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Track 4 ともに目指す場所
活動日誌19 ベイビー ・ めいびー ・ コイのぼたん! 2 『まきりんぱな』
そして花陽さんは、おば様が花陽さん達を相手に、高い頻度で『~のついでに~』と言う言い方をするって話をしてくれた。
真姫さんのお父様は『西木野総合病院』の院長先生。
おば様は院長夫人であって、女医さんなんだよ。
だからなのかな? 1日に大勢の患者さんや色々な人達と応対するから、時間短縮と仕事の効率を上げる為に合理的な考えで身についた癖なのかも? なんてね。
つまり真姫さんの「ついでに呼んで?」は、おば様譲りだったのかな?
まぁ、そうだとしても、そうではないにしても、何のついでかが理解できない話だったけど。なんてね。
でも、真姫さんは本当に花陽さんと凛さんを名前で呼びたかったから、おば様の真似をしたんだと思う。
せっかく同じメンバーとして活動することになったんだしさ?
花陽さんと凛さんが仲良く名前で――まぁ、凛さんの場合は愛称で呼んでいるんだけど。
自然と呼び合っているのに、自分だけが他人行儀なのがイヤだったのかも。
2人が羨ましかったのかもね?
私達の場合は、私の方から『涼風』って呼んじゃったんだけど。たぶん、苗字で呼んでいたら涼風の方から「名前で呼んでほしい」って、言ってきたんだろうなって思った。
だから、きっとその時が名前で呼べるタイミングだと思って、聞き慣れていたおば様の口癖が咄嗟に出ちゃった言葉だったんだろう。なんてね。
♪♪♪
「……それで、何しに来たのよ?」
私達を家に案内してリビング――で、良いよね!?
リビングへと通してくれた真姫さんは私達がソファーに腰掛けると、少し怪訝そうな表情で来た目的を聞いてきた。
そうなんだよねぇ? 私達はまだ何しに来たのか伝えていなかったから。
元々約束していた訳でもないんだし、花陽さん達が親友だから、無条件で招き入れただけだもん。
何しに来たのかは気になるんだと思う。
だけど、弱冠ぶっきらぼうな言い方だったことについては、真姫さんらしいから誰も気にしていなかったみたいだよ。
「あっ、うん、あのね? ……ほら、凛ちゃん?」
「……真姫ちゃんの生徒手帳を拾ったから届けに来たニャ!」
「――えっ? ……あぁ、凛が拾ってくれたのね? ありが――」
「一昨日の放課後に拾ったニャ!」
「……はぁ?」
「あっ、い、いや、そのぉ、ほ、ほら……」
「……その点については私からお説教しておいたから」
「……ふーっ。まぁ、花陽がお説教しているんなら別に良いわ? ……ありがとう」
「あはははは……」
真姫さんの問いかけに、花陽さんが答えると凛さんへと会話を振る。
凛さんは鞄から真姫さんの生徒手帳を取り出して彼女へ差し出すと、拾ったから届けに来たことを伝えた。
その言葉を聞いて驚きの声をあげた真姫さんだったけど、実物を見て納得をしながら受け取り、拾ってくれたことへのお礼を伝えようとしたんだけど――
凛さんが正直に、一昨日に拾ったことを話しちゃうもんだから、怒気を込めた口調で聞き返していた。
さっき花陽さんにも同じ事をされたのに、再び繰り返す結末――いや、相手は真姫さんだもん。
凄みは花陽さんの比ではないと思う。
そう、お姉ちゃんを叱る海未さんなのだろう。なんてね。
まさに蛇に睨まれた蛙ならぬ、真姫さんに睨まれた凛さん――なんて書いていたら、私が蛙になっちゃう気がするんだけど?
でも、少しは怒られてみたいかな? って思うかも。
い、いや、別にM気質とかソッチの意味じゃないよ?
真姫さんにしろ、海未さんにしろ――絵里さんもかな?
たぶん本当に好きな相手にしか本気で怒らないんだと思うから。ちょっと羨ましかっただけ!
