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ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~

作者:???
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真・魔人-ファウスト・ツヴァイ-part4/復讐者の終幕

トリステインへの復讐に逸るウェザリーの人形として、彼女のファウストの力を一時預かり、それを管理するための闇の人格を植えつけられたハルナは、これまでウェザリーの思いのまま働き、ウルトラマンやトリステインを大いに苦しめてきた。
だが、ハルナの本来の人格が表に出てきたがために支障をきたした彼女を見かね、ウェザリーは闇の力が弱体化する前に自身に戻し、自分の手で直接トリステインに手を下し、復讐を果たすことを決意。
圧倒的に強化されたファウストの力で、サイトことウルトラマンゼロを苦しめる第三の闇の巨人『ダークファウスト・ツヴァイ』。
だが、そのとき自分を取り戻したハルナは、もう一人…ウェザリーが作り出した闇の自分と心を一つにして、一つの奇跡を起こした。
以前より、若干女性らしい姿に変わっていたが…。

光の力で、ダークファウストに変身したのである。

「お前はもう、変身できないはず!!」
ありえない!とファウスト・ツヴァイ…ウェザリーは吠えた。こんなことがあるはずがない。元々ハルナのファウストの力は、自分がトリステインへの復讐を果たす前に倒されることがないようにするため、闇の力を強化させるために預けていた。そしてその力を再び自分に戻した。だから…本当なら彼女が再び変身するだなんて、ありえないはずなのだ。
「ハルナ…なのか?」
ゼロは膝を着いて驚いた様子のまま、目の前に立っているもう一人のファウスト…ハルナに目を向ける。振り返ってきた彼女は、死人のような黒い瞳から一転して、生きる活力と強い意思に満ちた白く輝く優しい目をしていた。
「サイト…」
彼女は身を屈めて、ゼロの体を覆うテクターギアに手を触れると、ギアに闇の力を加える。すると、テクターギアのパーツを繋ぐケーブルが発していた怪しい光が消え去り、プシュッと煙を吹く。
「これで、後は自力で外せるはずだよ」
彼女はそう言って、ファウスト・ツヴァイの方に向き直った。
「ハルナ!」
ゼロは立ち上がろうとしたが、ダメージとテクターギアの重みで立ち上がりきれない。
『テクターギアを外す方が先か…!』
ハルナがギアのケーブルに処置を施してくれたが、流石に完全解除とはいかないらしい。やむをえず、ゼロは解除の方に集中した。
「…私に逆らうつもり?」
ツヴァイは赤く光る目で、ファウストを睨む。
「…ウェザリー様、無礼をお許しください」
ファウストは…ハルナはウェザリーに語りかけた。
「たとえあなたでも…サイトを殺すというのなら…あたしがあなたを倒す!!」
「人形風情が…生意気を言うな!!」
今まで自分の復讐を果たすために動かしていたただの人形が、自分に歯向かう姿勢を見せたことに強い不快感を覚えたツヴァイは、ファウストに向かって襲いかかってきた。


「おい見ろ!」
「黒いウルトラマンが二人!?」
街の人たちは、ざわついていた。無理もなかった。
黒い巨人がさらにもう一人現れ、ゼロの窮地を救ったのだから。ギーシュたちも息を呑んでいた。
「ハルナちゃん、まさか…また変身できるようになるなんて…!でも、どうして…」
ハルナが再びファウストに変身を果たしたことに、ムサシは驚いた。最初は、またあの姿になったこともあって不安が一瞬過ったが、彼女がサイトを…ゼロを助けるために、ウェザリーことファウスト・ツヴァイに向かっていったのを見て、その不安は消え去った。しかし、闇の力を奪われた彼女がなぜ再びファウストに変身できたのだろうか。理屈を越えた事態だ。
「わからないけど…分かる気がするわ」
ルイズもまた驚きを見せていたが、ムサシよりも早く納得を示したような反応だった。
「いくら姿が変わっても、あの子は…」
今のハルナがなぜ変身できたのか、その理屈は科学的に解明することは不可能だろう。だが、ハルナとルイズには共通するものがある。それが、理屈を越えて彼女の力となったのだと、確信した。

