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Three Roses

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第二十五話 最後の言葉その八

「分けてもいいのです、我々は」
「それは何故でしょうか」
「勝たなくてもいいとは」
「それでは旧教の者達が残りますが」
「それでもいいのですか」
「はい」
 その通りという返事だった。
「構いません」
「それはどうしてでしょうか」
 すぐに諸侯の一人が問うた。
「分けてもいいとは」
「それはどういうことでしょうか」
「旧教の者が残っていいとは」
「全てが新教でなくていいのですか」
「はい、ある程度旧教徒がいた方がです」
 マリーは至極冷静な表情で語った。
「国が動くので」
「そうなのですか」
「新教徒達だけよりも」
「旧教徒もいた方がですか」
「国は動くのですか」
「そうなのですか」
「旧教までの時よりもです」
 いぶかしむ新教徒の諸侯達にだ、マリーは話した。
「今の方が国が動いていませんか」
「国教を新教と定め」
「それからですか」
「我が国は動いている」
「そうだと」
「元はお祖父様のことでした」
 マリーとマイラのだ、ひいてはセーラとマリアの祖父でもある。つまり四人の姫達の祖父となる者である。
「お祖父様が王になられてからでした」
「二人目のお妃様を迎えられる時にでしたね」
「教皇庁が反対されたので」
「それで教皇庁から訣別され新教に改宗された」
「その時からでしたね」
「この時から我が国は新教の国になり」 
 そしてというのだ。
「新教と旧教が共にある様になりましたが」
「そういえば」
「確かに」
 大司教とデューダー卿が言った、マリーの側近達も今は諸侯達の中にいる。その先頭にいるのはロドネイ公だ。
「かつてよりもです」
「議論も活発化し政治は動いています」
「教皇庁の過度な介入も排除出来ていますし」
「王国との対決姿勢もはっきりしました」
「そうしたことも考えますと」
「新旧双方あった方がいいですね」
「私はそう思います」
 まさにというのだ。
「ですから旧教徒があってもいいです」
「我が国に」
「そうだというのですね」
「だから論戦は分けてもいい」
「勝ててもですね」
「新教の優位は保ちます」
 これはというのだ。
「しかし保つにはです」
「勝つ必要はない」
「分けてもいい」
「負けなければいいのですね」
「要するに」
「私はそう見ています」
「そう思うと気が楽ですね」
 キャスリング卿は微笑んで言った。
「戦争でも勝たねばならないとなると苦しいですが」
「引き分けでもいいのならですね」
「それだけ楽です」
「気もですね」
「かなり違います」
 先進的にそうだというのだ。 
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