英雄伝説~西風の絶剣~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第19話 決戦準備
side;リィン
「やあぁ!!」
「しっ、ふっ!」
人が入らないほど深く静かな森に響くわたる金属音、それは僕とフィーがそれぞれの武器をぶつけて生まれる音だ。カルバート共和国での出来事から一年程が過ぎ僕とフィーは更なる強さを求めて修行に明け暮れていた。
「そこッ!!」
僕の斬撃をかわしてフィーが素早く銃弾を放つ、僕は銃弾を刀で防ぎフィーの背後に回り込み攻撃を仕掛けた。だがフィーは紙一重でそれをかわして飛び上がる。
「クリアランス!!」
フィーの双銃剣から放たれる無数の銃弾が僕に迫る。
「『孤影斬』!!」
それに対し僕は扇状の斬撃を飛ばして銃弾を薙ぎ払った。
「やるね、でも……」
地面に降り立ったフィーは双銃剣を交差させるようにかまえ―――――次の瞬間にはその姿が消えていた。
「ッ!?『時雨』!!」
ガキィィン!
咄嗟に突きを放ちフィーの攻撃を相殺した。フィーが使ったのは『スカッドリッパー』というクラフトでフィーが使うクラフトの中でも最速を誇る技だ。今の僕では完全にはとらえきれないので相殺できたのは運が良かったからだ。
「まだまだいくよ!」
フィーの姿がまた消えて僕の体に強い衝撃が走る、何とか防御するがこのままではジリ貧だ。でもフィーの姿はとらえられない、俺は懐からスモークグレネードを取り出して近くに投げた。すると辺りを煙幕が覆い隠した。
「ん、流石に見えないか……」
フィーは攻撃を一旦中断して後退し煙幕から脱出した。そして隙を与えないように注意深く僕の気配を探る。
「……そこ!!」
そして近くの茂みに向かって銃弾を放つ、しかしそこには僕の姿はなく西風の旅団が着ている黒いジャケットだけが落ちていた。
「ジャケットだけ……じゃあリィンは……」
「ここだよ」
僕はフィーの背後からポンッと刀の鞘を肩に当てた。
「今回は僕の勝ちだね」
「ん、負けちゃった」
こうして僕とフィーの模擬戦は僕の勝ちで終わった。
ーーーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
「あー、疲れた」
「ん、夏は暑いし嫌い」
模擬戦を終えた僕たちは近くの樹の根元に座り休憩を取っていた。季節はもう夏真っ盛りであり熱い日差しが降り注ぐ。
西風の旅団で来ている黒いジャケットを脱いで半袖になった体は汗でべた付いている。
「ていうか暑いなら僕から離れればいいんじゃないか?」
「それは嫌」
フィーは胡坐をかいている僕の膝にすっぽりと収まるように座っていた。正直汗まみれだから体が密着すると変な匂いがしないか気になってしまう。
「でも今の僕は汗を掻いてるから臭くないか?」
「全然。寧ろこの匂いが好き」
フィーは僕の胸板に顔を埋めて匂いを嗅いでいる。正直恥ずかしいから止めてほしい。フィーの頭を撫でながら僕はつかの間の平穏を感じていた。
「でも最近はこうしてリィンとゆったりする時間がなかったから話せて嬉しい」
「そうだね、ここ最近仕事の依頼が増えてきたよね」
最近の西風の旅団は休みがない、一応割り振りがあるから交代で依頼に向かってるが誰も依頼に行かない日は無い。
護衛や戦争の介入、はたまたテロリストの相手など色々な依頼が毎日来ている。仕事があるのは嬉しいが僕たちに仕事が回ってくるという事はそれだけ今の大陸に戦乱が巻き起こっている事でもあるので複雑な気分だ。
「今度の依頼はカイトの部隊に入るんだよね」
「うん、紛争地帯への介入だったね」
「……リィンが帰ってきて猟兵のお仕事を一緒にするようになってもう一年以上が立つんだね」
一年以上か……教団に連れ去られるまでは唯家族を守れる力が欲しかった、でも今はそれに加えてレンという大切な存在も救うという目的もある。なのに一年たっても彼女の足取りはつかめない。
