遊戯王ARC―V ~二色の眼と焔の武装~
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第1章 スタンダード次元篇
ペンデュラム召喚
第2話 フィールドに轟く咆哮 フレア・キャノン・スカーレット・ドラグーン
前書き
今回のデュエルも、モブ敵とはいえ、あっさり終わってます。
「おーおー、賑わってんなぁ」
舞網スタジアム、観客の熱狂が響くなか、龍牙は観客席の出入口の前に立っていた。
普通に席に座って見るよりも、見晴らしがいいためである。
「「「ハァッハァッハァッ!」」」
そこへ、息を切らせながら出入口から入ってくる者たちがいた。
一人は紫がかった赤髪を青い半球状の髪飾りでツインテールにしており、どこかの学校の制服らしき服装をした少女。名前は柊柚子。手首には、2つのリングをクロスしたような珍しいブレスレットを身につけていた。
一人は黒髪のリーゼントで、白い学ランに赤のハチマキと白のタスキ、鉄ゲタという大男。名前は権現坂昇。堅物ながらも漢気が感じられる少年だった。
最後は茶髪に炎のような模様のジャージ、首からホイッスルをさげた中年の男性。名前は柊修造。柚子の父親だった。いかにも、「熱血だッ!」と叫びそうな熱血漢のような雰囲気を持っていた。
『いよいよ、本日のメイィィンイベントのお時間がやってまいりましたぁ! チャンピオン、ストロング石島に挑戦しますのはぁ──あの伝説のデュエルスター、榊遊勝の一人息子、榊遊矢くんであります!』
スクリーンにストロング石島と遊矢の顔が映し出される。
「······遊矢」
「あいつ、本当に出るのか!?」
(ん? この三人、遊矢の知り合いか?)
口ぶりから、この三人が遊矢の知り合いであることを龍牙は察する。
龍牙が察した通りで、柚子と権現坂は遊矢と親友であり、幼馴染みである。
そして、柚子の父親の修造は遊矢が通うデュエル塾、遊勝塾の塾長であり、榊遊勝とは先輩後輩の間柄である。
「よっしゃぁッ! これでうちに──」
修造がガッツポーズをして、何かを言おうとしていたが、柚子のハリセンによるダイレクトアタックを受けて遮られてしまう。
······それよりも、そのハリセンは一体どこに隠し持っていたのだろうか。
『このスペシャルマッチは、アクションデュエルの公式ルールに則って行われます!』
(アクションデュエル······さて、どんなデュエルなのか、楽しみだぜ)
龍牙がこのデュエルで楽しみにしているもののひとつ、龍牙が知らないデュエル、アクションデュエル。
龍牙はいまかいまかとワクワクしていた。
『フィールド魔法、《辺境の牙王城》を発動!』
まだデュエルが始まっていないにもかかわらず、実況が一枚のフィールド魔法を発動する。
途端に、スタジアムが密林に覆われ、大きな湖と岩でできた城が出現する。
(なるほど。アクションデュエルは常時フィールド魔法が発動しているデュエルか。そうなると、アクションデュエルってのはもしかして──)
龍牙はすぐさま、アクションデュエルのだいたいの正体を掴み始めていた。
『おぉっとぉ! あの城の上に現れたのはぁ──』
城の上に、一人の男が降り立つ。
『この三年間、アクションデュエルの頂点に君臨し続ける最強王者! ストロング石島だァァァ!』
「ウオォォオオオオオオオッ!」
チャンピオン、ストロング石島が雄叫びをあげる。まるで、ライオンが自分は王者だと知らしめるかのように。
『その最強王者に挑むのは、若き挑戦者、榊遊矢!』
「待ってましたぁぁぁッ!」
遊矢の登場に修造が声をあげるが、すぐに静寂が訪れる。いや、修造だけでなく、スタジアム全体が静寂に包まれていた。
理由は──。
『ゆ、遊矢くん!? どぉぉこぉぉぉっ!?』
挑戦者である遊矢が、スタジアムに現れなかったからである。
「なんだ、逃げたのか?」
「これじゃ、三年前の親父と一緒じゃねえか」
「親子揃って、『卑怯者』だ」
観客の中で、遊矢を罵倒する声があがる。
「ちょっと!」
「やめろ、柚子」
遊矢を罵倒した観客に柚子が物申そうとするが、権現坂によって制止させられる。
「だって!?」
それでも、柚子は退こうとはしなかった。
その姿から遊矢とはおそらく、友達、仲間のような関係なんだと、龍牙は思った。だから、その遊矢への罵倒が許せない。
そして、そんな柚子を落ち着けるため、龍牙は言う。
「心配すんなよ。あいつは、遊矢はちゃんと来るよ」
「え?」
「なに?」
突然の龍牙の言葉に、柚子も権現坂も怪訝な表情を作る。
「おまえは誰だ? なぜ遊矢を知っている」
「ちょっとした知り合いだよ──つい先日会ったばかりだけどな」
「なぜ、そう言いきれるんだ?」
修造が龍牙に問う。そこまで遊矢のことを知っているわけではないのに、なぜそう言いきれるのかと。
