世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
リトルバスターズ ~蒔風、それなりに落ち込む~
蒔風がバットを握ってボックスに立っている。
その眼差しからは、蒔風が神経を研ぎ澄ましている風に感じられた。
「絶対に打ってやる絶対に打ってやる絶対に打ってやる絶対に打ってやるよっしゃコイヤーー!!!」
しかし蒔風の表情は違った。
目はグルグルと渦巻いて、半分涙目、しかもやけっぱちだ。
一体なにがあったのか。
時間はつい15分ほどに巻き戻る。
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「よっ!はっ!キャッチ!」
理樹の打つ球を調子よく捕球していく蒔風。
跳んできたボールは十九個。
蒔風は真っ直ぐ飛んできたボールすべてを普通にキャッチしてきていた。
「なかなかやるな!」
「たりめぇよ!・・・・お?」
そして最後の球が飛んできた。
最後は凡フライである。
まず捕れたな、と皆が思うその球を蒔風が上を向いて追って行く。
「よし・・・・いいぞ・・・このままこのまま・・・・うわっ!アタッ!」
「「「「・・・・・・・・は?」」」」
そして驚いた。
後ろ向きに歩き、腕を伸ばしていた蒔風のグローブには球がない。
球は蒔風の両腕の間を抜けて額にボコン、と当たったからだ。
蒔風はそれにのけ反り、足をもつれさせて尻餅をついて倒れてしまった。
「・・・・・・えっと・・・・・大丈夫ですかーーー?」
理樹が恐る恐る聞いてきたので、蒔風が「大丈夫だーー」と仰向けになった状態から手をヒラヒラと振って答えた。
「じゃあ今度はそっちに溜まったボールをこっちに投げ返して下さーい」
「オッ、ケイ!」
蒔風が跳ね起きて足元のボールを集める。
「あー、それはそうとオレのことは気軽に「舜」でいいぞー」
「あ、はい!」
「恭介に話し掛ける感じでいいっての」
「だったら・・・バッチコーイ!!」
「お?いいね!いっくぜぇ!ほりゃ!」
そして蒔風がボールを投げる。
その軌道はゆったりとしたもので、軽いキャッチボールのようだ。
「もっと強くても大丈夫だよ!」
「あ、おう!」
蒔風が少し軌道を変えて投げる。
今度は真っ直ぐだ。
それを捕球した理樹が「ん?」と顔をしかめ、蒔風はすべて投げ終えてこっちに向かってきた。
「どうしたんだよ理樹。筋肉がプロテイン食らったみてぇな顔してよ」
「???えっと、何だか微妙に球筋が逸れてるんだよね。あとまだ力抜いてるみたいだし」
「なんだそりゃ?」
理樹が真人の天然を華麗にスルーして答えた。
蒔風はまだ力を抜いて投げている。
いや、全力で投げたら大惨事だから、手は抜いているのだが、それでもまだ弱めだ。
「次は?」
「次はバッティングだな」
そういって謙吾がバットを差し出してくる。
それに一瞬蒔風の身体が固まって、それから何事もないようにバットを掴んだ。
ピッチャーは本来鈴なのだそうだが、今はいないので真人が受け持っている。
「行っくぜぇ!!!おりゃあ!!!」
真人がボールを投げ、キャッチャー・謙吾のグローブに真っ直ぐに向かう。
「ッ、せい!!!」
それに合わせて蒔風がバットを振る。
しかし、ボールにはかすりもせずに謙吾のグローブに収まった。
「・・・・・・・つ、次だ!!」
蒔風が真人に次を投げるように言う。
それに応えて真人が再び投球するが、またカラ振りだ。
そんなことをもう五球繰り返してから、蒔風の肩を恭介が叩いた。
「おまえ・・・・野球苦手か?」
ドサリ
その一言に蒔風が倒れ込んだ。
「ええええええええええ!?」
「おい・・・・倒れたぞ・・・・」
「そうです・・・・オレ、野球とかメチャ苦手なんです・・・・・もっと言うなら球技が苦手なんです。野球、サッカー、バスケ、卓球などなどなどなど・・・・・」
「捕球とかは出来てたよね」
「それくらいなら・・・・でも打つなんてそんな・・・・投げるのも力入れると変な方向飛んでくし」
「えっと・・・・じゃあなんで入ろうとしたの?」
「それは・・・・・」
「おい、来たぞ」
そこに数名の女子たちがやってきた。
合わせて六人。
どうやらみんなで集まってから来たようだ。
遅れたのはそのためである。
「きょーすけ、何やってんだ?ってかそいつ!!!」
「うん?確か君は朝鈴くんを助けていた三年生じゃないか?」
