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英雄伝説~西風の絶剣~

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第18話 カルバートでの決戦

side:リィン


 昨日の騒動から一夜が明けて僕とフィー、そしてカイトの三人でリーシャが働いている飲食店『鈴音』に向かっていた。


「しっかしそんな事があったとはなぁ、無事に助かったからいいけどお前らに何かあったら俺が団長に殺されていたな……すまない」
「ううんカイトのせいじゃないよ、わたしの不注意でこうなっちゃったし……」
「いやそれだけじゃない、ここカルバート共和国はD∴G教団の被害を一番受けている国なんだ」
「教団の……?」


 カイトの話に教団の名が出てきたので僕は反応した。


「ああ、他の国に比べるとこのカルバートで子供が誘拐された事件が最も多いんだ、治安の悪さもあるだろうし何より広すぎて国側が把握しきれてないのが原因だろうな、少し前まではエレボニア帝国でもそういった事案が多かったんだが貴族の子供が誘拐されたことがないからかそこまで重要視されていなかった」
「そんな……」
「貴族派の連中は貴族でもない平民の子が誘拐されようと大したことはないとのことらしいが当然鉄血宰相率いる革新派はそれを批判、民の安全を守るためにと鉄血宰相は直属の部隊《鉄道憲兵隊》を結成し大陸全土の鉄道網に配置することで教団の被害は格段に減った」
「それを聞くと革新派のほうがいい人達みたいに見えるね」
「まあ革新派、特に鉄血宰相は多くの平民から支持を受けている一方で無茶な鉄道網の拡大で土地や家を奪われ同じくらい多くの人間から恨まれている、まあどっちが正しいなんてないんだろうがな」
「ふうん……」


 貴族派と革新派か……どんな国でも必ず何かしらの問題はあるがこの二大国家はこれが更に大きいんだろう、まあ猟兵はどんな人間だろうとミラさえ払えば依頼は受ける。西風の旅団も例外はあるが基本は変わらない。


「話がそれたがとにかくこの国で教団の連中が接触してくる事は大いに考えられるから今日から二日間は俺も一緒に行動するぞ」
「でも昨日はこなかったじゃん」
「……実を言うとすっかり忘れていたんだ、すまない」
「えぇ……」


 忘れていたって……カイトって昔から物忘れが多かったから相方のミリアによく叱られていたっけ……でも流石にこれは団長に報告だな。


「あ、もしかしてこの事は団長に……」
「ごめん、流石にカバーは出来ないかな……」
「悪いけどそういう事はしっかりしないといけないから諦めて」
「だよな……はあ、拳骨だけですめばいいんだけどな……」


 カイトが目に見えて落ち込んでしまった、団長の拳骨は本当に岩を砕くから受けたくないんだろう。だが彼はもう分隊長だから下手したら一時間ほど団長との戦闘訓練かも……ご愁傷さま。


「まあ今回の事は次に生かすことにして今は気持ちを切り替えようよ」
「東方の料理はとっても美味しかった、きっとカイトも気に入ると思うよ」
「……そうだな、せっかく美味い物食いに行くんだし今は気持ちを切り替えて楽しむとするか」
「うん、それがいいよ」


 そう言って僕達はリーシャの元に向かった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「着いた、ここだね」


 僕達は昨日訪れた店の前に来たがどうやら営業中らしく結構な人が中にいた。もしかして人気のある店なのかもしれないね。僕達は店の中に入った。


「いらっしゃいませ……あ、リィンさんにフィーさん。来てくださったんですね」
「こんにちはリーシャ、約束通り来たよ」
「やっほー、リーシャ。人がいっぱいだね」
「はい、小さなお店ですが常連の方々がいつも来てくださるのでこうして繁盛させて頂いてます。あら、そちらの方は?」
「俺はカイト、リィン達の仲間だ。昨日はこの子達を助けてくれたって話を聞いてお礼に来たんだ」
「そんな……お礼を言われるつもりなんて……」
「俺達は家族を助けてくれた人物には最大の感謝を送る、だから礼を言わせてほしい、ありがとう」
「そうですか、そこまで仰って頂けるなら私も助けた甲斐がありました」


 カイトがリーシャに感謝の言葉を伝えてリーシャもそれを受け入れてくれた。


「じゃあお礼も言い終わったしそろそろ食事をさせてもらうとするか。東方料理は久しぶりだから楽しみだぜ」
「えっと……いいかなリーシャ?」
「はい、席に案内させて頂きますね」


 僕達はリーシャに連れられて空いていたテーブル席についた。


「ではご注文が決まったら読んでくださいね」


 リーシャからメニューを貰い読む。なるほど、昨日の屋台に売られていた物とまた違う食べ物がいっぱい書かれている。何を注文しようかな……」


「リィン、わたしこのエビチリっていうの食べてみたい」
「俺はとりあえずチャーハンと餃子が食いたいぞ」
「そうだね、適当に頼んで皆で分けようか」


 注文を決めてリーシャを呼んでオーダーする、昨日の屋台は一口サイズの物が多かったがこのお店では味も美味いながら量もあって満足感がある。けっこうな量があったが僕とフィーはペロッと食べてしまった。カイトはかなり満腹のようだが……


「けぷっ、美味しかった。エビチリって初めて食べたけど好きになったよ」
「ああ、俺はあのチャーハンが一番美味かった。米のパラパラ感が絶妙だったぜ」


 フィーとカイトも満足そうな様子だ。僕もとても満足できたよ、特にゴマ団子や杏仁豆腐が美味しかった。


「どうでしたか、満足していただけましたか?」
「あ、リーシャ。うん、このお店の料理とっても美味しかった」
「それは良かったです」


 リーシャの問いにフィーは満面の笑みで答えた。


「そこまで喜んで貰うと私も嬉しいネ」


 そこに第三者がやってきた、髪を頭の上で束ねた特徴的なツインテールと東方の服の何だっけ……確かチャイナドレスなるものを来た女性が話しかけてきた。


「あ、店長」
「店長ってこの店のか?随分若くて綺麗な人がやってるんだな」
「そっちのお兄さん中々お上手ネ。私『ジャム・クラドベリ』と言うネ。この店の店長を務めてるヨ、以後宜しくアル」
「初めましてジャムさん、僕はリィンと言います」
「フィーだよ、宜しく」
「俺はカイトだ、宜しくな店長さん」


 互いに挨拶をして自己紹介する、って何やらジャムさんが僕の顔を見ながら何かを考えていた。


「あの、何か?」
「うーん、君中々美形アル。後5年もすれば絶対いい男になるネ、若い女ほっとかないヨ」
「あ、ありがとうございます」


 まさかいきなり容姿について褒められるとは思ってなかったから驚いた。


「もし良かったら私の店で働いてみないカ?きっと若い女の客がいっぱい増えるヨ!そうすれば私の店も繁盛するネ」
「え、えっと……」
「もう店長ってばそうやって直に気に入った子を勧誘しようとしないでください。リィンさんが困ってるじゃないですか」
「むう、リーシャは固いネ」


 リーシャが助け舟を出してくれたから何とか話を中断させることが出来た、しかし自由な人だな……


「ならそっちのおチビちゃんはどうアル?今はまだ小っちゃいけど7年もすればいい女になれると思うヨ」
「小っちゃいは余計……わたしはいい。リィンと一緒に仕事をやっているから」
「なら御試しで今日だけウェイターをしてみないカ?きっとロリ……小さな女の子好きなお客が来ると思うヨ」
「興味ない」


 ジャムさん、僕は無理だと思ったのか今度はフィーに聞いている、でもフィーは全く乗り気ではない。まあフィーは人見知りなところがあるから接客業は難しいと思う。


「ならチャイナドレス着てみるだけでもいいカラ!絶対にどんな男でも落とせる魔性の服ネ、着てみたくないカ?」
「どんな男でも……?」


 フィーがチラリと僕を見てちょっと顔を赤くする。どうしたんだろう?


