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提督はBarにいる。

作者:ごません
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ガッツリ!スタミナ牛丼SP!(後編)

 さてさて、お次は大淀の分の牛丼だ。何を使った物か……。そういや、夏場に暑がりの俺が冷房ガンガン回してたら少し寒がってたっけか?多少冷え性の気があるのか……ならば、身体を温める効能で有名な生姜たっぷりのスパイシーで食べ応えもある牛丼にするか。

《鬼生姜ダレのスパイシー牛丼》※分量2人前

・生姜:大2片

・牛ロース薄切り肉:250g

・万能ネギ(小口切り):適量

・塩:小さじ1/3

・ごま油:大さじ1/2

(鬼生姜ダレのベース)

・オイスターソース:小さじ1

・醤油:小さじ1

・豆板醤:小さじ1/2

・ごま油:大さじ2

 まずは牛肉から。塩小さじ1/3を揉み込んで下味を付ける。2片ある内の1片は厚めの千切りにし、もう半分はすりおろしてやる。

 次に生姜ダレを作る。先程すりおろした生姜とタレの材料を混ぜ合わせる。

「……随分と生姜を使うんですね?」

「ウチのお袋が無類の生姜好きでな。それが講じてか、俺もこういう香辛料や薬味は大好きなんだよ。」

 ウチのお袋は1kgの業務用のおろししょうがを半月で使いきる位、何にでも生姜を使っていた。その味に慣れ親しんだ俺も生姜好きにさせる位、お袋の生姜好きは筋金入りだ。

「この牛丼の具材は牛肉と生姜だけだからな。玉ねぎとか入れた方がいいかと思ったが、刺激的な味を楽しんでもらうにゃシンプルな方がいい。」

 俺の発言に、少し顔がひくつく大淀。




 お次はもう炒めていくぞ。牛肉をごま油で炒めていく。肉の色が変わったら千切り生姜を加えて炒める。火を入れすぎると生姜の香りも辛味も飛んでしまうから、サッと熱が入る
程度でいい。

 丼に飯を盛り、炒めた牛肉を盛り付け、タレをかけて万能ネギを散らせば完成だ。

「ホイ、『鬼生姜ダレ牛丼』だ。生姜の辛味が大分キツいからな。気をつけろよ?」

 付け合わせに温泉卵と野菜たっぷりの味噌汁を出してやりながら、丼を手渡す。

「随分と中華風な味付けなんですね……では、いただきます。」

 フンフンと臭いを嗅いでいた大淀は、箸を手に持ち両手を合わせた。具とご飯を箸で持ち上げてパクリ。瞬間、口を抑えて涙目になる。余程辛かったのか、お冷や代わりに出しておいた麦茶を一気飲みしている。

「なっ、ななな、何ですかコレ!物凄く辛いじゃないですか!」

「そうかぁ?そんなに辛口に作った覚えは無いんだがなぁ。」

 俺も余っていた牛丼の具をタレに付けて一口。……うん、生姜と豆板醤の辛味が舌にピリピリとは来るが、さほど辛い味付けにはなっていない。俺が生姜好きなのを差し引いても、充分一般向けの味付けだ。

「あちゃ~……、提督知らなかったんですか。」

 隣で苦笑いしている明石。

「この娘、辛いの苦手なんですよ。カレーの日のカレーだって、必ず甘口頼んでるんですからw」

「ちょ、ちょっと明石!恥ずかしいから誰にも言わないでって……!」

「へぇ、こいつぁ意外な弱点発見だなぁ。あの腹黒性悪眼鏡の大淀が辛い物が苦手とは。」

 それを聞いて思わずニヤついてしまった。カレーの日に甘口を頼んでいるのは、てっきり駆逐艦の娘達と一部の辛い物が苦手な奴等だけかと思ってたら、大淀もその一人だったとは。

「もっ、もう!提督まで私をからかって!」

 頬を膨らませながら真っ赤になって怒っている大淀。




「大体、今日のお昼だって元は提督の寝坊へのペナルティだったんですよ!?それなのに私をからかって……」

「だぁから、悪かったって。つーか、あの寝坊だって非番だった奴等に無理矢理付き合わされなければ起きなかったんだっての。」

 ……まぁ、終始無理矢理だったかと問われれば嘘になる。最後の2~3時間は俺もノリノリで飲んでいた。悪い所が無かったとは言わないが。きっかけは俺ではない、と明言しておく。

「なら付き合わなければいいじゃないですか!」

「そういう訳にはいかないんだよぉ大淀~。提督には艦娘のメンタルケアって仕事もあるんだからさぁ、そういう席に付き合うのも仕事なんだって。」

 明石はそういう観点での気苦労をある程度解ってくれているらしい。そういう援護は非常に助かる。

「あ!そ・れ・と・も・ぉ~……『愛しの提督が体調崩したらどうしよう!?』とか考えてたりして~www」

「なっ、ちょっ、ちょっと明石!なに言ってるのよ!」

 明石の奴め、悪ふざけしてやがる。ここは適当に乗っておいてあしらうのが得策か。

「え?何、大淀そういう感情あったの?いやぁ、照れるなぁ。」

「もっ、もう知りません!提督、おかわりください!明石の食べてた奴!」

「あ、大淀だけズルい!私もおかわり、大淀の食べてた奴をお願いしま~す!」

「お前らもよく食うなぁ。まぁいいや、急ぎで作るから味噌汁啜って待ってな。」

 再び調理を始めた俺のカウンターの向こう側では、膨れっ面で味噌汁を啜る大淀と、それを横目でニヤニヤしながら眺める明石の姿があった。仲がいいな、と思いつつ俺は鍋を振っていく。 
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