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英雄伝説~西風の絶剣~

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第20話 D∴G教団壊滅作戦 前編

 
前書き
遅くなってしまい申し訳ございません。スランプ気味でしたが閃の軌跡Ⅲの発売が近づいてきたのでモチベーションが上がって何とか仕上げられました。 

 
side:リィン


 会議から5日が立ちいよいよD∴G教団壊滅作戦が開始されようとしていた。僕は団長とフィー、そしてガイさん達クロスベル警察署のチームでカルバート共和国の最西端にある港湾都市『アルタイル』郊外の森の中にある洞窟の前に集まっていた。あの中に奴らのロッジの一つがあるらしい。


「いよいよか……」


 僕は無意識にそう呟いていた。あそこにレンがいるとは限らないが今回の作戦でD∴G教団を壊滅出来ればもうあんな悲劇は起きなくて済むんだ、今日で決着を付けないと……


「おいおい、あんま気張りすぎるとかえって失敗しちまうぞ」


 僕の傍にいた団長がポンッと僕の頭を撫でる。


「団長……」
「気持ちは分かるぜ。俺も早くあいつらをぶちのめしてやりたいからな。でも焦りは禁物だ、足元をすくわれちまう」
「うん、分かったよ」


 僕は団長の言う通り心を落ち着かせる。ここで自分がやられてしまったら何の意味もない、レンに会う為にも生きぬかないとね。


「他の皆は大丈夫かな?」


 僕の隣にいるフィーがそう呟いた。ゼノ達は他の場所にあるロッジに向かった。D∴G教団のロッジが多すぎるため集まった遊撃隊だけでは手が回らないらしく団の皆もバラバラになって動いている。


「あいつらは大丈夫さ、あれでもプロだからな。感情のコントロールはお手の物さ」
「ううん、そうじゃなくて他の人たちとちゃんと連携が取れるのかなって……私たちは猟兵だから快く思わない人もいるんじゃないかな?」
「ああ、それなら大丈夫だ。カシウスの旦那のお蔭で今回ばかりはそういった柵は無くなった。よっぽどのバカじゃなきゃ俺たちに何かしようなんて思う奴はいないさ」


 カシウス・ブライト……大陸に数えるほどしかいないs級遊撃士でありリベールの英雄とも呼ばれる男……団長の話では彼が取り持ってくれたお蔭で僕たちも作戦に参加できるようになったらしい。


「カシウス・ブライト……一度会ってお礼が言いたいな……」
「おう、あんな大きな男は滅多にいねえ。キチンとお礼を言っときな」
「うん」


 団長と話していると僕の後ろにいたアリオスさんが声をかけてくる。


「そろそろ時間だ」


 アリオスさんの言葉を聞いて僕は気を引き締めた。いよいよ始まるんだ、教団との戦いが……思えばこの数年は子供ながらに長く感じた……何度も絶望を味わったけど沢山の人に助けられて今ここにいる。


