ラブライブ! コネクション!!
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活動日誌17 はろー ・ ほしをかぞえて! 2 『まきりんぱな』
確かにあの時、自分達は自分達らしくいれば良いと言う結論を出していた。
そして、そのことを胸に刻んで今まで頑張ってきたのだと思う。
だけど、今回は不安と重圧――知らない土地。ラブライブ! の大会実現の為のPRと言う運営の期待。
このPRの結果次第では、大会が開催されない。全て自分達のライブに委ねられている。
そんな見えない想いに、本来の自分らしさを見失いかけていたのかも?
だから、TV局側からの要望。自分達で中継場所を選んで良いと言われて候補地を探していても――
「どこも自分達らしいと感じて選べない」と思っていたのだろう。
だけどね? それって言い換えれば「どこも自分らしいんだけど、その中で1番良いと思える場所が選べない」って話なんだと思うんだ。
それって、おかしくないかな?
いや、わからないよ? ただ単に、女の子特有の――
「どこも良いから迷っちゃうぅー」と言うことなのかも知れないけどね?
でも正直お姉ちゃん達って、そう言う性格じゃない気もするし。違うと思うんだよねぇ?
お姉ちゃん達は今回、海外のTV局からスクールアイドルの紹介番組としてオファーがあった。
だから、ライブを披露する為に行ったんだよね? 言ってみれば、お姉ちゃん達のライブがメインなんだよね? なんでロケ地の良さを考えているの?
どこも自分達らしいんだったら、何処でも良いんじゃないの?
はっきり言えば、私達ファンとしては――
お姉ちゃん達がライブを披露してくれるんだったら、何処だって良いもん!
新曲が聴きたいだけなんだもん! 踊りが見たいだけなんだもん!!
そのお姉ちゃん達のライブを華やかにするステージが見たいだけ!!! ――わかるでしょ?
要は、私達ファンは別にステージと言うか、ロケ地を見たくてライブを見ている訳じゃないってこと。
まぁ、普段のお姉ちゃん達なら理解できていたんだろうけどね?
きっと、お姉ちゃん達は――
あのハロウィンの時のように、インパクトと言うかライブの成功だとか。
そんなところに拘ってしまっていたのかも知れない。それが凛さんの一言を聞いて――
ここが海外であろうと、今がどんな時であろうと。知らない人からすれば、自分達は自分達でしかない。
ここが海外であろうと、アキバであろうと、周りの人は変わらない。街の雰囲気だって変わらない。
だから、この街はアキバ。自分達の良く知るアキバの街。
とは言え、お姉ちゃん達はきっと――他の場所でも同じように考えたのだろう。
何処にいても、どんな時も。隣にメンバーがいて、光輝くステージがあって。
伝えたい誰かがいて、応えたい願いがある。そして――
『自分はスクールアイドルが大好き』と言う想いがあるならば、お姉ちゃん達にとっては、その場所がアキバ。自分のホームなんだろうと思う。
つまり、自分らしくしていても街は受け止めてくれる。ただ、自分達らしく歌って踊れば良いんだ。
そんな風に結論を出したから、凛さんの言葉に納得していたのかも知れない。
そもそも、お姉ちゃん達は何もない状態から始めた。誰も受け入れてくれない状態から始めたんだ。
自分らしく頑張ってきた。自分達らしく目指す場所へ駆け抜けていた。
だから本来なら、そう言う環境には慣れているはずなんだけど。
だけど、これまでに色々な想いに触れ、託された想いを受け止めて。
自分達のこと。ファンの人達のこと。周りの人達のこと。
そんな色々な想いや気持ちに、たくさん悩んできた。そう、あの頃はまだ悩んでいる最中だったのかも知れない。道を見失いかけていたのかも知れない。
だから今回のオファーは、そんなお姉ちゃん達に自分らしさを取り戻してもらおうと――
何もないところから出発して、自分達の頑張りだけでスクールアイドルの頂点へ輝くまでになった μ's への贈り物。
アメリカンドリームの象徴である自由の女神からのエールだったように思えたのだった。なんてね。
そのことがきっかけとなり、お姉ちゃん達は自分らしさを取り戻した。
まぁ、どうやら花陽さんには白米ロスが待ち受けていたらしいけど。これも自分らしさなんだと思うのだった。
そして、自分らしさを取り戻したお姉ちゃん達のライブ。もちろん何度も見ていたけどね?
