか?」
「残念、長良型だ」
会話を交わしながら温めていたどて焼きが温まった。あまりとろみがキツいようなら水を足して調整しなければならないが、今回は必要なさそうだ。
「ほいお待ちどうさん、『どて焼き』にビールね」
「待ってたよ~頂きまーす!」
ホクホク顔の北上が、どて焼きを頬張り、ビールを煽る。
「いいねいいねぇ、沁み渡るねぇ~♪」
その顔はどこまでも幸せそうだ。多摩もその隣でうまそうにどて焼きをつついている。
「ねぇ提督~、また注文いい?」
「おぅ、何が食いたいんだ?」
「じゃあねぇ……もつ鍋!」
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