「それってリィンも魅了できる?」ボソボソ
「え、勿論アルヨ。あの男の子だっておチビちゃんのチャイナ服を着た姿を見せたらきっとイチコロアル!」ボソボソ
「リィンを魅了……気が変わった。今日だけなら受けてもいい」
「本当アルか!」


 途中からこっちには聞こえない小さい声で話していたけど……え、どうしたのフィー、そういうのは絶対に嫌がると思ってたのに。


「なら全は急げヨ、客足が多い御昼が終わる前に着替えるネ!」
「ん、頑張る……」


 フィーはジャムさんと一緒に店の奥に行ってしまった。


「フィー、どうしたんだろう?」
「さあ……俺も分からないぞ」
「何か並みならぬ気迫を感じましたが……」


 まあフィーがしたいって言うなら待っていよう。


 そして十分くらいが過ぎるとフィーとジャムさんが戻ってきた。


「あ、フィー、一体何をしてた……の…」
「あ、あぶねぇ!」


 フィーに一言言おうとしたがフィーの姿を見て声を失ってしまった、更に動揺したのか持っていた湯呑を落としてしまった。カイトがキャッチしてくれたけど今はお礼も言うことが出来ないくらい目の前の光景から目が離せなかった。


「……リィン、どうかな?似合ってる?」


 フィーがチャイナドレスを着ていたんだ、緑を基調としたチャイナドレスはフィーによく似合っていた。目が離せないほどに……


「………」
「……リィン?」
「あ、あの、その……似合ってる。言葉も出ないくらいだ」
「本当に?嬉しい……」


 ニコッと微笑むフィーに僕は言いようのない感情に襲われた。心臓がバクバクして顔が熱い。おかしいな、妹を相手に何でこんなにドキドキしているんだ?


「よく似合ってるじゃないか、フィー」
「はい、とってもお似合いです」


 カイトやリーシャも絶賛のようだ、それほどフィーに似合ってるという事だ。


「じゃあ早速新しい看板娘としてまずは呼び込みをしてきて欲しいネ」
「分かった、行ってくる……」


 フィーはそういってお店の外に出て行った、大丈夫かな……?






「凄い繁盛してるな」
「そうだね、ちょっと驚いたよ」


 フィーが出て行ってしばらくすると大勢の男の客が店に入ってきた。最初は数人程度だったが噂を聞いたのか時間がたつほど人が増えて行った。


「あ、あの注文いいですか!」
「はい、どうぞ……」
「チャーハンとギョウザを一人前でお願いします」
「……ご注文は以上でよろしいですか?」
「は、はい!」
「畏まりました」
「ッ!?」


 フィーはそういって注文した男性に微笑んだ。男性はそれを見て凄いにやにやしていた。気持ちは分かるが何だか面白くない。
 因みに僕達もお店の手伝いをしている。人が増えたから料理が間に合わないらしい。料理をジャムさんとリーシャが作り僕はその手伝い、カイトはレジを担当している。


「うはぁ……凄いな、フィーの奴大人気じゃないか」
「はい。私がこの店に入った時もお客さんが沢山来ましたが今日はそれ以上の方が来てますね」


 カイトやリーシャも驚いている。確かにチャイナドレス姿のフィーは凄い破壊力だが(萌え的な意味で)ここまでとは……


「やっぱり男はロリコンが多いネ、これで売り上げもガッポリアルよ♪」


 ジャムさんだけがとても嬉しそうにしていた。




ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「いやー、皆お疲れ様ネ。今までにない客足だったヨ。お蔭で大儲けできたネ」



 辺りも日が暮れてきてようやく落ち着いてきた。つ、疲れたなぁ……


「しかしすっげぇ人だったな」
「はい、私も流石に疲れてしまいました」


 流石にカイトもリーシャも少し疲れた表情を浮かべていた。でも猟兵であるカイトはともかくリーシャもまだ疲れたと言ってるが余裕がありそうだ。見た目より体力があるんだね。


「はいこれ、お礼アル」
「これはミラですか?」
「結局手伝わせちゃったしバイト代ネ。奮発しといたアルよ」
「ありがとうございます」


 予定にはなかったけど中々楽しい経験が出来たし良かったと思う。


「ジャム、わたしお金はいいからこの服貰えないかな?」
「うん?もしかして気に入ったアル?まだ替えはあるし持って行ってもいいヨ」
「ありがとう、ジャム」


 フィーはジャムさんにお礼を言うと、トテトテと僕の傍に来て袖をギュッと握って上目遣いで話し出した。


「どうしたんだ、フィー?」
「ねえ、リィン。わたしのこの姿、さっき可愛いって言ってくれたよね」
「ああ、凄く可愛いよ」
「じゃ、じゃあさ今度一緒に服とか見に行ってくれない?それでリィンが選んでくれたら嬉しいかな……」
「それくらいお安い御用さ。でも僕は女の子の服とかはあまり知らないからマリアナ姉さんとかも一緒の方がいいんじゃないか?」
「ううん、リィンに選んでほしいの……」
「そう?なら問題はないかな」


 そうか、フィーも女の子だからオシャレしたくなったのか。うんうん、最近はそういう事にも意識し始めてくれたし兄として嬉しく思うな。


「あの、お二人ってお付き合いされているのですか?」
「どうだろうな?フィーはそんな感じを匂わせているがリィンは完全に妹としてしか見ていないからな」
「鈍感な男は駄目駄目ネ、フィーも苦労しそうアル」


 他の三人が何かを言っていたが、生憎僕には聞こえなかった。





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ーーー


 ジャムさんの店を後にして僕達は一度宿屋に帰りそしてある場所に向かっていた、それは猟兵の依頼をした人物の元である。そもそも僕達がこの街に来たのはこの依頼を受けるためである。最初に護衛していた商人はあくまでもおまけで本命がこっちという訳だ。
 まああの商人も危ない物を取り扱ってるから全くの一般人って訳じゃないけどね。後フィーは着替えた、ちょっと残念だな……


「よし、着いたぞ」


 カイトが指さした方には東方人街の中でもかなり立派な建物だった、入り口の上には『黒月貿易公司』と書かれていた。


「カイト、『黒月』ってまさか……」
「ああ、今回の依頼者はあの黒月だ」


 黒月。表向きは唯の貿易公司だが裏では東方人街を支配しているカルバート共和国の巨大犯罪組織でありその人たちが今回の依頼者らしい。


「黒月はそこらにあるチンケな犯罪者たちとは訳が違う、うかつなことをしたりするなよ」
「うん、分かった」


 フィーも緊張した表情で頷き建物の中に入っていく。中も綺麗で至って普通の会社にしか見えない。


「いらっしゃいませ、黒月貿易公司にようこそ。失礼ですがどのようなご用件でしょうか?」
「西風の旅団だ。御社の依頼を受けるためここに来たんだが……」
「……かしこまりました。担当者を只今呼んでまいりますので少々お待ちください」