「あいつの決意を知っているからだよ」
先日の遊矢の決意、あれは本気で真剣なものだと、龍牙は感じていた。だから、遊矢は絶対に逃げ出さないと確信できていた。
「てか、ほら。ちゃんと来てるじゃん」
「えっ!」
「「なにっ!」」
龍牙はあるところを指さす。
その指の先には、チャンピオンのストロング石島がおり──。
「あれは?」
そのストロング石島の後ろにピエロの格好をした少年がいた。
「まさか、あのピエロ?」
観客もピエロの少年に気づく。
「何あれ?」
「ピエロ?」
「チャンピオン! 後ろ!」
「「「後ろだ! 後ろ後ろ!」」」
観客の言葉に怪訝に思ったストロング石島は後ろに振り向く。
「うぉっ!?」
振り向いたら、いきなりピエロがいたものだから、思わず、ストロング石島は驚愕の声をあげてしまう。
「おまえ、榊遊勝のせがれか!?」
ピエロ──遊矢は無言でお辞儀をする。
「それがチャンピオンに対する態度か!」
一見、ふざけたような態度にストロング石島は怒鳴る。
「これは失礼しました」
遊矢はピエロの仮面を取り、初めて口を開く。
「では、改めて、お願い致します。どうか、わたくしめとデュエルを!」
そう言い、遊矢はデュエルディスクを展開する。
「チャンピオンさまのお手並み拝見!」
「お手並みだぁ? この礼儀知らずのクソガキがぁ! プロの技でおまえを躾直してやる!」
対するストロング石島もディスクを展開するが、ペースは若干遊矢のほうに傾いていた。
「はっはっは! 序盤から盛り上げてくれるなぁ、遊矢!」
普通に登場するのではなく、以外な登場をする。観客を驚かせるエンターテイナーらしい登場に、龍牙は笑みを浮かべる。
『おぉっとぉ! いきなり意外な展開となりましたが、とにかく、役者は揃いました!』
遊矢とストロング石島はデッキからカードを5枚引き、準備万端となる。
『戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが、モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い! フィールド内を駆け巡る! 見よ! これぞデュエルの最強進化系! アクショォォォン──』
「「デュエル!」」
遊矢が生まれ変わるための第一歩であるデュエルがいま、始まった。
―○●○―
「いやー、昨日のデュエルはおもしろかったなぁ!」
街中を歩いていた龍牙は、先日行われたスペシャルマッチのことを思い出す。先日のデュエルは遊矢の勝利で終わった。
序盤は遊矢の魅せるデュエルで観客をわかせ、ストロング石島をあと一歩というところまで行ったが、そこはチャンピオン、すぐに挽回して、遊矢を絶体絶命のピンチまで追い詰めた。
だが──。
──揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚! いでよ! 我が下僕のモンスターたち!
未知の召喚法、ペンデュラム召喚。手札から大量のモンスターを1度に召喚してみせた。
遊矢はそのペンデュラム召喚を行い、見事に逆転勝利を収めた。
「ペンデュラム召喚ねぇ。いいねいいねぇ。未知のデュエルに召喚法。これだから、デュエルはやめられねぇぜ」
龍牙が向かっているのは、遊矢が所属しているというデュエル塾、遊勝塾だ。
アクションデュエルとペンデュラム召喚。このふたつを間近で見るには、遊矢のもとに行くのが1番。
また、龍牙は遊矢自身のことも気に入っており、その遊矢がやるエンタメデュエルにも興味津々であった。
その胸をワクワクさせ、龍牙は遊勝塾へと向かうのだった。
―○●○―
「お、ここだな」
道行く人に尋ねながら、龍牙はようやく遊勝塾にたどり着いた。
「すいませーん。入塾希望者なんですがー」
入口を通り、関係者を呼ぶが、反応がなかった。
だが、無人というわけではなく、奥の方が騒がしかった。
とりあえず、龍牙はテーブルの上に置かれていた入塾申込書に必要事項を書き、騒がしい塾の奥のほうへと行く。
『ペンデュラム! ペンデュラム! ペンデュラム!』
そこでは、おそらく龍牙と同じであろう入塾希望者たちによるペンデュラムコールが行われていた。
YUYA
LP3200
手札4
モンスターゾーン
・EMディスカバー・ヒッポ
YUZU
LP4000
手札5
モンスターゾーン
・幻奏の乙女アリア
デュエルフィールドでは、遊矢と柚子がアクションデュエルしていた。
「俺のターン。ドロー! 来た! 俺はスケール4の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》とスケール8の《星読みの魔術師》でペンデュラム・スケールをセッティング!」