ルイズとハルナは…平賀サイトという、同じ男に恋をしているのだから。


ファウストは、後ろ蹴りで足を突出して、突進してきたツヴァイを押し出し、今度は自らが接近して拳を突き出す。それを受け流したツヴァイが右のジャブをに連続で放つと、ファウストはバック転して回避する。その直後の隙を突こうと蹴りを放ってきたツヴァイの足を、ファウストはガシッと掴んで思い切り投げ飛ばした。
「エエエエエイ!!!」
「ウグゥッ…!!」
地面に落下し、背中を強く打ちつけるツヴァイ。すぐに立ち上がると、彼女はすさまじく怒り狂ったように叫んだ。
「あああああああああああああ!!!この…人形ごときがああああああああ!!!」
ツヴァイは感情の高ぶりに従い、ファウストに向けてダークフェザーを乱射する。ファウストはすぐに両手を突き出して光と闇のシールドを展開してツヴァイの光弾を防ぐ。
シールド解除と同時に、ファウストはツヴァイに今度は自分が光弾を放った。
〈ケイオスフェザー!〉
「フッ!」
「グガッ…」
腹に一撃、ダークフェザーだった頃と異なり光を混じらせた光弾を受けてツヴァイはすぐに持ち直した。
うまく一撃が入った。行ける!さらに追撃のために、ファウストはツヴァイに向かって行く。
だが、ツヴァイはファウストの接近と同時に、闇の光弾をもう一発放った。それを、身を翻しながら回避したファウスト。
「ふ…」
しかし、ツヴァイは誰にも聞こえないほど小さく、不適な笑い声を漏らす。
その闇の光弾はファウストに避けられた後で空中で分裂、地上に降り注いだ。
「ダーククラスター!」
バラバラになった光弾は最初に放った時よりもさらに多く分裂していた。しかも狙いの先は…
「…っし!やっと外れ…!」
「!」
まずい!テクターギアをちょうど解除したゼロに向かっている!ファウストは直ちにゼロの前に降り立ち、シールドを展開して闇の光弾の雨を防いだ。
「ハルナ!」
「平気だよ!これくらい…っぐ!」
しかし、ファウストはその先の言葉を口にできなかった。シールドを展開した直後の僅かな隙をついたツヴァイが、彼女の喉元を、闇の力を吸収した時のように掴んだ。
「調子に乗るな…人形ごときが!貴様の今の力も、私のものにしてやる!」
そう言ってツヴァイはファウストからまた力を吸収しようとした。しかし、すぐに邪魔が割り込んできた。
テクターギアをついに解除し、本来の姿に戻ったゼロが、ツヴァイに体当たりして突き飛ばし、落ちたファウストをお姫様抱っこで受け止めた。
「これ以上、ハルナには手を出させねぇぜ!!」
ビシッと、ツヴァイを人差し指で指差して断言して見せた。
「あ…」
戦いの最中だから不謹慎だとは思うものの、ファウストはハルナとして、ゼロの…サイトの男気溢れる言葉に胸が高鳴るのを感じた。


…ちなみにこの時ルイズは始祖の祈祷書を捲りながら虚無の新たな魔法を探る中、サイトがウルトラマンゼロだと知らないのに、なぜか物凄く嫉妬の感情が沸くのを感じたらしい。
「なぜかしら、妙に不愉快だわ…」
この嫌な感情を紛らわすためにも、ルイズは始祖の祈祷書を捲る。捲りながら、ハルナがそうだったように、サイトが今どうしてるのかが気になった。
(全く、こんなときにどこで何してるのよ、あの馬鹿犬は)
使い魔の契約の影響で、さっき視界が一瞬ぼやけ、サイトの視界と思われる景色が見えたが、今はそれは見えない。ウルトラマンたちに逆転のきざしが見えたからなのだろうか。
ふと、始祖の祈祷書の一部のページが、ルイズの指に嵌め込まれた水のルビーに反応し、光を灯し始めていた。
「これは、もしかして!」
ルイズはすぐにその青く光るページを捲った。