 ニコニコしていた受付の女性は西風の旅団の名を聞くと一瞬鋭い目付きになり再びニコニコ顔に戻って席を離れた。
 そしてしばらくすると黒いスーツを着た男性が来た。


「西風の旅団の皆様ですね?自分は案内役を務めさせて頂くレイと申します、どうぞこちらへ」


 レイという男性がお辞儀をしてこちらに来るように指示をされて後を付いていく、しばらく歩いていくと警備が厳重そうな扉が見えてきた。


 レイさんが立っていた警備の人に何か確認を取り扉を開けてもらう、その扉を潜り更に歩いていくとさっきまでとは違い廊下の装飾品が豪華になっていく。


「ここは一般の社員では入れないVIPルームに続いています、詳しい話はそちらにいる御方にお聞きください」


 そして奥にあった更に厳重に守られていた扉を潜り中に入る、そこには何人もの黒服を来た男性たちが立っておりその中央にある豪華なソファーに一人の初老の男性が座っていた。


「初めまして、西風の旅団の皆様。私は黒月の幹部の一人、ユダと申します」
「西風の旅団に所属するカイトです、こちらは団長であるルトガー・クラウゼルの子供でリィンとフィーと申します。まだ子供ですが実力は確かなものと確信しています」
「初めまして」


 僕はペコリとお辞儀をしてフィーもお辞儀をする。


「まあ立ち話も何ですしどうぞそちらにお掛けください」
「では失礼します」


 カイトがユダさんの向かい側のソファーに座り僕とフィーもその隣に座る。うわっ、凄い柔らかい……


「本日は遠い所を遥々とお越しいただき誠にありがとうございます。早速ですが依頼の内容を話してもよろしいでしょうか?何分多忙なもので」
「お願いします」
「依頼内容は単純な物です、ある人物を抹殺してもらいたい」
「抹殺……ですか?」


 いきなり重い内容にカイトが少し顔を歪める。ユダさんは懐から一枚の写真を取り出した。それを見ると眼鏡をかけた男性が映っていた。


「その写真に写っている人物は私達黒月の関係者なのです」
「黒月の……?」
「はい、その者の名はパイツェンと申します。元々は私の部下だったのですが何を思ったのか黒月の機密書類を持って組織から脱走し行方を眩ませました」
「それって……」
「裏切りだね」


 僕とフィーの言葉にユダさんは頷く。


「お恥ずかしい限りです。むろん我々も直に奴の居場所を探しました。だが奴は我々の包囲網から今も逃げている、いくら奴が我々に付いてよく知っていても個人が黒月から逃げられる訳がありません。つまり……」
「協力者がいるってことですか?」
「ええ、その可能性が高いです」


 協力者か……単純に考えれば黒月に何か恨みがある組織だと思うがここまで大きな組織だと絞るのは難しいぞ。


「ともかく奴が東方人街の旧市街地に逃げ込んだという情報はつかめました。しかしそこから奴の行方を追っていた追手の連絡が途絶えました」
「それは……殺されたか捕まったか……どちらにせよこれ以上の情報はもう入ってこないって訳ですね」
「貴方方に依頼したいのはパイツェンの抹殺、そして機密書類の奪還です、よろしいでしょうか?」
「……一つ思うんですが居場所がはっきりしてるなら組織の力を使って捜索させればいいんじゃないですか?黒月ほどの組織なら容易にできる事かと思いますが?」
「……今回の件はこの場にいる人間しか知りません、他の幹部や更に上の方々には何も報告していませんから」
「何故ですか?」
「奴は私の部下で右腕的存在でもありました。そのパイツェンが組織の機密書類を奪い逃走したなどと知られれば……私の運命などたやすく想像できます」
「つまり組織と全く無関係の俺たちに汚れ役をしてほしいってことですね……」
「お恥ずかしい限りで……」


 つまり僕達に尻拭いをしてほしいってことか。まあ猟兵だから依頼は受けるだろうが……


「勿論報酬は弾みます、奴の抹殺に成功し機密書類を奪還していただければ八千万ミラをご用意します」
「八千万ミラ……随分と気前がいいですね」


 八千万ミラか……まあ自身の命もかかってるし寧ろ安いくらいかも知れないね。


「……分かりました、依頼は受けましょう。しかしターゲットが旧市街にいるという情報だけでは流石に探すのは困難です、それ以外に何か情報はないでしょうか?」
「……そうですね、旧市街にラットボーイという男がいます、奴は旧市街のならず者たちを束ねるトップであり旧市街の事なら何でも知ってるでしょう。まあ奴は黒月を嫌ってますから接触するならお気を付けください」
「ありがとうございます、必ず依頼は達成して見せます」
「もしラットボーイに会ったらこう伝えてください。『今回の働き次第で前の件は無かったことにしてやる』と」
「分かりました、それでは俺たちはこれで」


 僕達はそういって黒月貿易公司を後にした。


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ーーーーーー

ーーー


「旧市街ですか……」
「ああ、この街に住んでいる君たちならラットボーイという男について何か知らないか?」


 黒月貿易公司を後にした僕達はこの街に詳しいリーシャたちに情報を聞きに『鈴音』に向かい話を聞く。


「ラットボーイという男の名は聞いたことがアルね、旧市街のならず者たちをまとめ上げている旧市街の支配者ヨ。この街の人間はあそこ近寄らないネ」
「そもそも旧市街ってどんな場所なの?」
「この東方人街にも格差があって旧市街は主に訳あり……所謂犯罪者やどこかの国から逃げてきた放浪者などが集まる街です、なので治安は無いという無法地帯ですね。その無法地帯を支配してるほどですからただものではないかと……」


 パイツェンだけでも大変なのにラットボーイという男も癖がありそうだね、今回の依頼三人で大丈夫かな?


「ジャムさん、ラットボーイがいそうな場所に心当たりはないです?」
「そうネ、奴は人が立ち入らない場所を好むから旧市街の廃墟が集まってる場所にいるかもしれないネ」
「そうか、ならまずはそこから当たってみるか」
「旧市街は無法地帯です、何が起こるか分かりません。皆さん、くれぐれもお気を付けて……」
「ありがとうリーシャ、それじゃ行ってくるよ」
「ん、お仕事開始だね」


 僕達はリーシャ達にお礼を言って旧市街に向かった。


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ーーー


「随分と寂れた場所だな……」


 僕達は東方人街から少し離れた場所にある旧市街に来ていた。しかし酷い場所だな、建物はボロボロだし辺りでは道端で寝てる人もいれば複数で殴り合ってる人たちもいる、まさに無法地帯だ。


「ここの何処かにラットボーイがいるのか、こりゃ探すのに苦労しそうだぜ」
「とにかくまずは聞き込みをしていこう。なるべく離れないように気を付けながらね」


 僕達は辺りにいつ人達にラットボーイについて聞き込みを開始した、でも大抵の人が無視したり襲い掛かってきたりしてまともな話も出来ない。


「本当に無法地帯だな。全く話が通じない」
「どうしようか……ん、どうしたのフィー?」
「リィン、あれ……」


 僕達が集まって話をしてるとフィーが何かを見つけたように指を刺した、そちらに視線を向けると何やら数十人の若い男性がこちらに向かってきた。


「おいお前ら、ここいらでラットボーイ様の事について聞きまわってるみたいだな?」
「そうですが……僕達に何か用ですか?」
「知らねえのか?この旧市街でラットボーイ様を探る奴は全員敵だってことなんだよ」


