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活動日誌18 わんだふる ・ らっしゅ! 1 『まきりんぱな』
「失礼します」
「あれ? 雪穂ちゃん――それに亜里沙ちゃんと涼風ちゃんも? お疲れ様」
「「「お疲れ様です」」」
その日の放課後。
HRを終えた私達は部室まで来ていた。
真姫さんは明日でも良いと言ってくれたけど、やっぱり今日渡せるんだったら今日のうちに渡しておきたかったから。
まぁ、今日は部活がお休みだから、誰も来ていないんだろうなって思っていたんだけど。
何となくね? 気分的に早く渡したかったのかな? そんな感じ。
私達が中に入ると、花陽さんが椅子に座って、何かを書いているのが目に入った。
私達に気づいた花陽さんは、笑顔で声をかけてくれる。私達も声をかけて花陽さんの傍へと近づくのだった。
「…………」
「ん? あぁ、これ? これは……アイドル研究部としての活動日誌だよ? 一応、部長だしね。昨日のライブの活動記録をまとめてあるんだよ?」
「そうなんですか? 部長って大変なんですね……」
「と言っても、ライブとかイベントがある時にだけ書いているから別に大したことはないんだけどね?」
私達は花陽さんが何を書いているのか気になったので、花陽さんに近づいて眺めようとしていた。
そんな興味津々な新入部員3人の好奇心の眼差しに、苦笑いを浮かべながら花陽さんは何を書いているのかを教えてくれるのだった。
活動日誌――そう、私の今書いているコレも活動日誌。
基本、部員全員が自主的に各自で書いている。それに対して、読んでくれた他の部員がコメントを寄せてくれている。
だけど、これは別に交換日記のようなものじゃない。歴としたアイドル研究部の財産なのだと思う。
あっ、もちろんプライベートな話を書いた活動日誌もあるんだけどね?
私だって書いてはいるけど、それは別のノートだし、本当に交換日記みたいなことしか書いていないから。
恥ずかしいから、どんなことを書いているかは内緒! なんてね。
そう、アレは本当に個人的な日記みたいなものだから、卒業を機に自分達で思い出として大切に持ち帰ることになっているみたい。
実際に絵里さん達は持ち帰ったみだいだしね。
でも、この活動日誌はアイドル研究部に在籍している私達の『活動記録』のようなもの。
なので、コレに関しては活動を終了した時点で、部室の棚に保管されることになっている。
だから、絵里さん達3人の活動日誌は部室の棚に保管されていて、私達がいつでも自由に閲覧できるようになっているのだ。
つまりね? この活動日誌は現在の部員が読む為じゃない――
これから入部してくる新入生の子達への先輩からの記録なんだよね?
私や亜里沙や涼風にとっての絵里さん達や、次の世代の子達にとってのお姉ちゃん達3年生。
その場にいない子達にも、その頃に何があったのか。どんな活動をしていたのか。
何を考え、何を思い、何を目指して頑張っていたのか。
そんなことを伝えたくて、私達はこの日誌を書いているんだ。
これも、音ノ木坂学院アイドル研究部の『託した想い』なのだろうね。
そして、私達も書いているこの活動日誌とは別に――
部長の花陽さんは、アイドル研究部の活動日誌として、学院への提出用の日誌を書いているのだった。
まぁ、学院の部活動な訳だし? ライブなどの報告は学院にも提出するのが義務なんだろうけどね。
自分の活動日誌だって書いているのに、別に書かなくちゃいけないのは大変だなって思って、花陽さんに素直な感想を告げる。
花陽さんは私の言葉を受けて、苦笑いを浮かべて答えるのだった。
実際に花陽さんの書いている日誌を見せてもらったんだけど、確かに簡潔にライブの報告だけが書かれていた。
学院も事後報告が欲しいだけだろうし、あくまでも部活動の資料として残したいだけなんだろう。
実際に、ライブとかイベントがある時にだけ書けば良いんだろうしね。
真面目でマメな性格の花陽さんだから、そこまで大変だと思っていないのかも? なんてね。
とは言え、自分の日誌を書いた上で別に書くのは普通に大変だろうなって思いながら、花陽さんが書き終わるのを眺めていたのだった。
♪♪♪
「……うん。おしまいっと……ところで、雪穂ちゃん達は何しに来たの?」
「――えっ? ……あっ! ……あの、今日って、真姫さんは?」
「真姫ちゃん? ……あぁ、詞を持ってきたの?」
「は、はい……なんか早く渡したかったので」
「そっか? でも、真姫ちゃん……今日は用事があるからって、HR終わったらすぐに帰っちゃったんだよね」
「そうなんですか? …………」
「――えっ? ……あ、あのねっ? ……え、えっと……そのぉ……だ、だ、誰か――」
「――あっ、いえ……来ていたら渡したいなって思っただけなので」
「――あっ、そうなんだ?」
花陽さんは日誌を書き終えると、ペンを置いて日誌に目を通している。
学院への提出だからなのか、性格なのかはわからない。
――もしかしたら、アイドルへの情熱スイッチが入っているのかも? なんてね。
けっこう真剣にチェックをしているから、何故か私達も固唾を飲んで見守っていた。何で!?