この話をお姉ちゃん達から聞いたあとに再び見直して、このライブに隠された自分らしさの意味を知ることになったのだった。
♪♪♪
あのライブには2箇所のロケ地が使われている。
1つは高層ビル群をバックに作られた、夜景の映える華やかで豪華なステージ。
もう1つは対称的に、自然が溢れる公園の草原。昼間に撮影された暖かい感じの場所。
私は最初のステージを見て『ラブライブ! 第2回大会』全国大会決勝のステージを思い浮かべた。
そして、もう1つの草原は9人が揃って初めてライブを披露したオープンキャンバスでの『学院のグラウンド』を思い浮かべた。
そして、その2つの場所を交互に繋いでいる演出。だけど衣装は同じ。
つまり、9人が揃ってから、スクールアイドルの頂点に輝くまで。
お姉ちゃん達のこれまでの時間を意味するんだと思った。だけど衣装を統一しているってことは――
『自分達はずっと自分達らしく歌って踊っている』
2箇所の対称的な場所を繋げることで――
『どこでだって自分達らしく歌って踊り続ける』と言うことを伝えたかったんじゃないのかな?
そして、小道具として使われた扇子。そこから発せられた、光が描く線。
あれは編集で加工されたのかも知れないんだけどね? 中継なんだし。そこは重要じゃないから追求しないけど。
あの描かれた線は、もしかしたら『ファンとの繋がりの具現化の光』もしくは単純に『インターネット回線の光』なんだろうと思った。
そしてハートはファンからの愛。自分達からの愛。そう言う意味が込められているような気がする。
つまり、あのライブで伝えたかったことは――
どんな時でも、何処ででも。自分達は自分達らしく歌って踊る。
それは見ている人が、目の前にいても、遠くにいても。精一杯の愛を、ファンの元へ振りまく。
たとえ出会いが必然でも、偶然だとしても――
いつだってファンの人達の愛を受け取って、自分達の愛を送って。
そうして、お互いが繋がっている。そんな、みんなでつくりあげているステージ。みんなで叶える物語。
それがお姉ちゃん達、国立音ノ木坂学院スクールアイドル μ's の自分達らしいライブなんだ。
私はお姉ちゃん達のライブに込めた想いを、そんな風に感じたのだった。
♪♪♪
まぁ、お姉ちゃん達は海外で経験したことにより、常に自分らしく振舞うことの大切さを学んだのだろうけど?
生憎、私達はお姉ちゃん達から話を聞いただけ。実際に体験した訳じゃない。
それは海外だけの話じゃなくて、体験と言う意味では大会の話でもあるんだよね。
ずっと夢見ていたラブライブ! の大会。舞い上がるなと言われても舞い上がっちゃうから。
それでも、目の前に冷静な対応をしているお姉ちゃん達を見て、温度差の違いと言うか――
改めて、スクールアイドルとしての器の差と言うものを知って、私達は自分達の未熟さを実感して恥ずかしくなっていた。
私達は恥ずかしさを隠すように、苦笑いを浮かべながら椅子に座るのだった。
♪♪♪
「それじゃあ、時間もないことだし始めるね?」
私達が椅子に座ると、反省会が花陽さんの言葉で開始された。
とは言え、本当に反省会をする訳でもなく――何となく世間話をしていただけなんだけどね?
だけど、それで良いんじゃないかなって思う。
だって私達はプロじゃないんだもん。あっ、別に反省しなくて良いって話じゃないからね?