 ……なるほど、向こうから接触してきてくれたか。探す手間が省けたね。


「貴方達はラットボーイの関係者ですか?なら彼の元に案内してほしいんですが」
「はあ?今死ぬ奴が寝ぼけた事言ってんじゃねえぞ」


 まあこうなるよね、彼らはナイフや鉄パイプを構えて僕達を取り囲んでいく。


「殺れ!ぶっ殺せ!!」


 そして一斉に襲い掛かってきた。


「リィン、フィー、いくぞ。だが殺すなよ」
「「了解!」」


 無法地帯の犯罪者と言え所詮は唯のチンピラだ、瞬く間に彼らを無力化した。


「ぐっ、こいつらガキもいるってのに強え……」
「俺たちは別にラットボーイに危害を加えに来たんじゃない、これ以上は無駄だ」
「うるせえ!よそ者のいう事なんて信じられるかよ!」


 僕達を襲ってきた連中の一人が逃げ出した。


「リィン、フィー、あいつを追うぞ!」


 僕達は逃げ出した男の後を追いかける、途中で何人もの奴らに襲われるが全員殺さないように気絶させながら先に進む。


「あいつ結構身軽だな、速いぞ」


 撃たれる銃弾をかわしながら男を追うがかなり身軽だ。壁を蹴って建物の屋根を走り飛び映り梯子を滑りおりて逃げる。僕達も後を追うがやはり地の利は向こうが有利か。


 男を追いかけて僕達は広い建物の中に入る、そして男を追い詰めた。


「もう逃げられないよ、頼むから話を聞いてくれ」
「逃げられない?追い詰められたのはてめえらだぜ!」


 突然強い照明が僕達を照らしてさっきまで暗かった部屋が明るくなった。金網に囲まれたリングのような場所……まるでアリーナのような場所だ。


「てめえらが俺を探ってる連中か?俺がラットボーイだ」


 高い段差の上に眼帯を付けた男が座っていた、あいつがラットボーイか。


「てめえら見てたぜ、黒月の奴らの仲間だろ?連中め、等々俺の縄張りを荒らしにきたか。だが俺はネズミだ。捕まりはしねえぜ!」
「待てラットボーイ、俺たちは西風の旅団だ。お前を探していたのは黒月の依頼を達成する為にお前の力が借りたいからだ」
「そんな見え透いた嘘に騙されるか!奴らが俺を疎ましがってるのは知ってんだ!だが黒月がなんだ!俺はてめえらに屈したりはしねぇ!」


 駄目だ、興奮して話が通じない。よっぽど黒月が嫌いなんだな。


「お前ら、こいつらをぶっ殺せ!!」


 ラットボーイの部下たちが金網の外から銃を撃ってくる、僕達は自分の武器で銃弾を斬り落とすが正直鬱陶しい。


「フィー、カイト。大技で決めるから合図をしたら伏せて!」
「了解!タイミングは任せたぜ!」


 僕は辺りを見回して敵の位置を探る、そして一番弾幕の薄い場所に狙いをつける、そして刀を大きく振り下ろした。


「二人とも伏せて!『孤影斬』!!」


 刀から放たれた扇状の斬撃が金網を切り裂き男達を纏めて吹き飛ばした、常人離れした筋力で斬撃を飛ばして離れた場所の敵を斬る八葉一刀流の技だ。前にユン老師が見せてくれた技を咄嗟に使ってみたが上手く再現できたようだ。


「な、なにが起きた!?」


 突然金網が壊れて自分の部下も吹っ飛んでいく光景を見たラットボーイは大きく動揺した。フィーはその隙を見逃さずに大きく跳躍してラットボーイの背後に降り立った。


「なっ……!?」
「はい、チェックメイト」


 フィーが双銃剣をラットボーイの頭に突きつけた。頭を抑えたからこの勝負は僕達の勝ちだね。


「やったなリィン!でもさっきの技ってもしかして八葉の……」
「うん、前に老師が見せてくれた技を見様見真似でやってみたんだけど、上手く行ったよ」
(見様見真似で八葉一刀流の技を繰り出したって言うのか!?なんて奴だ……)


 僕は刀をしまいラットボーイの元に向かった。


「糞が!こんな奴らに殺されるなんて……」
「落ち着いてください、もし貴方を殺すのが目的ならこうやって捕らえたりしないで直に始末しますよ」
「じゃあなんだ!俺を拷問にかけようってか!流石偏屈物が集まる黒月だな、ゲスい行為がお好みのようだ!!」


 これは面倒だな……錯乱してて話が通じないや。


「うるさい」


 ガスッ!


 あ、フィーが双銃剣でラットボーイの頭を叩いた。あれは痛そうだ。


「な、なにしやがる!」
「貴方がうるさいから静かにさせただけ。それよりいい加減に話をさせてくれない?正直もう追いかけっこは疲れたの」
「お、おう……」


 フィーの静かな殺気にラットボーイは顔を青ざめながら頷いた。というかフィーって怒るとああなるのか……







「じゃああんたらはマジで俺を殺しに来たんじゃないってのか?」
「ああ、俺たちはお前に聞きたいことがあってここに来たんだ」
「そ、そうか……西風の旅団が黒月に接触したって聞いたから等々奴らが俺の排除に動いたのかと思ったぜ」
「ていうか何で黒月を嫌ってるんですか?」
「あいつらは前に俺の情報網を利用しようとしたのか部下にしてやるって言ってきたんだ。だが俺は断った、誰かの下に付くなんてまっぴらごめんだからな。んで言い方が高圧的でムカついたからあいつらの情報を敵対する別の組織に流してやったんだ」
「それは自業自得だと思うけど……」
「バカだね」
「んだとぉ!?」


 ようやくラットボーイが落ち着きを取り戻し話を進めることが出来た、僕達は目的のパイツェンについて話を聞くことは出来る。
 しかしまさか黒月を嫌っていた理由の原因はまさかの自業自得だった。そんな事すれば怒りを買って当然だと思うけど。


「お前さんの愚痴はそろそろ聞き飽きた、俺たちはパイツェンという男の居場所を知りたいんだ。ラットボーイ、お前さんに心当たりはないか?
「はん、お前らが俺の命を狙いに来たわけじゃないってのは分かったが旧市街を荒らしたのは許してねえぞ」
「そういや依頼者は『今回の働き次第で前の件は無かったことにしてやる』といってたな」
「な、それを早く言えよ!……くそ、今回は特別に教えてやる」


 ラットボーイは渋々という様子で話し出した。


「そのパイツェンとかいう男なら確かに旧市街にいるぞ。最初は黒月の仲間が俺を探しに来たかと思ったが様子がおかしかった。何かを警戒しながら奴は『アンダーヘブン』に入っていった」
「アンダーヘブン?」
「旧市街にあるゴロツキ共が根城にするクラブさ。だがその実態はテロリスト『反移民政策主義』の隠れ家の一つでもある」
「『反移民政策主義』……その名をここで聞くとはな」