ゼロの体に強制装備された呪いのテクターギアがようやく解除され、これで2対1、サイトたちの方が有利に立っているように見えた。
だが、ゼロはすでにカラータイマーが点滅しており、活動限界が近づいていた。そして、ファウストは序盤こそ善戦していたものの…次第に動きを読まれ始めていた。
突き出した拳を受け流され、さらに続けて放った回転キックを加えるも、ツヴァイはバック転をしつつ回避し、立ち上がってすぐに、ファウストの顔に向けてダークフェザーを打ち込む。
「がぁ、く…!!」
顔が光弾の直撃で爆風にのまれ、顔を押さえながらファウストは膝を付く。
そんな彼女を援護しようと、背後からゼロがツヴァイを羽交い締めて動きを封じる。立ち上がったファウストはツヴァイに向けて攻撃を加えようと拳を放ったが、その前にツヴァイは、エネルギーが切れかけている影響で十分な力を発揮できないため、すぐに振りほどかれてしまい、ファウスト共々腹に光弾をそれぞれ一発叩き込まれて吹っ飛ばされた。
「「ウワアア!!」」
二人の巨人たちが、ラ・ロシェールの市街地に背中を打ちつける。時間が少しだけ流れた影響で少し落ち着きを取り戻したためか、ツヴァイは二人の巨人を相手に持ち直してしまった。
光の力で再びファウストに変身したハルナを見下ろしながら、ウェザリー=ファウスト・ツヴァイは口を開く。
「お前がまた変身して驚くあまり、油断はしたが…人形、お前の動きは私が与えたようなものよ。冷静になれば、お前の動きなど容易く見切れるわ!
愛しい男と一緒に、このまま私の手で廃棄処分にしてあげる…!」
今度こそ殺してやろうとばかりに、ツヴァイの右手に闇のエネルギーが充填されていく。
「ふざけんな…ハルナもみんなも…俺が守って見せる!」
だが、ファウストを守ろうと、ツヴァイの前にゼロが立ちふさがる。ようやく取り戻した絆を、直後に失うようなことがあってたまるものか。
「サイト…!馬鹿、今のあんたはエネルギーが!」
「ふぅん…なら、望み通りお前から…」
ツヴァイがそのまま闇の波動をゼロにぶつけてやろうとした時だった。
「キシャアアアアアアアアア!!」
「ヌゥ!?」
横から突然、どこからか現れたゴモラが飛び出してきてツヴァイを突き飛ばした。
「待たせたね、ようやくゴモラたちが回復したよ」
いつの間にかゼロたちの傍らの建物の上に上っていたジュリオが、ネオバトルナイザーを構えて立っていた。
「ジュリオ!」
「さあ、今から僕たちの見せ場だ!今からゴモラに相手をさせる!そのうちに、この黒い巨人へ一気に止めを刺す技の準備に入るんだ!このラ・ロシェールを舞台に、僕らの逆転劇を展開してやろう」
ジュリオが不敵に、二人の巨人たちに笑う。
まだ彼を、個人的に信頼に置ききれないゼロだが、自分とハルナの窮地を救った。ならそれに応えなくてはいけない。ゼロは頷き、ファウストと共に立ち上がる。
ハルナはまだ充分残っているが、もうじき活動限界だ。今の内に、太陽エネルギーを充填しなくては。
ゼロは天を仰ぎながら、その胸元に装備されたプロテクターを太陽に浴びせた。
父、ウルトラセブンも、戦闘中に充分なエネルギーが切れかけた時は、こうして太陽からエネルギーを吸収してきたのだ。カラータイマーが青に戻る訳ではないが、逆転の一撃をお見舞いできるなら充分だ。
ファウストもゼロに向けて頷き、彼女も左手に闇を、右手に光エネルギーを充填し、ツヴァイに止めを食らわせる必殺の光線の発動に入った。