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
スケール4
星読みの魔術師
スケール8
遊矢の両隣に光の柱が生み出され、その中を二体のモンスターが登っていく。
オッドアイのドラゴン、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が登った柱には「4」の文字が刻まれ、不良のような魔術師、《時読みの魔術師》が登った柱には「8」の文字が刻まれる。
「よーし! 来い来い、ペンデュラム!」
『ペンデュラム! ペンデュラム! ペンデュラム!』
修造の声を皮切りに再び起こるペンデュラムコール。
「行くぞ! ペンデュラム召喚! 現れよ! 俺のモンスターたちよ!」
『ERROR』
························。
何も起こらなかった。
「おい!? どうしたんだよ!? 《ソード・フィッシュ》! 《ウィップ・バイパー》! あのときみたいに、ドーンッと来いよ!」
『ERROR』
「なんでエラーなんだよ!? ペンデュラムカードを置いてるのに!?」
遊矢は何度もペンデュラム召喚を行おうとするが、できないでいた。
(ふーん、なるほどな)
そんななか、龍牙だけが、この状況の原因を理解していた。
「俺はこれで、ターンエンド!」
YUYA
LP3200
手札3
ペンデュラムゾーン
・オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
・時読みの魔術師
モンスターゾーン
・EMディスカバー・ヒッポ
YUZU
LP4000
手札5
モンスターゾーン
・幻奏の乙女アリア
「さあ、柚子。俺を攻撃しろ!」
「えっ? 攻撃!?」
「ああっ! 遠慮せずに、ドーンッと来い!」
遊矢はしばらく思案すると、ターンエンドして、柚子に攻撃を促す。
突然の言葉に、柚子は困惑する。
「遊矢がそう言ってるんだから、やってやれー! 遠慮なく、派手に行けー!」
「わかった!」
修造の言葉に、とりあえず、柚子は言う通りにする。
「私のターン。ドロー! フィールドに『幻奏』と名のつくモンスターが存在するとき、このカードを特殊召喚することができる! 《幻奏の乙女ソナタ》を特殊召喚!」
幻奏の乙女ソナタ
レベル3
ATK1200
「《幻奏の乙女アリア》と《幻奏の乙女ソナタ》をリリースし、《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》をアドバンス召喚!」
幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト
レベル8
ATK2600
「《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》の効果を発動! 1ターンに1度、手札から『幻奏』と名のつくレベル4以下のモンスターを特殊召喚することができる! 私はもう1枚の《幻奏の乙女アリア》を特殊召喚!」
幻奏の乙女アリア
レベル4
ATK1600
柚子のフィールドに2体の歌姫が揃う。
「まずは邪魔なカバに消えてもらうわ! 《アリア》! 《EMディスカバー・ヒッポ》を攻撃!」
「グッ······くっ!」
YUYA
LP3200→2400
《アリア》の歌が《ディスカバー・ヒッポ》を破壊する。
「さあ、来い!」
「さあさあ、来い来い! ペンデュラム!」
『ペンデュラム! ペンデュラム! ペンデュラム! ペンデュラム!』
再び巻き起こるペンデュラムコール。
「ドーンッと来い! 柚子!」
「行くわよ! くらいなさい! 《プロディジー・モーツァルト》で遊矢にダイレクトアタック! グレイスフル・ウェーブ!」
《プロディジー・モーツァルト》の破壊の音が遊矢に迫る。
「よーし! 来た来た、ピンチ! これで、ペンデュラム召喚だァァッ!」
『ERROR』
「え──うわあああああっ!?」
YUYA
LP2400→0
YUZU:WIN
何も起こらず、呆気なく遊矢のライフが0になった。
そのことに周りがなんとも言えない空気になるなか、龍牙だけは、内心で苦笑いを浮かべていた。
―○●○―
「あのぉ、質問があるんですけど?」
「は、はい。なんでしょう?」
デュエルが終わり、デュエルフィールドから出てきた遊矢に入塾希望者の1人が訊く。
「さっきキミ、ペンデュラムカードって言ってたけど······」
「ペンデュラムカード?」
「あ、それは、俺が勝手にそう言ってるだけで、正式にはなんて名前なのか······」
「ちょっと見せて」
「うん」
柚子はそのペンデュラムカードと自分のカードを見比べる。
