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Track 4 ともに目指す場所
活動日誌19 ベイビー ・ めいびー ・ コイのぼたん! 1 『まきりんぱな』
「…………。……さぁ、着いたよ?」
「「「…………」」」
先頭を歩く花陽さんが当たり前のように、通い慣れているように、自分の家に着いたように足を止める。
そして、一瞬だけ横を向きながら、懐かしむような、久しぶりに我が家に帰って来たような笑顔を見せて――私達に振り向きながら、優しい笑顔を浮かべて声をかけてくれた。
私と亜里沙と涼風は声をかけられて、最初に花陽さんが視線を移していた方向に目を向ける。
私達は視界斜め前方に見える真姫さんの家を見て、思わず言葉を失っていた。
ううん、絶対にお屋敷だって言わないと――
「あら? あなたはこの規模でも『家』としか言えないほどに表現力が貧しいのかしら? それとも何? わたくしのように! 逆にお城のような豪邸にでも住んでいるから『家』としか言えないのかしらね? おーほっほっほぉ」
なんて、アニメなんかで良く見かける高飛車お嬢様に鼻で笑われそうなくらいの、建物を目の当たりにして唖然としていたんだよね。
いや、私の周りに高飛車お嬢様なんていないし、単なる想像でしかないんだけど。
何故か、そう言われそうなイメージが頭の中に浮かんでいたんだよ。たぶん。
残念ながら、私の周りにはこんなお屋敷に住んでいる知り合いはいない。
まぁ、唯一可能性のありそうな知り合いは、私の隣で私と同じように口を開けて――
今にも声になりそうな『ハ』の口をしながらお屋敷を見ているんだけど?
でもほら? 今の家じゃなくてロシアの家の方だし、日本とは物価も土地の広さも違うからね?
比較できる訳もないのだった。
そもそも飛行機代が高いから、実物なんて拝んだこともないし?
単純に『広い家』と『お屋敷』では違うんだろうけど。なんてね。
まぁ、要は公共施設でしか見たことのない規模の大きな建物が、個人の所有地だってことに唖然としていたんだよね。つくづく私達って庶民なんだって思う出来事なのだった。
『……はーい?』
「ご無沙汰しています。小泉です」
『あら、花陽ちゃん? ちょっと待っていてね?』
花陽さんが門のところのインターホンを押した――お屋敷だからね?
私の家と違って『玄関ガラガラ、ごめんください!』では済まないんだよ。
しばらくして、インターホンのスピーカーから声が聞こえてきた。
たぶん真姫さんのお母様なのだろう。私も実は何度か見かけたことがあった。
とても綺麗なお母様なんだよねぇ。
まぁ、うちのお母さんも美人だと思う――い、いや親子だから自分も美人だって言っている訳じゃないんだよ?
そうだよ。お姉ちゃんなら、ともか――い、いやいや、姉妹だから自分も美人だって言っている訳じゃないんだから!?
何言ってんだろ、私――誰もそんな風に思っていないのにね? 自分の母親を例に出すからダメなのかな?
ことりさんのお母様――理事長先生なんだけど、先生も美人だし、私の周りには美人な母親が大勢いる。
お母様が綺麗なんだから、当然娘も綺麗な訳で。
結果、私の周りには綺麗な人が多いのだった。私以外!
なんか、前に日誌に書いていた1年生の間で行っていたランキング。あれで私が断トツの1位だって涼風が言っていたんだけど?
どうせ単なる、お姉ちゃんの威光なんだろうと思うしねぇ。私なんて大したことはないんだと思う。
――って、虚しくなるから先に進めよっと!
「花陽ちゃん……あら、凛ちゃんも来てくれたの? いらっしゃい」
「お久しぶりです、おば様」
「お久しぶりですっ!」
「うふふ。凛ちゃんは相変わらず元気そうで、おばさん嬉しいわ」
「あ、ありがとうございますぅ」
「うふふ……それと?」
「あっ、この子達は新入部員の……」
「高坂 雪穂です!」
「絢瀬 亜里沙です!」
「高町 涼風です!」
「そう、あなた達が……。真姫ちゃんが良く話をしてくれるから、会ってみたいと思っていたの。とっても良い子達だって褒めていたわよ?」
「「「……あ、ありがとうございます!」」」
私がそんなことを考えていると、玄関のドアが開いて、真姫さんのお母様が門の方へと歩いてくるのが見えた。そして、門を開けて出てくると私達の前に向かい合ったのだった。
お母様は自然に花陽さんに声をかけると、隣に立っていた凛さんに気づいて声をかけた。
その言葉に返事を返す花陽さんと凛さん。元気に答える凛さんに、優しい微笑みを浮かべて話しかけるお母様。凛さんは少し照れくさそうに微笑んで、嬉しそうにお礼を伝えていた。
その後、お母様は――って、私のお母さんでもないのに『お母様』を連呼するのも変だよね?