と言うよりも、プロの人も同じだと思うんだよね? いや、わからないんだけど?
反省は個人でするもの。自分で課題を見つけて、自分で解決するもの。
誰かに発表するものでもないんだと思うから。
きっと、全員が昨日の時点で反省しているんだろう。
そして各自で課題を見つけて、明日からまた頑張るだけ。誰かの為じゃなくて自分の明日の為なんだもん。
正直、改めて話し合う必要はないのだと思う。
だったら、何の為に集まったのか――きっと区切りをつける為なんだろう。
昨日はライブが終わって、慌しく解散したからね。それに私達は初めてのライブで気持ちが高揚していたから。
1日経った今日。落ち着いた気持ちで、改めて全員が揃うことで、ライブが無事に終了したって。やりきったって実感する――
つまり、気持ちの整理をする為に集まったんだろうって思っていた。
だから、練習の話も出ない。と言うよりも、スクールアイドルの話すら出ていない。
本当の世間話と笑い声が部室内に響いていたのだった。
「……ところで?」
「はい」
「忘れないうちに言っておこうと思って……昨日のライブで歌った歌詞は何かに書いてあるのよね?」
「はい! ……あっ、教室にありま――」
「別に今必要な訳じゃないから、持ってこなくても問題ないわよ? 明日、部室に来た時にでも貸してもらえると嬉しいわね?」
「……はい」
世間話と言う名の他愛のない会話が部室内を包む中、真姫さんが唐突に私達へと声をかける。
私が返事をすると、昨日の私達がライブで歌った、あの曲の歌詞の話を始めた。
昨日のライブで歌った歌詞。私達3人で言葉を繋いで作った私達の歌詞。
それは以前、真姫さんに出された課題なのだった。
そして、その時に「できたら歌詞を持ってきて? 曲を作ってあげるから」と言ってくれていた。
自分達の初めての歌詞。そもそも見ないで歌う必要もあるから、各自がノートに書いて持ち歩いている。
まぁ、ライブは終わったんだけどね?
真姫さんに言われた言葉を受けて、私は作曲するのに歌詞を渡していないことに気づく。
だから持ってこようと思って慌てて立ち上がると、苦笑いを浮かべた真姫さんに優しく止められた。
私達は期限を設けられていた訳でも、急いで作れとも言われていない。
あくまでも『できたら』と言う話だった。つまり慌てて持ってくる必要はなかったんだよね。
本当に『忘れないうちに言っておこうと思って』言っただけなんだろう。
まだ大会への意気込みが解けていなかったのかな? なんてね。
私は恥ずかしくなって、返事をしながら俯いて席に座るのだった。
そんな風に、私達の歌詞の話以外は他愛のない世間話が中心だった反省会も――
昼休みの終わり間近になると、花陽さんの声かけで幕を閉じた。
その後は各々の教室へと普通に戻っていく。ごく普通の学院生活の1コマのような昼休みの風景。
まさか学院の講堂とは言え、非日常的で夢のようなステージを体験した私達。
それが1日前だとは思えないくらいの日常。
だけど、それが良いのかも知れない。ううん、それで良いんだよね?
だからこそ、もう1度立ちたいと思えるんだ。もう1度体験したいと願って頑張れるんだと思うから。
何気ない日常に包まれながら、私は新しい夢のようなステージを思い描きつつ、自分達の教室へと戻るのだった。
後書き
Comments 海未
反省会とは名ばかりでしたね?
ですが、これも1つの部活動だと思っておいてください。
そうですか……私達の態度を、そう感じてくれていたのですか。
海外の怖さ。いえ、あれは穂乃果が悪いのです!
ま、まぁ、あの後で本人も海外の怖さを理解してもらえましたし、
誰もいない時に、私の背中にコツンと頭を預けて――
「本当にごめんね?」と謝っていたので、まったく気にしていませんよ。
昨日の歌詞。
真姫が作曲してくれるようなので、楽しみですね。
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