「リィン」
「フィー?」


 隣にいたフィーがそっと僕の手を握ってきた。


「貴方の隣でわたしは戦う、最後まで一緒だよ」
「ああ、一緒に戦おう、フィー!」


 僕はフィーの手を握り返してそう答えた。


「……時間だ、行くぞ!」


 アリオスさんの言葉と同時に僕たちは駆け出した。


「ん……あれは……!!し、侵入者だ!」
「何だと!?改造魔獣を出せ!」


 僕たちを見つけたD∴G教団の戦闘員がそう叫ぶが次の瞬間団長の持つ刀の斬撃で吹き飛ばされていた。


「作戦通りに俺とガイで生き残っている子供たちを探す、アリオスたちは戦闘員の無力化を頼むぞ!」
「了解した!」


 セルゲイさんとガイさんが生き残った子供たちを探しに向かう、僕たちはその場に残り戦闘員や改造された魔獣と戦う。


「これが話にあった改造魔獣か。奴らめ、使えるものは何でも兵器にするつもりか?」
「関係ねえ!邪魔する奴はぶっ飛ばすだけだ!」


 団長とアリオスさんの斬撃が次々と戦闘員を無力化して魔獣だけを切り裂いていく。あれで戦闘員は生きてるんだから二人の力量に改めて驚いた。


「フィー、僕たちも行くよ!」
「了解!」


 僕もフィーと協力しながら戦闘員や魔獣と戦っていく。僕の斬撃が一体の魔獣を真っ二つにして背後から襲ってきた戦闘員をフィーが蹴りとばし、フィーの横から襲ってきた魔獣を僕が殴って怯ませた隙にフィーが双銃剣で打ち抜いた。


「何て奴らだ……!」
「あそこに誘い込むぞ!」


 戦っていた戦闘員たちが僕たちから逃げようとする。一人も逃がす訳には行かないので僕たちも追いかける。しばらく進むと広い空間に出た。


「ここは一本道になっているのか。左右は穴で底が見えんな」
「気を付けろ、こういう地形こそ何か罠があるもんだ」


 団長の指示通り辺りを警戒しながら一歩ずつ前に進んでいく。


「ククク……皆仲良く奈落に消えろ!」


 カチッ……ドガァァァァァンッ!!!


 僕たちが歩いていた橋が急に崩れだしたので僕はフィーを抱えて後ろに飛んだ。何とか落ちずにはすんだけど団長達と引き離されてしまった。



「爆弾が仕掛けてあったか!」
「リィン、フィー!大丈夫か?」
「僕たちは平気です。でも分担されてしまいました」
「ん、どうしようか……」


 僕たちがそう考えていると背後に気配を感じた。振り向くと巨大な鎌のような両腕を持った獣のような魔獣が立っていた。


「考えている暇は無いみたいだね」
「そうだね。……団長!!二人は先に進んでください!マゴマゴしていたら他の奴らに逃げられてしまいます!」
「だが……」
「大丈夫です、今の僕にはフィーがいますから」
「……分かった、必ず生き残れよ!」


 団長とアリオスさんが先に向かうのを見届けて僕は魔獣に振り替える。


「フィー、見た感じこいつは強い。一人じゃ勝てないかも知れない。でも……」
「分かってる、二人でなら戦えるよ」
「ああ、行くぞフィー!」
「了解!」


 魔獣は見た感じゴーディシュナーと前に戦ったエルダーマンティスを掛け合わせたような見た目をしている。ゴーディシュナーのパワーにエルダーマンティスの俊敏性が加わったと考えると厄介な相手だぞ。