「これが、ペンデュラムカード······」
遊矢の言うペンデュラムカードには、普通のモンスターと違い、フレームの下半分がモンスターではなく、マジックカードの色をしていた。そして、通常の効果テキストの上にペンデュラム効果というテキストがあり、左右に数字が描かれていた。
「ペンデュラム召喚はこのカードじゃなきゃ、できないってこと?」
「それ、ズルじゃん! てか、ペンデュラム召喚なんて、最初からねえんじゃねぇの!」
「そうだ! 石島戦はシステムに細工をしたんだろう! じゃなきゃ、モンスターの大量召喚なんか、できるわけねえし!」
「そこまでしてチャンピオンに勝ちたかったのかしら?」
「やっぱり、『卑怯者』の息子ね」
見たことのないカードと召喚法、それを遊矢しか持っていないことから、ペンデュラム召喚をインチキと断じて、入塾希望者たちは掌を返して塾から去ろうとする。
「あぁぁっ! ちょっと待ってぇぇ──うわぁぁっ──うわはあああああっ!?」
塾長の修造が引き留めようとするが、入塾希望者たちはお構いなく、修造を踏み潰して行ってしまう。
「············ッ······」
そして、遊矢は、ようやく手にした尊敬や声援が罵倒に変わった現実から逃れるようにゴーグルをかけてしまう。
そのまま、遊矢が意気消沈したままその場を去ろうとした瞬間──。
「遊矢兄ちゃんは卑怯者なんかじゃない!」
1人の幼い少年の叫びがその場に響いた。
青色の髪を持った、小学生と思しき少年だった。
「遊矢兄ちゃんは細工なんかしてない! 正々堂々と石島と戦って勝ったんだ! ペンデュラム召喚で勝ったんだ!」
背後から権現坂が現れ、叫ぶ少年の肩に手を置く。
「遊矢! ファン第1号にこんなことを言わせて、悔しくはないのか!」
「ファン第1号?」
この少年の名前はタツヤ。以前にもこの遊勝塾の見学に来ており、ストロング石島戦でも生で遊矢のデュエルを見ていた。それからすっかり、タツヤは遊矢の大ファンになったのだ。
「僕、すごいと思った。何万人もいるお客さんがデュエルで、遊矢兄ちゃんのデュエルでひとつになって、僕もあんなデュエルがしたいと思った! 遊矢兄ちゃんみたいなデュエルが!」
タツヤの真っ直ぐな言葉は遊矢にしっかりと届いていた。
「······俺も······もう一度あんなデュエルがしたい! あの大観衆の前で!」
思いのたけを口にする遊矢に龍牙が言う。
「遊矢」
「龍牙!」
「あのデュエルでおまえは生まれ変わったんだろ? 逃げずに戦い、この子のようにおまえのデュエルで皆を湧かせて、笑顔にするようなデュエリストに。ファンにここまで応援されたんだ。ちゃんと応えないとな」
「龍牙······」
タツヤの隣にタツヤと同い年と思しき赤髪の少女、アユと太った体形の少年、フトシが歩み寄る。
「俺たちだってファンだぜ!」
「これからもずっとね! ねっ、タツヤくん」
「うん!」
ふと、フトシが龍牙を見て言う。
「ところで、この兄ちゃん、誰?」
「あぁ、俺? こういう者です」
龍牙はその場にいるメンバーに入塾申込書を見せる。
「龍牙、おまえも遊勝塾に!」
「ああ。おまえのデュエル、すっげぇおもしろかったからな。結構、興味出ちまったんだよ。てなわけで、これからご鞭撻のほど、よろしくお願い致します。先輩方」
「おぉぉ、先輩! 痺れる響きだぜぇ!」
「ああっ、よろしく頼むよ龍牙!」
「てわけで、遊勝塾に新メンバー誕生!」
「えッ! 入ってくれるのッ! 本当に! やったぁぁぁッ!」
ダウンしていた修造が復活し、歓喜の叫びをあげる。
「燃えるぜ! 熱血だァァァッ!」
修造の叫びをよそに、遊矢はゴーグルを外す。
「······エンターテイナーが、ファンをがっかりさせちゃ、ダメだよな! 絶対にマスターしてやる! ペンデュラム召喚!」
遊矢は決意を新たに、ペンデュラム召喚をマスターしようと意気込む。
「ハッ、なーにがペンデュラム召喚だ!」
そんな遊矢を嘲笑うかのような声。
「インチキの腕でも上げんのか?」
声がする方向には、いかにもチンピラっといった風貌の不良が3人いた。
「なんだ、おまえたちは!?」
「インチキを使ってチャンピオンを倒した卑怯者デュエリストであるおまえに天誅をくだしに来た正義のデュエリスト、てところかぁ」
不良たちのリーダー格と思しき男がそんなことをのたまう。
「何が正義のデュエリストだっ! 遊矢兄ちゃんは卑怯者なんかじゃない!」
「そうよ! そうよ!」
「ペンデュラム召喚だって、インチキなんかじゃない!」
リーダー不良の言葉にフトシ、アユ、タツヤが物申す。
「うるせぇぞ、ガキ共! おまえら、やっちまえ!」
「「へいっ、リーダー!」」
リーダー不良の命令で、部下不良の2名が子供たちに殴りかかろうとする!
