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Three Roses

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第二十五話 最後の言葉その七

「彼等は」
「と、いいますと」
「何故聖書を読まれているのでしょうか」
「聖職者から話を聞いているのでしょうか」
「信仰や学問だけではないとすると」
「それは一体」
「教義を学び」
 マリーは持ち前の勘、鋭いそれから察して言った。
「新教に対して論戦を挑み」
「論破、ですか」
「論争を挑み」
「それを狙っている」
「そうなのですか」
「おそらくは」
 このことを察して言うのだった。
「そうではないでしょうか」
「ですか、では」
「それに対して我々はどうすべきでしょうか」
「相手が論戦を挑んでくるならば」
「我々は」
「論戦には論戦です」
 マリーは自分にそのことを報告した諸侯達にすぐに答えた。
「言葉には言葉です」
「あちらが旧教の教義を出すならですか」
「我々は新教の教義を出すのですか」
「そのうえで論破する」
「そうしますか」
「はい」
 まさにその通りだというのだ。
「おそらく彼等は旧教の教義を学び」
「旧教のよさを知り」
「そこから新教を論破しようとしている」
「そうなのですね」
「おそらく、そして」
 さらに言うマリーだった。
「同時に新教も学んでいるでしょう」
「我々のこともですか」
「敵である我々の教義もですか」
「学んでいるのですか」
「そうしたこともしているのですか」
「おそらくは」
 マリーは遠くを見る目になっていた、そこには彼女が見るべきものがはっきりと見えていた。それでこう言うのだった。
「敵を知り自分を知れば」
「双方を知れば」
「それは大きい」
「だからですか」
「彼等はそうしているのですか」
「そうでしょう、論戦をするなら」
 そしてそれに勝つならばというのだ。
「相手のことをよく知っていればです」
「こちらのことも知り」
「そのうえで」
「それだけで有利に立てます」
 勝利に近付けるというのだ。
「双方の長所と短所を知れば」
「では彼等は論争に勝ち、ですか」
「そのことで旧教の勢力回復を狙っている」
「新教を論争で破り」
「そのうえで」
「そうでしょう、ならば」
 旧教の者達がそうしてくるのならとだ、マリーは言った。
「こちらも同じです」
「我々もですか」
「我々も教義を学び」
「そしてそのうえで、ですか」
「双方の長所と短所を知り」
「論戦を受けて立ち」
「そして」
 新教の諸侯達も口々に言う。
「逆に負かす」
「そうお考えですか」
「いえ、負かす必要はありません」
 マリーは論戦だが血気を見せる彼等に話した。 
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