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『残骸』

作者:零那
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『大切なこと』



『根本的に屈折してる』と言い放つ貴男は笑っていた。
繰り返し放たれる笑い声に苛つきを隠せない私。
其れに気付けば更に笑いを堪える貴男は一体...。

『素でぶつかって来い』と言い放つ貴男は笑っていた。
そして、どっしり構えていた。
キョトンとする私の頭をクシャっとして優しい笑顔になる貴男...。

『人間、理屈じゃ無いから面白い。その代表がお前だ』と言い放つ貴男。
闇を裂く様な鋭い眼差しが向けられた。
酌み交わす盃に意味は無いだろう...。

『出逢い、別れ、惹かれ、好き嫌い...人生で大事なのは、ブレない信念や正義を持てるかどうかだ』
そう言い放つ貴男。
『其の正義を間違えて闇に堕ちた』
そう答えた私。

『見えない鎖に縛られ、慟哭の毎日を過ごしてく事で大切な何かを得られる』
更にそう答えた貴男。
『そんなの無い。在るのは苦しみだけ』
私は俯き、栓が抜けたように泣き出してしまった。

貴男は私に諭す。

『偽りのない世界は無い。綺麗な世界も無い。薄汚くて目を背けたい事実に傷つく時もある。そんな醜い世界が、生きてかなければならない此の世界だ。諦めることでチカラは抜ける。何を大事にしたいかを間違わなければ良いだけだ』


 
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