「ガァァァァァ!!」


 魔獣は雄たけびを上げながら両腕の鎌を振り下ろしてくる。僕は刀を使って魔獣の攻撃を受け流して脇腹を斬った。


「リィン!」
「よし来た!」


 フィーが僕の肩を踏み台にして跳躍し怯んだ魔獣目がけて銃弾を放つ。魔獣は腕を組んで防御するがその隙に背後に回り込んで斬りつけた。


「グガァァァァ!!」


 魔獣が痛みで鎌を滅茶苦茶に降ってくるが後ろに下がってかわす。するとフィーが一旦溜めの動作に入り動きを止める。


「『スカッドリッパー』!」


 直後フィーの姿が消えて魔獣の片腕の鎌が斬られて宙を舞っていた。フィーの得意技スカッドリッパーだ。前よりも威力と速度が上がっている。


「これで終わりだ、『孤影斬』!」


 僕は三日月型の斬撃を魔獣目がけて放つ。魔獣はもう片方の鎌で防ごうとしたが鎌ごと真っ二つにされて消えて行った。


「やったね、リィン」
「フィーのアシストのお蔭さ。前よりも強くなっていて驚いたよ」
「えへへ……」


 フィーの頭を撫でながら僕は来ていた道を見る。


「ここはもう通れないし、一度戻って別の道を探そう」
「ん、了解」


 撫でられて可愛らしい笑みを浮かべていたフィーは直に仕事をこなす時の表情に切り替える。この切り替えの速さは見習わないといけないな。


「どうかしたの?」
「いや、何でもないよ。それよりも先を行こう」


 僕たちは来た道を戻り別の道を探した。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



side:ルトガー


 俺とアリオスはアルタイルロッジの奥を目指して走っていた。道中にいた戦闘員たちはあらかた無力化した、残るは此処を仕切る幹部だけだ。


「ルトガー殿、本当に良かったのか?二人を残してきて……」
「……本当は心配だ。だがリィンの言う通りここで教団の奴らを逃せばまた同じ悲劇が起きちまう、だから確実にこの場で奴らを捕らえる。それにフィーが一緒ならあいつは大丈夫だ」
「……そうか、なら遠慮なく戦うとしよう」


 アリオスはそう言って更に走る速度を上げたので俺もその跡を追う。しばらく走っていると前に通った一本道の部屋より大きな空間が広がる場所についた。


「ここが最深部か?幹部らしき奴は見当たらないが……」
「油断はするな、何があるか分からないからな」


 辺りを注意深く見ていると突然頭上から殺気を感じ俺はアリオスに叫んだ。


「アリオス、上だ!」
「ッ!?」


 俺たちは左右に飛んでその場を離れる、すると次の瞬間俺たちがいた場所が大きく陥没した。


「何が起きた、アーツか?」
「いや、アーツじゃない。目に見えないが何かそこにいるぞ!」


 砂煙が薄れていき陥没した場所を警戒しながら見ていると徐々に何かが空間から浮き出てきた。


「何だこいつは……?」


 空間から出てきたのは長く穴の開いた両腕に四角い箱のような顔、そして胴体から下には足がなく丸い球体のようなものがついた生物には見えない機械仕掛けのような生き物だった。


「こりゃ改造された魔物なのか?しかしこれは……」
「うふふ、私の作品はお気に召してくれたかしら」


 背後から声が聞こえ俺たちが振り返ると教団のローブを着た女性が立っていた。


「お前がここのトップか?」
「ええ、私はイルメダ。このロッジの責任者であり科学者でもあるの」
「なら話は早い、俺たちに素直に捕まるか痛い目に合って捕まるかさっさと選べ」
「あらあら、せっかちな男は嫌われるわよ?」
「悪いが今日はマジだ。女だろうと容赦はしねえ」


 俺は刀をイルメダに突きつけてそう脅した。


「馬鹿な男ね。貴方たちに下る訳なんてないでしょう。私は教団に……いやあの方に身も心も捧げたんだから」
「なら力づくでやるだけだ」
「子供たちの居場所も吐いてもらうぞ」


 俺たちがそう言うとイルメダは可笑しそうに笑いだした。


「何が可笑しい?」
「いいえ、もう死んでしまってるゴミたちに随分と熱心なんだと思ってね?」
「何だと?貴様まさか……!」
「ええ、生き残り何ていないわよ。皆私が実験材料にしちゃったもの」


 イルメダは全く悪びれた様子もなくさも当然のようにそう話した。救えないクズな奴だ。



「外道め……ならばここで引導を渡してやる!」
「うふふ、風の剣聖に猟兵王……私の最高傑作のテスト相手に相応しいわ!さあやってしまいなさい、『ナイトメア』!!」


 イルメダがそう叫ぶと先程から静止していた生き物がゆっくりと動き出した。なるほど、この訳の分からん生き物はこいつが作ったって訳か。


「うふふ、どうかしら。錬金術と科学の技術を融合して生み出した作品は?」
「こんなガラクタ直にスクラップにしてやるよ」
「悪夢か……ならお前自身に悪夢を見せてやろう」


 俺とアリオスは刀を抜いてナイトメアに切りかかった。




 
 

 
後書き
ーーー オリジナル魔獣紹介 ---


『ゴーディスラッシャー』


 ゴリラのような体格と鋭い鎌を両腕に持った改造魔獣。その体格に似合わないスピードで敵を翻弄して、鋭い鎌で敵の息の根を止める。 
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