 反移民政策主義とはカルバート共和国で活動するテロリスト集団の名前だ。元々カルバート共和国は移民を受け入れる国として有名だが移民によって起こる問題も多い、事実この国では毎年必ず何かテロリストが関係する事件が起きるほどだ。
 その中でも反移民政策主義はテロリスト集団の中でも過激派として有名で現在の大統領サミュエル・ロックスミスの命を狙うほどだ。


「でも何でテロリストと黒月の脱走者が繋がるんだ?関係性が分からんぞ」
「……これは信憑性がないが大統領サミュエル・ロックスミスは黒月と何らかの接点がある、という噂がある」
「それは……」


 カルバート共和国の大統領が犯罪組織と接点があるという噂、そして黒月の脱走者、機密書類、大統領を追い落とさんとするテロリスト、これって……


「ねえカイト、まさか機密書類っていうのは……」
「俺も同じことを考えてた、もしその機密書類がロックスミス氏や黒月の関係性を表す物ならテロリストが欲するのも分からなくはない。反移民政策主義はロックスミス氏の命を狙ってるがそれは移民政策が気にくわないからだ。つまり移民政策を掲げるロックスミス氏を追い落とすために黒月との関係を世間に明かすという事もあり得る」
「黒月が犯罪組織だっていう事も世間には知られていない……もしそれが本当だとして世間に明るみになれば……ロックスミス氏の信頼は地に落ち国中が大混乱になり兼ねない……!」


 犯罪組織とつながりがあると知ればロックスミス氏の信頼は無くなる、もしテロリストの目的がそれだとしたら今回のこの一件、大事になるぞ。


「因みに今日そのパイツェンと反移民政策主義の連中が落ち合うみたいだぜ」
「なっ、それを早く言え!リィン、フィー、急いでアンダーヘブンに向かうぞ!」
「「了解!」」


 僕たちは急いでパイツェンがいるクラブに向かった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



 バンッ!


 僕は『アンダーヘブン』と書かれた建物の入り口を勢いよく開ける、中には数人の男たちが座っていていきなり乱暴に店に入ってきた僕たちに警戒の眼差しを向ける。


「何だお前ら、今日はもう店仕舞いだ。さっさと帰れ!」
「こんな明るいうちに?暇人だね」
「うるせえぞガキ!いいからさっさと帰れ!それとも痛い目を見たいか?アアッ!?」
「茶番はそこまでにしろよ、俺たちはお前らがテロリストでこのクラブもその隠れ家だって事をもう知ってるんだ」


 カイトの問いに男たちは分かりやすく動揺した。


「お、お前ら一体……」
「用件だけ言う、パイツェンという男がここに来ているはずだ。そいつを出してもらおうか」
「グッ……お前ら、こいつらを始末しろ!!」


 男たちはそういって拳銃やナイフを取り出した。


「リィン、フィー。今回はちょっと時間がねえ。ここは俺が抑えるからお前らはパイツェンの元に迎え」
「でも相手はかなりいるよ」
「逆にここでこんだけの奴抑えれば中は手薄になるはずだ。それにお前ら二人の方が足が速いしな」
「カイト……」
「お前らも猟兵なら時には仲間を信じて背中を越えていけ、助け合いだけが仲間じゃないだろう?」
「仲間を信じる……」


 そうだ、僕は猟兵として仕事を果たさなくちゃいけない。その為には仲間を信じて先にいく事だって必要なんだ。


「行こうフィー、僕たちは自分のすべきことを果たすんだ」
「リィン……分かった、カイト、気を付けてね」
「お前らもな」


 僕たちはカイトにこの場を任せて先を目指した。


「奴らを行かせるな!」
「させるかよ!」


 カイトは回転しながら辺りを縦横無断に回り男たちを切り裂いていく。


「ぐあぁぁぁっ!?」
「こ、こいつ……!」
「おいおい、俺を忘れないでくれよな。仮にも西風の旅団の看板背負ってるんだ。食い止めると言った以上……お前らをここから先には通さねえ」



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


 カイトと別れた僕たちはアンダーヘブンの中を進んでいた、しかしこの店最初は普通のクラブみたいな店内だったのに奥は東方風の内装になってきた。


「思ったよりも中は広いな……」


 外から見たよりも中は意外と広かった、なるほど、テロリスト集団のアジトって聞いていたが案外おしゃれな奴らなのかもしれない。だから何だって話だけど。
 少し先に進むと武装した男たちが立っていた。


「いたぞ!侵入者だ!」


 武器を構えて向かってくる男たちに対して僕は真ん中にいた男を殴り飛ばした、そして動揺したほかの男をフィーが投げ飛ばした。


「このガキ!」


 フィー目がけて男の一人が銃弾を放つ、フィーは素早く身を動かして銃弾をかわして男の目に突きを放つ、そして怯んだ男の右足に足払いをして倒れた男の顔を踏みつけた。
 僕は小太刀を振りかざしてくる男二人に刀を抜いて対峙する、一人が背後から切りかかってきたので刀でいなす。前から切りかかってきた男の股間を蹴り上げて怯ませる、そして背後にいた男の頭を掴んで壁に叩き付け止めに手刀を頭に喰らわせた。


「なっ!?」


 そして悶絶していた男を大きな扉ごと殴り飛ばした。


「リィン、容赦ないね」
「そういうフィーだって」


 確かに二人ともえげつない戦い方だが男たちは何とか生きている、これは二人で決めた事だが必要のない殺生は出来るだけ控えることにした。父さんにも唯殺すだけの選択はするなと言われているし僕も本当に必要があるときでもない限り殺すなんて真っ平御免だ。それはフィーも賛同してくれた。


 扉を潜り奥に向かう、次の部屋には何と池があり中心には大きな噴水が立ち上っていた。敵地の中だったがその美しさに少し目が奪われた。だが咄嗟に僕は噴水から離れた、その瞬間水しぶきをあげながら無数の銃弾が飛んできた。


「全く風水も何もないな!」


 近くにあった机を盾にして隠れる、そしてフィーが閃光弾を投げつけた。ピカッと眩い光が辺りに放たれる、そして全員の視界を奪った後に僕は盾にしていた机を投げつける。机に男三人が巻き込まれ残った一人の腹を刀の鞘で突き蹴り飛ばした。


「リィン、また増援だよ」
「入り口にあんなにいたはずなのに……」


 敵の数の多さにゲンナリしながら敵を倒していく。肘打ちをしようとした僕を見て男がガードの体制を取るが……


「ガードなんて意味ないよ!」


 肘打ちを当てる瞬間に止めて逆の腕で相手の腹を殴った、そして追撃に回し蹴りを放った。


「遅いよ」


 フィーは男二人の攻撃を楽々とかわしていく、子供が大人を遊んでいるようにしか見えない。


「このぉっ!」
「当たれ!」


 男二人はイラついてフィーを挟み込むように殴りかかった。フィーは紙一重で攻撃をかわした、すると空振りした男たちの攻撃が互いの顔面に当たった。


「さよなら」


 そしてフィーは男二人を投げ飛ばして池に落とした。


「邪魔をするな!」


 男の一人を凝り飛ばして奥に進むと沢山の扉がある部屋に付いた。


「何だこれ、どこにパイツェンがいるんだ?」
「とにかく手当たり次第に調べよう」


 一つ一つのドアを開けて中を確認していく、そしてある扉を開けた瞬間何か刃物のようなものが飛んできた。


「うわっ!?」


 僕は刀で刃物を弾き落とし防ぐ、部屋の中には見た事もない武器を持った男たちがいた。


「何あれ、投げナイフじゃないよね」
「もしかしてユン老師が言っていた東方の暗殺武器『クナイ』って奴かな?実物は初めて見たけど……気を付けてフィー、クナイには毒が塗っていることもあるらしいんだ」
「要は当たらなければいいんだよね」