「「うわっ!?」」
「きゃっ!?」
「皆っ!?」
不良たちの拳が振り下ろされた瞬間、不良たちの拳が掴んで止められた。
「「「龍牙兄ちゃん!」」」
不良たちの手を掴んでいたのは龍牙であった。
「なっ、なんだ、てめえ──いてててててっ!?」
「いてぇっ!? 離しやがれ、この野郎!?」
龍牙はそのまま、不良たちの腕を捻りあげる。
「て、てめえっ! この野郎──」
「ここはデュエルを学ぶ場所だ。他人を罵倒したり、暴力を振るう場所じゃないぜ」
「っ!?」
龍牙はいつものお気楽な雰囲気ではなく、冷たい雰囲気を放ち、低い声音で言う。
リーダー不良はその龍牙の雰囲気に気圧されてしまう。
「ま、待てよ! ここはデュエリストらしく、デュエルで決着をつけようぜ! ほら、ここは暴力を振るう場所じゃないんだろ?」
それを聞いた龍牙は手を離して、手下の不良たちを解放する。
「いいぜ。売られたデュエルは買う主義だ。3人まとめてかかってこいよ」
「はぁっ!?」
「「「「「「「っ!?」」」」」」」
「その代わり······2度とくだらねぇ理由でこの塾に足を踏み入れるな」
―○●○―
龍牙と不良3人組はデュエルフィールドに移動する。
「へへへっ、まさかアクションデュエルができるとはな!」
「「やっちまいましょうや、リーダー」」
アクションデュエルができることと自分たちに圧倒的有利なデュエルで不良3人組は舞い上がっていた。
「塾長。アクションフィールドを頼むぜ」
『う〜ん······わかった。おまえを信じる! 頼むぞ、龍牙!』
自分から不利な条件のデュエルを挑んだ龍牙を怪訝に思うが、修造は新しい塾生である龍牙を信じて、アクションフィールドを発動する。
『アクションフィールド、オン! フィールド魔法、《暴徒達の草原》!』
龍牙たちは広い草原に降り立っていた。
パッと見、昼寝をすれば気持ちのよさそうなフィールドだが、あっちこっちにゴミやら、血のついた鉄パイプや角材やらがあった。
まるで、不良たちがくつろいだり、死闘を繰り広げたようなフィールドだった。
「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが!」
「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」
「フィールド内を駆け巡る!」
「「「見よ! これぞ、デュエルの最強進化系! アクショーン!」」」
「「「「デュエル!」」」」
RYUGA
LP4000
手札5
BadBoysReader
LP4000
手札5
BadBoysA
LP4000
手札5
BadBoysB
LP4000
手札5
「俺の先行。《AD―ダブルソード・ドレイク》を召喚!」
AD―ダブルソード・ドレイク
レベル4
ATK1600
「おー、痺れるくらいカッコいいドラゴンだぜ!」
「むっ、《オッドアイズ》だって負けてないぞ」
「カードを2枚伏せ、ターンエンド。行くぜ、《ダブルソード》!」
RYUGA
LP4000
手札2
モンスターゾーン
・AD―ダブルソード・ドレイク
魔法・罠ゾーン
・リバース
・リバース
BadBoysReader
LP4000
手札5
BadBoysA
LP4000
手札5
BadBoysB
LP4000
手札5
龍牙は《ダブルソード・ドレイク》と共に駆け出す。
「へっ、俺のターン! 俺は《ゴブリン突撃部隊》を召喚!」
ゴブリン突撃部隊
レベル4
ATK2300
不良Aのフィールドに複数の武装したゴブリンが現れる。
「攻撃力が2300!?」
レベル4でありながら、攻撃力2300を誇る《ゴブリン突撃部隊》を見て、タツヤが驚愕する。
「だが、あのモンスターは攻撃すると、強制的に守備表示になる。そして、その守備力は0。1度攻撃を耐えれば、なんとかできるはずだ」
遊矢の言う通り、《ゴブリン突撃部隊》はその攻撃力こそ2300を誇るが、それ相応のデメリットがあった。
「へっ、囲め、おまえら!」
「ととっ!」
ゴブリンたちは龍牙と《ダブルソード・ドレイク》を囲んで、その移動を阻害する。
「さらに、魔法カード、《二重召喚》を発動! このターン、俺はもう1度通常召喚ができるぜ! デメリットなんざ、こうすれば問題ねえよ! 俺は《ゴブリン突撃部隊》をリリースして、《偉大魔獣ガーゼット》をアドバンス召喚!」
偉大魔獣ガーゼット
レベル6
ATK0
現れたのは、巨大な人型の魔獣だった。
「えっ! 攻撃力0!」
「なんだ、大したことねえじゃん」
「そんなモンスターやっつけちゃえ、龍牙お兄ちゃん!」
だが、その攻撃力は0だった。
「へっ、こいつはなぁ、リリースしたモンスターの攻撃力の2倍の攻撃力を持つんだよ!」
「「「に、2倍!?」」」
偉大魔獣ガーゼット
ATK0→4600
「こ、攻撃力······」
「4600!?」
「ウソぉっ!?」
《ガーゼット》の攻撃力に、観戦していた子供たちが驚愕する。
「行け! 《ガーゼット》! 《AD―ダブルソード・ドレイク》を攻撃!」
「手札の《AD-シールドジェネレーター・ワイアーム》を墓地へ送り、効果を発動! この戦闘による《ダブルソード・ドレイク》の破壊とダメージを無効にする!」