「……レンって女の子のこと考えてるの?」
「えっ、どうしてそれを……」
「隠しても駄目、リィンってわたしの前だと直に顔に出るから分かる」
「ええ……」
そんな癖があったなんて……猟兵としては良くないぞこの癖は。
「……見つかるといいね」
「ああ、その為にはもっと色んな所に行って情報を集めないといけない。もっと気合を入れないとな」
「わたしも気合を入れる。リィンを助けてくれた子にお礼が言いたいから」
「そうだな、レンもフィーを気に入ると思うよ」
「ん、楽しみ」
フィーの頭を撫でながら話していると遠くからゼノがやってきた。
「お二人さん、訓練は終わったんか?」
「あ、ゼノ。うん、今ひと段落したところだよ」
「そりゃ丁度ええわ、団長が二人を呼んでたで」
「団長が?分かった、直に向かうよ」
僕たちはゼノにお礼を言って団長の元に向かった。
団長の部屋の前に立ちノックをする。
「団長、リィンです。フィーと一緒に来ました」
「来たか、中に入ってくれ」
「失礼します」
団長の部屋に入ると団長は何やら手紙のようなものを呼んでいた。
「訓練中に悪いな」
「いえひと段落したところだったので大丈夫です、所で僕たちを呼んだのは何故でしょうか、新しい依頼が入ったんですか?」
「いやそうじゃないがお前にとって重要な話がある」
「僕にとって……ですか?」
僕にとって重要……まさか!
「教団に関することですか?」
僕がそう言うと団長は首をコクンと下げた。
「ああ、俺たちがクロスベル警察……正しくはセルゲイの旦那たちに協力して教団について探っていたのはお前らも知ってるだろう?その教団が関わっている施設のほぼ全てが割り出せた」
「ほ、本当ですか!?」
僕は思わず声を荒げてしまう。今までその正体すらあやうやだった教団の関係している施設を割り出したことに驚いたからだ。
「教団の被害は最早ほうっておけない程の規模になっている。普段いがみ合っている国同士すらも協力して奴らの本拠地を探っていたんだがようやく見つけ出すことが出来たぜ」
「それじゃあ……」
「D∴G教団を倒す時が来たんだよ」
僕はその言葉を聞いてようやくレンを見つける事が出来ると歓喜した。
「一週間後にクロスベル警察署で各国の遊撃士や軍関係者たちが集まって教団についての会議を行うんだが俺もそれに呼ばれている。お前も来るだろう?」
「はい、勿論です!」
「わたしも一緒に行くよ、いいよね団長?」
「ああ、リィンの傍にいてやれ」
「うん」
ようやく教団の尻尾を掴めたんだ、待っていてくれ、レン!
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
あれから一週間が過ぎ僕は団長とフィーと共にクロスベルに来ていた。マリアナ姉さんたちはいざという時に動けるようにアジトで待機している。
「変わらないな、この街も……」
数年ぶりにここに来たがそこまで大きな変化は見えなかった。でもいつまでも懐かしんでいる訳にも行かない、気持ちを切り替えて僕たちは警察署に向かった。
--- クロスベル警察署 ---
「ルトガー!それにリィンや西風の皆も!久しぶりだな!」
警察署の前にいたのはガイさんとアリオスさんだった。ガイさんは前に会った時と変わらない爽やかな笑みを浮かべながら此方に駆け寄ってきた。
「久しぶりだなガイ、元気そうで何よりだよ」
「ルトガーさんこそ元気そうで安心したよ、こうしてまた会えて嬉しいよ」
団長とガイさんはガッチリと握手を交わして互いの肩をたたき合う。知らない人が見ればこんな中よさそうにしている二人が猟兵と警察官だとは思いもしないだろう。
「リィンも久しぶりだな。家族と過ごす時間はどうだ?」
「お久しぶりですガイさん。はい、とても素晴らしい物だと実感しました。これも皆さんのお陰です」