 男たちは更にクナイを投げつけてきた、僕は刀でそれを弾きながら小さい斬撃を放った、男たちはそれをかわすが……


「甘いね」


 懐に入り込んでいたフィーが逆立ちして両足を広げながら回転して蹴り倒していく、そして最後に近くにいた男の首に足を引っかけて投げ飛ばした。


「リィン、階段があるよ」
「上にいるのかも知れない、用心しながら行こう」


 僕たちは階段を上がり廊下を走っていく、すると奥にある鉄格子が降り始めた。


「急がないと!」
「届いて……!」


 僕とフィーは滑り込む様に鉄格子を潜り抜けてギリギリ通ることが出来た。


「危ないとこだったね、しかしあちこち仕掛けだらけで面倒な店だな」
「リィン、どうやらまだ来るみたいだよ」


 フィーが指さした壁が回転して中から男たちが現れた。


「いい加減疲れてきたよ……」
「でもあと少しだと思う」


 武器を構えて僕とフィーは男たちに向かっていく。小太刀をかわしてみねうちで切っていく。フィーも銃弾で武器を弾いてがら空きになった男たちの腹や顎を蹴り飛ばしていく。


「リィン、こっちに道があるよ」


 奴らが出てきた壁の裏側に道が存在した、僕とフィーはそこを通って奥に進む、すると今まで通ってきた扉より大きくて豪華な扉があった。


「リィン、中に沢山の気配があるよ」
「うん、きっと中にパイツェンが……」


 僕は意を決して中に入る、中には武装した集団と眼鏡をかけた男がいた。


「初めまして西風の旅団のお二人さん……私は『反移民政策主義』の幹部をしているシェーフンと申します。いかがでした?東方の美の風景は?中々気に入っているんですよ」
「まあこんな状況じゃなきゃいいものだったよ。……そこにいるお前がパイツェンだな?」
「ククク……まさか西風の旅団が出てくるとは、しかも猟兵王の子供達。組織の連中はどうあっても俺を殺したいみたいだな、私も随分と買われたものだ」


 反移民政策主義の幹部の男……シェーフンが挨拶をしてパイツェンと思われる男は困ったというよりは何か余裕のある笑みを浮かべた。


「随分と余裕だな、僕たちが子供だから油断したなんて言わせないよ?」
「まさか、あの猟兵王が育てた子供だ。油断なんて出来ませんよ」


 更に意味ありげに笑うパイツェン、一体何を企んでるんだ?


「貴方方をここにお招きしたのは貴方方を私たちの仲間に歓迎したいと思ったからです」
「仲間にだって?あれだけ襲ってきて?」
「私は自分の目にしたものしか信用しない主義でしてね、少なくとも子供である貴方方でさえ私が鍛えた精鋭をいとも簡単に蹴散らしてきたんですからね。我々の仲間になる資格は十分にある」
「さっきから随分と上から目線だね、わたしたちが貴方達の仲間になると思うの?」
「ご心配なく、きちんと対価を用意しています……おい」


 フィーの言葉にシェーフンと名乗った男は待っていたと言わんばかりに近くにいた配下の男にいくつかのアタッシュケースを出させた。アタッシュケースを開くと大量の札束が入っていた。


「2億ミラ用意しています。黒月の報酬よりもはるかに多い額を用意しました。金で動く貴方方ならどちらに付くか容易に理解できると思いますが?」
「へえ、よくそんな大金を用意できたものだね。2億なんて国がらみでもなきゃ滅多に見れないよ」
「私たちの背後には巨大なバックがいますのでこれぐらいなら余裕で用意できます。さてそれで返事のほうは?」
「勿論断る」


 僕の発言にパイツェンや配下の男たちは驚いた様子を見せる。シェーフンだけは笑みを崩さずに僕たちを見ている。


「……因みにその理由は?」
「西風の旅団はテロ行為などの無差別な被害を出すような奴の依頼は受けないって決めてるんだ、それに個人的にお前らが気に入らないからだ」
「それだけの理由で?」
「十分だろ?」
「クククッ、まさか金で動かない猟兵がいたとはね。上の連中は貴方方を仲間にしろと言ってましたが……仕方ない、プランBに移行します。私が彼らを抑えてる間にパイツェンさんを我々の本拠地まで連れて行きなさい」


 シェーフンは部下たちにそう指示を出してパイツェンと一緒に部屋を出て行った。


「待て!」


 僕とフィーはパイツェンを追おうとしたが足元にクナイが刺さり思わず足を止める。


「行かせはしませんよ。彼は大事な客人ですからね」
「客人?どういう事?」
「彼の持ってきた機密書類には黒月とロックスミス大統領との繋がりがしるされています。ロックスミスを蹴落とすためにも彼を渡す訳には行きませんからね」
「大事な機密をペラペラ喋るなんて感心しないな」
「別にいいじゃないですか、私はロックスミスなどに興味はありません」


 何だって?じゃあ何故この男はテロリストなんてしているんだ?


「私は人を壊すのが大好きなんですよ、テロリスト集団の仲間になれば好き放題暴れられるじゃないですか」
「最低」
「欲望に忠実か……人間らしいが中身はクズだな」
「褒め言葉として受け取ります……さて、そろそろ始めましょうか?」


 シェーフンの体から強い殺気があふれ出してきた。この男、ただものじゃないぞ。


「フィー、今までの奴らみたいに加減は出来ない相手だ」
「うん、最初からギアを最大で行くよ」


 僕とフィーもそれぞれの武器を構えた。


「さあ行きますよ!」


 シェーフンが真っ直ぐ僕たちに向かってきた。


「クリアランス!」


 フィーが双銃剣から幾つもの弾丸をシェーフンに放つ、だがシェーフンは弾幕を全てかわして接近してくる。


「速い!」
「しゃあ!」


 シェーフンは僕たち目がけてクナイを振るった。僕たちはそれぞれ左右に飛んでそれをかわす。


「やあっ!!」


 フィーが双銃剣で切りかかるがシェーフンはそれを背中に背負っていた大きな剣で防ぎフィーに切りかかる、フィーは大剣の一撃を紙一重でかわして距離をとる。


(後ろががら空きだ!)