《シールドジェネレーター・ワイアーム》が《ガーゼット》の拳から《ダブルソード・ドレイク》を守る。
「ちっ、ターンエンドだ」
RYUGA
LP4000
手札1
モンスターゾーン
・AD―ダブルソード・ドレイク
魔法・罠ゾーン
・リバース
・リバース
BadBoysReader
LP4000
手札5
BadBoysA
LP4000
手札3
モンスターゾーン
・偉大魔獣 ガーゼット
BadBoysB
LP4000
手札5
「へへっ。今度は俺のターンだ! ドロー! 俺は《可変機獣 ガンナードラゴン》を召喚!」
可変機獣 ガンナードラゴン
レベル7
ATK2800
不良Bのフィールドに機械のドラゴンが現れる。
「えっ!? レベル7のモンスターをリリースなしで!?」
「《ガンナードラゴン》は、攻撃力、守備力を半分にすることで、リリースなしで召喚できるんだよぉ!」
可変機獣 ガンナードラゴン
ATK2800→1400
DEF2000→1000
「さらに、俺もマジックカード、《二重召喚》を発動! 俺は《ガンナードラゴン》をリリースして、《偉大魔獣ガーゼット》をアドバンス召喚!」
偉大魔獣ガーゼット
レベル6
ATK0
「また、《ガーゼット》!」
「でも、攻撃力1400の2倍ぐらいなら······」
「さっきのに比べたら······」
「おっと、説明不足だったな。《ガーゼット》が参照するのは、元々の攻撃力なんだよ!」
「「「ええぇぇぇぇぇっ!?」」」
「《ガンナー・ドラゴン》の元々の攻撃力は2800!」
「その2倍ってことは!」
「攻撃力5600だぁっ!」
偉大魔獣ガーゼット
ATK0→5600
「これで終わりだァ! 《ガーゼット》で攻撃!」
《ガーゼット》の拳が《ダブルソード・ドレイク》に襲いかかる。
「罠発動! 《亜空間物質転送装置》! 《ダブルソード・ドレイク》をターン終了時までゲームから除外する!」
《ダブルソード・ドレイク》が亜空間へと飛び、《ガーゼット》の攻撃が空振った。
「それになんの意味があんだよ? だったら、てめえを攻撃すればいいだけだ! 行け! 《ガーゼット》! プレイヤーへダイレクトアタック!」
「この瞬間、墓地の《シールドジェネレーター・ワイアーム》の効果を発動! ダイレクトアタックを受けるとき、墓地のこのカードをゲームから除外し、その攻撃を無効にする!」
《シールドジェネレーター・ワイアーム》が今度は龍牙を《ガーゼット》の攻撃から守った。
「ちっ。ターンエンドだ」
「この瞬間、亜空間へと飛んでいた《ダブルソード・ドレイク》が戻ってくる」
RYUGA
LP4000
手札1
モンスターゾーン
・AD―ダブルソード・ドレイク
魔法・罠ゾーン
・リバース
BadBoysReader
LP4000
手札5
BadBoysA
LP4000
手札3
モンスターゾーン
・偉大魔獣ガーゼット
BadBoysB
LP4000
手札3
モンスターゾーン
・偉大魔獣ガーゼット
「ちっ、だらしがねえな! ここは俺がビシッと決めてやるぜ! 俺のターン! まずはそのウザってぇ伏せカードを消してやる! 魔法カード、《ナイト・ショット》を発動! てめぇの伏せカードを破壊する! さらに、このとき、破壊されるカードは発動できねぇぜ!」
「ああっ、伏せカードが!?」
「これでてめえの守りはなくなった! さっきは偉そうにしやがって。ぶっ潰してやる! 俺は《神獣王バルバロス》を召喚!」
神獣王バルバロス
レベル8
ATK3000
リーダー不良のフィールドに獅子の顔をした戦士が現れる。
「こいつも《ガンナー・ドラゴン》と同じく、攻撃力を1900にすることでリリースなしで召喚できる!」
神獣王バルバロス
ATK3000→1900
「そして、魔法カード、《二重召喚》を発動! 《バルバロス》をリリース、《偉大魔獣ガーゼット》をアドバンス召喚!」
偉大魔獣ガーゼット
レベル6
ATK0
「もう、言わなくてもわかるよな?」
「《バルバロス》の元々の攻撃力は3000。《ガーゼット》の攻撃力はその2倍······」
「6000だァッ!」
偉大魔獣ガーゼット
ATK0→6000
「もう、てめえを守る伏せカードはねえ! これで終わりだァァッ!」
「クッ」
「おっとォ!」
「アクションカードは取らせねぇぜェ!」
このアクションデュエルでは、フィールドに散らばったアクションカードというものがあり、1枚しか手札に加えられない代わりに、ほとんどが手札に加えればいつでも発動できるカードだ。その効果は、防御、サポートと豊富である。
そのアクションカードを探そうとした龍牙を、不良A、Bの《ガーゼット》が妨害する。
「ハッ、カッコつけて、俺たち3人をまとめて相手したことを後悔するんだなァァッ!」
リーダー不良の《ガーゼット》がゆっくりと龍牙に近づく。
そして、龍牙の間近まで行った《ガーゼット》がその腕を振り上げる。
「攻撃ッ!」
《ガーゼット》が龍牙にトドメをさそうと動いた瞬間──。
「──《ダブルソード》!」
龍牙が《ダブルソード・ドレイク》目掛けて駆け出す。
それに合わせて、《ダブルソード・ドレイク》は自身の剣を交差させる。
「よっ!」
そして、龍牙は交差された剣に乗る。
それと同時に、《ダブルソード・ドレイク》は龍牙を打ち上げる!