その間、ジュリオはゴモラを使ってツヴァイに応戦していた。
「ガアアアア!!」
咆哮を上げながら、ゴモラはツヴァイに向かっていき、組みかかった。
ゴモラに対し、ツヴァイは脇下にゴモラの首を挟み込んで、顎を殴り上げると、すかさずゴモラは反撃にツヴァイをしゃくりあげて押し出し、尾を振るって彼女を転がし倒す。立ち上がってきたところで、さらに彼女の顔をつかんで数発ほど殴り付け、怯ませる。
「んの…調子に乗るな…獣が!」
ツヴァイは飛び上がってゴモラの脳天にチョップを叩き込み、怯んだところでゴモラの角を両手でつかんで、そのまま引っ張り上げて引きずり倒す。そして立ち上がろうとしたゴモラを、虐待する飼い主のように乱暴に数発蹴りつけ、さらにもう一度角を右手で掴んで無理やり持ち上げ、ツヴァイはゴモラを蹴飛ばした。
「退け!」
ゴモラを適当に退かせ、ツヴァイは必殺の光線を放とうとしたゼロとファウストに向けて、鋭利な闇の刃を飛ばした。
「終わりだ!」
これで奴らの首を撥ね飛ばしてやる!ツヴァイの放った闇の刃は、まっすぐ二人に飛んでいく。しかし二人は避けず、そのまま光線技のチャージに入ったままだ。
そして…

ドガッ!

「な…!」
「嘘だろ…」
誰もが、絶望的な衝撃を受けるだけの現実を目の当たりにした。
「ウルトラマンの首がすっ飛んだアアアア!!!」
絶望のあまり、マリコルヌが叫んだ。
首を撥ね飛ばされた二人の救世主たるウルトラマンは、力なく倒れた。あまりの残酷無慈悲な現実に、誰もが自分たちの未来に絶望を抱いた。
「ハ、はは…あははははは!」
それを見てウェザリー…ファウスト・ツヴァイは狂ったように勝ち誇った高笑いを浮かべた。自分の野望…トリステインへの復讐において、最大の邪魔者を消し去った。
「これで邪魔なウルトラマンは葬った!もはや私の道を阻める者は誰もいない!
トリステインの愚かな人間ども!喜びなさい…この私の最期の舞台における役目を与えてあげる…『死亡確定脇役』という、華々しい役目をね!」
なんともたちの悪い役目を押し付けてきたのか。街の人たちは、脳裏に聞こえてきたウェザリーの残酷な宣告に戦慄を覚える。そして絶望を悟った。もう自分たちの救世主は死んだ、もはや自分たちに残されたのは、ウルトラマンと同じ姿をした黒い死の魔人に殺されるだけ。
「いい絶望ね…」
心地よさそうにウェザリーは呟く。家族や故郷を奪われ、闇の力と復讐心に身を委ねたウェザリーには、憎いトリステインに住まう人間共の絶望の叫びが甘美な美酒のように心地よく感じる。
どれ、こいつらの死体を適当に回収してやるか。そして手を組んでいるシェフィールドの手土産にでもしてやろう。憎いトリステインを滅ぼしてさえしまえば、この世界のみらいなどどうでもいい。
しかし、ツヴァイはゼロたちの首なしの死体を確認しようと視線を向けた時、目を見開いた。
ゼロとファウストの、首が落とされた体が………風と共に消え去った。
「何!?」
勝利の余韻に浸っていたファウスト・ツヴァイの表情が一変した。どういうことだ?奴らはさっきまであの場から動いていなかったはずだ。それに奴らに、あんな芸当がそもそもできたのか?
混乱するウェザリーの耳に……なぜかこの時に、聞こえてきた気がした。