「良かったな、家族はどんな奴にとっても大切な物だ。今の時間を大事にするんだぞ」
「はい!」
ガイさんは大きな腕で僕の頭を撫でる、その手は逞しくも優しくてまるで団長の手みたいだ。僕は団長やガイさん、アリオスさんやユンさんのような大人になりたいな。
「リィン、久しいな。前にあった時より身に纏う闘気が強くなっているぞ」
「本当ですか!ありがとうございます」
アリオスさんのような達人にそう言ってもらえるなんて凄く嬉しい。
「ガイ、再会を喜びたいのは分かるがそろそろ時間だ」
「ああ、そうか。ルトガーさん、各国の遊撃士や軍の代表などは既に集まっている。猟兵は貴方だけだが快く思わない奴もいるかもしれない」
「まあ覚悟はしてるさ」
「そうか、こんな事を聞くのは野暮だったな。それじゃ案内するからついてきてくれ」
「分かった」
団長とガイさんが歩きだし僕とフィーも後に続こうとしたがアリオスさんに止められた。
「すまない、ここから先はルトガー殿しか行けないんだ」
「そんな、僕は実際の被害者なんですよ!」
「分かっている。だが頭の固い連中がいてな、スパイが入ると不味いから人数は少なくしろとの事だ。それにさっきもガイが言ったが猟兵嫌いの連中も多い、ルトガー殿を参加させる事を話したら大反対されてしまったんだ。セルゲイさんが何とか話を付けて納得してもらった」
「………」
「納得いかないのは分かる。だがお前が前にくれた情報は必ず会議で役に立つ、どうかこの場は引いてくれないか?」
「……分かりました」
僕はアリオスさんの言葉に頷いた。正直納得できてはいないが猟兵という立場もあるし自分の我儘で会議を遅らせる訳にもいかない。
「リィン、本来ならお前も参加させたかったが……」
「気にしないでください、会議の事はお願いします」
「分かった、お前の分までしっかりと参加してくる」
でも時間が開いちゃったな、どうしようか?
「リィン、もしよかったらロイドとセシルに会いに行ってくれないか?二人ともリィンに会いたがっていたしどうだ?」
「本当ですか?確かに最近会いに行ってないし……分かりました、僕も二人に会いたいしそうさせて頂きます」
「私も行っていい?」
「勿論だ、フィーもロイドの友達になってやってくれ」
「うん」
僕は会議の事を団長に任せてフィーと共にベルハイムに向かった。
side:ルトガー
リィン達と別れた後俺はガイたちに案内されて会議が行われる部屋の前にいた。
「ここが会議が行われる部屋だ。心の準備はいいか?」
「ああ、大丈夫だ」
「そうか、なら行くぞ。失礼する」
ガイにそういって俺たちは中に入る。部屋の中には俺が良く知る各国の遊撃士や軍のお偉いさんがズラリと並んでいた。
「「「……」」」
おおう、俺が入った瞬間あらゆる視線が降りかかってきた。困惑や興味の含んだ視線、そして一番強いのが……
(歓迎されるとは思わなかったが敵意が強いな)
チラホラと俺に向けられる敵意を含んだ視線を浴びながら俺は指定された席に座る。
「全員がそろったところで、会談の前提条件をひとつ。ここにいる者たちは普段はいがみ合っていたり快く思っていないものもそろっている。だが今はそういった柵を取り払いひとつの敵を討つ為に団結することを誓えるか?誓えるなら挙手を」
セルゲイの旦那がそう言うと何人かが手を上げる、無論俺も手を上げた。
「……やはり我慢ならん!!」
すると奥の方に座っていたある国の軍人の一人が立ち上がった。
「どうなされました?」
「なぜこの会議に猟兵が紛れている!猟兵など信用ならんだろうに!」
その軍人は俺を指さしてそう怒鳴る、やっぱりそういう風に思う人がいたか。
「そうだ、猟兵なんて汚らしい奴らなど信用できるか!!」
「そいつも教団のスパイなんじゃないのか!!」
それに便乗するように他の遊撃士や軍人が騒ぎ出した。
