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提督はBarにいる。

作者:ごません
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十人十色とはよく言うが。

 数年に一度、鎮守府には大本営から監査が入る。健全な鎮守府運営が為されているかをチェックする為の物で、資材のギンバイや艦娘に対する如何わしい行為、その他軍規を著しく乱す行為が行われていないかのチェックだ。監査に引っ掛かると減俸や降格、鎮守府異動……最悪鎮守府自体がお取り潰し、なんて厳しい処分もある監査、のハズなのだが。

「ったく、何なんだよあの報告書はぁ。お陰でコッチは蜂の巣つついたみたいな大騒ぎだぞ?」

 監査官であるハズの軍令部の男は、秘書である艦娘を横に侍らせて酒を飲みながらクダを巻いている。何を隠そう、この男は俺の同期生。いつも監査官はコイツが担当なのだが、すげぇ適当で数日間の監査の間はほぼ、コイツの有給休暇状態になってしまっている。しかも、

「なんだ?そんな面白い事があったのか。いい酒の肴だ、聞かせろよ。」

「その話、私も興味あるネ。是非聞かせてくれよ。」

 護衛に付いてくる提督二人もいつもの面子で、コイツ等も同期。さながら同窓会状態になってしまっている。



 さて、コイツ等の事でも一応紹介しておこうか。目の前でクダ巻いてる監査官が染嶋(そめじま)大佐。一応同期の中では首席だったキレ者。今は大本営の軍令部で書類と格闘する毎日。殆んど実戦経験は無いが、実務能力半端ない。嫁艦は叢雲(改二)。

「カッカッカ、コイツに八つ当たりしてもしょうがねぇじゃろうが。」

 染嶋の隣で豪快に笑いながら焼酎のロックを胃袋に流し込んでいるのが荒木。出身は呉。本土の呉鎮守府での勤務を希望していたらしいが、その才能を買われて今はラバウルにある艦娘の技術研究所、通称『ラバウル技研』に所属。あそこは技術の変態が集うと言われる魔窟らしいが、本人曰く「技術者の天国」らしい。まぁ、類は友を呼ぶ、って奴だろう。階級は中佐で嫁艦は大和。 

 最後に控えるのは金髪碧眼、クルツ=波多。何を隠そう元在日米軍の司令官様だ、元だけど。法律が整備されて艦娘との結婚が可能になった途端、「俺、米軍辞めて日本人なるわ。」と日本に帰化。即刻日本政府に取り入って提督に着任したらしい。入学式の時はビビったよ、『外人のオッサンがおる……‼』って。今はショートランド泊地だったか?階級は少将、嫁艦は雷と夕雲の二人。しかし、四十超えたオッサンが(見た目は)幼女に甘えてるこれは絵面的には完っ全にアウトだと思うのだが。しかも昔はキリッとした厳しい男だったらしいが、今や完全なダメ男と化している。

「イカヅチちゅわぁ~ん、酔っ払っちゃったよ~♪」

 うへぇ、気持ち悪りぃ。



……何?俺の紹介は、だと?要らないだろう、自分でやるのは恥ずかしいし。どうしても、っていうなら感想欄で聞け(メタ発言)。

 それよりも、話題はこの間の秋祭りの報告書だ。夜の間の一騒動(後々武蔵から聞き出した)は流石に報告しなかったが、一応はあった事を洗いざらい報告書に記載して送ってやった。

「じゃあ何か?起こった事を隠蔽しときゃあ良かったのか?」

「いや、誰もそういう事を言っているワケでは……」

 染嶋がどもると、傍らにいた叢雲が此方をキッと睨み付けてくる。

「ちょっとアナタねぇ、ウチの人をあまりイジメないでくれる!?この人ナィーブだから傷付き易いんだから‼」

 そう言って叢雲は染嶋の頭を抱き寄せると、まるで子供をあやすように頭をナデナデし始めた。

「お~よしよし、恐かったわねぇ……。」

 染嶋はチラリと此方を見て、すまんとでも言いたげな表情だ。前々から手紙で聞き及んではいたが、あれじゃあ過保護すぎるだろ。

 どうも染嶋の所の叢雲は、あまり実戦経験が無く、事務処理の手伝いがメインのせいか二人っきりの事が多いらしくてベタボレらしい。そのせいか、愛情表現が少し……いやだいぶ過剰らしい。ウチの叢雲はもっとツンケンしてて、俺への風当たりが強かったと記憶しているが…やはり、過ごす環境や人付き合いの仕方でこんなにも同じ艦娘でも差が生まれるんだな、と改めて感心した。

「しっかし、タイムスリップなぁ。」

 荒木は腕組みをして、首を捻っている。やはり技術者の血が騒ぐのか、手帳を取り出して何やら訳の解らない数式を書きながらブツブツと言い始めた。その隣では、

「提督ぅ……、提督ぅ?大和のお声、聞こえてますか~?」

 荒木の嫁艦の大和が、男前ジョッキ(容量1リットル)を片手にテーブルに突っ伏して右手の人差し指でテーブルをグリグリとやっている。どうやら荒木のトコの大和は嫉妬深く、かまってちゃんらしいな。しかし、ウチの酒と大和もこんな感じになるのだろうか?今度しこたま飲ませてみようかとも思ったが、ウチが大損害を被りそうなので止める事にした。
 
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