実際には花陽さんに倣って『おば様』と呼んでいた訳だし。
そんな照れている凛さんに微笑みを浮かべたおば様は視線を、後ろに立っていた私達へと移して声をかけた。
その言葉に花陽さんが答えて、後ろを振り向き私達へと目配せをする。
私達は順に自己紹介を済ませるのだった。
すると、おば様は納得の表情を浮かべながら会ってみたかったことと、真姫さんが褒めてくれていたことを教えてくれる。私達は嬉しくなって――だけど、こそばゆさを感じながら少し赤くなった微笑みの表情でお礼を言ったのだった。
挨拶を済ませると、その場で少し立ち話を始めていた私達。その時――
「……ねぇ、ママ……何かあったの? ――って、花陽と凛……それに、雪穂達も揃って、どうしたのよ!?」
玄関から出てきて門の方まで近づいてきた真姫さんは、おば様を見つけて声をかけたんだけど――
向かい合っている私達の姿を見つけて、驚きの声をあげるのだった。
出て行ったっきり、戻ってこないおば様を心配して出てきたみたいなんだけど?
そこに私達がいたからビックリしたみたい。
まぁ、私も何で玄関前――ううん。私達って門も通っていない状態だったんだよね?
そんな場所で立ち話をしているんだろうって思ってはいたんだけど。
花陽さんとおば様の朗らかな雰囲気に飲まれて、それが当たり前に感じていたのかも? なんてね。
「……あっ、真姫ちゃん? お邪魔して――」
「いないじゃないのよ! ……第一、そこは私の家の敷地ですらないんだから……ママも私の親友達なんだから、門前払いしていないで中へ通してあげてよね?」
「あら、やだ、私ったら……ごめんなさいね? 久しぶりに遊びに来てくれたものだから、つい嬉しくなっちゃって……」
「もぉ、ママってば……いらっしゃい。さぁ、中へあがって?」
門から出て、私達の方へ歩いてこようとしていた真姫さんに声をかける花陽さん。その言葉に食い気味に否定の言葉を言い放って、呆れた表情を浮かべて言葉を繋げる真姫さん。
確かにお邪魔はまだしていないからね。それに私達の立っていたのは門の外――公道なんだから。
そして、おば様に向かって呆れた表情のまま声をかける。その言葉に苦笑いを浮かべて私達へと謝罪をするおば様。そんなおば様に優しい微笑みを浮かべた真姫さんは、苦笑いを浮かべて門の方へ手のひらを向けながら、私達を中へと促してくれるのだった。
これは家にお邪魔した後に真姫さんに聞いた話なんだけど、真姫さんの家はお金持ち――
いや、事実だけどそこは重要じゃないんだよ。それに本人はお金持ちなんて言っていないし。
これは私の素直な感想ですよ? 真姫さん。
そう、真姫さんの家は本来、家の中から門のロックの開閉はできるんだって?
まぁ、そうでもないと、来客の度に門のところまで出て行かないといけないからね。
だけどおば様がモニターを覗いた時に、訪ねてきたのが花陽さんだと知り、思わず嬉しくなって、わざわざ門の外まで出迎えに来たみたい。
娘の親友だしね? 花陽さんだしね? 出迎えたくなったんだろうね。
実は私達が家の前に辿りついた時、おば様は真姫さんと一緒にリビング――
応接間? お屋敷のことはわかんないもん。私の家で言う居間ってことで!
そこで一緒にお茶を飲みながら、くつろいでいたんだって。
そこへ来客を知らせるインターホンの音色が響いたから「ちょっと見てくるわね?」と、おば様がモニターを見に出て行った――ら!
一向に戻ってくる気配がなくて、真姫さんは様子を見に来たんだって。
でも、普通は玄関まで行けば済む――門のロックを解除してあげれば、お客は玄関まで来れるしね?