「イヤッホオオオオオオオッ!」
打ち上げられた龍牙は《ガーゼット》を飛び越え、《ガーゼット》の包囲から抜け出した。
アクションデュエルで使われるソリッド・ビジョンは、リアル・ソリッド・ビジョンと呼ばれ、フィールドに現れたものが質量を持っているのである。
そのため、アクションデュエルは、デュエリストがモンスターに乗ったり、いまの龍牙のような芸当が可能なデュエルなのだ。
「それになんの意味があんだよッ! これで終わりだッ!」
《ガーゼット》の拳が叩きつけられ、凄まじい地響きと共に土煙が巻き上がる。
「へっ、これで俺たちの勝ちだぜ!」
「それはどうかな?」
「「「なんだとッ!?」」」
RYUGA
LP4000→1800
「な、なんで、ライフがまだ残ってるんだよ!?」
「よく見てみろよ」
不良たちは《ガーゼット》が攻撃した場所を見る。
土煙がやみ、そこには《ダブルソード・ドレイク》が佇んでいた。
「な、なんで、《ダブルソード・ドレイク》がッ!?」
「俺は墓地から罠カード、《AD―アイアン・オーラ》を発動したのさ」
「なっ!? ぼ、墓地から!?」
「「墓地から罠だと!?」」
「このカードをゲームから除外し、『AD』モンスター1体の戦闘破壊を1度だけ無効にし、ダメージを半分にできるのさ」
「俺が破壊した伏せカードか!」
「まぁ、破壊されなかったらされなかったで、普通に発動して、戦闘破壊とダメージを無効にしてたけどな」
つまり、どのみち、龍牙の伏せカードを破壊する手段しかなかったリーダー不良は、このターンで決着をつけることはできなかったのだ。
「······俺はターンエンドだ。だが、俺たちのフィールドには、圧倒的な攻撃力を持った《ガーゼット》共がいるんだ! てめえに勝ち目はねえよ!」
RYUGA
LP1800
手札2
モンスターゾーン
・AD―ダブルソード・ドレイク
BadBoysReader
LP4000
手札2
モンスターゾーン
・偉大魔獣ガーゼット
BadBoysA
LP4000
手札3
モンスターゾーン
・偉大魔獣ガーゼット
BadBoysB
LP4000
手札3
モンスターゾーン
・偉大魔獣ガーゼット
「圧倒的な攻撃力ね」
(俺にとっちゃ、6000程度じゃ、そこまで圧倒的じゃないんだけどなぁ)
「俺のターン。俺は《AD―ストライクランス・ドレイク》を召喚」
AD―ストライクランス・ドレイク
レベル4
ATK1600
現れたのは、機械仕掛けの槍を持ったドラゴンだった。
「こいつが召喚・特殊召喚に成功したメインフェイズ、デッキから『AD』カードを1枚を墓地に送ることができる。俺は《AD―バーニング・エナジー》を墓地に送る」
「だからなんだよ。どっちのモンスターも俺たちの《ガーゼット》にとっちゃ、ザコだ。次のターンでぶっ潰してやるぜ!」
「フッ」
龍牙は不敵な笑みを浮かべる。
「おまえたちに次のターンはねえよ。俺のフィールドにはレベル4のモンスターが2体。これがどういう意味を表しているか、わかるか?」
「はぁ、んなもん、知るかよ!」
「なら、見せてやるよ! 俺はレベル4の《AD―ダブルソード・ドレイク》と《AD―ストライクランス・ドレイク》でオーバーレイ!」
龍牙の前方に光の渦が生まれ、《ダブルソード・ドレイク》と《ストライクランス・ドレイク》はオレンジ色の光り輝く球体へと変化する。
「2体のモンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築!」
光の渦の中へ球体が飛び込み、渦から強大な光が発せられる。
「燃え盛る炎よ! ここに龍の灼熱の咆哮となれ! エクシーズ召喚! 来い! ランク4! 《|AD《アーマー・ドラグナー
》-フレア・キャノン・スカーレット・ドラグーン》!」
|AD《アーマー・ドラグナー
》-フレア・キャノン・スカーレット・ドラグーン
ランク4
ATK2500
光から1体の翼を持った四足歩行のドラゴンが現れる。ところどころを機械仕掛けの装甲をまとい、2門の機械仕掛けの砲台を持っていた。
「エクシーズ召喚!?」
「これが!?」
龍牙の行ったエクシーズ召喚に、観戦していた遊矢たちは再び驚愕の表情を作る。
「ハッ、何がエクシーズ召喚だ! 攻撃力は《ガーゼット》に全然届かねぇじゃねぇか!」
「それはどうかな。エクシーズ素材となった《ダブルソード・ドレイク》の効果発動! このカードをエクシーズ素材にしたエクシーズモンスターの攻撃力を1000ポイントアップする!」
|AD《アーマー・ドラグナー
》-フレア・キャノン・スカーレット・ドラグーン
ATK2500→3500
「それでも、3500。《ガーゼット》には及ばねえ!」
「フッ。《フレア・キャノン・スカーレット・ドラグーン》のORUをひとつ使い、効果を発動! 相手の攻撃表示モンスター1体の攻撃力の半分の数値をターン終了時までこのカードの攻撃力に加える!」
「なにっ!?」