「くっ、頭の固い連中が……今はそんなことをしている場合じゃないだろう」
「だがこれでは会議が始められないな……」
アリオスとガイの言う通りこのままでは会議どころではない。俺は立ち上がり騒いでいる軍人の前に立つ。
「な、何だ。何をする気だ」
軍人は俺を警戒するが俺はその軍人の前で土下座をした。
「頼む、どうか俺も会議に参加させてほしい」
「猟兵王と呼ばれた男が土下座を……!?」
この場にいる全員が俺の行動に驚いていた。俺は構わず話を続ける。
「俺には息子がいる、血は繋がってねえが大事な存在だ。その子は教団に連れ去られて人体実験に利用されたんだ。奇跡的に生きて帰ってきてくれたが大事な息子を守ってやれなかったんだ……」
「……」
「奴らは今も罪もねえ子供誘拐して命を奪ってやがる、俺はそれが許せねえ!猟兵が何言ってんだって思うかも知れねえがそれでも俺は親なんだ!息子を傷つけた連中をほうっておけねえんだ!だから頼む、今だけは俺も一緒に戦わせてくれ!」
俺は必死の思いで頭を下げる。さっきまで騒いでいた軍人は何も言わずに俺を見ていた。
「俺は彼の参加に賛成したいと思います」
すると離れた場所に座っていた男性が話し出した、俺はその人物を見て驚いた。
「アンタは……カシウス・ブライト!」
カシウス・ブライト。リベール王国出身の遊撃士であり大陸に数えるほどしかいないと言われる剣聖の一人。
そしてかの『百日戦役』でエレボニア帝国の大軍に劣勢だったリベール王国を飛行艇を使った作戦で帝国に大打撃を与え最終的に国を守り切ったリベールの切り札とまで言われた男だ。
(名前は知っていたが実際に会ってみるとトンでもねえ覇気だな……)
見た目の優しそうな雰囲気からは想像もできないような覇気を纏ってやがる、底が見えねえぞ。
「カシウスさん、何故遊撃士の貴方が猟兵である彼を?」
「確かに俺は遊撃士で彼は猟兵、本来なら交わることはない関係です。ですが俺も彼と同じ一人の親です、だからこそ彼の悔しさがよく分かります。この場におられる皆さんにも子供を持つ方が大勢おられると思います。そんな宝物を私欲で奪っていく教団を許せる訳がない。彼も我々の同士だと感じたからです」
カシウス・ブライトの言葉に全員が静まり返る、自分の子供が教団によって奪われていく。それを想像してしまったんだろう。
「……ルトガー殿、無礼を許していただきたい」
するとさっきまで騒いでいた軍人が頭を下げた。
「今我々は立場や因縁に捕らわれている場合ではないというのに私は私情を挟んでしまった。こうしている間にも教団の魔の手が何の罪もない子供たちに向けられている。どうか我々と一緒に戦ってくれないだろうか?」
「あ、ああ!勿論だ。よろしく頼む」
さっきまでの険悪な雰囲気が嘘のように静まっていた。これもカシウスさんのお陰だな。
「カシウスの旦那、助け船を出してくれたこと、感謝する。ありがとう」
「気にしないでくれ、さっきも言ったが俺も娘がいる。その子の為にも教団はほうっておけない存在だ。共に奴らと戦おう」
「ああ、任せてくれ。カシウスの旦那!」
俺はカシウスの旦那と握手をかわした。
「……どうやら話はまとまったようですな、ならば改めて聞きます。ここにいる者たちは普段はいがみ合っていたり快く思っていないものもそろっている。だが今はそういった柵を取り払いひとつの敵を討つ為に団結することを誓えるか?誓えるなら挙手を」
セルゲイの旦那の言葉に全員が挙手をする。
「分かりました、それではこれよりD∴G教団壊滅作戦の会議に入ります」
いよいよだな、待っていろよリィン。
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
side:リィン
団長と別れた僕たちはロイド達が住んでいるベルハイムに向かっていた。ロイドに会うのは久しぶりだけど元気にしてるかな?
