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Three Roses

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第二十五話 最後の言葉その六

「ご安心を」
「異端ではなく」
「王国と通じる者こそをですね」
「処断していく」
「そうしていきますか」
「是非な」
 太子はまた答えた、そしてこのことからこうしたことも言った。
「それで思うことだが」
「?といいますと」
「それは」
「新教の有力者の中でとりわけ厄介な者がいればだ」
 国内の政争相手のことにも目を向けての言葉だ、
「王国と結んでいるとだ」
「そういうことにして、ですか」
「陥れる」
「それもですか」
「手だな」
 こう言うのだった、太子の顔は今は無表情だった。
「考えてみれば」
「そうしたやり方もありますか」
「相手を王国に通じているとして陥れる」
「売国奴として」
「それもありますか」
「汚い手だが」
 太子もこのことは認識していた。
「しかしだ、時としてはだ」
「そうした攻撃の仕方もある」
「策として、ですか」
「有り得る」
「そうなのですね」
「陥れずとも疑いをかけてだ」
 そのうえでというのだ。
「一時でもだ」
「動けなくする」
「そうしたやり方もありますな」
「肝心な時にそうする」
「そのやり方もありますか」
「動いて欲しくない時にその動きを止めるだけでだ」
 例え命までは奪わずとも、というのだ。太子は今度はその目の光を強いものにさせてそうして語っていた。
「いいのだからな」
「成程、それはいいですね」
「その時だけ動きを止めることは」
「疑いをかけ何かとそうすることも」
「いいやり方ですね」
「それも考えていこう」
 謀略として使うこともというのだ。
「必要ならばな」
「では」
「そちらも」
「これで命を奪うことはなくとも」
 それでもというのだ。
「嫌疑をかけて動きを止めることは出来るからな」
「足止めもですね」
「時には重要である」
「そういうことですね」
「そうだ、動けない間にこちらはことを進める」
 彼等のやるべき、したいことをというのだ。
「それも時として重要だからな」
「ではその様に」
「その様に進めていきましょう」
「太子がそう思われるなら」
「その時は」
 諸侯達も応える、この国の旧教徒の者達特に諸侯は最早完全に太子の下にあった。そうして彼の言葉に従っていた。
 マリーは今は新教徒の足場を固めることに腐心していた、だがその彼女のところにある話が来た。その話はというと。
「旧教の諸侯達がですか」
「はい、近頃です」
「何かと聖書を読まれているとか」
「そして司教や神父の方々の話を聞いているとか」
「教義を学んでいるとか」
「ただ学んでいるだけではないですね」
 聞いて即座にだ、マリーはこのことを察した。 
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