なのに、玄関には人影が見当たらない。
不思議に思った真姫さんが玄関の外まで歩いてくると、門の外に立つおば様の姿を発見した。
だから、ご近所さんと立ち話でもしているのだろうと思って、何の気なしに声をかけようと近づいたら?
向かい合って話をしていたのが私達だってことに気づいた。
花陽さんと凛さんは真姫さんの親友――当然、自分に用があると思うのに!
何故か当の本人を蚊帳の外にして、門の外で立ち話をしているものだから、真姫さんも呆れていたんだって。
そう言う気持ちでいたから、おば様にあんなことを言ったみたい。
実際には取次ぎ――と言うか、単なる世間話をしているだけだから、門前払いではないんだけどね?
軽い焼きもちだったんじゃないか? って、凛さんは言っていた。
まぁ? 凛さんが言い放った直後、隣で聞いていた――真っ赤になった真姫さんにチョップをされて、涙目になりながら頭を擦っていたんだけどね。
あっ、でもでも! 真姫さんがおば様に言った『私の親友達』って部分は花陽さんも凛さんも嬉しそうに聞いていたんだよ。
そう言うのって、なんか良いなって思うのだった。
そんな感じで真姫さん達に中へと誘導されながら、私達は真姫さんの家にお邪魔することになる。
何度か見かけているとは言え、直接接することがなかったから、今日初めて接したおば様。
見かけている時は綺麗で上品で優雅で、さすがは真姫さんのお母様だなって思っていた。
あっ! 過去形だからって、その部分が消えたって訳じゃないよ?
当然、その部分は今でも思っているんだけど。
それ以上に、かなり気さくな――ううん、お茶目な人みたい。
だって、玄関へと歩いている時に私が『おば様』って呼んでも良いですか? って訊ねたら――いや、花陽さん達が言っているからって、私達まで勝手に呼ぶのも変でしょ? だから訊ねたんだけど――
「あら、別に構わないけど――せっかくだから『真姫ちゃんママ』でマママって呼んでも良いのよ? ……そうだわ、ついでだから花陽ちゃんと凛ちゃんも、そう呼んでね?」
なんて言っていたんだもん。
たぶん私達1年生だけじゃなくて、花陽さんと凛さんも心の中で「お断りします!」って叫んでいたんじゃないかな? なんてね。
まぁ、代わりに真姫さんが顔を真っ赤にして「やめて!」って言っていたんだけど――
「えー? 良いじゃないの? たくさん娘ができたみたいで、ママ嬉しいんだけど?」
と、言われてる意味がわかんないと言いたげに聞いていた。
「いや、だから――」
「どうして? ――」
「――」
「――」
「……あ、あの? すみません……申し訳ありませんが、おば様と呼ばせてもらいます」
そんな押し問答を、私達そっちのけで始めていた真姫さんとおば様。
さすがにマママなんて呼ぶのは色々と失礼だと思うし、2人の会話の終わりが見えなかったので――
蚊帳の外の全員で見つめ合い、苦笑いを浮かべて無言で頷くと、代表して私が苦笑いの表情のまま割って入らせてもらい、遠慮させてもらう旨を伝えたのだった。
言いだしっぺの私が言うのが筋だしね?
真姫さんとおば様は私の言葉を聞いて我に返ったようで、苦笑いを浮かべて了解してくれていた。
とは言え、実際にはおば様は、ずっと冷静だったんじゃないかなって思う。
ただ、真姫さんに合わせてあげていたんじゃないかな? それとも、親子のコミュニケーション?
根拠はないんだけど、親の貫禄みたいなものだと感じていたのだった。
そんな真姫さんとおば様が押し問答を繰り広げていた時。
隣で聞いていた花陽さんがボソッと呟いた「やっぱり親子なんだね?」の一言が気になって、私達は花陽さんへと視線を投げかける。
すると気づいた花陽さんは小声で――
「あぁ、うん……実はね? 私達が μ's に入って最初の練習に参加した朝にね? それまで私……眼鏡をかけていたんだけど、コンタクトに変えてみたの。それとね? それまでって『西木野さん』って呼んでいたんだけど……真姫ちゃんが『眼鏡取ったついでに名前で呼んでよ』って言ってきたんだ。正直、何のついでか理解できなかったんだけど、名前で呼べるのは嬉しかったから特に追求もしなかったんだけどね?」
そんなことを、懐かしむような優しい表情で教えてくれたのだった。
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