僕はロイドとガイさんが暮らしている部屋のドアをノックする。
「はい、どちら様でしょうか?」
ドアから顔を出したのはロイドだった。数年前より少し大きくなっていたが顔つきはそんなに変わってなかった。
「ロイド、久しぶり」
「リィン!リィンじゃないか!久しぶりだな!」
僕はロイドと握手をして再開を喜んだ。
「元気そうで安心したよ、最近は会いに来れなくてごめんね」
「別に気にしてないさ。しかしリィンは変わらないな、背も小さいままだし」
「あはは……ロイドは大きくなったね、羨ましいよ」
「所でいきなり来てびっくりしたよ、クロスベルには何か用事で来たのか?」
「うん、ちょっと野暮用でね」
「へえ~、あ、そうだ!今日は姉さんが病院の仕事が非番で家にいるんだ、今呼んでくるね」
ロイドはそういって部屋から出て行きセシルさん達が住んでいる部屋に向かった。
「凄い元気な子だね」
「うん、久しぶりに会えたけど元気そうで何よりだよ」
フィーとそう話していると奥の部屋からロイドがセシルさんを連れてきた。
「リィン!久しぶりね!」
「むぎゅっ」
セシルさんは僕の顔を見た瞬間ガバッと抱き着いてきた。
「セ、セシルさん……久しぶりです」
「もうそんな固い言い方じゃなくてお姉ちゃんって呼んで」
「流石に恥ずかしいです……」
尚も力を強めて抱きしめてくるセシルさん、嬉しいですが息が苦しいです。因みにその光景を見てフィーは目からハイライトが消えて自分の胸を見ていた。
「セシルさん、そろそろ苦しいです」
「あ、ごめんなさい。久しぶりに会えてつい嬉しくて……」
セシルさんが手を離してくれたので僕は解放された、はぁはぁ……胸で窒息するかと思ったよ。
「セシルさん、マイルズさんたちはいますか?」
「お母さんは用事でいないしお父さんは仕事だから図書館の方にいるわ。今日は私とロイドしかいなかったから……そうだ、部屋にあがって、お茶くらいは出しますわ」
「じゃあお言葉に甘えて…」
「お邪魔します」
僕とフィーはセシルさん達が暮らす部屋の中に入る、ここの風景も久しぶりに見たな。
「はいどうぞ」
「ありがとうございます」
セシルさんがくれた飲み物を受け取りお礼を言う、するとセシルさんの視線がフィーに映った。
「ねえリィン、その女の子って貴方の妹さんよね?前にちょろっとだけ見たから気になっていたの」
「はい、義妹のフィーです。ほら、挨拶して」
「……フィー・クラウゼル、宜しく」
うーん、前にちょっとだけ会ったはずなんだけどやっぱり家族以外には少し壁を作ってしまうか。フィーの人見知りはまだ直りそうもないな。
「……」
「……何か?」
セシルさんはジーッとフィーを見つめている、何か思う事があるのか?
「……可愛いっ!!」
「ふえっ!?」
そんなことを思っていたらセシルさんがフィーをガバッと抱きしめた。フィーも反応できないほど正確で速い動きだった、セシルさん恐るべし……
「可愛い!まるでお人形さんみたい!ねえねえフィーちゃん、私可愛いお洋服いっぱい持ってるの、良かったら来てみない?」
「え、その……」
「うんうん着てみたいよね。それじゃあお姉さんのお部屋に行きましょう!いっぱい可愛くしてあげるからね!」
「あ、リィン、助け……」
「それじゃあ行きましょう!」
フィーは僕に助けを求めてきたがあっという間にセシルさんに連れられて奥の部屋に入っていった。
「セシル姉、よっぽどフィーが気に入ったんだな、ありゃ当分帰ってこないぞ」
「相変わらず凄い人だな、セシルさんは……」
フィーはその後団長とガイさんが帰ってくるまで着せ替えをさせられていた。
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
「ふう、星空が綺麗だな……」
僕はベルハイムの外で星空を見ていた。あれから団長たちが帰ってきてガイさんたちのご厚意で一晩泊めてもらうことになった。
ロイドやセシルさんはもう既に眠っている、因みにフィーはセシルさんに連れられて同じベットで寝ている。二人とも仲良くなったようで僕は嬉しい。
「……5日後か」
団長に会議の内容を聞いたが5日後にD∴G教団に関係している施設全てを一斉に襲撃して一網打尽にする事に決定したらしい。少しでも時間を与えれば逃げられてしまう恐れがあったので5日後の午前1時に一斉に攻め入り逃げる隙も与えないようにするためこの作戦が選ばれたそうだ。
「いよいよか……」
等々奴らとの因縁に決着をつけるときが来たな、思えば長い時間が過ぎたものだ。
「やってやる。必ずレンを助けてもう二度と何の罪も無い子供の命が奪われるなんてふざけた事をさせないためにも……!!」
僕は刀を抜き自分自身に誓った。
ページ上へ戻る