聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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402部分:第五十五話 痛み分けその六
第五十五話 痛み分けその六
「そこで何かしらの力を身に着けていてもおかしくはない」
「冥府の力をですか」
「若しくはその小宇宙で狂闘士達を蘇らせるか」
こうも考えるのであった。幾つか想定できることを考えている。
「それもまた有り得る」
「確かに。アーレスもまた神々の一人」
これは最早言うまでもないことである。アーレスがゼウスとヘラの間の子であるということは最早誰もが知っていることなのだから。
「それだけの力があっても不思議ではありません」
「その通りだ。我等にまだアテナは降臨されてはいないが」
「アーレスは何時冥府から戻って来てもおかしくはないです」
シャカはあえて彼等が最も恐れていることを口にしてみせた。
「何時でも」
「その通りだ。それにだ」
「それに」
「トラキアにすればアーレスが帰還することこそが最も有り難いことなのだ」
このことを言うのであった。シオンもまた。
「神、それもオリンポスにも名を連ねる程の力のある神が降臨するのだからな」
「それだけの神が戻れば」
「彼等の有利は絶対のものとなる」
シオンはさらに言った。
「確実にな」
「では教皇」
シャカは顔を上げた。目を閉じたままであるが。
「今トラキアは」
「間違いなくアーレスの降臨の為に動いている」
シオンもまた読んでいた。彼等の思考は。
「しかしだ。具体的にそれが何かというとだ」
「私にもわかりかねます」
シオンにもシャカにもそこまではわからなかった。彼等が具体的にはどの様にしてアーレスの降臨の為に動いているかとなるとだ。
だがここで。シャカはふとした感じで言うのだった。
「ただ」
「ただ。何だ」
「アーレスは戦いの神です」
彼はこのことを言ってきたのだった。
「破壊と流血を何よりも好みます」
「侵略による戦いの神だな」
「その為ローマで尊ばれておりました」
ローマ帝国は侵略によりその国を大きくさせてきた。それだけでなくローマはそのはじまりをアーレスの子であるロムルスとレムスにあるとされている。だからこそアーレスが尊ばれてきたのである。その名はマルスとなっていたが司っているものは同じであった。
「ですから今の我等との戦いも関係があるのかも知れません」
「今の各地での戦いともか」
「しかしです」
だがシャカはさらに言うのであった。
「例え今の戦いに彼等の思惑があったとしても」
「我等は今の戦いを止めるわけにはいかない」
「その通りです。若し我々が行かなければ彼等はそこで破壊と殺戮を行うでしょう」
「それは目に見えている。彼等は狂闘士だ」
そのこと自体に根拠があることだった。
「破壊と殺戮、そして流血こそが彼等の生きがいでありすべきことなのだからな」
「だからこそ我等が行かなければです」
「その場所を殺戮の場と変える」
「はい、間違いなく」
「どちらにしろ我々は行かなくてはならない」
例えそれが敵の思惑の中にあるとしてもだった。この辺りは実に難しいことであった。何故なら彼等は聖闘士であるからである。
「必ずな」
「ですから」
「わかっている。それでもだ」
「アーレスの復活は果たしてあるでしょうか」
今度シャカはその具体的なことについて言及した。
「それについてはどう思われるでしょうか」
「有り得る」
これがシオンの予測だった。
「充分にな」
「そうですか。そう思われますか」
「シャカ、御前はどうか」
己の考えを述べてからシャカに対して問い返した。
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