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聖闘士星矢 黄金の若き戦士達

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403部分:第五十五話 痛み分けその七


第五十五話 痛み分けその七

「御前はこのことについてどう思うか」
「覚悟しておかなければなりません」
 これがシャカの返答であった。
「それにつきましては」
「そうか。御前もまた同じなのか」
「我等にアテナが降臨されなくともアーレスの降臨がだからといってないとは限りません」
 シャカは言うのであった。
「ですから」
「その通りだ。常に最悪の事態を想定しておく」
 聖域の頂点にある者として相応しい、またそうでなくてはならない言葉であった。
「それもある」
「そしてです」
 シャカはここでさらに言うのであった。
「アーレスだけではないかも知れません」
「四柱の神々か」
「先の聖戦において猛威を奮った彼等もまた」
「その通りだ。冥皇には眠りの神ヒュプノスと死の神タナトスがいた」
 彼等のことも今尚聖域に伝えられている。彼等の恐ろしさは。
「かつてヒュプノス配下の四柱の神々と彼等の戦いで聖域は二人の聖闘士と教皇とその兄を失っている」
「蟹座のマニゴルドと山羊座のエルシド」
 シャカがまず名を挙げたのは彼等であった。彼等の勇名もまた今尚聖域に語り継がれている。
「そして教皇セージとハクレイですか」
「彼等の犠牲がありようやく彼等を封じ退けることができた」
「黄金聖闘士二人と教皇達二人を失いようやく」
「あの四柱の神々もまた同じだ」
 シオンの言葉が深刻なものになる。
「それにエリスもいる。神は既に一人いる」
「復讐の女神エリスが」
「あの女神の力もまた尋常なものではない」
 それも既にはっきりとわかっていることだった。わからずして今こうしてここにいることはできない。既にその手にかかって倒れているところだ。
「トラキアの力は恐ろしいものがある」
「狂闘士達だけでなく神々までも」
「人だけではない」
 シオンは言い切った。
「神々までもいるのだ」
「それに対して我等は」
「御前達だ」
 彼等だと告げるシオンであった。
「御前達と。そして私がいる」
「我々と教皇が」
「御前達は今十二人いる」
 黄金聖闘士は十二人だ。それが全て揃っているというのである。
「童虎こそ聖域に来られないがな」
「ですが十二人全ております」
「その御前達と私がいる」
 また言うシオンであった。
「例え神々がどれだけいようともだ」
「はい。我等は戦うべきです」
 目は閉じられたままであったが小宇宙ははっきりと存在しているシャカであった。
「地上の人々の為に」
「そしてアテナの為にだ」
 彼等の戦うその目的を確かめ合うのだった。
「それが彼等と我々の違いだ」
「ですから我々は」
 そしてまた話すシャカだった。
「戦うのです」
「アーレスを倒さなければこの世の平和は守れない」
 シオンはこのことを強く語った。
「シャカよ、そして次の戦いがはじまる」
「次の戦いですか」
「今度は南米になる」
 そこだというのである。
「そこでの戦いになる」
「南米ですか」
「間違いなく八大公も出陣する」
 そのことは最早言うまでもなかった。彼等の今の行動を考えていくと彼等のうちの誰かが出陣してそのうえで配下の狂闘士達も姿を現わすこともまたそうであった。
「だからこそ我々もまた、だ」
「黄金聖闘士を出陣させますか」
「おって話す」
 シオンは言った。
「カミュが帰ってからになるだろう」
「カミュは数日のうちに帰って来ます」
 シャカはこのこともシオンに告げたのだった。
「それからですね」
「どうやらトラキアも八大公の帰還を待ってから動くようだ」
 彼等の動きもまた読んでいるシオンだった。これもまた彼等の過去の動きからである。それによって分析しているのである。
「だからこそだ。我々もまた」
「彼等の動きを見てからですか」
「厄介なのは今度の戦いは相手の動きを見ての戦いだ」
 それだというのである。今の彼等の戦いは。
「先にこちらから手を打つことができないのが厄介な話だ」
「攻撃する側はその攻撃する場所を自由に選ぶことができます」
 シャカがここで言う言葉はこうしたものであった。戦略に入る部類の言葉であった。
「この聖戦では攻める側は彼等ですから」
「我々はそこに向かいそのうえで彼等を倒す」
「そうです。我々は護る側です」
「その通りだ。攻める側ではない」
 シオンはその玉座から述べたのだった。
「護る側にある」
「ですが教皇」
 また言ってきたシャカだった。
「だからといって遅れを取っていてもです」
「遅れを取っていると思うか」
「彼等の思惑が何処にあるかだな」
「それがわからないことが問題ですが」
「今はできるだけのことをしていくしかない」
「はい。耐えていればまた道が開けます」
「そうだな。我々は必ず勝てる」
 彼はまた言った。
「その時を待とう」
「はい、それでは」
 こう言葉を交えさせる二人だった。彼等は今は座って戦っていた。しかしそれでも一歩も引いてはいなかった。少なくともその心は。


第五十五話   完


                 2009・9・21
 
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