サトシ「25歳」〜理想と現実の先にあるもの〜
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ヒカリ:「、、、」
サトシ:「俺、今になって思ったんだ」
ヒカリ:「、、、何を思ったの?」
サトシ:「、、、大切な人達と別れて、
その人達にもう一度会える機会って
何回あるんだろうって」
ヒカリ:「、、、」
サトシ:「あの事件から15年間、
空白の時間の中で俺は、みんなに会いたいって
ずっと思ってた、、、」
誰にも言わずにいた自分の本心。
サトシはこの時、
初めて自分の本心を人に話した。
サトシ:「もしあの時山に篭っていなかったら、
通信教育じゃなくて誰かの元を尋ねていたら、
俺は大事な人達を
失わずに済んでいたかも知れない」
ヒカリ:「、、、」
サトシ:「母さんも失踪して、
誰が何処で何をしているのかも、
連絡先すらもわからないまま15年を生きてきて
気づいたら笑う事も忘れてたんだ」
ヒカリ:「、、、サトシ、、」
サトシ:「この前ヒカリにも言ったよな?
”1人って辛い”って」
ヒカリ:「あっ、、、、、うんっ」
ヒカリは以前のカラオケルームでの
出来事を思い出した。
サトシ:「俺も、、、1人は辛かった。
自分だけ取り残されて、俺だけ時間が
止まっている気がして、、、
生きる楽しさなんて、何一つなかった」
ヒカリ:「サトシ、、、」
サトシの心を知り、
自分と共感する気持ち以上に、
サトシを助けたい思いが込み上げてくる。
サトシ:「、、、だから俺、またこうやって
笑い合ったり出来る大事な人達と
もう一度会えたって事は、
偶然なんかじゃないって思うんだ!」
ヒカリ:「!」
サトシ:「、、、この先の自分に
はっきりした当てなんて何一つないけど、、、」
ヒカリ:「、、、」
サトシ:「、、、でも、一つだけ
はっきり言える事があるんだ!」
ヒカリ:「、、、それはなぁに?」
真っ直ぐな瞳でサトシを見つめるヒカリ。
サトシ:「今の俺には、
旅の中で出会った人達と、力になってくれる
ポケモン達がいる、、、」
ヒカリ:「、、、うんっ」
サトシ:「そして、、、今ここに、
俺の隣には、、、あの時別れたヒカリがいるっ」
ヒカリ:「、、、、、」
サトシ:「、、、だから」
ギュッ(ヒカリの手)
ヒカリ(えっ、、、)
サトシはヒカリの方を向き、
ヒカリの左手を握った。
そして、、、
サトシ:「俺はもう二度と、
大事な人達を手離したりしない、、、。
ヒロシ達の事も、ヒカリの事も」
ヒカリ:「、、、サトシ、、、」
強く何かを決意したサトシを見て
ヒカリは気持ちを言葉に出来ず、
潤んだ瞳でサトシを見つめていた。
サトシ:「この先、シルフとの戦いで
俺達はどうなるかわからない、、、けど、
何があっても、俺達は助け合って行こう。
ヒカリの事は、ちゃんと守るから」
ヒカリ:「!」
サトシの言葉一つ一つがヒカリの心に伝わり、
ヒカリは自分の気持ちを繋ぎ合わせ、
サトシに伝えようとした。
ヒカリ:「、、、あたしも、、、」
サトシ:「えっ?」
ヒカリ:「あたしも、
もう離れたりなんかしないっ」
サトシ:「、、、ヒカリ、、」
ヒカリ:「、、、だから、この前も
言ったけど、あまり1人で無茶しないでね?
、、、もし居なくなったら、あたし、嫌だよ?」
サトシ:「、、、大丈夫っ、、。
俺は絶対に、側にいる、、、。」
ヒカリ:「、、、、、うんっ、、、。
、、、約束だよ?」
サトシ:「あぁ、、、約束するっ」
ヒカリ:「、、、ふふっ(笑顔)」
サトシとヒカリは互いに約束をし、
今までとは違う何かが2人の間で芽生えた。
そして、ヒカリの表情に笑顔が戻った。
〔ヒカリ〕サトシの言う通り、確かにこの先、
あたし達はどうなるのかわらない。
サトシ:「ははっ(笑顔)」
〔ヒカリ〕時代と一緒に、
人も今の関係も、変わってしまう事だって
あるかも知れない、、、。
サトシ:「話したらお腹減ったな。
モモンのみは、、、」
ヒカリ:「あっ、それは持ち帰る
やつだからダメよっ」
サトシ:「いただきっ!(ぱくっ)」
ヒカリ〔でも、例え変わる事があったとしても、
誰かの側には誰かが居て、その日が来るまでは
一緒に居られる〕
ヒカリ:「あっ!、、、も〜っ」
サトシ:「、、、やっぱ美味いぜ!」
〔ヒカリ〕だから、今だけは、、、
ヒカリ:「、、、」
サトシ:「、、、ヒカリ?」
〔ヒカリ〕今だけは、、、
スッ〔寄りかかり)
サトシ:「!」
ヒカリ:「、、、、、」
サトシ:「、、、どうしたんだよっ。
急に飛び込んできて、、、」
ヒカリ:「、、、もうちょっと、、」
サトシ:「、、えっ?」
ヒカリ:「、、、もうちょっとだけ、、、
、、もう少し、このままがいいっ」
サトシ:「ヒカリ、、、」
ギュッ
〔ヒカリ〕今だけは、時代が止まって欲しい。
ヒカリはサトシの胸に頭を寄せ、
サトシはヒカリを優しく抱きしめた。
抱き合う二人をそっと撫でるように、
二人の空間を、温かいそよ風が通り過ぎた。
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