ま、まぁ、そんな雰囲気だったんだよ? たぶんね。
そんな風にチェックをしていた花陽さんが日誌から目を離し、フッと表情を和らげて、私達を見ながら何をしに来たのかを訊ねてきた。
今日の部活は休み。昨日の時点で連絡もあったし、昼だって集まっているんだから知っているはず。
なのに3人して来ているから、何か目的があるのかなって疑問に思ったらしい。
固唾を飲んで見守っていた私は、急に声をかけられて一瞬驚いて目的を忘れそうになったけど、当初の目的を思い出して花陽さんに真姫さんの所在を訊ねるのだった。
私の言葉を受けて花陽さんは、すぐに作詞の話だと気づいたみたい。まぁ、昼に話していたのを聞いているしね。
そして申し訳なさそうに真姫さんが帰ってしまったことを伝えてくれた。
私達も別に来ているなんて思っていなかったし、真姫さんが来ていたら渡そうってくらいにしか思っていなかったのに!
隣で聞いていた亜里沙が、いつもの表情で聞いちゃうもんだから!!
花陽さんが途端に困り果ててオロオロしだしちゃったじゃないっ!?
海未さんや真姫さんや私には通じた亜里沙のアレも、花陽さんには逆に強すぎたみたい。
涙目になって困る花陽さんは、パニックに陥ったらしくダレカタスケテーを叫ぼうとしていた。
それに気づいて、亜里沙の方が焦り出して、苦笑いの表情で普通に話を続けたのだった。
すると、安心して花が咲いたように微笑みながら、花陽さんは納得してくれていた。
――まぁ、亜里沙も今回のことで学習して、あの表情を控えてくれると嬉しいんだけど? それはないのかな? 亜里沙だし。なんてね。
「あっ、それじゃあ私達はこれで失礼しま――」
とりあえず、真姫さんが来ないのなら私達が残る必要はない。
私は亜里沙と涼風に目配せをして、花陽さんに声をかけて帰宅しようと思っていたんだけど。
「――かーよちんっ! かえろっ?」
勢いよく部室の扉が開かれたかと思うと、外の世界を遮断していた長方形の空間がくり抜かれたかのように――扉と認識していたその場所は、廊下の風景へと切り替わり、新たに切り替わった風景の真ん中に凛さんの姿が映し出されていた。
――刹那、彼女は扉が閉まる勢いを利用したかのように、中に突進しながら花陽さんに声をかけたのだった。
まぁ、ただ普通に――あくまでも凛さんにとっての、いつも通りなんだけど。なんてね。
花陽さんを呼びに来ていただけなんだけどね?
だから普通に『呼びに来た』で説明は済んじゃうんだけど――ほら? 私達、作詞が楽しいって思えるようになっているからかな?
色々と表現を模索してみようと思ったんだよね。それだけ。
「「「お疲れ様です!」」」
「あれ? 雪穂ちゃんに亜里沙ちゃんに涼風ちゃん、お疲れ様ニャ!」
「ちょと凛ちゃん……扉は静かに開け閉めしようね?」
「ごめんニャ……ところで、真姫ちゃん知らない?」
「えっ、さっきHR終わってすぐ帰ったよ? どうしたの?」
「うーん。真姫ちゃん、生徒手帳を落としていたんだよねぇ? ――」
「そうなの?」
「――うん! 一昨日の放課後にっ!!」
「りぃーんちゃーぁん?」
「だ、だぁってぇ……見つけた時には真姫ちゃん帰っちゃったあとだったしぃ、昨日はライブに集中していたしぃ、今日はぁ……すっかり忘れていたニャ!」
「――凛ちゃんっ!」
「……ません!」
「いや、穂乃果ちゃんいないから……」
凛さんに声をかけた私達に気づいて声をかけてくれた凛さん。
そんな凛さんを、母親が小さな娘に言うような雰囲気を纏った花陽さんが諭していた。
うん。お姉ちゃんを諭すことりさんみたいに。なんてね。
だけど花陽さんの諭しなど軽くスルーして、真姫さんの所在を訊ねる凛さん。
どうやら生徒手帳を落としていたんだって。一昨日の放課後に!?
さっきとかなら普通に流せるんだろうけど、昨日ですらない一昨日だってことに、花陽さんは怒気を含んだ声色で凛さんに声をかけた。
そんな花陽さんの声に焦った表情を浮かべて、必死に弁解をしようとした凛さんだったけど。
最後には、あっけらかんと笑顔で忘れたことを伝えちゃうもんだから、花陽さんの大目玉が飛んでくるのだった。まぁ、さすがに今のは凛さんが悪いよね?
すると凛さんは突然、空中でテーブルに指をついているようなポーズを取り、神妙な顔つきで頭を下げながら言葉にした。
――はい? 「ません」って何??
そんな凛さんに向かい、真姫さんが良く浮かべるような呆れた表情で声をかける花陽さん。
お姉ちゃんがいない? 何のこと??
疑問に思った私の表情に気づいたのか、花陽さんが優しく教えてくれたのだった。
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