協力者が求めていた虚無の少女…『ルイズ』の声を

「残念だったわね、ウェザリー。私の存在を失念しちゃったのが敗因ね」

それを呟いたときのルイズの笑みは、不敵なものだった。
手に持っている始祖の祈祷書が、彼女の持つ水のルビーと共に青く光っていた。
実は、今ゼロとファウストがツヴァイの手で首を跳ね飛ばしたのは……

ルイズの魔法によって作り出された『幻』だったのだ。

「まったく、ようやく役に立ったわ…」
彼女が新たに手に入れた、虚無の『初歩の初歩』の魔法…〈イリュージョン〉。
名前の通り、術者の記憶を再現し幻影を作り出す。祈祷書の内容によると、なんと『空を作り出す』ことも可能らしい。
それで光線技の構えを取り始めていたゼロとファウストの幻影を作り出していたのだ。ゴモラとの戦闘に気を取られていたファウスト・ツヴァイは、幻影と本物のゼロたちが入れ替わっていたことに気付けなかったのだ。
「く、くそ…まさか幻と入れ替わっていたなんて!奴らはどこにいる…!?」
周囲を見渡すファウスト・ツヴァイ。本物のゼロとファウストは…
「もう遅いぜ、座長さんよ」
ゼロの声が彼女の耳に入った。ツヴァイはすぐに振り返る。
彼らは…街の、ルイズとムサシが待っている桟橋の方角に立っていた。ゼロとファウスト、二人のウルトラマンたちが、すでに光線をいつでも発射できる準備に入っていた。
「な、しまっ…!!」
二人の姿を見て、ツヴァイはすぐに逃げようとした。だがその時、彼女に向けて上空から火球が数発飛んできた。火球を足元に打ち込まれ、ツヴァイは足を止める。頭上を見上げると、さらにもう一体の怪鳥型の怪獣が…ジュリオのリトラが羽ばたいていた。決して逃がすまいと彼女を見下ろしていた。
「この…鳥ごときがぁ!!」
これも舞台女優兼、座長ならではだろうか。彼女は本来舞台を円滑に進めるために、参加している俳優たちの状況をすぐに確認しなければならない。つまり、目先に映るものであるほど注意が向いてしまう。
それが、彼女の運命を決めた。
「いくぜ…ハルナ!」
「あぁ…任せな!…ウェザリー様、これで…最後です」
ゼロはカラータイマーにゼロスラッガーを、クルクルと手の中で回転させながら二本セットし、刃に光を灯す。そしてファウストはさっきのように、左拳に闇、右拳に光エネルギーを集め、両腕を十字にして構えを取る。さらに、ゴモラも立ち上がって角にエネルギーを集め、ゼロたちと共に止めを刺しにかかった。
〈ゼロツインシュート!〉
〈ケイオスレイ・シュトローム!〉
「超振動波!」
「キシャアアアアアアアアアッ!!!」
まるで最初から打ち合わせをしていたかのように、全く同じタイミングで、二人と一匹の必殺の光線が発射された。
特にゼロの光線は激しすぎて、彼の足もとの地面が少し陥没するほどだった。
まっすぐ向かっていく彼らの光線は……避ける間も与えられなかったファウスト・ツヴァイを…ウェザリーを貫いた。
「ぎいいいいいいいいいいいやあああああああああああああ!!!!」
ウェザリーの、ファウスト・ツヴァイの断末魔が町中に響き渡り、彼女の体中に激しい火花が散った。
「が、はぁ……」
ピコン、ピコン、ピコン……
膝を付いた彼女の胸の、黒く染まったコアゲージが赤く点滅し始めた。それもようやく点滅し始めたというのに、不規則でやたら早い点滅速度だ。
もう、彼女には…戦う力は残っていない。
決着はついた。ゼロたちは、ボロボロのツヴァイが胸のコアゲージを点滅させているのを見て、それを悟った。
