提督はBarにいる。
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本命は誰だ!?
「ところで、お前のトコの嫁艦は?居ないじゃないか。」
強かに酔っ払った染嶋が、目の据わった顔で此方を睨みながら言ってくる。コイツ、完全に出来上がってやがる。
「〇〇のトコはウチより多いジュウコン艦隊だからネー。1人に選べないんだよナ?」
雷の腹に頬擦りしながら、ニヤニヤと嗤うクルツ。やばい、スッゴい殴りたい。
「バカ言え、ウチのケッコンの基準は戦力の底上げだぞ?個人的な嗜好は絡んでない。」
「ほっほ~う?なら、なんで長門と陸奥には指輪を渡しとらんのじゃ?」
うぐっ、荒木め痛い所を突きやがる。確かにウチの長門と陸奥も錬度は最高値。ケッコン指輪を渡して更に戦力の増強を図るべきだろう、先程の説明なら。
「あらあら、大将さん黙り込んじゃいましたよ?」
「って事は、今指輪を持っている娘の中に本命がいるって事ね!」
クルツのトコの夕雲と雷が互いに顔を見合わせ、クスクスと笑っている。おいおい、何だか雲行きが怪しいんだけど。
「で?その本命さんって誰なんです?」
さっきまで山城並のマイナスオーラが漂っていた大和も、先程とは打って変わってこちらの色恋沙汰に興味津々、といった感じだ。やはり女子って事か。
「なら、一人ずつコイツの結婚艦を挙げていって、俺たちで推理してみるか!」
酔っ払った染嶋の提案に、みんな乗り気だし。どうすんの?コレ。
「まずは空母から!最近ケッコンした新妻、翔鶴さん‼」
まぁ、確かに一番最近ケッコンした艦娘だけれども。
「あー、まぁ翔鶴さんはなぁ。装甲空母になって燃費上がってしもうたしなぁ。」
確かに、ウチみたいな大所帯だと燃費の良さは大きなアドバンテージだった。ただ、数少ない装甲空母という魅力には勝てなかった。
「しかし、やはり燃費が悪くなるのはなぁ。」
オイ荒木、隣で嫁さんが大ダメージ喰らってるが良いのか?ノックアウト寸前って感じだぞ。
「って事は、翔鶴さんは違うようね。じゃ次!」
オイ、まだ続けるのかコレ。
「じゃあ翔鶴さんの妹、瑞鶴さん!」
「無いな。」
「うん、無いな。」
「コレは確信持てるネー。」
同期の3人が揃いも揃って、口を揃えて『瑞鶴は無い』と断言。何となく、その根拠は解る気がするが、それだけは口にして欲しくない。
「何で解るのよ、そんな事。」
叢雲が尋ねちゃったよ。やめて、いやマジで。
「「「だってコイツ、おっぱい星人(死語)だもの。」」」
うわああああああああ‼言われたああああああぁぁヽ(´Д`;)ノ
今までひた隠しにしてきた性癖を暴露って、なんだよこのイジメにも等しい行為。ほら見ろ、叢雲は軽蔑の眼差しだし、大和は胸を両腕で隠しちゃったし(少し勿体無い)、夕雲は「あらあら♪」って悪戯っぽく笑ってるし、雷なんか目が死んでるじゃねぇか。
「む、胸が無くたって女の子は可愛いし……(震え声)」
とか言っちゃって別の世界に旅立とうとしちゃってるよ完全に。もう俺、完全にこの娘達の脳内で『おっぱい大好きな変態提督』って位置づけなっちゃってるじゃんコレ。どうしてくれんだ。
「ま、まぁ取り敢えず瑞鶴はコレで消えたな。じゃあ次は赤城さん!」
「まぁ、赤城さんは順当だな。」
染嶋の言葉にうんうん、と頷く荒木とクルツ。
「黒髪美人だし!」
「仕事出来るし!」
「家事も上手そうだし!」
「おっぱい大きいし。」
「おっぱい大きいし。」
だからもうおっぱいはいいだろぉ!?そんなジト目でコッチを見ないで下さい嫁艦の皆さん。嗚呼、視線が痛い……orz
まぁ確かに、赤城とケッコンした、という提督の話はよく聞く。艦娘の量産化が可能となってからは、大本営が特定の任務をこなす事で配属させる正規空母、って事で正規空母最古参である事が多いし、それに戦闘にしても執務にしても、その能力は高い。それに空母は錬度が上がりやすい。大概の海域攻略に必要だし、他の艦娘の錬度を上げるにもその随伴として心強い。そしてケッコンした事によるメリット、「燃費の改善」が大きい。
「ボーキの女王」「喰う母」「赤城給食」等々、赤城のその暴力的とも言える食欲と(鎮守府運営初期での)燃費の悪さは有名だ。ウチの赤城はそれほど燃費が悪いと感じた事は無いが、以前他の鎮守府の提督に『お前のトコの赤城は赤城じゃない。赤城の皮を被ったナニカだ。』と言われたその一言に、赤城への思いが凝縮されている気がする。それがケッコンにより改善するなら、願ったり叶ったりだろう。
しかし、やはり赤城は「何か」違うのだ。確かにあのムチムチフカフカのボディにクラッときた事は何度かある。それは否定しない。だがなんというか、それは肉体的魅力に惹かれたのであって、心まで許した感じでは無い、と言えば解って貰えるだろうか。
「いや、赤城は無いよ。それは断言できる。」
俺はきっぱりと、全員にそう言った。
「じゃあ加賀さんは?空母の中でも一番の錬度じゃない。」
叢雲はスクリュードライバーのグラスを傾けながら、こちらにそう言ってきた。
「あ~、加賀さんは…なぁ?」
「コイツの場合は仕方無いというか、なんというか……。」
「罪滅ぼし的なトコがあるからネ。」
嫁艦達は一斉に首を傾げる。無理もない、加賀にケッコン指輪を渡したのは俺の個人的贖罪の意味合いが強い。前にも語ったが、俺は若い頃に加賀を沈めている。沈んだ彼女とは違うのは解っている。ただ、俺はもう沈めないという決意の表れとして、空母では一番に指輪を渡したし、過去との決別も果たした。その話は同期のコイツ等もよく知っている。それを嫁艦達に話して聞かせてくれやがったらしい。揃いも揃って、顔がグシャグシャだ。
「うっ、うっ。良い話じゃないの…。」
「おっぱい星人とか言っちゃってごめんなさああぁい…」
「その沈んだ加賀さんも、彼方でさぞお喜びでしょうね。これだけ慕われて……。」
どうすんのこれ、収拾着かないんだけどさ。
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