 フィーに気を取られている内に背後から切りかかるがシェーフンはバク宙で僕の攻撃をかわした。


「なっ!?」


 そして頭上からクナイを投げてきた、僕は回避が間に合わず右肩に喰らってしまう。


「ぐあっ!?」
「リィン!?この!」


 フィーが銃弾を放つがシェーフンはまたそれをかわしてフィーを蹴り飛ばした。フィーは受け身をとって衝撃を抑えた。


「そんな遅い動きじゃ私は捕らえられませんよ?」


 シェーフンは更に動きを加速させて僕たちを翻弄する。


「くそ、フィー並み……いやそれ以上の速さだ。目で追うのがやっとじゃないか!」
「なら動けなくするまで」


 フィーは懐から何か手榴弾のようなものを取り出した、それを見て僕はフィーのやろうとしていることを理解して防御の体制を取る。


「Fグレネード!」


 フィーが投げた物体が破裂して眩い光と大きな音が響いた。フィーのクラフト『Fグレネード』は猟兵が使う閃光手榴弾で相手の目と耳を潰して動きを制限させる技だ。これなら奴も流石に動けなくなっただろう。


「あれ、いない……?」


 目を開けてシェーフンを探すが奴の姿がなかった、あのタイミングで防御が出来たとは思えないが……


「そんなおもちゃで私を止めようなどと……笑止ですね」
「何!?」


 背後から声が聞こえたと思った瞬間僕とフィーは切られていた。


「ぐあっ!?」
「きゃあっ!」


 僕は足を、フィーは腕を斬られたみたいだ。咄嗟に回避行動をとったから深手にはなってないが痛い物は痛い。


「そんな、グレネードのタイミングは良かったはず。防御なんてしてなかったのにどうして……」


 フィーが驚きを隠せない表情でそう言う、僕も何故奴にFグレネードが効かなかったのか分からなかった。


「ふふふ、何故閃光手榴弾が通じてないのか疑問に思ってますね、答えはこれです」


 シェーフンは懐から何か錠剤のようなものを取り出した……ってあれはまさか!


「グノーシス……何故お前がそれを……」
「D∴G教団ですか?彼らは素晴らしい物を作ったものです。これのお蔭で私は更に強くなれたのですから」
「答えろ!何でお前がそれを持っている!」


 僕は殺気を強くしてシェーフンに問い詰める。


「リィン……あれが何か分かるの?」
「……あれは僕が教団に捕らわれていた時に実験で飲まされていた物なんだ、あれは人間の身体能力を大きく向上させる物らしい」
「あれが……」


 僕は困惑しているフィーにグノーシスについて簡単に説明した。


「私は昔戦いの中で目の光を失いました。その時は絶望しましたよ、視力を失った人間に何ができますか?少なくとも戦いの道には戻れない……そんなときでした、彼らが現れたのは。あの眼鏡の男性がくれたこのグノーシスは私の目に光を戻してくれたばかりかこんな身体能力と状態異常に対する抗体まで授けてくれたんです!どれだけ感謝しても足りないほどです!いやあ、本当に素晴らしい物を作ったものですね」
「……れ」
「ん?」
「……黙れ、グノーシスが素晴らしいだと?それを作るためにどれだけの命が消えて行ったと思ってるんだ!!」
「リィン……」


 僕は声を荒げて叫んだ。グノーシスなんてくだらない物の為に多くの子供たちが犠牲になった、いや、今だって奴らの手で沢山の命が消えているはずだ。そんな奴らの作った物が素晴らしいだと?それだけは認められない、認めるわけにはいかないんだ!


「知りませんよ、赤の他人の子供が死のうと私に何の関係があるんですか?正直グノーシスの為に死ねたのなら良かったんじゃないかと思うくらいです」
「ならもう喋るな。お前が僕に喋っていいのは教団に関係することだけにしてもらう」


 僕は刀を鞘に納めて居合の型を取る。こいつはもう依頼とか関係ない、こいつは倒すべき敵だ!!


「リィン、わたしも戦うよ。こいつ、許せない!」
「フィー……ああ、二人でやろう!!」


 僕とフィーは再び武器を構えてシェーフンに対峙する。


「ふふふ、先ほどより更にいい殺気を放ちますね、そうこなければ面白くありません」


 シェーフンは大剣と新たに取り出した火薬式の銃を左右の手に取り楽しそうに笑う。そして僕とフィーの姿が消えて次の瞬間シェーフンに切りかかっていた。


「ほう、速くなりましたね。一瞬貴方たちを見失ってしまいましたよ」


 シェーフンは片手の大剣だけで僕たちの攻撃をいなしていく。


「クリアランス!」
「またそれですか?芸がない」


 フィーが再び激しい弾幕を張るがシェーフンは悠々とかわす、しかし……


「はあっ!」


 シェーフンが移動してきた瞬間に僕は切りかかっていた。


「何!まさかさっきの弾幕は私をここに誘導させるためにワザと……しかし!」


 シェーフンは大剣で僕の攻撃を防ぎ銃で追撃してくる、僕は弾丸を切り落として再び切りかかる。


「甘い!」


 シェーフンは僕の攻撃をかわして肩から斜めに切り裂いた。激しい痛みで思わず後退しそうになるが踏みとどまり刀を離して奴の腕を掴む。

「むっ!これは……」
「罹ったな……どれだけ速くても腕を掴まれたら速さなんて関係ない!」
「ではさっきの誘導すらもこのためのブラフ……!」
「こっちも喰らったんだ、お前も素直に喰らっていろ、フィー!」
「うん!!」


 僕はシェーフンを蹴り上げて宙に浮かせる、そこにフィーが縦横無尽に飛び回りシェーフンを切り裂いていく。そして僕が飛び上がり蹴りをシェーフンの腹に放ちそのまま落下していく、そして最後にフィーが下からシェーフンを双銃剣で切り裂いた。


「エアリアル・ストライク!!」


 僕たちの攻撃をまともに受けてシェーフンは錐もみ回転をしながら地面に落下する。


「やったかな?」


 正直起き上がってほしくはない、だがフィーの疑問に答えるかのようにシェーフンは起き上がった。


「フハハ、いいですねえ。中々の痛みだ」
「……嘘でしょ、結構本気でやったのに……」


 フィーのげんなりした声が僕たちの疲労を物語る。正直こっちの全力の攻撃を喰らっておいてケロッとした顔で起き上がられたりしたらそう言いたくもなる。



「楽しくなってきましたねえ、では第二ラウンド……と言いたい所ですがそろそろお暇させていただきます」
「何!?」
「時間稼ぎはもう十分でしょう、一応私も幹部ですし仕事はこなさせてもらいました」
「!?ッしまった、パイツェンが……!?」


 僕たちはこいつに手間取りすぎてしまった。今から追いかけても追いつけるか分からない。


「次会う時までにはもっと強くなってて欲しいですね、それではご機嫌用」
「ま、待て!」


 シェーフンは窓ガラスを割って去って行ってしまった。


「くそ、私情にかられて依頼を忘れるなんて……僕もまだまだだ!」
「リィン、どうしよう……」
「とにかく今から追おう、カイトに頼まれたんだ。こんなところで諦める訳には行かない!」
「急ごう、リィン!」


 僕たちは軽い応急手当をしてパイツェンの後を追った。間に合ってくれ!



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



side:??