「おのれ…ここまで来て…私の野望が…トリステインの滅亡が…」
ふらつきながら立ち上がったツヴァイ…ウェザリーは憎らしげにゼロたちを睨んだ。
「どうも、芝居の構想とは…まったく逆の形になったわね…ウルトラマンたちはともかく、まさか人形までもがここまで私に反抗してくるなんて…
今度はあなたたちが追う側で、私は追い詰められる側…」
ウェザリーも、自分が敗北したことを悟った。だが、まだ彼らに挑戦する姿勢を崩さず、拳を握りながら叫んだ。
「けど、私は…このまま死ぬつもりは…ない!!貴様らを道連れにして…トリステインに永遠に我が怨念の証を刻みこむ!!」
「こいつ、まだ…!」
遂には、道連れ宣言だと!?見ると、ツヴァイの体から黒い稲妻が走り、炎のごときオーラが彼女の体から発生する。残ったありったけの闇の力を、爆弾のように暴発させて自分もろともゼロたちを殺そうとしていた。
「ウェザリー様、もうやめてください!あなたの負けです!」
ファウストがツヴァイに向けていい放つが、ツヴァイは耳を貸そうとしなかった。
「人形ごときが私に、指図をするな…がああ!!?」
だが、その時だった。突如ツヴァイが苦しみ悶えだし、自爆を途中で中断した。
「な、なぜ…だ…闇の力が…逆流していく…!!?私の体が、闇に溶けていく…!!」
「な、なんだ…?」
一体彼女に何が起きた?困惑するゼロたち。すると、ツヴァイの口からウェザリーの自嘲が漏れでてきた。
「は…ははは…ははははは…なんてこと…ここにきて…ようやく…気が付くなんて…
ハルナを人形に仕立てていたこの私こそが……私にこの力を授けた『あの方』の…操り人形でしかなかった…ということ……か……」
そう告げるツヴァイの体は、彼女の言う通り、闇のオーラに包まれ、錆び付いた金属のように崩壊し始めていた。もう肉体が限界を超えていたのか?
(あなたは、サイト君たちに舞台を持ちかけてきた…そうでしたね)
ふとムサシが、消えていくウェザリーを見ながら心の中でつぶやき始めた。
(舞台は、一人ではなく皆で一生懸命やるから、多くの人たちに感動を与えられるんです。今の彼らが…サイト君たちがそうであるように、かつての僕が『TEAM EYES』の仲間たちと共に危機を切り抜けたように…。
でもあなたは、自分一人の復讐のためにハルナちゃんを…あらゆる人を利用してきた。誰の感動も呼ばない、負の感情を振りまくだけの独り舞台を強行していた。その時点であなたは…彼らに負けていたんだ)
その言葉をたとえ口にしても、深い闇の淵まで落ちた彼女の耳に届いたのだろうか。それは、たとえエネルギーが十分な状態で、コスモスに変身することができたとしてもわからない。
「ウェザリー様…」
ファウストは闇人格のハルナとして、自分の主だった女の最期を、目を背けることなく見届けていた。
最後まで、彼女の姿が煙のように天に上りながら、跡形もなく消えるまで。
そんな彼女の肩を、ゼロがそっと触れてきた。
「サイト…」
「…さあ、帰ろうハルナ、みんなところへ」
「…うん」
深く入らないように、ただ一言優しく語りかけてきたゼロに、ファウストは…ハルナは頷く。ゼロと彼女は互いに手をつなぎとめながら点を見上げると、
一緒に空を飛んで飛び去って行った。

一度は自分たちの過ちで苦しみ、自分たちを憎み、恐れていたラ・ロシェールの街の人たちの…街を救ってくれたことへの感謝の言葉を背に受けながら。
 
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