そんな風に睨まれた凛さんは、しどろもどろになって隣の花陽さんに助けを求めていた。
花陽さんは苦笑いを浮かべて凛さんのフォローをする。
涙目になっている凛さんと、苦笑いを浮かべる花陽さんを見つめていた真姫さんは、大きくため息をつくと呆れた表情で凛さんに許しを与え、そして笑顔を浮かべて再びお礼を伝えていた。
真姫さんの許しを得た凛さんは、安堵したように乾いた笑いを返すのだった。だけど――
「……と、ところで、中は、その……み、見ては……いない、わよね?」
「中? だって、中見ないと誰のかわからな――」
「学生証の面じゃなくて裏の方……」
「裏? ……凛ちゃん、どう? ……って、凛ちゃん?」
「――な、な、なにか御用かニャ?」
「――ッ! ……ほ・し・ぞ・ら・さぁーん?」
「ま、真姫ちゃん、なんか恐いニャ……」
「……そうよねぇ? 学生証の面だけ見ればぁ? 誰のかなんてぇ?? わ・か・る・わ・よ――」
「そ、そうニャ! 学生証の部分しか見ていないニャ!」
「……そう? なら良い――」
少し顔を赤らめた真姫さんが、唐突に聞いてきたのだった。
その言葉に疑問を持った花陽さんは聞き返すんだけど――ほら? 確かに中を見なければ、誰のかなんてわからないんだし。
だけど、その言葉を遮って真姫さんは裏面を見たのかと訊ねる。
花陽さんはキョトンとした表情で、凛さんに真相を聞こうと視線を向けた。
実際に、真姫さんの生徒手帳だってことは凛さんが教えてくれた訳だしね。
だけど、視線を誰にも合わせずに――冷や汗タラタラ、ただひたすら壁をキョロキョロと眺めている凛さんの態度に、疑問を感じて話しかけてみた。
そんな花陽さんの言葉に驚いて、凛さんは未だにキョロキョロと視線を誰にも合わせず、少し焦り気味に聞き返していたのだった。
その言動ですべてを悟ったのか、一瞬だけ驚きと赤面の入り混じった表情を浮かべていたけど、すぐに表情を切り替えて――さっきよりも遥かに凄みを増して、冷たい笑顔を浮かべながら問い詰める真姫さん。
きっと、凛さんが中身を見ていると理解していたんじゃないかな?
だから、見ていないと言わせるつもり――話を水に流すつもりで脅しにかかっていたのかも知れない。
そんな気迫に飲まれて、たじろぎながら学生証の部分しか見ていないと伝える凛さん。
凛さんの「見ていない」の言葉に、真姫さんが安堵を浮かべて話を締めようとしていた時――
「そうニャ! 凛は学生証の部分しか見ていないニャ! だから、裏面の……9人の写真と、凛とかよちんとの写真の下にあった……この写真だけ大切にラミネート加工までされている――にこちゃんとの2ショット写真があったなんて知らないニャーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「――あんた、それ全部言っちゃっているじゃない! ――って、こら! 待ちなさいっ!」
凛さんが全部を暴露した上での『見ていない』発言を言い切って逃亡を開始した。
そんな凛さんを真っ赤な顔で追いかける真姫さん。
2人が部屋を飛び出して何処かへ行っちゃったのを、唖然とした表情で見送っていた私と亜里沙と涼風。
「……ふふふ~ん……えっと? あっ、あった……ふふふ~ん……」
「……花陽さん、何しているんですか?」
真姫さん達が出て行った、リビングの扉の方を見つめていた私達の耳に、花陽さんの楽しげな花歌――じゃなくて、鼻歌が聞こえてきた。
だから気になって花陽さんの方へと視線を移してみたんだけど?
凛さんから受け取ったけど、その凛さんを追いかけるのにテーブルの上に放り出していった、真姫さんの生徒手帳を手に取って、裏面の写真の入っているページを開いていた。
――いや、花陽さん? いくら気になったからって、本人の了承なしに勝手に開いて見るのはマズイのでは? 親友でもさすがに、それは?
そう思いながら怪訝そうに花陽さんを眺めていると、花陽さんは突然自分の鞄を開けて何かを探していた。
そして、鞄の中から――自分の生徒手帳を取り出して真姫さんの生徒手帳と同じ場所を開くと、何かを取り出して、それを真姫さんの生徒手帳へと差し込んだのだった。
正直、何をしているのかが理解できていない私は思わず花陽さんに問い質してしまっていた。
――本来なら見なかったフリをするのが良かったんだろうけど。気になるお年頃と言うことで!