「鈴りゃんを助けてくれたの?ありがと~~」
「わふ~~~。スペシャルマンですねぇ!!」
「能美さん、その場合はスーパーマンでいいかと」
「ややや?つまりなにかー?この人もうちらの仲間になるのかなーーーー?」
なんとも騒がしい。
しかし、とても楽しそうだ。
「紹介するよ、この人は蒔風舜さん。恭介の推薦でリトルバスターズに入ろうとしているんだよ」
「どうも、蒔風舜でーーーす・・・球技のできないダメダメヤローでーーーーす・・・・・」
「いきなり落ち込んでるけど?」
「そうなんだよね。この人、なんで入ろうとしたのか・・・・」
理樹が再びなぜ蒔風が入ろうとしたのか、理由を聞く。
すると、蒔風が跳び起きて。
「よっし!!お話しましょうか!!!誰かに聞かれない方がいいなぁ・・・・・」
「うーーーん・・・・だったら部室に行こうか?」
「あんの!?」
「廃部寸前の野球部のを勝手に使ってるだけだけどね」
そうしてリトバスメンバーと蒔風が部室へと向かう。
「それで、なんで入ろうとしたの?」
「そうだぜ。確かに俺たちは楽しく遊ぶグループだけどよ、今の活動はほとんど野球なんだぜ?」
「そうだな・・・・・じゃあ、話そうか。ここに主要、最主要が集まってることだし」
~蒔風説明中~
「と言うわけなんだよ」
その蒔風に、黒髪の女子生徒が言ってきた。
「信じられんな。世界だとかそんな話はお話の中の物だ。現実に持ってくる物じゃない」
「そんなぁ・・・・恭介は?」
「そうだな・・・・信じれば面白い話・・・・いや、理樹が狙われるのなら面白くはないが・・・・そういう話はオレも好きだがさすがに現実に持ってくるほどじゃあないな」
その恭介の言葉に皆がうんうんとうなづく。
みな、蒔風の話を信じられないと言う。
まあそれが普通の態度だろう。
しかし、次の蒔風の言葉でそれは一変する。
「何をおっしゃるか。悲劇の運命を覆すために虚構世界にて成長し、そしてみごとそれを打ち破った少年少女と、その世界の作り手たちが」
「「「「「「「!?」」」」」」」
その場の全員の視線が蒔風に注がれる。
「なぜ・・・・それを知っている?」
「いや、今なんか情報が頭にな、流れてきたんだよ。こう言うことがあったってな。まあ、あったってだけで詳細は知らないけどな」
「・・・・・・・・君は、世界を越えるとか言っていたね」
「んお?そだよ」
理樹の言葉に蒔風が答える。
「だったら・・・・何か一つ力を見せてくる?」
「いいよーーー。じゃあ・・・・これっ!!」
そういって空中に水を迸らせ、水流のパイプを作る蒔風。
それを見て理樹は納得した。
「うん、信じるよ」
「理樹っ!?」
「こんな物まで見せられたら反論できないよ鈴」
「ううう・・・・」
「ほらぁ、鈴ちゃん、今は理樹君がリーダーさんなんだから、理樹君を信じようよ」
「小毬ちゃんがそういうなら・・・・・・」
そういって小毬、と呼ばれたほんわかとした少女が手を差し出してくる。
「こんにちわ~。私、神北小毬ですっ。よろしくね~~」
それに続いて次々と女子たちが挨拶してくる。
「わふっ!私は能美クドリャフカですっ!ないすちゅ~み~ちゅ~」
「やっほ!はるちんは三枝葉留佳だよ!!」
「西園美魚です」
「うむ、私は来ケ谷唯湖だ」
「棗・・・鈴です・・・・・」
次々とあいさつを交わしていく蒔風。
と、そこで恭介が何処かに連絡しているのを確認した。
「恭介?どこに連絡してんだ?」
「いやなに・・・ことが大事なだけにな、こういう荒事に慣れてそうな奴に電話してんだ」
「・・・・・誰?」
蒔風が聞くと、恭介がニヤッ、と笑ってこう答えた。
「元学園の財宝を狙ったスパイ・・・・だな」
to be continued
後書き
アリス
「そういえばこの世界はどの時期なんですか?」
本編の後です。
なおこの世界は正規ルートを回っているので、理樹と鈴は付き合っています。
にゃんにゃん
アリス
「そう言えば蒔風球技苦手なんですね」
そうなんです。
刀で銃弾跳ね返せるくせにバットにボール当てられないんです、彼。
アリス
「なんでです?」
彼曰く「なんか無理」だそうです。
アリス
「獄炎弾投げる時とかどうするんですか」
あれはそれなりに軌道修正できるので。
アリス
「次回、ドジっ娘スナイパー」
ではまた次回
ミッションスタート!!!!
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