「おまえの《ガーゼット》、攻撃力6000の半分、3000を《フレア・キャノン》の攻撃力に加える! バーニング・フォース!」
|AD《アーマー・ドラグナー
》-フレア・キャノン・スカーレット・ドラグーン
ATK3500→6500
「俺の《ガーゼット》の攻撃力を上まっただと!?」
「残るひとつのORUも使い、効果を発動! バーニング・フォース!」
|AD《アーマー・ドラグナー
》-フレア・キャノン・スカーレット・ドラグーン
ATK6500→9500
「攻撃力9500だとっ!?」
「「ウソだろ!?」」
「まだまだ。俺は墓地から罠カード、《AD―バーニング・エナジー》を発動!」
「また墓地から罠!?」
「このカードを除外して自分フィールドの『AD』モンスター1体の攻撃力を800ポイントアップする!」
|AD《アーマー・ドラグナー
》-フレア・キャノン・スカーレット・ドラグーン
ATK9500→10300
「こ、攻撃力10300だと······!?」
攻撃力10000越え、その強大な攻撃力に不良たちも、遊矢たちも絶句する。
「魔法カード、《死者蘇生》を発動。墓地から《ダブルソード・ドレイク》を特殊召喚」
AD―ダブルソード・ドレイク
レベル4
ATK1600
「そして、《ダブルソード・ドレイク》をリリースし、《フレア・キャノン》を対象に効果を発動。このターン、《フレア・キャノン》はモンスターに2回攻撃できる」
「に、2回だとぉ!?」
「バトル! 《フレア・キャノン・スカーレット・ドラグーン》で《ガーゼット》2体を攻撃! バーニング・フレイム・カノン!」
「「ぐわあああああっ!?」」
BadBoysA
LP4000→0
BadBoysB
LP4000→0
《フレア・キャノン・スカーレット・ドラグーン》の2門の砲台から放たれた砲撃が、不良A・Bの《ガーゼット》を焼き尽し、一瞬でライフを消し飛ばす。
「だ、だが、これでおまえの攻撃は終わった! 《フレア・キャノン・スカーレット・ドラグーン》の攻撃力も元に戻る! そして、次の俺のターンの攻撃でおまえは──」
「何を勘違いしてるんだ?」
「何!?」
「まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ」
「おまえに攻撃できるモンスターはもう!」
「アクション魔法、《ワンダー・チャンス》! その効果で、《フレア・キャノン》はもう1度攻撃できる」
「なっ!? クソッ、俺もアクションカードを!」
「あぁ。そのへんにアクションカードはないぜ」
「何っ!? デタラメ言うんじゃねぇ!」
「デタラメじゃねぇよ。なんせ、その場所におまえらを誘導したわけだからな」
龍牙はこのデュエルが始まった瞬間に、その鋭い洞察眼をもって、アクションカードの位置を把握し、取りに行くふりをして、不良たちをアクションカードがないポイントまで誘い込んだのだ。
そして、龍牙自身は先程の《ダブルソード・ドレイク》との連携で、アクションカードがある場所まで飛んだのであった。
「こういうやり方も、アクションデュエルならではだろ? 行け! 《フレア・キャノン・スカーレット・ドラグーン》! その灼熱の咆哮を轟かせろ! バーニング・フレイム・カノン!」
「ぐおあああああああっ!?」
BadBoysReader
LP4000→0
RYUGA:WIN
―○●○―
敗北した不良たちは、お約束の捨てゼリフを残して逃げ出していった。
「すげぇぜ、龍牙兄ちゃん! 攻撃力10000越え、痺れまくったぜー!」
「しかも、相手の妨害を利用した誘導。本当にすごいよ!」
見事、ワンターンスリーキルを果たした龍牙に興奮冷めやらぬ子供たちが駆け寄る。
「すごかったよ、龍牙。おまえ、エクシーズ召喚を使えたんだな」
「まぁな」
エクシーズ召喚を行った龍牙へと、修造が尋ねる。
「エクシーズ召喚は最近になって、LDSが導入した召喚法のはずだ。おまえ、LDSの塾生だったのか?」
「いや。塾はこの遊勝塾が初めてだぜ」
「じゃあ、どこでエクシーズ召喚を?」
「うーん、企業秘密──て、言いたいところだけど、わかんねぇんだよなぁ」
「「「「「「「はい?」」」」」」」
龍牙の言葉に、龍牙以外のメンバー全員が素っ頓狂な声を出す。
「なんせ俺──過去の記憶なくしてるんだよなぁ」
後書き
次回予告
「キミ、エクシーズ使いなんだ?」
「そういうおまえはおまえは融合使いなんだな。なあ、俺とデュエルしようぜ」
「うん、いいよ」
「融合召喚! 現れ出ちゃえ!」
「ああっ!? 龍牙お兄ちゃんのエクシーズモンスターが!?」
「エクシーズなんて、僕の敵じゃないよ」
「へぇー。なら······これでどうだ!」
『次回、「唸る怒涛の炎撃 リボルバー・エッジ・バーミリオン・ドラグーン」。お楽しみはこれからだ!』
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