「はあはあ……ここまで来ればもう安全だろう」


 旧市街の出口まで来ていたパイツェンは自身の勝利を確信していた。今回の取引が成功すれば自分には莫大な金が転がり込んでくる。そうなったらこの街に用はない、今度は帝国辺りにでも身を潜めるとしようか……そんなことを考えていた。


「ぐあっ!?」
「があっ!?」


 だが突然の悲鳴に彼の思考は現実に戻された。何事かと思い振り返ると護衛のテロリストの二人が倒れていた。よく見ると眉間に針のようなものが刺さっている。


「な、何事だ!?」
「敵襲か!」


 他のテロリスト達が警戒するその時だった、鎖のようなものが辺りを駆け巡りテロリスト集団の動きを封じた。


「我が舞は夢幻、去り行く者への手向け……眠れ、白銀の光に抱かれ…縛…!滅……!!」
「「「ぐあああああっ!?!」」」


 鎖で縛られたテロリスト集団の合間を何者かが縦横無断に飛び回り鎖ごとテロリスト集団を切り裂いた。


「な、何が起きたんだ……お、お前は!?」


 唯一無事だったパイツェンが目にしたのは黒い装束と仮面を付けた謎の人物だった。


「その恰好……まさか東方人街に伝説として伝わる暗殺者『銀』……!?」
「……その名は、まだ受け継いでいない。私がその名を受け継ぐ為にお前には死んでもらう」
「ま、待て!金なら払う!いくら欲しいんだ?金ならいくらでも……!!」


 パイツェンはそれ以上何も喋れなかった。台詞を言い終える前に仮面の人物に切られていたからだ。


「仲間を平気で裏切るような男の言葉など聞く耳持たぬ……」


 仮面の人物はそう呟くと影のように消えて行った。



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ーーー


side:リィン


「何が起きたんだ、これは……」


 僕たちがここに来た頃には全てが終わっていた。何故なら目の前には死に絶えたテロリスト集団とパイツェンの姿が広がっていたからだ。


「全員死んでる……これをやったのは相当な手練れだよ」
「ああ、でも一体だれが……」
「リィン、フィー!」


 後ろから声がかけられたので振り返るとカイトがこちらに向かっていた。


「カイト、無事だったんだね!」
「当り前だ、でもこの惨状は一体何なんだ?お前らがやったとは思えないが……」
「それが……」


 僕は今までの事をカイトに話した。


「マジか、じゃあこれは一体だれが……」
「どうしよう、カイト……」
「機密書類は無事なんだな?ならこのことをユダさんに報告しよう、もしかしたら俺たちの意図しない所で何か動いてたのかもしれない」
「そうだね、取りあえず戻ろうか」


 僕たちは機密書類を手に取り黒月貿易公司に向かった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「おお、これです。流石は西風の旅団。見事に取り戻してくれましたな」


 ユダさんに機密書類を渡す、どうやら依頼に頼まれていた物に間違いないようだ。


「ありがとうございます、これで私も安心して眠ることが出来る。しかしパイツェンめ……私を裏切るなど愚かな真似をしおって……」
「……ユダさん、俺たちの他に誰かを雇っていませんか?」
「いや、私は西風の旅団にしか依頼してないが……何かあったのですか?」
「……そうですか、申し訳ありません、どうやら俺の勘違いだったようです」
「そうか、それならいいが……報酬は指定された口座に振り込んでおきました」
「ありがとうございます、では我々はこれで……」


 カイトはそういって部屋を後にして僕たちも後に続く。





「……どうやらマジでユダは何も知らないようだな」


 黒月貿易公司を後にしてカイトが話し出した。ユダさんに探りを入れたがどうやら白だったらしい。


「でも嘘をついたんじゃないの?」
「これでも結構な人間相手にして来たから何となく分かるんだ、あれは本当に知らないっていう顔だ」
「じゃあ一体だれがパイツェンをやったんだろう?」
「分からん。まあ依頼はすんでしまったし終わったことをいつまでも引っ張っても仕方ない。スッキリしないがこの話はここまでにしよう」
「そうだね」


 カイトの言葉に僕は頷いた。正直納得はしてないが僕がうだうだ考えてももう終わったことだ。報酬も貰えたしこの件についてはここまでにしよう。


(でもまさか教団が関わってくるとはな……)


 シェーフンを取り逃がしたのは痛かった、奴らの手掛りになったかもしれないのに……でも僕は切り替えていかないといけない。必ずレンを助け出すためにも…!



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


side:??


「ご苦労様です、流石は銀……見事な手際ですね」
「……」


 東方人街のある路地裏で紫色の髪をした男性がパイツェンを殺した仮面の人物と話していた。彼の名はツァオ。黒月の一員でユダの部下でもある。


「しかし良かったのか?自分の上司に話さなくても?」
「彼の失態は既に長老たちは知っています、故にパイツェンの始末を貴方に頼んだんですよ。西風の旅団といえど保険は大事ですからね。まあユダさんも長くはないでしょう、既に上は見切りをつけてますからね」
「……自分の上司すら欺くか、恐ろしい男だ」
「ユダさんは嫌いではないですが所詮過去の栄光にしか縋れない男……いずれはこうなる運命だったんでしょう」
「喰えない男だ」
「合理的と言ってほしいですね。しかし西風の旅団か……あの子供たちを実際に見てどう思いましたか?」
「……今はまだそこまで脅威には感じない、だが……」
「だが?」
「……壁を乗り越えたらその時は更に強くなるかもしれんな」
「そうですか……ふふ、何故か分かりませんが彼らとは長い付き合いになりそうに思ったんです」
「……そうか」



ーーーーーーーーー

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ーーー


sid;リィン


「お世話になりました」


 次の日の朝、僕たちはカルバート共和国を去る前にリーシャとジャムさんにお別れの挨拶をしに来ていた。


「もう行っちゃうアルカ?ここに永久就職してもいいんだヨ?」
「すみません、今は猟兵を辞める訳にはいかないんです」
「ん、悪いけど遠慮しとく。わたしはリィンを支えないといけないから」
「そうカ、残念アル……」


 ジャムさんは僕とフィーを勧誘していたがやっと諦めてくれた。申し訳ないがフィーが断るなら強制はできないよね。


「リィンさんもフィーさんもお元気で。また遊びに来てください」
「うん、必ず遊びに来るね」
「リーシャ、ジャム。バイバイ」
「あれ、リーシャちゃん、俺は?」
「ふふ、勿論カイトさんもです」
「だよなぁ!忘れられたんじゃないかって焦ったぜ!」
「あはは……」
「また来るといいネ、その時はバイトしてもらうけどネ」



 こうして僕たちのカルバートでの依頼は幕を閉じた。色々あったけど楽しかったよ。でもやっぱり気になる、パイツェンたちを殺した奴が。一体何者だったんだろう……












「リィンさん、今度会える時は敵じゃなきゃいいですね……」


 
 

 
後書き
 鉄道憲兵隊が結成したなどの設定はオリジナルです。因みにオリキャラのシャムはあの格闘ゲームに出てくる本人と同じだと思ってください。




――――― オリキャラ紹介 ―――――


『シェーフン』


 テロリスト集団『反移民政策主義』の幹部。だが実際は殺しが合法的に出来るので所属しているだけでテロの行為自体に意味は求めていない生粋の戦闘狂。あらゆる武器を操り多くの人間を殺してきた男でグノーシスを服薬している。


 キャラのイメージはケンガンアシュラの桐生刹那。


 
ーーー オリジナルクラフト ---



『エアリアル・ストライク』


 リィンとフィーのコンビクラフトその1。リィンの攻撃で浮かせた相手をフィーが空中で切り刻みリィンが飛び蹴りをしながら落下していく、そしてトドメに下からフィーが飛び上がり敵を切り裂く技。


 
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