すると、花陽さんは満面の笑顔を咲かせながら――
「あぁ、これ? 新しい『にこちゃんと真姫ちゃんの2ショット写真』が完成したから入れておいたの」
「――えっ!?」
「今生徒手帳に入っている写真も、私が作ってあげたんだよ? ほら? アイドルの切り抜きとか画像加工をするついでにね? と言っても、このことは凛ちゃんには話していないんだけど」
「……そうだったんですか」
「でも、ラミネート加工は真姫ちゃんがしたんだけどね?」
「あはははは……」
そんなことを教えてくれたのだった。
どうやら真姫さんの持っている写真は、花陽さんが作っていた写真だったみたい。
ま、まぁ、さすがにこれ以上深く話を聞くのもどうかと思ったんで、苦笑いだけを返しておいた。その時――
「……お待ちどう様。お茶が入ったわよ? ――って、あら? 真姫ちゃんと凛ちゃんは?」
おば様がお茶を持って、リビングに入ってきた。そして、2人が席を外しているのに気づいて声をかけたんだけど――
「あぁ、はい……いつものです」
「そう? なら、すぐに戻ってくるわね?」
そんな会話が花陽さんとの間で成立していた――って、いつもなの!?
どうやら、凛さんが来る度に走り回っているらしくて『室内トレーニング』のように思われているみたい。
もちろん、最初に2人で遊びに来た時には花陽さんも「うるさくして申し訳ありません」って、おば様に謝っていたみたいなんだけど? って、なんか凛さんの保護者みたいだね。
そうしたら、おば様が――
「走り回れるってことは元気な証拠よ? ただ、怪我だけには気をつけた方が良いわね? ほら……怪我をしても本職だから、すぐに処置はできるのだけれど……医者の家で怪我をするなんて……ねぇ?」
なんて言っていたんで、苦笑いを浮かべていたんだって。
うーん。広い家だから心も広いのかな?
それ以降は『いつもの』で会話が成立しているみたい。
私の家なんて、お姉ちゃんが「あんこ飽きたー」って騒ぐだけで、お母さんに怒られているのに?
いや、和菓子屋で『あんこ飽きた』は禁句だからなんだろうけど。なんてね。
とりあえず、おば様の持ってきてくれたお茶を飲みながら、真姫さん達の帰りを待っていると――
「……た、ただいまぁ……」
「ぅぅぅぅぅ……」
「あっ、おかえりー。お茶あるよ? ……はい?」
「あっ、ありがと……」
「ありがとニャ……」
リビングの扉が開いて、汗だくで少し息が切れている――そのせいだけではない、顔の真っ赤な真姫さんが、凛さんの首根っこを掴んで捕獲して戻ってきた。
そう、捕獲なんだよ。
だって凛さん、涙目になりながら猫の手をしながら背中を押されて歩いてくるんだもん。
悪戯して捕まった猫みたいだったし。
だけど、普段の練習なら数十分ぶっ通しで練習しないと息が切れない真姫さんが数分の追いかけっこで汗だくになって息が切れるなんて――
ま、まぁ、凛さん相手の障害物競走じゃ無理もないのかも?
本当に『室内トレーニング』だったりして? なんてね。
そんな2人に微笑んで自然とお茶を差し出す花陽さん。
それを受け取りお礼を伝えると、2人は一気に飲み干していた――首根っこを掴んだままで。
本当に3人の行動を見ていて『いつもの』なんだと実感するのだった。なんてね。
お茶を飲み終えると、そのままの体勢でソファーに腰掛ける真姫さんと凛さん。
私達は、そんな2人を苦笑いを浮かべて見ていたのだった。
♪♪♪
「……ところで、雪穂達は花陽達の付き添いで来たの?」
「――あっ、いえ……作詞を持ってきました!」
「そうなの? ……まぁ、そうだろうとは思っていたんだけど?」
一息ついた真姫さんは、向かい合って座っていた私達を眺めて3人の来た理由を訊ねてきた。
花陽さんと凛さんは親友であり、生徒手帳を届けに来た。でも、私達が来る理由は見当たらない。
だって、そもそも今日は部活は休みなんだし、普通なら花陽さん達との接点もないのだから。
真姫さんの言葉を受けて、私は今日真姫さんの家に来た目的を伝える。
そうしたら、真姫さんは見当がついていたことを教えてくれた。
と言うより、それ以外に考えられることがないんだけどね。
「……これです」
「――あれ?」
「……?」
「…………」
「? ……ありがとう。さっそく読ませてもらうわね? ……あら?」
「――ッ! …………」
私は鞄を開けて1冊のノートを取り出すと、真姫さんへと差し出した。
その時、一瞬花陽さんが驚きの声をあげる。私はその声に驚いて振り向いたんだけど、花陽さんが苦笑いを浮かべて首を横に振っていたのだった。
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